ナタリー PowerPush - SCOTT MURPHY×ぱすぽ☆

アニソンカバーで初コラボ 日米異色対談実現

J-POPカバーで注目を集めるスコット・マーフィーが、新作カバーアルバム「GUILTY PLEASURES ANIMATION」をリリースした。本作では「サザエさん」「おどるポンポコリン」「はじめてのチュウ」「タッチ」など、日本人なら誰もが一度は耳にしたことがあるアニメソングを大胆にカバー。パンキッシュなサウンドで、おなじみのナンバーを堪能することができる。また、いきものがかり「ブルーバード」のカバーでは、アイドルグループ・ぱすぽ☆をフィーチャー。USパンクとアイドル、そしてアニメという異色のコラボレーションが展開されている。

このアルバム発売を記念して、ナタリーではスコット・マーフィーにインタビューを実施。J-POPカバーを始めたきっかけやレコーディング時のエピソード、今作の魅力などをじっくり語ってもらった。さらに、アルバムで初コラボが実現したぱすぽ☆のメンバー4人(増井みお、根岸愛、佐久間夏帆、森詩織)もインタビューに参加。これが初対面となった2組が、お互いの印象やコラボの感想、さらには今後の共演についてなど興味深いトークを繰り広げた。

取材・文/西廣智一 撮影/中西求

スコット&ぱすぽ☆、お互いの印象は?

インタビュー風景

──スコットさんとぱすぽ☆の皆さんが直接会うのは、今日が初めてなんですよね?

根岸愛 そうです。

増井みお 雑誌の企画で以前、Skypeでお話させていただいたことはあったんですけど(笑)。

──そもそもスコットさんは、ぱすぽ☆のメンバーのことはご存じだったんですか?

スコット・マーフィー レーベルが一緒で、ぱすぽ☆のことを知りました。

──第一印象はどう思いました?

ぱすぽ☆一同 えー(笑)。

スコット アメリカには日本みたいなアイドルグループはいないから、やっぱり面白いと思いました。

ぱすぽ☆一同 あーなるほど。

──アメリカでは日本のアイドルグループが話題になることはあるんですか?

スコット 周りの友達にAKB48のビデオを見せたら、みんな「えーっ、そんなグループがいるんだ!」ってリアクションしますよ。

──なるほど。逆にぱすぽ☆の皆さんは、スコットさんのことは以前は知ってましたか?

根岸 お名前は知ってました。

増井 アニメソングをYouTubeとかニコニコ動画とかで検索するとスコットさんの動画も出てくるので、よく聴いてました。

日本語の歌詞の響きがすごく好き

──スコットさんはすでに「GUILTY PLEASURES」シリーズを何作も発表してますが、そもそもなぜJ-POPをカバーしようと思ったんですか?

インタビュー風景

スコット ALLiSTERというバンドで2001年に初めて日本に来たときは日本語が全然喋れなかったけど、独学で勉強しながら日本の音楽も聴いてたら好きなアーティストがたくさん増えたんです。で、ちょうどバンドの3rdアルバム「BEFORE THE BLACKOUT」を出すときに、日本盤を出すなら特別なボーナストラックが必要だとレコード会社から言われて。そのときは新曲が手元になかったからカバー曲をしようって話になり、僕が日本の曲をやってみたらどうかってメンバーに勧めたんです。メンバーも「ああ、面白いんじゃない」と言ってくれて、THE BOOMの「島唄」をカバーしたらすごく反応が良かったんです。ライブでもみんな盛り上がってくれて、すごくいい経験になったから、だったらアルバムも作りたいねって話になって、最初の「GUILTY PLEASURES」を作りました。

──そういう経緯があったんですね。

スコット で、ちょうど「GUILTY PLEASURES」を出した後にバンドが活動休止になって。これからどうしようって考えたときに、もっと日本の音楽のカバーをやりたいと思ったんです。

──例えば歌詞を英語に訳してカバーするっていう手段もあったと思うんですが、あえて日本語で歌おうって思ったのはどうしてだったんでしょう?

スコット いつも英語で歌ってるから英語に訳すのはチャレンジにならないし、なにより日本語の歌詞の響きがすごく好きなんです。やっぱりソロでやるんだから、どんどん新しいことをやってみたい。今回のぱすぽ☆とのコラボみたいに、今までやったことがないことをやってみたかったんです。

今は日本語の歌詞の意味を理解して歌ってる

──日本語で歌うときって、言葉の意味まで覚えるんですか、それとも音として覚えてるんですか?

スコット 今は歌詞の意味を理解して歌ってるけど、最初の頃は日本語が上手じゃなかったから音で覚えてました。

増井 初めてスコットさんのアルバムを聴いたとき、本当に外国の方なのかなと思うくらいに日本語が上手で。私がもし逆の立場だったら絶対できないと思うし、本当に尊敬してます。

──今までの作品も、日本人だったら一度は聴いたことがあるヒット曲やアニソンばかりがカバーされてましたが、選曲はスコットさんが好きな曲の中からセレクトしてるんですか?

