ナタリー PowerPush - 渋沢葉

「やっと会えました」注目シンガーが伝えたい思い

自分を壊しかねないほどの激情を、リアルな歌詞と聴き手を圧倒する声で表現するシンガーソングライター渋沢葉。彼女が1stミニアルバム「せきららら」から約半年という短いスパンで、2ndミニアルバム「花はここに咲いています」をリリースする。

ナタリーではこのタイミングで彼女に初めてのインタビューを実施。渋沢の表現や歌の源泉を探ってみた。

取材・文 / 石角友香

THE DOORS、THE BEATLESを聴いて育った

──音楽が好きなことを自覚したのはいつ頃ですか?

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えっとね、5歳でピアノを始めて。それは自分がやりたくてお母さんに頼んだから……そのときが最初だと思います。

──ピアノはクラシックをやってたんですか?

はい、そうです。高校受験の前に辞めちゃったんですけど。

──高校受験前というと結構なレベルまでいったんじゃないですか?

それがそうでもなくて。小学校高学年の頃にビル・エヴァンスが好きで「ジャズピアノがいいな」と思って。それで発表会ってクラシックの曲が多いじゃないですか。でも私は「星に願いを」のジャズバージョンをやったりして。自由に弾くほうが好きでしたね。(クラシックは)ちゃんと弾けない気がします(笑)。

──ジャズ以外にはどんな曲を聴いてたんですか?

両親の趣味で家ではクラシックやオールドロックがかかってました。THE BEATLES、THE DOORS、ジミヘンがカッコよくて好きだったかな。

オーディションをきっかけに大学退学

──自分で詞や曲を書くようになったのはいつ頃ですか?

18歳からです。当時は大学に通ってたんですよね。京都の立命館に入って。その頃初めてオーディションに出たんですよ。で、最終まで残ったんだけど……みんな自分の曲を持ってて、身を削って音楽に向き合ってたんだけど、私、そんなの全然してなくて。キャロル・キングの「So Far Away」のカバーだけで最終までいっちゃったの。で自分がすごいダメだって周りの子たちを見て思って……学校辞めて(笑)、それから作曲を始めた。「自分の曲がなきゃ」って。

──それまでは自分の歌いたい曲を歌ってただけだった?

うん。ホントに音楽は「苦しくて好き」じゃなくて、「ただ好き」「楽しいな、好きだな」とかそれだけだったかな。

──立命館といえば、くるりをはじめいいバンドを輩出してる音楽サークルもありますが。

あ、そうなんですか?

──知らないうちに辞めちゃったんですね(笑)。

半年行かないぐらいだったんじゃないですかね。大学は面白かったけど、そのまま通ってたら音楽の道は選ばなかったかも。

──確かに今の渋沢さんはいなかったかも。自分で音楽作ってる子たちを見て、音楽に対する考えが変わったんですね。

今までは家でもずっと音楽が流れてたから「音楽は当然あるもの」って感じだったんですよね。だけどオーディションに参加してから「自分が音楽を欲しくて欲しくてたまらん」「もがいて生み出さないと、表現しないと生きていけない」っていう感じになったんです。音楽への姿勢が自分はすごくぬるくて。どうしても音楽の道でいきたいんだっていう人たちを見て衝撃を受けたんです。

全部、作曲と作曲以外のことって感じ

──初めて作った曲は音源化されているんですか?

1枚目の「せきららら」に入ってる「set me free」っていう曲ですね。

──どんな気持ちで書いたか覚えてますか?

初めてピアノの前に立って曲を作ろうと思ったときに、自分の中がものすごい無限で、それがうれしくも歯がゆくもあって、「どうやってこれを音にすればいいんだろう?」って。でもドキドキワクワクして、自由に自分を解き放とうって感じだった。

──曲を作るときはどんな形で?

ピアノの前に座ってピアノに触るか、ギター触るか。

──作る時間を設けて、集中して作る感じですか?

朝4時には絶対始めてる、毎日毎日。で、夜の7時には寝て。

──朝4時起床で夜7時就寝だと、夜遊びはできないですね。

はい。友達も付き合えない。でもみんなわかってるから。

──起きてる時間は作曲以外に何をしてるんですか?

本を読むか、猫と遊ぶか、映画を観るか。でも全部、作曲と作曲以外のことって感じで。作曲以外のことはいかに曲に還元できるか?ってことを考えるから、良くも悪くもストレスもあって。でもそれがないと曲ができないから、どうしても曲にしないと苦しくなってきちゃって……って感じですね。

──生きる全てが曲作りに直結してる。

うん。受験生みたいな感じ。受験生だと勉強してないと、だんだん変な気分になってくるでしょ。音楽は勉強とは違うけど。

──受験ならゴールがあるけど音楽にはないですよね。

うん、でも続けたい。

LIVE INFORMATION
「花はここに咲いています」
リリース記念ワンマンライブ

2012年12月11日(火)東京都 代官山UNIT
OPEN 18:00 / START 19:00

渋沢葉(しぶさわよう)

1988年生まれ、千葉県出身の女性シンガーソングライター。LED ZEPPELIN、ジミ・ヘンドリックス、THE BEATLESなど60~70年代のロックを聴いて育ち、同時にリトミックやピアノを習う。18歳からオリジナル曲の作詞作曲を始め、TOKYO FM「SCHOOL OF LOCK!」が主催する10代限定の夏フェス「閃光ライオット」に参加。最終先行まで残り、審査員とオーディエンスに鮮烈なインパクトを残す。2012年6月にビクターエンタテインメントよりデビューミニアルバム「せきららら」を発表。土屋昌巳やチバユウスケをプロデューサーに迎えた本作は、ロックファンを中心に大きな注目を集めた。2012年11月に2ndミニアルバム「花はここに咲いています」を発表。12月11日に東京・代官山UNITで初のワンマンライブを開催する。