Salyu × 小林武史|呼吸をするように共に歩んできた17年

小林が手がける“ポストロックオペラ”に挑戦

──「Reborn-Art Festival 2017」では、小林さんが音楽を手がける舞台「四次元の賢治 -第1幕-」にSalyuさんが出演されるんですよね。この舞台はオペラだと伺いましたが、この作品について聞かせていただけますか?

「Salyu × Takeshi Kobayashi Live in Hong Kong」の様子。(Photo by Taku Fujii)

小林 僕らはこの作品を“ポストロックオペラ”と呼んでいます。中沢新一さんが、宮沢賢治の物語をモチーフにして脚本を書き上げた作品で、今回は全3幕のうちの第1幕が上演されます。岩手県の北上川の上流のほうに賢治が暮らしていた場所があるんですけど、その北上川が舞台で。1場、2場は水中と川辺っていうシチュエーションで話が進んで、3場は賢治の部屋が描かれる。ちょっと不思議な話なんですけど、Salyuにはその3番で出てくる、賢治の妹・としこの役をやってもらいます。

──上映はどのような場所で行われるんですか?

小林 まだ悩んでるんですけど、今回、この舞台用に小さな小屋を建てる予定なんです。「Reborn-Art Festival 2017」の会場になっている石巻には岡田劇場という、さまざまな興行が行われた歴史のある劇場があって、そのオマージュみたいな会場にしたいなと思っていて。「四次元の賢治 -第1幕-」は、京都在住の伊藤存というアーティストによる非常に雰囲気のある絵を動画にして、その動画とアーティストによる歌で構成しようと思っているんです。役者がやるわけじゃないから、ナレーションを付けた動画が天の声みたいになったほうがいいかなと思っていて。あとは歌詞もステージのどこかに映し出していきたいし。そうすると観客にとっては観るものがかなり多くなるから、生演奏を入れるかどうかも悩んでるところ。とにかくぜひ観に来てもらいたいです。

──Salyuさんは今回の舞台がオペラ初挑戦ですか?

「Salyu × Takeshi Kobayashi Live in Hong Kong」の様子。(Photo by Taku Fujii)

Salyu そうですね。歌劇っていうのは初めてですね。思い出したんですけど、私、子供の頃にミュージカルに出てたことがあるんですよ。

小林 へえ!

Salyu 合唱を習ってて、その一環でミュージカルもあった、くらいの感じですけど。「白雪姫」とか「くるみ割り人形」とか。今回の練習を始めてみて「そうだ、ミュージカル習ってたなあ」って思い出しました。ミュージカルやオペラは、ストーリーを伝えていくのに歌が非常に重要な役割を果たしますよね。ソロのシンガーとはまた別の意味で、歌詞とか情緒が必要とされるので大変だなと思うんですけど、楽しみです。新しいボーカルとしてのアプローチも絶対あると思うので、そういったものに巡り合ったり悩んだりする時間になればなと思います。

「Reborn-Art Fes」と一番呼応するのがSalyu

──最後に今後の活動の予定を教えてください。

「Salyu Live 2017 in Billboard Live」東京・Billboard Live TOKYO公演の様子。(Photo by Taku Fujii)

Salyu とりあえずは「Reborn-Art Festival 2017」のオープニングからクローズまでスタンバイしておくっていうことが私の任務だと思ってます(笑)。

小林 いろんな任務を課してるからね(笑)。「Reborn-Art Festival 2017」にお客さんが望むことっていうのは、なんでもある便利な東京の街では経験できないことだと思うんです。人間の手付かずの自然とか、震災の猛威によって生み出された不思議なスペースとか、そういう会場を舞台に現代アートで何ができるだろう?というのが「Reborn-Art Festival」のテーマなので。そういった自然やアートの中で、音楽にまつわるいろんな催しをしたいなと思っているのですが、そういう思いにある意味で一番呼応するのって、Salyuなんじゃないかなって思っています。Salyuには「一期一会感」があるから。

Salyu ふふふ(笑)。

小林 「今日はここでライブをやって、明日はここでカバーを歌おう」みたいなさ。あとはボランティアの人と一緒に夕飯の準備を手伝ってもらったりさ(笑)。わかんないけど、そういう場所にSalyuはぴったりだと思う。

──とても重要な任務がSalyuさんを待っていると。「Reborn-Art Festival 2017」のあとについては何か考えられてますか?

