ナタリー PowerPush - SEBASTIAN X
春だから浮かれちゃえ!永原真夏が解説する新作&自主企画
歌詞は自分の全部を出しちゃう
──「ヒバリオペラ」を通して、やっぱり真夏さんのソングライティングの筆致は独特だなと思った。言葉の選び方も、メロディや物語の展開させ方も。つくづく自由な作家性だなと思う。
そうですかね?
──そうですよ。ポエム然としているかというとそうじゃないし、文学性が高いかというとそれも違う。でも、すごくファンタジーとリアルがナチュラルに共存していて。
ああ、そうかあ。ありがとうございます。なんなんでしょうね? これでもけっこう素直に、まっすぐ書くことを大切にしていて。
──まっすぐ書くとこうなるっていう。
そうですね(笑)。すごく一生懸命、まっすぐ自分の思いに嘘はつかないようにしてますね。
──1曲にいろんな描写が出てくるじゃないですか。それって歌詞を書くときに頭の中で画が目まぐるしく展開されている感じなんですか?
そこに関しては、全部が一緒にあるんですよ。恋愛に例えるとわかりやすいかなと思うんですけど、誰かのことを好きになると楽しい気持ちと切ない気持ちが常に共存しているじゃないですか。「ヒバリオペラ」に関しても、「ヤバい! 恋に落ちちゃったんだけど!」みたいな感じと、すごく冷静になっている部分があって。あとは「ああ、こういう感じで恋が始まっちゃったな」という後悔とか。そういう感情があるのに友達に話すときはギャグみたいに茶化す自分もいたりして。そうやっていろんな感情が自分の中にあるから、どれか1つにスポットを当てて書こうとは思わないんですよね。
──全部あるのを、全部出す。
そう、私は全部出したいですね。
「春告」にぜひぜひ遊びに来て!
──2曲目の「つきぬけて」は「ひなぎくと怪獣」と地続きのムードを感じさせる、キラキラしたサウンドの爆発力と強いメッセージ性があって。
「ヒバリオペラ」がバンドの明るく、楽しくて、陽気な面を象徴している曲なら、「つきぬけて」はその対極にあるメッセージ性とか鬱屈した感情を押し出したいと思いました。光と闇について歌っている曲なんですけど、昔の自分と大きく違うのは、以前は闇から光に突き抜けていくイメージが強かったんです。それがどんどん一方向ではなくて、さっき言ったような「全部ある感じ」が増していったんですね。この曲もどこでも踊れる強さがほしいなと思った。光か闇かでいったら、私はずっと闇の中でしか曲を書けなかったんですね。それが自分の中ですごくヤだった。で、光の中で曲を書けるようになりたいと思って始めたのがSEBASTIAN Xだったんです。それからずっと、どれだけ闇の中にいても光を目指していくことをテーマに曲を書き続けてきて。でもそろそろ闇の部分にもちゃんとスポットを当てようと思うようになったんです。だから「つきぬけて」は光と闇の両方にスポットを当てて曲を書けるようになった最初の一歩だと思います。強くて前向きなメッセージ性も前に出ているけど、それと同じくらい鬱憤も溜まっているんですよね。
──「怒れ」って言ってますもんね。
そう。“私はちゃんと怒れるんだ!”という感情。それを押し殺さない強さも描きたかった。そのうえで突き抜けていこう、という曲ですね。
──3曲目の「春咲小紅」のカバーも、矢野顕子さんに対する敬意と、曲を自分のものにしようという気概が感じられてすごくよかったです。
ありがとうございます。矢野さんのことは昔からホントに大好きなので。普段からガチのものまねもやってるくらい(笑)、矢野さんのボーカルの癖が身体に染みついているんです。だからこの曲もどうやって自分らしくカバーしたらいいかすごく悩んだんですよね。矢野さんの魅力って、初期の頃からかいわらしい少女性だけではなく、どこか達観しているような大人の成熟した存在感があるところだと思っていて。
──イノセントに老成しているというか。そういえば、前回のインタビューでも矢野さんの大人の部分に魅力を感じていると言ってましたね。
そうそう。そこがすごくカッコいいなと思うんですね。だから、私はあえてこの曲で自分の若々しさだけを押し出そうと思って。そこをすごく意識してカバーしました。
──最後に改めて「春告」に向けてひと言お願いします。
4月29日、上野の水上野外音楽堂、13時半開演というロケーションにハマるバンド、アーティストだけが集まります。季節的にも暖かくなってますし、去年は半袖1枚でもOKだったので。ぜひぜひ遊びに来てください。
SEBASTIAN X presents「TOKYO春告ジャンボリー2013」
- 2013年4月29日(月・祝)
- 東京都 上野水上音楽堂
OPEN 13:00 / START 13:30
- <出演者>
- SEBASTIAN X / 踊ってばかりの国 / うみのて / 曽我部恵一 / BLACK BOTTOM BRASS BAND / oono yuuki(acoustic ensemble) / 平賀さち枝 / 音沙汰(永原真夏&工藤歩里 from SEBASTIAN X)
- ※チケット一般発売中
収録曲
- ヒバリオペラ
- つきぬけて
- 春咲小紅
- さよなら京都の人
SEBASTIAN X(せばすちゃんえっくす)
永原真夏(Vo)、飯田裕(B)、工藤歩里(Key)、沖山良太(Dr)の4人からなるバンド。前身バンドを経て、2008年2月に結成される。同年6月に初ライブを開催し、その後定期的にライブを実施。2008年8月に自主制作盤「LIFE VS LIFE」を発表し、文学的な匂いを持つ詞世界やギターレスならではのユニークな音像が話題に。2009年11月に初の全国流通盤となるミニアルバム「ワンダフル・ワールド」を発表。その後も2010年8月に2ndミニアルバム「僕らのファンタジー」、2011年1月に配信限定シングル「光のたてがみ」とコンスタントにリリースを重ね、2011年10月に1stフルアルバム「FUTURES」を発表する。自主企画も積極的に行い、2012年4月には野外イベント「TOKYO春告ジャンボリー」を上野水上音楽堂で開催し好評を博す。同年7月に3枚目のミニアルバム「ひなぎくと怪獣」をリリースした。2013年4月に2000枚限定でシングル「ヒバリオペラ」を発表。