スコット 自分が好きで、日本のみんなが知ってそうな曲を選んでます。「島唄」のときみたいに、ライブで歌ったら僕のバンドを知らない人でも一緒に歌って楽しめるようなものを。今回はアニメの曲だけど、今までは昔の曲とか最近の曲とかアニメの曲とか、幅広く選んでました。だから、今回も昔のアニメから最近の「創世のアクエリオン」とかぱすぽ☆と一緒にやった「ブルーバード」まで、いろんな曲を入れたら面白くなるんじゃないかなと思ったんです。

──確かに。ここに入ってる曲はぱすぽ☆の皆さんも聴いたことがあるものばかりでしたか?

佐久間夏帆 そうですね。テレビとかでよく流れる、昔の代表曲みたいな感じで。聴いたらなんとなく一緒に歌えちゃう曲ばかりでした。

エンジニアは日本語が喋れないからレコーディングが大変

──アニソンだけでアルバム1枚作ろうっていうアイデアはどういうところから生まれたんですか?

スコット 今までも毎回必ず1曲はアニメソングを入れていて、いつも歌うのが楽しかったんです。それに、「GUILTY PLEASURES」シリーズも4枚作ってきたので、何か今までとは違うことがやりたいなと思って。

──バンドアレンジに変えていく作業は大変でしたか?

スコット ソロでやってるから、楽器は全部自分でアレンジしないといけなくて。レコーディングするときはドラム以外、ボーカルもギターもベースもピアノもバックコーラスも、全部1人でやってるんです。アメリカではいつもエンジニアと一緒に作業してるんですけど、彼は日本語がまったく喋れないから、レコーディングがいつも大変で。ボーカルを録ってるときに「この部分を録り直したい」って言って歌詞で伝えても、彼はその歌い直したい部分がどこにあるかわからないんです。

──それは大変ですね。ぱすぽ☆の皆さんは自分たちが参加した曲以外で、気に入った曲はありましたか?

インタビュー風景

増井 「タッチ」かな。でも「タッチ」に限らずなんですけど、私はロックが好きなので、このアルバムの曲はロック調にアレンジされてるから飽きないし、とても新鮮なんです。しかもアニソンをロックにアレンジしちゃうアイデアがすごくカッコよくて。あと、女性ボーカルの曲も男性が歌うと雰囲気がガラリと変わって……本当にどれも良かったです!

──そうですよね、女性の曲も全部スコットさんが歌ってるわけですもんね。

森詩織 「おどるポンポコリン」とか、すごくカッコよくなってたし。

スコット ありがとうございます。「おどるポンポコリン」は「ピーヒャラピーヒャラ」って部分が、たまに恥ずかしかったけど(笑)。

増井 あははは!(笑)

ニューアルバム「GUILTY PLEASURES ANIMATION」 / 2011年6月29日発売 / 2000円(税込) / UNIVERSAL J / UPCH-1838

  • Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. サザエさん(宇野ゆう子)
  2. おどるポンポコリン(B.B.クィーンズ)
  3. はじめてのチュウ(あんしんパパ)
  4. ブルーバード feat. ぱすぽ☆(いきものがかり)
  5. ルパン三世のテーマ'78(大野雄二)
  6. タッチ(岩崎良美)
  7. 創聖のアクエリオン(AKINO)
  8. 君をのせて(井上あずみ)
  9. およげたいやきくん(子門真人)

<ボーナストラック>

  1. 世界の果てへ ~Around The World
スコット・マーフィー

スコット・マーフィー

アメリカ・イリノイ州シカゴ出身の男性ロックアーティスト1995年にメロディックパンクバンドALLiSTERを結成し、インディーズやメジャーから数々のアルバムを発表する。2001年に初来日公演を成功させ、これがきっかけとなり日本に興味を持ち、独学で日本語をマスター。2006年には自身がお気に入りのJ-POPナンバーを日本語でカバーした楽曲を含むアルバム「GUILTY PLEASURES」をリリースした。

2007年にELLEGARDENとともに全国33カ所におよぶ大規模なジャパンツアーを行うが、ツアー終了後にバンド活動を休止。以後、ソロ活動をスタートさせ、「GUILTY PLEASURES」シリーズを定期的に発表している。また、2009年には全曲オリジナルによるアルバム「Balance」もリリース。2010年にはALLiSTERも再始動させ、精力的な音楽活動を続けている。

ぱすぽ☆

ぱすぽ☆

2009年に10代の女性10人で結成されたアイドルグループ。「空」「旅」をコンセプトに、同年11月からライブ活動をスタートさせる。ガールズロックユニットと呼ばれるにふさわしく、ロックを根底にした楽曲とパワフルなパフォーマンスが魅力で、フライト(ライブ)を重ねるごとに着実に人気を集めていく。2010年3月に1stシングル「Let it Go!!」をインディーズからリリース。その後も数々のイベント出演で知名度を高め、12月には初のアルバム「TAKE☆OFF」を発表した。2011年5月にはユニバーサルJからシングル「少女飛行」でメジャーデビュー。本作がオリコンウィークリーチャートで初登場1位を獲得する快挙を成し遂げる。7月16日にSHIBUYA-AXでのワンマンライブを予定。8月24日にはメジャー2ndシングル「ViVi夏」の発売を控えている。