素の自分を出すことができたV.W.Pワンマン
──成長のきっかけとして、V.W.Pの活動のほかに理芽さんご自身の活動にも理由の1つがあったと思います。これまでの理芽さんの活動を振り返ると、TikTokでの「食虫植物」のヒットや精力的なライブ活動、歌ってみた動画の公開などいろんなものがありますが、その中でも現在につながる分岐点となった活動を挙げるとしたら何になりますか?
「食虫植物」のヒットも皆さんにあたしを知っていただくきっかけになったと思うんですけど、自分が変わっていったターニングポイントを挙げるとするなら、2022年4月に開催されたV.W.Pのライブ「V.W.P 1st ONE-MAN LIVE『現象』」です。あたし、それまでKAMITSUBAKI STUDIOの中ではクールなお姉さんキャラのように思われていた節があるんですけど、そのライブでかなり素のあたしを見せることができたんですよね。いきなりクールなお姉さんとは正反対の活発な少女みたいな面を出したので、お客さんからは意外だったという反応もありました。でも、ここからだんだん曲の雰囲気も明るくなっていきましたし、大きな変化につながるライブになったと思います。
──直近では、アメリカに半年以上の語学留学に行かれていましたよね。これも活動に変化を生み出したのでは?
英語の発音がよくなったので、留学を経験したことで洋楽を以前よりも自然に歌えるようになりました。それに現地でできた友人からヒップホップの情報を得ることができて、聴く楽曲の幅も広がったんです。ただ、一番活動に直結した変化は、配信のセッティングを1人でできるようになったことかもしれません。日本だとスタッフさんにサポートしていただきながら準備をしていたんですけど、アメリカだとそうはいきませんからね。リモートでサポートはしていただいていたんですが、半年間で1人でも準備ができるようになりました。
──留学と重複する期間ですが、ここ1年で発表された「ルフラン feat. 笹川真生」や「インナアチャイルド」「チクタクボーイ」といった楽曲はドラマやアニメとのタイアップ曲でした。これは素朴な質問ですが、普段歌われているオリジナル楽曲とタイアップ曲とでは何か歌い方に差異はあるんですか?
タイアップ曲のときは、あたしのオリジナル楽曲の要素も残しつつ、作品が持つ雰囲気に合わせた歌い方をするように意識しています。新曲の「えろいむ」も映画「禁じられた遊び」の主題歌なので、映画の世界に合うように意識しながらレコーディングに臨みました。
笹川真生とのディスカッションで生まれた「えろいむ」
──「禁じられた遊び」の主題歌を担当することになったときの心境を教えてください。
お話をいただいたのが、あたしがちょうど友達と毎晩ホラー映画観賞会をやっていた時期だったんですよ。毎日夜に集まって、1、2本ホラー映画を観る会を2カ月くらいやっていて(笑)。そんな中でいただいたお話だったので、奇跡的なタイミングだと思いましたね。しかも主演が橋本環奈さんと重岡大毅さんという、あたしが大好きな方々だったこともうれしかったです。
──「えろいむ」の作詞作曲も、長らくタッグを組まれてきた笹川真生さんが担当されています。笹川さんとはどのような曲にしていくか相談はされましたか?
「禁じられた遊び」はホラー映画ですから、メロディや歌で怖さを醸し出すことは必須だと考えていました。ですが、真生くんから「不気味に歌うのではなく、あえて幼さを出して歌ってみたらどうだろうか?」というアイデアが出てきたんです。
──それはなぜ?
重岡さんが演じる主人公・伊原直人の息子として、春翔という子供が登場するんです。彼は不思議な能力を持っていて、ちょっと怖いんですね。でも、春翔くんは純粋にお母さんのことを思っているし、愛している。そんな気持ちを歌として表現したら作品とマッチするように感じたからです。その方向性であたしと真生くんの意見が合致してからレコーディングが始まったんですが、歌詞を読むとまさに春翔くんの願いを感じられて。彼に寄り添うように歌おうと決めました。
──「えろいむ」を聴くと、アグレッシブなメロディラインと、理芽さんのかわいらしい歌い方が相反していて、ある種の不気味さを生み出しているように感じました。
それがあたしたちの狙いだったので、そう受け取っていただけてうれしいです!
──レコーディングで特に意識したフレーズは?
「いつかそっと夏が死んでいきます 土に還るように」というフレーズは、感情を乗せずにまっすぐ歌うように心がけました。普段なら「死んでいきます」なんて歌詞があると切なく歌うことが多いんですけど、あえてさらっと歌うことで逆に怖さを感じさせることができないかと考えて。真生くんも賛成してくれて、そのフレーズは淡々とした歌い方にしました。これまでいろんな曲で真生くんと組んできましたけど、こんなことをしたのは初めてかもしれません。
「理芽の曲、いいよね」と思ってもらえたら
──「えろいむ」は理芽さんにとって初の映画タイアップです。スクリーンで自分の曲が流れることに対して、どのように感じていますか?
とっても緊張しています! 映画に寄り添いながら作ったので、果たしてあたしの解釈が皆さんにどう受け取られるのか……。反響が楽しみでもあり、怖くもありますね。でも、タイアップ曲であることは前提ですけど、「えろいむ」もあたしのオリジナル楽曲ですから、最後に「理芽の曲、いいよね」と思ってもらえるととてもうれしいです。
──映画の公開に先駆けて「えろいむ」の配信がスタートします。このインタビューを読まれている方々に、「ここを聴いてほしい!」というポイントを教えてください。
映画の中に「エロイムエッサイム」というフレーズが登場するんですが、それを曲の中にも入れています。直接的な歌詞ではなくささやくように入っているので、耳を澄まして聴き取っていただきたいですね。いつかライブでこの曲を歌うことになったら、あたしが曲名を言ったとき、皆さんに「エッサイム!」って返してもらうのも面白いかもしれません(笑)。
プロフィール
理芽(リメ)
クリエイティブレーベル・KAMITSUBAKI STUDIO所属のバーチャルシンガー。2019年のデビュー以降、幼い頃から学んでいたという英語を生かした洋楽ヒット曲のカバーを立て続けにYouTubeへ投稿し、多くの注目を浴びる。2019年12月発表の初のオリジナル曲「ユーエンミー」より、メインコンポーザーに笹川真生を迎えた作品をコンスタントにリリース。2020年1月にYouTubeで公開されたオリジナル曲「食虫植物」は4300万回再生を突破している(※2023年8月現在)。2021年5月に初のワンマンライブ「1st ONE-MAN LIVE『ニューロマンス』」を開催し、6月には1stアルバムNEW ROMANCER」を発表した。2023年8月には、橋本環奈と重岡大毅(ジャニーズWEST)がダブル主演を務めるホラー映画「禁じられた遊び」の主題歌「えろいむ」を配信リリース。
理芽 | ARTIST | KAMITSUBAKI STUDIO
理芽 - RIM (@RIM_virtual) | Twitter