ナタリー PowerPush - room12
5人の上で音符が踊る── 注目バンドの成り立ち
歌は絶対に軸にしていこう
──1stフルアルバム「五線譜で踊る」には、リズムチェンジやテンポチェンジがある曲もあって。そういう音が感覚によって出てきたのかもしれないですね。
飯沼 そうですね。テンポチェンジの発想って僕の感覚にはなかったんですよ。でもその感覚を持ってるメンバーがいて。そうやって各々の感覚が合わさって曲ができるんです。
──ああ、各々の好みのジャンルの音をあからさまに取り入れるんではなくて、そのジャンルから得た感覚を取り入れるっていうか。例えばスピード感はメロコアから得た感覚かもしれないし、ダークな美しさはシューゲイザーから得た感覚かもしれない。
平野 ああ、確かにそうです。
高山 だからいろんな表情がある音楽だと思っています。
──曲はすんなり作れます?
高山 いや、すごく大変です(笑)。
平野 みんなの感覚がピッタリ合わないと足が止まっちゃうんで。感覚がピッタリ合うとすぐできるんですけど。感覚って答えがないですからね。
高山 もう、その日の環境、感情でも左右されるものかもしれないし。
──そういう中で軸になっているものってなんでしょう?
飯沼 やっぱり歌ですね。太樹さんの声はすごくいいし、歌は絶対に軸にしていこうって。
高山 そこに各々が持ち寄ったパズルのピースを、歌に沿ってつなげていく。パズルのピースが1個でも欠けるとダメなんです。そこが難しい。
──ギターが3本なのも珍しいですよね。
武内 正直、僕は最初は不安だったんです。もともとギターが2人いるのに3本目っていう責任感と、あと今まで2本のギターでやっていた曲にどうスパイスを加えていくか。1年間ぐらいは試行錯誤の日々でした。やっと今までの曲も3本のギターでアレンジし直して形になって、それが今作にも入っていて。僕はさっき言ったようにroom12に入るまではメロコアのバンドをやっていて、パズルのピースが1つ欠けてもやっちゃえ!ってタイプのバンドだったんで(笑)。
──でも今はパズルのピースが全部合わさることの楽しさが……。
武内 わかってきました(笑)。
最初は物語を演出していって、徐々に自分の内面を
──ところで今作の中で最初にできた曲というのは?
飯沼 「改造彼女」です。まだ3人の頃に作った曲で。まず僕がiPhoneにイントロの部分を録音して高山さんに送って、そこからメロディができて。そして太樹さんがメンバーになって歌のニュアンスが入ってさらによくなって。で、亮くんが入ってギターのスパイスが加わって。さっきも言ったけどすべての音楽って正解がないと思うんです。時間が経てば演奏も変わってくるし、メンバーが加わったことによってアレンジも変わってくる。これはどんどん変化していった曲です、それこそだんだんとパズルのピースが合わさっていくように。
──そのパズルは、どんどん大きなパズルになっていったんでしょうね。
飯沼 そうそう。
──では今作の収録曲について順に聞かせてください。
高山 1曲目の「カタルシス」は新しい曲で、アルバムの頭の勢いって感じの曲です(笑)。
飯沼 「改造彼女」は、今言ったように変化していった曲なので今までとは違ったとこを出したいなと。次の「空蝉」は亮くんが入って5人になって初めてできた曲なんです。ギターが1本増えるとこんなに幅が出るのかって、僕らにとって革命的な曲なんですよ。次の4曲目の「時に暴走」は僕らの中ではキラーチューンとされている曲(笑)。イントロが攻撃的で……。
高山 タイトル通りの曲だよね(笑)。
飯沼 そうそう。「みんな暴走しようよ」って曲です(笑)。5曲目のインストの「輪廻」はセッション感覚で作って、次の「廻る洋梨」につながるように。
平野 「廻る洋梨」も輪廻を表している曲なんで。
──「廻る洋梨」って不思議なタイトルですよね。
高山 僕が一時期、洋梨にハマってたんですよ。
──洋梨にハマってた?
