ナタリー PowerPush - Scott & Rivers
WEEZER & ALLiSTERのフロントマンが「日本語で歌うこと」にこだわる理由
ALLiSTERのスコット・マーフィーとWEEZERのリバース・クオモによる音楽ユニット・Scott & Riversが、1stアルバム「スコットとリバース」をリリースした。J-POPのカバーアルバムを日本でリリースするスコットと、日本人を妻に持ち、たびたび日本を訪れるリバースが本作で挑戦したのは、親しみやすいメロディをパワーポップやギターロックに乗せ、それを独自の日本語詞で歌うという試み。中には木村カエラの代表曲「Butterfly」のロックカバーも含まれており、ジャンルや国籍を超越した極上のナンバーをたっぷり楽しむことができる。
今回ナタリーでは、1月下旬にプロモーション来日したスコットとリバースにインタビューを実施した。過去2回行った取材(※1回目 / 2回目)では流暢な日本語で受け答えしたスコットに対し、一生懸命考えてたどたどしいながらも日本語で答えようとするリバース。その対比を楽しみつつ、2人のJ-POPに対する熱い思いを感じてほしい。
取材・文 / 西廣智一 撮影 / 佐藤類
アルバムが完成するまでに3年
──お2人はいつ頃知り合ったんですか?
スコット・マーフィー 3年くらい前にロスで初めて会ったんです。
リバース・クオモ 私の家内は日本人です。ときどき日本の音楽番組を観ています。紅白とか。家内は日本の音楽を聴いています。それで私もだんだん好きになりました。だから(日本語で音楽を)やってみたいと思ったんです。あとは、BoAの「メリクリ」をWEEZERでカバーしました。でも私の日本語、下手くそでした。歌詞も作れませんでした。だから一緒に作る相手が必要でした。そのときユニバーサルミュージックの人と話しました(※WEEZERは当時ユニバーサルミュージック所属)。
スコット 僕も日本ではユニバーサルに所属していたから。で、たまたまロスに共通の知り合いがいてリバースさんを紹介してもらったんです。会ってすぐに一緒にバンドを組んだら面白いものができるんじゃないかっていう話になって、さっそく2人でスタジオに入りました。
リバース 最初からいいチームでした。スコットさんは歌詞の翻訳が上手です。
──じゃあ出会ってすぐにScott & Riversが始動したんですね。そういえば2011年秋にスコットにインタビューしたとき、リバースと一緒にプロジェクトを進めているとすでに発言していましたし、かなり前から制作作業が始まっていたことに改めて驚きました。
スコット アルバムが完成するまでに3年もかかりました。僕はシカゴに住んでるし、リバースさんはロスだから、会えるときに一緒にスタジオに入って、少しずつ曲作りとレコーディングを進めていったんです。
リバース いい曲ばかり。いいアルバムを作りました。パーフェクトです。
──本当にいい曲ばかりのアルバムだと思いますよ。
リバース いいえ。たぶんロングセラーだ。
スコット 「いいえ」って。そこは「はい」だよ(笑)。
日本語の音楽で「家内と感動を共有したい」
──以前スコットにインタビューしたとき、日本の音楽を好きになるきっかけはTHE BOOMの「島唄」だったと聞きましたが、リバースは最初に好きになった日本のアーティストは誰ですか?
リバース ユーミン。家内のお姉ちゃんはユーミンのベストアルバムを運転しながらよく聴いてました。メロディが素晴らしくて、すごく感動しました。びっくりしました。でもあのときは歌詞がぜんぜんわかりませんから、すごく悲しかった。私は日本語のCDをすごく作りたいと思ったけど、歌詞を作れません。私の日本語の先生にお願いしましたが、断られました。家内にも頼みましたけど、ちょっと難しいと言われました。でもスコットさんはやってくれました。家内は「これは素晴らしい」と言ってくれました。安心しました。
スコット それを聞けて僕もすごくうれしいです。
──そもそもリバースはなぜ日本語で歌いたかったんですか?
リバース 日本の音楽番組を観て、家内のCDを聴いて、「日本語でもやってみたい」と思いました。日本の音楽はアメリカの音楽とぜんぜん違います。メロディもコード進行もすごく複雑で、Very musicalです。それに家内のことをもっとわかりたい。感動を共有したいです。
──音楽を通じて奥さんとわかりあいたいと?
リバース はい。私はWEEZERとして何回も日本に行きました。私は外国人アーティストでしたから、いつもInternational department(洋楽部)と仕事しました。でも日本の音楽を作る会社と、Real Japanese musicが作りたかったんです。
──そうか、日本でCDをリリースしても洋楽として扱われるから、ユーミンやほかの日本のアーティストとは別に括られてしまいますものね。
リバース はい。だから今ちょっとがっかりしてます。CDショップではScott & RiversのCDを洋楽に入れます。
スコット 全曲日本語で歌ってるのに、外国人っていうだけで洋楽コーナーに置かれてしまうんです。僕たちはJ-POPのアルバムを作ったつもりなので、聴いてくれる人たちにはぜひ「日本語で歌うJ-POPのアルバム」として接してほしいです。
- ニューアルバム「スコットとリバース」/ 2013年3月20日発売 / UNIVERSAL MUSIC INTERNATIONAL
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3500円 / UICV-9028
- 通常盤 [CD] 2500円 / UICV-1026
CD収録曲
- BREAK FREE
- HOMELY GIRL
- FREAKIN’ LOVE MY LIFE
- おかしいやつ
- 朝は近い
- 終わりのないこの詩
- 遠く離れても
- I NEED SOMEBODY
- はじける
- ほどけていたんだ
- Butterfly
- 君と二人で
初回限定盤DVD収録曲
- Scott & Riversの ゆく年 くる年
- HOMELY GIRL -ミュージック・ビデオ
- HOMELY GIRL -リリック・ビデオ
Scott & Rivers(すこっとあんどりばーす)
ALLiSTERやソロアーティストとして活躍するスコット・マーフィーと、WEEZERのフロントマンであるリバース・クオモによる音楽ユニット。2012年12月末の「RADIO CRAZY」や「COUNT DOWN JAPAN 12/13」で日本初お披露目となり、2人が生み出す極上のポップ / ロックナンバーを日本語詞で歌うスタイルが話題を呼ぶ。2013年2月のタワーレコード限定シングル「HOMELY GIRL」に続いて、3月に1stアルバム「スコットとリバース」をリリース。同年4月には初のジャパンツアー「スコットとリバースと仲間たち」も行われる。