ナタリー PowerPush - 「美少女戦士セーラームーン THE 20TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE」

後藤まりこ×アヴちゃん(女王蜂)“愛の戦士”対談

敵の倒し方までスタイリッシュ

後藤まりこ

後藤 ボクはな、(武内先生が)「幽☆遊☆白書」の人と結婚したって聞いて、マンガ家の人も人間なんやなって思った。マンガ家の人って会ったことないし、ほんまにおるか知らんかったけど、「ああ、姿形あるんや」って。

アヴちゃん そのぐらい、「セーラームーン」を自分と同じ人間が描いてるっていう感覚がなかったってこと?

後藤 なかった、なかった。なんかキラキラしてる。子供だったから読み込んではなかったけど、人を守ることとかも、わからんなりにわかったつもりでは読んでたよー。

アヴちゃん うん。自分とはかけ離れた世界の話なんだよね。生まれながらにプリンセス、とか、戦士も敵もみんな宿命づけられてる人たちが集まってるから。うさぎちゃんが必殺技を出したら、そんな敵も「リフレーッシュ!」って消えなあかんのとかなあ……切ないなあって。

後藤 敵にまで感情移入してたん?

アヴちゃん うん……1人ひとりに戦う理由があるから。今でもほんまに悪いやつなんかおらへんって思ってるな。私、初めて観た「セーラームーン」って、敵がおでんの回だったの。

後藤 あー! 変なんおったよなあ。敵。

アヴちゃん

アヴちゃん おでんだったら普通もっとカッコ悪くなると思うんだけど、めっちゃ体型がスラッとしてて。あと大きなあやとりで攻撃してくる、「あやとり子ちゃん」っていう敵とか。レイちゃんが「あやとり子ちゃん、これ取れる?」ってあやとりで気を引いて「取れない、どうしよう」ってなってるところに、セーラームーンが必殺技を決めて倒すとかね、「倒し方までスタイリッシュー!」って感動して、強烈に覚えてます。

後藤 それはアニメのほう? 原作のほう?

アヴちゃん アニメのほうだと思う。

後藤 さすがに原作にはおでんは出えへんか。

アヴちゃん うん。原作はどっちかっていうとガラス細工みたいに、繊細で鋭利な部分がすごくあるよね。敵が消滅するシーンもけっこうエグかったり。アニメは1回1回が細かくて、コミカルなところが大好きです。

「女の子の純情」って歌えてよかった

──今回「愛の戦士」を2人で歌ってみていかがでしたか。

アヴちゃん 最初に歌詞をもらったとき、「あ、この曲私めっちゃハマるわ」って。「髪が空に燃え上がる 体が炎のようよ」って、自分に試練が来たときの「ああ……」っていう感じまんまだと。この時点から「この曲は私イケるわ」って思ってました。

──「たたきつぶしてやるわ」とか「ねえ私達やるっきゃないね」とか、意志の強さがにじむ歌詞に沿うように、2人の歌声も力強かったです。

左から後藤まりこ、アヴちゃん。

アヴちゃん うん、やっぱり「セーラームーン」のトリビュートだとかわいく歌われる方が多いんだろうなって思ったんですけど、私は「セーラームーン」ってかわいいだけじゃなくて、女の子の背伸びしてる感じとか、「強くなくっちゃね」っていう教訓みたいなことが芯にあると感じてたんです。だから極力強くいこうと。

後藤 ボクはこういうアニソンっていうか、パキッとした感じの歌を歌ったことないから、ちょっと不安だった。アヴちゃんとボクのキーを合わせるために、原曲より高くなってるしな。だから出るかなって思ってたけど、本番で大きい声出したら、余裕で出て……よかった!

──確かに普段の後藤さんよりキーが高くて新鮮でした。サビではオクターブで2人の声が重なり合ってますね。

アヴちゃん サビは私、上と下のハモリも歌ってて、1人3役くらいやってるんですよ。1人ゴスペルみたいな(笑)。最初に私が歌うことになったので、ディレクターの方にいくつか提案もさせてもらいました。「あいつらのせいよ」のところは「せいよ」「せいよ」って掛け合いにしたい、とか。このメンツの中で私は悪役として入れられたのかなって思って。かわいくやろうと思えばそれもできるんだけど、きっと強いほうがいいんだろうなって。

