SCOOBIE DO×向井秀徳(ZAZEN BOYS)|ファンカリズモだよ人生は

向井さんから一番影響を受けたのはD.I.Y.の姿勢

──向井さんと作業したことで、バンドにも少なからず影響があったと思いますが。

マツキ そうですね。もちろんサウンド的な部分でも影響を受けましたけど、一番大きかったのはD.I.Y.の部分。MATSURI STUDIOに行くと、向井さんがいつも自分で何かやってる。例えばゴミ出しとか些細なことも全部やっていて、その姿に勇気付けられたというか。誰もいないんだったら自分でやればいいじゃんっていう。そういう精神性というか佇まいみたいなところに強烈に影響を受けましたね。そういえばMATSURI寮に行って、ドアを開けたら向井さんが寸胴の鍋で鶏の骨を煮込んで、ラーメンスープの出汁をとってたときもありましたね(笑)。

向井秀徳

向井 煮込まないと、出汁が出ない。その時間ね、焼酎を飲みながら台所にちょっとした椅子を置いてじっと待ってるんですよ。放ったらかしにせずにね。何かが煮えてる感じ、何かが生まれてくる感じ、そこに心地よさを感じてたんだね、私は。煮えてる、煮えてきた、煮えれば煮えるほど旨味が出てくる。

マツキ それって向井さんが音に向かう姿勢にも共通してますよね。作品に向かう時間のかけ方とか。ぶっきらぼうなようでいて、すごく考えられてるところがあるというか。

MOBY あと向井さんとレコーディングして以降、晩メシを食べる時間には作業を終えてみんな帰るっていうのは、いまだに引き継がれてますね。昼に集まって晩飯の頃には帰ると。

向井 一晩中レコーディングするっていう人もいるけど、ウチらもやるなら昼間、まあ午前中からでもいいんだけど、夜までは引っぱらない。予定に間に合わなそうなときは作業を詰め込んだりするし、今はベースのMIYAが沖縄と東京を行ったり来たりだから、もうちょっとやっときたいなってときに、戻りの飛行機をキャンセルして作業を延長するようなときはあるけど。スクービーは基本的に何時集合?

マツキ 1時ぐらいですね。午後イチ。

MOBY 7時、8時には終わりますね。僕らがレコーディングしてるPEACE MUSICは日中働いてるバンドの対応とかもしてるスタジオなので、基本的に作業は月~金、日中で。

向井 終わったら三々五々? 明日のレコーディングについて打ち合わせしようかとか、そこにおいてはない?

マツキ レコーディングの初日までにそのへんは済ませて、あとは録るだけにしておく感じですね。レコーディング中にちょっとアイデアが変わることもあるんですけど、大筋は変わらないから。

オカモト“MOBY”タクヤ(Dr)

MOBY そういえば、「トラウマティック・ガール」のレコーディングに入る前、向井さんとスタジオで2時間ぐらいセッションしたことがありましたね。拍を気にせず、一拍ずっと延々と10分ぐらい演奏しようということが2、3回あって。それと、プリンスの「Lady Cab Driver」って曲を「これイイよ」って聴かせてくれて。

向井 あの曲はね、プリンスがドラムを叩いてる曲だけど、むちゃくちゃタイトでね。MOBYにすげえ似合うなと思って。

MOBY それでけっこう練習したんですよ。いまだに1人でスタジオに入るときは準備運動みたいな感じであの曲を叩きますね。

向井 MOBYと2人で飲んだりしてさ、ああだこうだ音楽聴いたりすることは多かったね。

MOBY 当時はご近所だったから(笑)。そのあと映画の劇伴のお仕事も2回ぐらい一緒にやらせてもらって。「少年メリケンサック」(2009年)と「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」(2016年)。

向井 宮藤官九郎さんの映画の音楽を担当した際に、毎回バンドの曲が何曲か入るんだけど、そういうときにドラマーとして呼び出してたのがMOBY。例えば2000年代のJ-ROCKのパロディみたいな感じもやれるし、バラードもいけるし、なんでもできる男。で、ちゃんと“MOBYビート”になってる。

MOBY ありがとうございます。

エンジンがカーッと熱くなっていく感覚

──ここからはSCOOBIE DOのニューアルバム「Have A Nice Day!」について聞かせてください。今作はこれまでにも増してリズムに凝っている印象もあって、そのあたりについても、ぜひ向井さんからの感想を聞いてみたいところで。

マツキタイジロウ(G)

マツキ 変拍子の曲が多いというところでは向井さん的なサウンドに通じる部分はあるかも知れないけど……どうですかね(笑)。変拍子の曲をいっぱい作ろうと思っていたわけではなくて、ここ2年ぐらい、アフロファンクにハマってたんですよ。70年代とかのJBフォロワーみたいな人たちをいいなと思って聴くようになって。それで自分なりにアフロファンクみたいなものを意識しつつ、どうかなあと思ってギターを弾きながら曲を作り始めたら、自然と変拍子になっていって。別にテンポ感みたいなところで難しいことをやろうとは思わなかったんですけど、リフを切っていったら自然と変拍子になっちゃった。拍子が四分じゃないほうが緊張感とかスリルとか、エグ味が出るような気がして。期せずしてそうなった感じではありますね。

向井 それこそアフリカの音楽のノリっていうのは何も考えていないみたいな、計算されて作られていない部分が多いから、いろんなところでベースとドラムのビートが変わっていったり、ズレていったり、そういうところからお祭りの陶酔感みたいなのが生まれてくる感じがあるわけでね。

マツキ そういうのはすごく意識しましたね。終わりに向かってどんどん進んで行くっていう感覚よりは、ひとところにいるんだけど温度だけ上がっていくような感じを。

向井 回転していく感じっていうかね、今回のアルバムにはエンジンがカーッと熱くなっていく感覚がある。でも、SCOOBIE DOの音楽には、もともとそういうところがあるなと思ってましたよ。回転していく感じ。それはたぶんMOBYのドラムパターン、“MOBYビート”が完全に巻いてるからなんでしょうね。つまり“ロール”してるんですよ。そこにギターとベースとシュウくんのボーカルが乗ってドワーッとドライブしていく。それこそがスクービーのサウンドだと思ってますからね、ずっと前から。それがこのアルバムではさらに加速しているわけですかね。

向井秀徳、SCOOBIE DO。

マツキ そういう感じですね。これはわかりづらいだろう、ノリづらいだろうっていう気持ちは全然なくて、むしろ「どうですか、このカッコいい感じ!」みたいな。たぶん、初めて聴いたとき一瞬ハッとする感じはあると思いますけど。

向井 「サバイバルファンク」、あれを聴いたとき、SCOOBIE DOの新境地みたいなものを感じてカッコいいなと思いましたね。すごくフレッシュだった。

マツキ リズムだけとってみれば変拍子の曲ではあるんだけど、歌も含めてすべての要素が重なったときに、そこはアフロビートそのままではないというか。やっぱりスクービーの場合は、どんな曲をやってもポップに聴かせられるところがあって。そこは僕らの特徴だし武器でもあるので、こういうファンクもあるぜよ的な聞かせ方ができてると思うんです。