ナタリー PowerPush - SAKANAMON×ラーメンズ片桐仁対談
粘土トークも!異色の音楽×お笑い対談実現
いらないんでしょ、友達
──片桐さんはどうしてお笑いをやろうと思ったんですか?
片桐 誘われたからですよ! 多摩美(多摩美術大学)の同じクラスに小林賢太郎がいて、最終的に僕と一緒にやることになって。芸術大学でお笑いをやろうとしてる人なんて、そんなにいないですからね。音楽の専門学校だったら、みんなミュージシャンになりたいんでしょ?
森野 僕らは音響のほうだったんですけどね。裏方というか。
木村 レコーディングエンジニアとか。
片桐 え、そうなの? なんで?
森野 自分で音を録りたかったんだと思います。
藤森 僕もそうでした。なんでも自分でやりたかったので。
片桐 すごい。「自分で音を録りたかった」って……これ、使えますね。だって、そのときまだ10代でしょ?
藤森 そうですね。アーティスト科っていうのもあったんですけど、ほとんどの人がボーカル志望で「(コードの)Cって何?」みたいな人ばっかりで。むしろ音響科のほうが、楽器がうまい人が多かったんですよ。
片桐 アーティスト科っていうのは、芸能人になりたい人じゃないの?
藤森 あ、そうかも。でも2年くらい学校行ったところで、何者にもなれないですよねえ。
木村 そりゃそうだ。
片桐 仲間に会えるだけでよかったんじゃない? そういう時期って、二度とないからね。
藤森 確かに。僕、全然学校行ってなかったからな……。片桐さんはちゃんと学校行ってましたか?
片桐 どうだったかなあ。記憶が定かじゃなくて……。でもメチャクチャでしたね。購買のヨーグルトを勝手に食べちゃったり、全然知らないヤツに「そのカレー、一口ちょうだい」って話しかけて、そのまま全部食べたり。あと後輩の頭を後ろからバリカンでいきなり刈ったりね。
森野 ワンパクですね(笑)。
片桐 良くないよねえ。そういうゲリラ的なことがカッコいいと思ってたんですよ。パンクな感じで。あと、毎月学内でライブもやってました。友達にすごくウケて、いい気持ちになって。「実力あるんじゃねえか?」と思って、外でライブやると全くウケないっていう。そういうのが何年か続きましたねえ。
藤森 僕らも全く同じでしたね!
──でも、引きこもり気味だったらライブに来てくれる友達も少ないですよね?
藤森 そうですね(笑)。
片桐 いらないんでしょ、友達。
藤森 そんなこともないんですけど……。
時給の高いバイトを見つけて、酒が飲めればいいな
片桐 あのさ「見返してやろう」みたいな気持ちってない? 中学とか高校のときにモテてたヤツとか、自分をバカにしたヤツとか。
木村 めちゃくちゃありますね。
片桐 ねえ? まあ、30歳過ぎてから地元に帰ると、向こうは別になんとも思ってなかったりするんだけどね。こっちだけガチガチに力が入ってて、「あれは一体なんだったろう?」っていう。でもあっちもあっちで頭がツルツルになってたりするからね、モテてたヤツが。ざまあみろっていうね。
藤森・木村・森野 ハハハハハハ!(笑)
片桐 人数も多かったんですよ、僕らの世代は。ちょうど第2次ベビーブームのピークで、同じ学年の人間が200万人もいて。そんな中で運動もできない、勉強もできないってなるとね……。絵は好きだったんだけど、予備校に行くとうまいヤツがいっぱいいて、美大に行くともっとうまいヤツがいて。だからお笑いをやったのかもね、誘われたとはいえ。音楽の人は、もっと早い時期から目指すでしょ?
木村 っても専門学校のときは何もやってなかったですけどね。
藤森 ホントに何もやってなかったです。起きて、「北斗の拳」を観て、夜になったら飲みに行って。4人でシェアして住んでたんですけどね、その頃は。
──そのときの将来像って?
