子供向け楽曲やアニメ映画を制作、経営者×アーティスト里咲りさの挑戦 (2/3)

里咲りさありきじゃなく、楽曲そのものが注目される反響

──「はこのなかからなにかがでてくる!」はYouTubeの動画再生数が170万回を超えています。

赤ちゃんがたくさん聴いてくれたと思うと、その1回1回がとても愛おしく感じます。

──反響も大きかったですか?

個人的に感じた反響としては、「シナぷしゅ」を視聴している子育て世代のお友達から「子供が喜んで聴いてるよ」「寝付かないときに見せてる」と連絡が来たり、お子さんが「はこのなかから〇〇でてくる!」と自分の名前を入れた替え歌にして、いろいろなところから出てくるかわいらしい動画が届いたり。ずっと作りたかった赤ちゃん向けの歌が作れたことをしみじみうれしく感じました。

──里咲さんは数年前のインタビューから「里咲りさという人物ありきではなく、楽曲そのものがちゃんと評価されるようになりたい」とお話ししていました。その目標が実現できたとも言えそうです。

そうなんです! 私のファンの人は性格や見た目など、トータルで私のことが好きで応援してくれていると思うんです。一方で「シナぷしゅ」に提供した曲は赤ちゃんを対象にしているから、「里咲りさが作っている」というきっかけで聴いている人はほとんどいなくて。テレビ東京の開局60周年イベント「テレ東60祭」で歌ったときも、赤ちゃんと保護者の方が一緒に音楽を楽しんでくれて、とてもうれしかったです。

里咲りさ

“里咲りさ”というキャラクター抜きで音楽を作ってみた

──里咲さんは社長を兼任するシンガーソングライターとしてだけでなく、バラエティ番組での物販芸でも注目されました。

ありがたいことに、レギュラー番組も含めてたくさんのバラエティ番組に出演させていただきました。バラエティ番組にも憧れがあったから、そういった活動をできたのはとても楽しかったですし、「音楽性と明るいキャラクターのギャップがいい」と言っていただけるのもうれしかったです。里咲りさとしてはそういった形で活動を続けようと思いつつ、私自身から切り離して、音楽だけを聴いてもらえるプロジェクトをやりたいという思いもあり、デビュー後、かなり早い段階から試行錯誤をしていました。

──何度か名義を変更したり、ユニットでの活動を行ったりしていましたが、音楽を評価してもらうために試行錯誤していたんでしょうか?

“里咲りさ”というブランドではないプロジェクトで、音楽を世の中に出す、ということをやってみたかったんです。そういった試行錯誤の末にたくさんのことを学んで、はっきりと音楽制作の方針や自分のスタンスが確立できたちょうどいいタイミングで、「シナぷしゅ」で音楽制作と歌唱ができたのはとてもよかったです!

里咲りさ

「劇団ぐんまちゃん」で童謡作りの武者修行

──里咲さんは「はこのなかからなにかがでてくる!」以外にも、ぐんまちゃんのYouTubeチャンネル「劇団ぐんまちゃん」など、子供向けコンテンツに関わる機会が多くなりました。

「劇団ぐんまちゃん」という群馬県が運営しているぐんまちゃんのYouTubeチャンネルの制作を弊社で今年度も受託させていただいています。県からも公表されている通り、音源制作、映像制作、アニメーション、振付、衣装などを一式制作させていただいています。

──担当数がものすごい。

「劇団ぐんまちゃん」では毎週新しい動画を公開しているのですが、仮歌も制作しているので、チャンネルの更新と同じペースで仮歌を歌いました。何十曲も制作したあとに「シナぷしゅ」に楽曲を提供することになったので、もしかしたらその経験も生きているかもしれません。

──ここまで密接に楽曲制作に関わっていると、童謡の基本的な構成や特徴を知ることができそうですね。

そうですね。解像度がすごく上がりました。実はZeppワンマンのあと、「童謡やりたいなあ」と思って、ひっそりと童謡のアルバムデモも作っていたんですよ! その童謡アルバムは、デモのままでタイミングがなくてリリースしていませんが、その数年後に「はこのなかからなにかがでてくる!」を発表できたり、「劇団ぐんまちゃん」で童謡コンテンツのチャンネルに関わらせていただけて、本当に楽しいです。

──一歩一歩夢に近付いているんですね。

少し話が飛躍しますが、熊本県のPRキャラクター「くまモン」の生みの親でもある放送作家の小山薫堂さんは、私が中学生の頃から憧れてロールモデルにしてきた方で。そういう意味でも、ここ数年、音楽、コンテンツ制作、映画もそうですが、私自身のスタイルが夢や憧れに近付いて、そこに自分らしさが加わり、道を確立してきている感覚があってとても充実しています。