SHARE LOCK HOMES|紆余曲折の14年を凝縮、SLHの“上京物語”

昨年12月にドリーミュージックとタッグを組み、メジャーデビューシングル「パリ↓↑パニ」を発表したSHARE LOCK HOMES。そこから3カ月で完成させたニューシングル「おかえり桜」には、上京から現在までのエピソードを題材にした表題曲と、彼らとゆかりのある“火曜日”をテーマにした「Tuesday night fever」の2曲が収録されている。音楽ナタリーではメンバー4人に2曲の制作エピソードに加え、ダンスグループとしてのパフォーマンスのこだわり、メジャーデビュー後の近況を聞いた。

取材・文 / 真貝聡 撮影 / 中原幸

俺らを見守るオカンみたいな桜

──メジャー2ndシングル「おかえり桜」はどのように制作されたんですか?

YUMA

YUMA 最初はKARASUが少女マンガのような恋愛ストーリーを考えてきて、そのテーマに沿って曲を作ろうと進めていたんです。だけど……まあナシになったよね(笑)。

KARASU 「おかえり桜」という題名だけ決まっていたんですよ。それでみんなが共感できるテーマは何かを考えたら、僕の中では恋愛ソングがハマるんじゃないかと。……ただ、作ってみたら「なんか違うぞ」と。

YUMA 俺らにキラキラした恋愛ソングは合わなかったんですよね。そもそも4人ともきれいな恋愛をしたことがないので(笑)。

RYO いろいろと悩んだ結果、せっかく春にリリースするということもあり、僕らが地方から出てきて経験したことをつづった“上京物語”的なコンセプトに決まりました。僕とYUMAとSHIRAHANは山口県下関から上京して、京王線の仙川駅の近くに住んでまして。最初は東京の暮らしに慣れなかったんですけど、こっちの生活が長くなったら徐々に違和感もなくなって。ある日、地方ライブから帰ってきて仙川駅の改札をくぐったら、駅前に立っている1本の大きな桜が「おかえり」と言ってくれているような感じがして、「ここが今、俺の帰る場所なんだ」と思ったんですよね。「仙川が第2の故郷に思えた」というエピソードが発端で、今回の楽曲につながりました。

──SHIRAHANさんにとって、仙川にある桜の木はどういう存在でした?

SHIRAHAN

SHIRAHAN まるで俺らを見守るオカンのような感じで、帰ってきたときに安心できる存在になってます。オカンへ素直に「ありがとう」と言えなかったり、家に帰ってきて「おかえり」と言われても「おう」って素っ気ない返事をしちゃうんだけど、心の中ではすごく感謝してる。「おかえり桜」を作ってるときはなんか……改めて当時の自分と向き合うみたいで恥ずかしかったんですよ。メンバーとの上京物語だから、みんなに対しての気持ちを歌詞にするのに抵抗があって、何回も書いては消してを繰り返しましたね。

──ある意味、「今までありがとう」と家族に手紙を書くような感じですかね。

SHIRAHAN そうそう。真正面から向き合うのが恥ずかしいから、最初は恋愛系の歌詞にしようと考えたんですけど、「やっぱりそうじゃないな」って。スタッフにも「みんながこれまで経験してきたことを書くのが、一番リアルだし人に届くよ」と言われたので、すごく変な気持ちだけど自分たちの心をさらけ出して、裸の歌詞を書いてみることにしました。そしたら曲の方向性がガチッと決まっていったんです。去年12月にリリースしたデビューシングルの「パリ↓↑パニ」が自分たちのテンション感を全面に出した、名刺代わりの1枚だったからこそ、2ndシングルは違った見せ方をしようと。

YUMA 上京したことがある人やこれから上京する人、それから4月から進学や、仕事を始める方にも共感してもらえると思います。

上京して数十年、過去の自分に改めて問う

──歌詞はいろんなバリエーションを作ったとのことですが、メロディも8パターンほど制作したとか。

YUMA 作りましたね。ヴァースが変わってくると「こういうサビのほうがいいかもしれない」とメロディパターンを模索して、自分たちの中でしっくりきたものをいくつか完成させたうえで、さらに周りの人にも聴いてもらって。聴いた人が共感するかどうかは、自分たちでは判断できない部分なので。だから周りの人にたくさん意見をもらいました。

KARASU

KARASU ホンマに紆余曲折して完成した曲だよね。

SHIRAHAN そうだね。完成まですごい回り道をしたんですけど、そのプロセスも俺たちらしいなと。だって俺ら自体、これまでたくさん回り道をしてきたので。この曲を作るまで本当にいろんな経験をしてきたからこそ、歌詞に説得力が出ていると思います。

──皆さんが言った通り、「おかえり桜」は東京に来てからの14年間を歌った曲なので、一筆書きで歌詞を書き上げるのではなく、過去の記憶をひっぱり出しながら、何度も構成していく必要があったんでしょうね。