藤森 全然なかったですね。趣味で好きな音楽を続けていければいいなっていう感じで。あとは時給の高いバイトを見つけて、酒が飲めればいいな、と。
木村 体を酷使するバイトね。
片桐 僕もやってましたよ、深夜の警備員バイト。
コピーを経験しないとオリジナルを作るのは難しい
片桐 ところでバンドやるときって、最初はコピーバンドから始めるんでしょ?
森野 学生のときはそうでしたね。
片桐 お笑いはね“コピーコント”をやるとすげえ怒られるんですよ。大学生の頃、バカルディ(現さまぁ~ず)とかフォークダンスDE成子坂が好きで、コントをコピーしてたことがあって。そしたら「それ、プロがテレビでやってるネタじゃねえか!」って怒られて。しかもそれを言ったのはバンドをやってるヤツだったんですよね。「おめえだってコピーやってるじゃねえか! オリジナルはやる気ないとか言ってたよな!」っていう。
藤森 なるほどー。
片桐 まずはカバーをやって「どうしたら面白くなるか?」っていうのを経験しないと、オリジナルを作るのは難しいと思うんですけどね。舞台の上でしゃべるっていうのも、すごく独特だし。
──先輩芸人の方からの影響もありますか?
片桐 ありますよ、それは。ギャグとかツッコミの間とかも似てくるし。
藤森 それは完全に僕らも同じですね。好きな音楽の影響はすごく出る。
片桐 でもやりたいことを100%再現するのは難しいよね? 練習すれば演奏のミスとかは減ってくるんだろうけど、それをお客さんの前で表現しないといけないわけだから。
森野 しかもちゃんと再現したものがウケるとも限らないんですよね。
片桐 そうだよね。でも音楽はいいよねえ。動く金が違うでしょ?
藤森 え、そうなんですか?
片桐 そりゃ、そうでしょ!(※若干キレ気味) タイアップが付いてCMソングとかドラマの主題歌になってさあ……。で、CDも売れて。
──そういう時代でもないんですけどね、今は。
片桐 あ、そうなんだ。ざまあねえな!
森野 音楽、嫌いなんですか?(笑) でも確かに「ドラマの主題コント」ってないですよね。
片桐 ないよ、そんなもん(笑)。ドラマに役者として呼ばれても中途半端だったりするし。……またテンションが下がってきた。
藤森 だ、大丈夫っすか!?
SAKANAMON / マジックアワー【MUSIC VIDEO&メイキング】
片桐仁情報
レギュラー番組
- NHK Eテレ「シャキーン!」
毎週月曜~木曜日 7:00~7:15 - TBSラジオ JUNKサタデー「エレ片のコント太郎」
毎週土曜日 25:00~
出演作品
- 舞台「地球の王様」
201212月24日(日)まで全国各地で上演中。
- エレ片コントライブ「コントの人7」
- 2013年1月11日(金)~16日(水)東京都 草月ホール
- 2013年1月19日(土)愛知県 名古屋市中村文化小劇場
- 2013年1月20日(日)大阪府 サンケイホールブリーゼ
- 2013年1月26日(土)~27日(日)福岡県 福岡イムズホール
SAKANAMON (さかなもん)
専門学校の同級生同士だった藤森元生(Vo, G)と森野光晴(B)によって2007年12月に結成。2009年に木村浩大(Dr)が加入し現在の編成となる。2010年9月に1stミニアルバム「浮遊ギミック」を発表し、収録曲「ミュージックプランクトン」が各地のラジオ局のパワープレイを獲得。2012年8月にバンドのホームでもある東京・大岡山PEAK-1にて初のワンマンライブを開催し成功を収める。同年12月にビクターエンタテインメントよりメジャーデビュー。バンド名には「聴く人の生活の肴になるような音楽を作りたい」という思いが込められている。
片桐仁 (かたぎりじん)
1973年生まれ、埼玉県出身。コメディアン、俳優、彫刻家などさまざまな顔を持つ。1996年に小林賢太郎とお笑いコンビ・ラーメンズ結成し、主に舞台を中心に活動。独特の世界観を持つコントで高い人気を誇る。単独でNHK Eテレの子供番組「シャキーン!」にレギュラー出演しているほか、エレキコミックとの3人組ユニット・エレ片の一員としても活躍中。