高山 洋梨を食べるのにハマってたんです、おしゃれだなって思って(笑)。で、「廻る」って言葉と「洋梨」って言葉を、それこそパズルみたいに合わせて、じゃ、そこからどういうイメージや意味が浮かぶんだろうって考えたんです。僕は輪廻転生を信じたいんで、いらない人間の命はないって思っていて。用なしなものはないんだよって意味が裏にあるんです。
──洋梨と用なし、なるほど。7曲目の「Rugen」はちょっとミドルテンポでギターがグイグイくる曲ですね。
飯沼 別れをイメージして作ったんです。ギターのブレイクを多用することによって、別れの印象を付けたというか。
高山 区切りを作ったんだよね。別れという区切りの感情。
飯沼 そうそう。オクターブの重なりで感情を描写しました。
──音も歌詞同様に感情が込められているんですね。
高山 そうです。歌が持つ感情を、演奏する僕らは物語として演出したいというか。歌が持つ感情を、演奏でどこまですくっていけるかっていうことを常に意識しています。
──8曲目の「FAKE」はスピーディなナンバー。
飯沼 この曲はひょんなきっかけでできたんです。いつも使ってるスタジオが空いてなくて別のスタジオに入って。初めてのスタジオって新鮮な気持ちになるじゃないですか。それで勢い余ってできた曲です(笑)。この曲は僕らのテンションの象徴というか。ライブでもアガる曲ですね。
──次の「僕らは…」は、内面を見つめ感情を素直に出している曲だなって感じました。美しくて生々しい曲ですよね。
武内 「Rugen」と「僕らは…」は特にメロディラインと歌詞がきれいな曲なので、ライブでもボーカルの声をどこまでも届けたいっていう気持ちでやってます。
──インストの「輪廻」を挟んで、前半が架空の物語のようで、後半になるとだんだん感情が出てきていますよね?
高山 そうだと思います。最初は物語を演出していって、徐々に自分の内面をさらけ出しているっていう……いい流れですよね(笑)。
──そして最後は、独特な打ち込みの曲。
高山 知り合いのクリエイターの人にアルバムを聴いてもらって、アルバムをまとめるような曲を作ってもらって。もちろん、僕らもイメージを伝えてディスカッションしながら。アルバムを作品として聴いてほしい、映画のように感じてほしいと思ったので、映画のエンドロールみたいな感じになったと思います。実は最初は1曲目のつもりだったんですが、亮くんと亮太くんのアイデアで、最後がいいんじゃないかって。そうすることによって無限ループができるんじゃないかって。
武内 エピローグでありプロローグであり。
高山 何回も聴いてほしいし、聴くたびに違った見え方ができるんじゃないかな。
収録曲
- カタルシス
- 改造彼女
- 空蝉
- 時に暴走
- 輪廻
- 廻る洋梨
- Rugen
- Fake
- 僕らは…
- epilogue
東京・Shibuya O-WESTにてroom12企画イベント2年連続開催決定!
room12 presents.
「弱イ犬ホドヨク歌ウ vol.15」
2013年12月12日(木)
東京都 Shibuya O-WEST
<出演者>
room12 / ピストル・ディスコ(仮) / and more
料金:前売 3000円 / 当日 3500円(ドリンク代別)
一般発売日:2013年10月12日(土)
room12(るーむとぅえるぶ)
平野太樹(Vo)、飯沼亮太(G)、武内亮(G)、高山和久(B)、官野舎(Dr)による5ピースバンド。2009年に東京都立川市で結成され、コンスタントにシングルやミニアルバムを発表。現代の孤独をリアルに表現した轟音ギターサウンドとエモーショナルなライブパフォーマンスを武器に、都内を中心に活動している。2013年8月には1stフルアルバム「五線譜で踊る」をリリースした。