後藤 ああ、それはあると思う。

アヴちゃん 悪役もみんな、結局自分の正義を信じてやってるわけだから。私も悪なりに強く行こうっていう気持ちなの。

後藤 でも悪役って言い方悪いで。悪やなくてスパイスやん? 「愛の」戦士なんやし。

アヴちゃん そうね。愛の戦士、だもんね。

──サビの「悪を」っていうところ、2番だけ「悪をー!」って勢いづくのがすごく耳に残ります。

左から後藤まりこ、アヴちゃん。

アヴちゃん あ、気付いてもらえてうれしい。ああいうの女王蜂だったらいくらでもできるんだけど、やっぱり「セーラームーン」だし……歌い方はすごく研究して、そんな時間も幸せでしたね。最初、逆転してたんですよ。まりこちゃんが「悪を」歌って、私が「女の子の純情見せてやるのよ」担当だったんだけど、「私が悪を倒します!」って言って、替えてもらったの。

後藤 「女の子の純情見せてやるのよ」ってそこな、歌えてよかったなって思う。ボク、「たたきつぶしてやるわ この手で悪を」とか思ってないしね。

アヴちゃん ふふふ(笑)。

後藤 だからこれでよかったと思ってる。

V.A.「美少女戦士セーラームーン THE 20TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE」 / 2014年1月29日発売 / 3000円 / キングレコード / KICA-3218
V.A.「美少女戦士セーラームーン THE 20TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE」
収録曲
  1. ムーンライト伝説 / ももいろクローバーZ
  2. HEART MOVING / 中川翔子
  3. プリンセス・ムーン / 福原遥
  4. 乙女のポリシー / やくしまるえつこ
  5. ラ・ソウルジャー(La Soldier) / Tommy heavenly6
  6. 愛の戦士 / 後藤まりこ×アヴちゃん(女王蜂)
  7. タキシード・ミラージュ / ももいろクローバーZ
  8. “らしく”いきましょ / 桃井はるこ
  9. セーラースターソング / 堀江美都子
  10. 風も空もきっと… / 川本真琴

<ボーナストラック>

  • ムーンライト伝説(仏語Ver.) / クレモンティーヌ

特設サイトにて小坂明子インタビュー&三石琴乃メッセージ全編公開中

後藤まりこ(ごとうまりこ)

後藤まりこ

大阪府生まれ。2003年に結成したロックバンド・ミドリでボーカルとギターを担当する。ジャズとパンクを融合した音楽性と、セーラー服姿での激しいパフォーマンスで話題を集めるも2010年12月30日のライブを最後にバンドは突然解散。しばらくの沈黙の後、2011年12月27日に開催した自主企画イベントでソロとして再始動を果たし、2012年7月にソロ1stアルバム「299792458」をリリースする。同年8月からはロックミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」に森山未來とともに出演し、2013年4月公開の映画「ペタル ダンス」で映画初出演。また同月より放送のTVアニメ「惡の華」のオープニングテーマにゲストボーカリストとして参加する。2013年7月にはソロ1stシングル「sound of me」をリリース。この曲は自身が主演するドラマ「たべるダケ」のエンディングテーマに採用された。同年12月に2ndアルバム「m@u」を発表。

女王蜂(じょおうばち)

女王蜂

2009年神戸にて活動開始。2010年「FUJI ROCK FESTIVAL '10」のROOKIE A GO-GOステージに出演し、その衝撃的なルックスとパフォーマンスでオーディエンスの注目を集めた。2011年3月に初の全国流通盤アルバム「魔女狩り」をリリース。同年9月にはアルバム「孔雀」でソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズよりメジャーデビューを果たす。収録曲「デスコ」は映画「モテキ」のメインテーマに抜擢されたほか、彼女たち自身も本人役として映画に初出演し話題を呼んだ。2012年5月にギギちゃん(G)が利き腕の長期治療に専念するためバンドを“降板”するも、アヴちゃん(Vo)、やしちゃん(B)、ルリちゃん(Dr)の3人編成に不特定多数の演者を迎える形でバンドは活動を継続。しかし同年12月にバンドは無期限活動休止を発表し、2013年2月のSHIBUYA-AX公演が休止前最後のライブに。このライブの模様はDVD「白兵戦」としてリリースされ、2013年12月に行われたDVD先行上映会の会場にてバンドの再始動が発表された。