ナタリー PowerPush - Share a Coke and a Song

コカ·コーラとみんなの思い出の1曲が意外なコラボ

ジャーナリスト / メディアアクティビスト 津田大介が「Share a Coke and a Song」を徹底検証

今回の「Share a Coke and a Song」特集では、音楽配信事情やデジタル著作権に精通し、無類の音楽マニアでもあるジャーナリスト / メディアアクティビストの津田大介がキャンペーンを体験。その使用感やプレイリストのラインナップをレビューするとともに、今の音楽業界のトレンドから「Share a Coke and a Song」を展開する意味を分析する。

また特集後半で津田は自身のキャリアの中でも特に重要な1年を紹介。「Share a Coke and a Song」でその頃のプレイリストを聴きながら、当時の思い出を語ってもらった。

「Share a Coke and a Song」はタイムリーなキャンペーン

──実際に「Share a Coke and a Song」を使ってみた感想は?

津田大介

ペットボトルのコカ・コーラを買ってラベルに書いてあるコードをパソコンなりスマホなりに入力すれば、その年のヒット曲をパッと楽しめる。この身近さ、手軽さはすごく魅力的だと思います。あと、これって一見先進的なんだけど、実はものすごくタイムリーなキャンペーンなんですよ。

──タイムリー?

今回キャンペーンを共同で展開しているソニーの「Music Unlimited」もそうだし、あとはレコチョクやDeNAも最近同様のサービスを始めていることからもわかるように、今年の音楽シーンって「サブスクリプション型配信サービスの年」になるはずなんです。

──サブスクリプション型配信サービスって?

定額制聴き放題サービスのことですね。月額980円というように、決まった金額を配信サービスに支払えば、そのサービスの提供する楽曲を何曲でも聴けるようになるという。

──まさに「Share a Coke and a Song」的な。

そうですね。ただ、まだまだ新しいサービスだから「サブスクリプションがくる!」って言われてもピンとこない人が多いのも事実で。音楽マニアにとっては夢のようなサービスではあるんだけど、それほど熱心に音楽を聴くわけではない人や「昔はけっこう聴いてたんだけど……」っていう人は「そんなにたくさん音楽を聴くのかな?」ってなってしまうかもしれない。でも実はサブスクリプションって気軽に音楽を楽しむ人たちにも向いているサービスでもあるんです。

──それはなぜ?

どれだけ曲を聴いても課金額が決まっているということは「トコトン聴ける」ということであると同時に「いろいろな曲をBGM的に再生できる」っていうことでもあるわけですから。サブスクリプションって「とりあえず音楽でも聴いてみようかな」っていう人たちにもうってつけのサービスなんです。だからこそ「Share a Coke and a Song」っていい入り口になるはずなんですよ。なんだかんだでみんなスーパーやコンビニみたいな小売店には行くし、自販機は使うわけじゃないですか。

──で「ノドが乾いたな」「リフレッシュしたいな」って感じでコカ・コーラを手にしたら……。

ラベルに書いてある年のヒット曲の数々を何度でもフルレングスで聴けてしまう(笑)。で、最初の話に戻るわけですけど「Share a Coke and a Song」キャンペーンって、もしも5年前にやっていたら「ふーん珍しいね」「面白いね」で終わっていたかもしれない。でも音楽配信各社が本格的にサブスクリプション型サービスに乗り出したこの2013年であれば、多くの人がその新サービスをいち早く、しかも手軽に体験できるきっかけとして機能するんです。

音楽は思い出の再生装置

──プレイリストをジャンルやアーティストではなく、年代で分類するっていうアイデアについてはどう見ます?

津田大介

それもいいですよね。自分の思い出の年のコカ・コーラを買ってきて、当時聴いていた曲を改めて再生しても当然楽しいんだけど、買ってきたコカ・コーラにたまたま書かれていたラベルの年のプレイリストにアクセスしてみても面白いと思いますよ。音楽ってタイムマシンじゃないですか。人の記憶や経験と密接に結びついているものだから、自分が生まれた年以降のヒット曲を聴くと「ああ、この曲が流行ってた頃、こんなことがあったなあ」なんて思い出がよみがえってくるかもしれない。それにプレイリストの選曲基準がジャンルではなく「ヒット曲」だから、当時「自分が好きなジャンルとは違うから」とスルーしていた意外な名曲に出会えるかもしれませんよね。あと、このプレイリストってコカ・コーラを買わなきゃ聴けないんですか?

──いや、コード未入力状態でもキャンペーンサイトにアクセスすれば各年のプレイリスト中の全曲を30秒ずつ聴けるようになってますね。

だったら先にプレイリストを試聴してみてから面白そうな曲を収録している年のコカ・コーラを買ってみても面白い。そうやっていろんな遊び方ができるんだから、コカ・コーラと「Music Unlimited」のこのコラボはやっぱり面白い試みだと思いますよ。

「Share a Coke and a Song」キャンペーン

「Share a Coke and a Song」
キャンペーンとは

実施期間
2013年3月4日(月)~
対象商品
コカ・コーラ&コカ・コーラ ゼロ(300ml / 500ml / 1.5リットル / 2リットルのペットボトル)
販売店等
全国のスーパー、コンビニエンスストア、自動販売機、ドラッグストアなど
音楽サービスパートナー
Music Unlimited

コカ・コーラのイヤーボトル画像

コカ・コーラのイヤーボトル。国内でコカ・コーラの販売が開始された1957年から2013年まで、各年のボトルが販売されており、そのいずれかを手に入れれば、その年の洋邦のヒット曲の数々を楽しめる。

津田大介(つだだいすけ)
1973年生まれ、東京都出身のジャーナリスト、メディアアクティビスト。早稲田大学社会科学部卒業。関西大学総合情報学部特任教授、早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコース非常勤講師、東京工業大学リベラルアーツセンター非常勤講師を務める。メディア、ジャーナリズム、IT・ネットサービス、コンテンツビジネス、著作権問題などを専門に執筆や講演活動を行う。J-WAVE「JAM THE WORLD」ではナビゲーターを担当するなど幅広く活躍。著作に「ウェブで政治を動かす!」「Twitter社会論」などがある。
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2013年4月22日更新