YUMA そうですね。すぐ歌詞に起こすとかそういう次元じゃなかったです。いいことってすぐに忘れちゃうけど、つらい思い出は一生残ってる。つらい思い出をいかにいい思い出として昇華するかの戦いでしたね。

RYO それこそ4人集まって「何があったのか思い出してみよう」と話し合いました。「この年はこんなことがあったよね」とか「このときは〇〇のバイトをしてた」「あんなつらいことがあったよね」と文字に書き出して。そこから順を追って、誰がどの場面を書くのか振り分けていきました。

YUMA だから恥ずかしかったんですよ。「お前はあのときどう思ってたの?」と改めて自分自身に聞かなきゃいけないので。

SHIRAHAN その作業がイヤだから、最初は恋愛系の曲にしようと思ったんです。歌詞を書くうえで便利だったのは、スマホの画像フォルダ。8年前から撮り貯めた写真があるので、それを見ると、当時の出来事を鮮明に思い出すことができて。うまいこと歌詞のフックというか、あまりほかの人は使わない言葉が出てくるきっかけになった。なので自分たちの中に閉まっていた思い出をたくさん開けた感じですね。

夢のシェアハウス「おかえり桜」

──SHIRAHANさん的には、どんな思い出を言葉にするのが大変でした?

SHIRAHAN 「5人で間取りは2DK」という歌詞は最初は入れてなかったんですよ。なぜなら、その部分はリアルすぎるというか。「マジで男5人で住んでんの?」って(笑)。

YUMA 普通の人は理解できないよな(笑)。

SHIRAHAN そうそう。それで削ろうかなと思ったんですけど、「むしろ、それがリアルな歌詞につながってるよ」と言われたので書いていったら、そこからどんどん歌詞が生まれてきて。あとは「皆それぞれバラバラな個性で 喧嘩っ早い奴もいれば チームでいざこざ はいはい仲裁」という歌詞についても、マジで本気のケンカをめちゃくちゃしてきたので。見せていいのかわからない部分だったから書きにくかったんですけど、それも事実ですから。

YUMA そうだね。

RYO

RYO そういえば一時期は「4人で間取りは2DK」で生活してたよね。

SHIRAHAN 俺らの歴史をこと細かに知っているファンの方なら、メンバー以外の人も一緒に生活していたと知っているんですけど、今だとわからない人も多いだろうから悩んだんです。だけど、そのへんもリアルなまま歌詞にしました。

RYO 4人グループなのに「5人で住んでた」って、説明がないと意味わからんもんね。

SHIRAHAN 「もう1人は誰?」ってなるじゃん。

YUMA なんなら、その5人の中にまだKARASUはいないもんな。

──KARASUさんは途中からSLHに加入しましたからね。

YUMA みんなが一人暮らしを始めたのはここ最近なんだよね。俺はSHIRAHANとは幼なじみすぎてもう一緒に住めなくて、RYOとSHIRAHAN、俺とKARASUの2人ずつで住んでたときもあって。その後、俺とKARASUの家には知り合いがしょっちゅう来るようになって、最終的に5人でシェアしてましたね。結局大人数になっちゃうから「一生、共同生活をするのかな」と思ってました。

RYO 俺とSHIRAHANの家も合計3人で住んでたよ。

SHIRAHAN 最近はルームシェアをしてる若手芸人さんも増えて、テレビ番組でよく取り上げられるじゃないですか。

──若手でお金がないから、みんなで家賃を折半して暮らしてますよね。

SHIRAHAN 同じ屋根の下で和気あいあいとごはんを食べたり、うれしいことも悲しいことも共有したりして。俺らも昔はそれが当たり前だったんですよ。ルームシェアしてる人をテレビ番組で観ると「あの頃はよかったな」と思い出すんですよね。

KARASU わかるよ。あの雰囲気がいいよね。

SHIRAHAN この先の理想は各々一人暮らしをしつつ、ルームシェアができる家も借りたいなって。

──もう一緒に住めばいいじゃないですか(笑)。

SHARE LOCK HOMES

SHIRAHAN だけど自分のパーソナルスペースも必要というか。昔と違って個人での仕事も増えているので、一緒に住むと仕事に支障が出る可能性があるんですよ。だから一人暮らし用の家も必要なんですけど、できたら一軒家を借りて、そこに俺たち4人だけじゃなくて後輩も呼んで8人くらいで住みたい。

YUMA 「めぞん一刻」みたいな感じやな。

SHIRAHAN そうそう! それは今後の展望としてありますね。そしたら、また「おかえり桜」みたいな曲もできるし。

YUMA どんな展望やねん!

SHIRAHAN 「おかえり桜」っていうアパートかマンション、ないかな?

KARASU 「おかえり荘」とか!

一同 アハハハ!(笑)