初のライブ映像作品から紐解く、斉藤朱夏がステージに立ち続ける理由 (3/3)

今という一瞬をすべて逃したくない

──朱夏さんのエネルギッシュなパフォーマンスや、リアルな思いが乗った生々しい歌からは、今この瞬間を全力で生きている感じがすごく伝わってくるというか。朱夏さんは「明日死ぬかもしれないって本気で思いながら生きてる」とよくおっしゃっていますし、「『明日もしかしたらこの人がいなくなってしまうかもしれないから、だったらこの言葉をかけよう』と思いながら、人と話してる」ということもインタビューで言っていましたが、そういった考え方が根本にあるからこそ、一瞬一瞬に対して全力のライブになっているんでしょうか。

だと思いますね。ステージが終わったら倒れてもいいというくらい、ライブを全力でやっちゃう。悔いが残らないようにしよう、全部を出し切ろうって。「つぎはぎのステージ」に関しては特にそうで、終わった瞬間は歩けなかった(笑)。出し切ってしまって、もう空っぽ。そこまで抜け殻になるのは、けっこうひさしぶりだったんですよね。「明日死ぬかもしれないから」という考え方もあるし、あとはこういうご時世だからっていうのもあるかもしれない。ライブの約束をしたとしても、公演ができなくなるような状況が続いていたので、まずライブができることがどれだけありがたいのかを実感して。その気持ちが強いからこそ、今というこの一瞬をすべて逃したくないんです。

斉藤朱夏

斉藤朱夏

──「つぎはぎのステージ」のMCでは「ここにいる君は、私が不器用だということをきっと知ってたんだと思う。みんなは私以上に私のことを知ってくれているから、いつもみんなに気付かされることがたくさんあります」ということをおっしゃっていました。そう感じることがよくあるんですね。

ファンレターを読んでいて、すごく思うんですよね。みんな私以上に私のことを知ってるなって。昔、「きっと朱夏ちゃんは朱夏ちゃんを演じてステージに立ってるんだなって思う」というファンレターをもらったことがあるんです。そのとき、私はその言葉の意味を理解できてなくて「どういうことだろう?」と思っていたんですけど、その言葉は合っていたんですよ。私は「つぎはぎのステージ」で丸裸の斉藤朱夏になったので。「えー! すごいやん!」みたいな(笑)。あと、ファンの人たちが私を見る目線も面白くて。アーティストが歌でリスナーの背中を押すということはよくあると思うんですけど、私の場合は、ただただ私が楽しそうにステージに立っている姿を見たい!と言ってもらうことが多くて。「今日も朱夏ちゃんが楽しそうでよかった」って。

──楽しんでる朱夏さんを見るのが好きという。

今までは「ファンの方はこういうイメージで見てくれているだろうから、そういうふうに自分を作り上げていこう」と勝手に思ってたけど、それは全然違った。自然な斉藤朱夏、今という一瞬を生きている斉藤朱夏を好きでいてくれてるファンのみんながいて、みんなのほうが私のことを理解してくれてる。「朱夏ちゃんはそのままでいいんだよ」って言ってくれるんです。不思議な関係ですよね。基本的に見守られてます(笑)。本当にいつもありがとうって思っていますね。

とにかく強気の斉藤朱夏だよという、戦闘モードですね

──総括すると「つぎはぎのステージ」は朱夏さんにとってどういうライブでしたか?

知らない間に仮面を被って斉藤朱夏を演じ続けてた私が、やっと“斉藤朱夏になれた”ライブでした。でも、ドキュメンタリーを観ていると、やっぱりこの人はどこか生きづらそうで。「なんでそんな生きづらそうな道ばっかり選ぶの?」って、客観的に観てて笑っちゃったんですよね(笑)。もっといい道あるよって。でも、それを選ばないのがきっとこの人なんだろうな。新しい景色を見るためにがむしゃらに走り続けて、勝手に何かにぶつかっては痛いと嘆いて、でもそれがきっと斉藤朱夏である。そういう自分が、「つぎはぎのステージ」にすべて詰め込まれていたと思います。ライブ本編の映像を観ていると、後半になるにつれて緊張したこわばった顔から、めちゃめちゃいい笑顔になっていって。最後はうれしくて込み上げてくるものがあって泣きそうになってる。最初の泣きそうな顔と、最後の泣きそうな顔は全然違うんですよ。本当に自分が見せたかったものをすべて見せれられたなと思います。

斉藤朱夏

斉藤朱夏

──ひと皮剥けたライブだったんでしょうね。

「つぎはぎのステージ」が終わって、階段を一段登れたんですよ。私、「今絶対に成長できる!」という瞬間がわかるんです。「今だ! だから絶対にあきらめないで、とりあえず全力でやろう。ギリギリでもいいから行け行け!」みたいな。「これ逃したらダメだぞ」って。それが「つぎはぎのステージ」だったんですよね。あのライブをしてから、自分の考え方やライブに対する向き合い方がちょっと変わって。もうすぐ次のツアーも始まるんですが、今までの感じとは全然違うんですよね。心が強いというか、全然身構えていない。

──今までと比べて怖さは?

ない(笑)。今はともかくライブがしたすぎて。「早くこのライブを見せたい!」という気持ちが強いです。2022年の斉藤朱夏の始まりとして、一発目のライブでかましてやろうっていう。

──かますようなセットリストになっているんでしょうか?

はい! 2022年の私には、自分だったりこの世の中だったり、いろんなものに負けないというテーマがあって。今年はどんなに傷付こうが、絆創膏をたくさん貼り続けながら、「絶対に負けないよ、私」っていう強い気持ちでとにかく突っ走ろうと思っています。それをこのツアーで約束できたらいいな。「つぎはぎのステージ」でいろんな弱い部分をたくさん見せたからこそ、またひとつ強くなった姿を見せたい。とにかく強気の斉藤朱夏だよという、戦闘モードですね。

ツアー情報

斉藤朱夏「朱演2022 LIVE HOUSE TOUR『はじまりのサイン』」

  • 2022年4月13日(水)大阪府 なんばHatch
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2022年4月22日(金)愛知県 Zepp Nagoya
    OPEN 18:00 / START 19:00
  • 2022年4月24日(日)東京都 チームスマイル・豊洲PIT
    [第1部]OPEN 14:00 / START 15:00
    [第2部]OPEN 17:30 / START 18:30

プロフィール

斉藤朱夏(サイトウシュカ)

2015年に「ラブライブ!サンシャイン!!」の渡辺曜役で声優デビューし、作中のスクールアイドルグループAqoursのメンバーとしての活動をスタートさせる。2018年11月にはAqoursとしてライブ「ラブライブ!サンシャイン!! Aqours 4th LoveLive! ~Sailing to the Sunshine~」で東京・東京ドームのステージに立ち、12月に「第69回NHK紅白歌合戦」に出演した。2019年8月にミニアルバム「くつひも」でソロアーティストとしてデビュー。11月に東京・TSUTAYA O-EASTで初のソロワンマンライブ「朱演2019『くつひもの結び方』」を開催した。2020年11月に2ndミニアルバム「SUNFLOWER」を発表。2021年2月に2ndシングル「セカイノハテ」をリリースした。8月に1stフルアルバム「パッチワーク」を発表し、11月にホール公演「朱演 2021『つぎはぎのステージ』」を神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールで開催。2022年4月に東名阪ツアー「朱演2022 LIVE HOUSE TOUR『はじまりのサイン』」を行う。FM NACK5で毎週水曜深夜24:30よりレギュラーラジオ番組「斉藤朱夏 しゅかラジ!」がオンエア中。