Salyu あんまり具体的なことは考えてないんですけど、「Reborn-Art Festival 2017」でいろんな刺激をもらえたり、新しい出会いがあったりするでしょうから、そこでいろんな発想やチャンスが生まれるんじゃないかなと思っています。

──小林さんは今後のSalyuさんにどういうことを期待されますか?

小林 うーん……これからは音楽のアート化が進んでいくと思うんです。“アート化”っていう言葉が合ってるかはわからないし、音楽は音楽なんですけど……例えばSalyuが「to U」を歌ったら、その瞬間、聴いている人の感情が堰を切ったようにワッと出てきたりするじゃないですか? 言葉じゃなくて、その瞬間を抜き取るみたいなこと。そういうことがアートなんじゃないかなと思っているんです。で、前からずっと思ってるんだけど、ヨーロッパのほうにも行ってみたいんですよね。ヨーロッパで、アートと音楽をつないだら面白いんじゃないかなって。そんなふうに、これからもいろいろ面白いことをやっていきましょうよって感じですかね。

Salyu いいですね。楽しみです。

「Salyu × Takeshi Kobayashi Live in Hong Kong」の様子。(Photo by Taku Fujii)
Reborn-Art Festival 2017

2017年7月22日(土)~9月10日(日)
会場:宮城県 石巻市 / 提携会場:松島湾(塩竈市、東松島市、松島町)、 女川町

Reborn-Art Festival 2017 × ap bank fes
  • 2017年7月28日(金)宮城県 国営みちのく杜の湖畔公園
    出演者 Bank Band / エレファントカシマシ / Awesome City Club / 大森靖子 / KICK THE CAN CREW / 水曜日のカンパネラ / スガシカオ / 秦基博 / back number / Mr.Children
  • 2017年7月29日(土)宮城県 国営みちのく杜の湖畔公園
    出演者 Bank Band / ART-SCHOOL / ACIDMAN / きのこ帝国 / ゲスの極み乙女。 / TK(凛として時雨) / Chara / 藤巻亮太 / ぼくのりりっくのぼうよみ / Mr.Children / LOVE PSYCHEDELICO
  • 2017年7月30日(日)宮城県 国営みちのく杜の湖畔公園
    出演者 Bank Band / 銀杏BOYZ / Salyu / 竹原ピストル / 七尾旅人 / NOKKO / ペトロールズ / Mr.Children / Mrs. GREEN APPLE / WANIMA
post rock opera「四次元の賢治 -第1幕-」

2017年8月29日(火)宮城県石巻市内(※詳細は近日発表)
2017年8月30日(水)宮城県石巻市内(※詳細は近日発表)

原案:宮沢賢治
脚本:中沢新一
音楽:小林武史
映像:伊藤存
出演:オオヤユウスケ(Polaris / SPENCER) / Salyu / 佐藤千亜妃(きのこ帝国) / 桐嶋ノドカ
ナレーション:安藤裕子

Salyu(サリュ)
Salyu
2001年公開の映画「リリィ・シュシュのすべて」に、Lily Chou-Chou名義で楽曲を提供。2004年6月に小林武史プロデュースのシングル「VALON-1」で、Salyuとしてデビューを果たす。2008年11月には初のベストアルバム「Merkmal」をリリース。2009年2月には初の日本武道館公演も成功させた。 また、2011年からは新プロジェクト「salyu x salyu」としての活動を開始し、Cornelius=小山田圭吾との共同プロデュース作品「s(o)un(d)beams」を完成させた。以降2つの名義で並行してリリース活動、ライブ活動を行っている。
小林武史(コバヤシタケシ)
小林武史
音楽プロデューサー、キーボーディスト。Mr.ChildrenやSalyu、back numberといった数多くのアーティストのプロデュースを手がける。「スワロウテイル」「リリイ・シュシュのすべて」といった映画音楽も担当し、2010年公開の映画「BANDAGE(バンデイジ)」では監督も務めた。2003年、坂本龍一、櫻井和寿(Mr.Children)と共に一般社団法人「ap bank」を立ち上げ、自然エネルギー推進のほか「ap bank fes」の開催、東日本大震災の復興支援など、さまざまな活動を行っている。Reborn-Art Festivalでは、実行委員長、制作委員長を務める。