音楽ナタリー Power Push - れをる

れをる×ギガ×お菊 盟友3人で新たなステージへ

「極彩色」は“区切り”のアルバム

──お菊さんはMVの制作だけでなく小冊子のデザインも担当していますが、こういう印刷物のデザインって今回が初めてだったのでは?

お菊 これまで動画ばっかりでしたから初めてでした。もうやりたくないかな(笑)。

れをる そんなこと言わないで(笑)。がんばっていこう。小冊子のデザインもギリギリまで何回も手直ししてたから。その甲斐あってすごく丁寧な仕上がりになっています。

「ロジックエージェント」MVのワンシーン。

お菊 そう! じっくり見てほしいです。

れをる ロゴとかも全部お菊の手描きなんですよ。

──初回限定盤B付属のブックレットでは動画の制作過程が説明されていますが、動画を作るときも手描きベースなんですね。

お菊 アナログ感のある動画が好きなんですよね。手描きのほうががんばった感じがするし。でも今回は小冊子にしろCDのジャケットにしろ、初めての経験が多かったからかなり大変で……。

れをる 印刷したら色味が変わったりするのを経験したことなかったから。

──専門外の部分をほかの方にお願いしようとは思わなかったんですか?

お菊 うーん……。ほかの人にやらせたくなかったから。

れをる 苦労した甲斐あって、今回は本当に3人で作ったと胸を張って言える作品が作れたと思ってます。

──お菊さんの本業であるMVにもいろいろ仕掛けがあると、ブックレットには書かれていました。

お菊 気付いてもらったらうれしいんですけど、気付いてほしくないところもあるというか……。実は「極彩色」のMVには、ギガちゃんが作って、れをる氏が歌って、私が動画を付けたこれまでの曲の一部分を入れてるんです。

──なぜ過去の作品を混ぜ込んだのでしょうか?

お菊 ここでひと区切りかなと私は思って。今回のアルバムは次に行くための作品だから。そういう背景があって「極彩色」のMVは思い出映像集みたいになればなって(笑)。

れをる お菊が「区切り」って言ったのは確かにそうなんです。今までは“歌ってみた”が一番やりたいことだったんですけど、ほかにやりたいことができちゃったなって感じていて。言いたいことを曲にできて、それを自分で歌って表現できたら幅が広がって誰だってそっちをやりたくなっちゃうと思うから。

お菊 なっちゃいましたね(笑)。

──“歌ってみた”のれをるさんとは一線を画したアルバムであることは、すでに公開されているMVやオフィシャルサイトでの告知でリスナーにも伝わっていると思いますが、ファンからの反応っていかがですか?

れをる いろいろですね。あえて“ニコ動っぽさ”を抑えてるのもあって、賛否両論あるとは最初からわかってたんです。詳しく追いかけたりしてないけど、中には「期待してたのと違う」って言う人もいると思うんです。でも、何か一歩踏み出したときって最初はみんなそうだから。いい意味で期待を裏切っていきたいんです。いつまでも同じことをやってても前に進めないから、これからもどんどん新しいことをやっていこうと思ってます。

裏のボスはお菊

──ちなみにプライベートでの皆さんってどういう関係性なんですか? インタビューをしている感じだと、れをるさんがしっかり者で仕切り役という印象ですが。

お菊 私生活でのれをる氏はね、急に子供みたいになったりするんですよ(笑)。

ギガ こういう場ではしっかりしてるんだよね。

れをる 「オンとオフの差が激しい」ってギガちゃんに言われますね。インタビューとかになるとしっかり話すんだけど、3人でいるときはたぶん一番意味わかんないことしてる。

お菊 「お腹痛いー」って言ってずっと丸まってたりする(笑)。

れをる だってお腹痛かったんだもん(笑)。

ギガ ずっと丸まってた。

「ロジックエージェント(Reol Silhouette ver.)」MVのワンシーン。

れをる 2人の前だと安心するんですよ。でもそれ以外は、“カッコいいれをる”でありたい。2人は外に出てもポワーっとしたままだから「私が守らないと」みたいに思ってます。

お菊ギガ ふふふ……(笑)。

──お菊さんとギガさんが考えるれをるさんの魅力ってどういうところですか?

ギガ 人を引っ張っていく能力がすごいなって思ってます。自分1人だったら何もできなかったかもしれないけど、一緒にやってきたから今回の「極彩色」みたいな作品も作れたし。

お菊 意識が高いところかな。なんでも妥協しないし。声ももちろん魅力的だよね。

──この質問、順番に聞いていこうと思うんですけど……。

れをる すごく照れますね。あんまり改まってこういうこと言わないから(笑)。

──れをるさんが思うギガさんの魅力は?

れをる やっぱり耳がものすごくいいんですよ。普通の人に聞こえてない音も聞こえてるんじゃないかってぐらい。

お菊 ギガちゃんってちょっと天才っぽいところもあるよね。

れをる あるある。音を選ぶときも直感的に決めるから判断が早いし、何よりもそれがハマってるからすごい。だからってお高く止まってるわけじゃなくて、自分の技術をひけらかさないところが素敵だなって。

お菊 こだわるところは本当にとことん追求するから、それがすごいなっていつも思ってますね。ちゃんと人の意見も取り入れるけど、譲れない部分はとことんがんばってる。偉いと思う。

れをる ギガちゃんは偉い!

──最後、お2人にお菊さんのいいところを語っていただければと思います。

お菊 ホラ、いいこと言って。

ギガ 曲の中で目立たない音を拾ってくれて、その音に合わせて動画を作ってくれたりするのがうれしくて。音に合わせて絵が動くと、目立たない音も聞こえてくるような気がするんですよね。だからより曲を引き立たせてくれるんです。

れをる お菊は3人の中で一番情熱的というか、アツい人なんですよ。

お菊 え、そう?

れをる 例えば私が2人に何かを愚痴ると、お菊は「ちょっと殴りに行くよ」みたいに言ってくれて(笑)。

──男らしいですね。

れをる しかもアツいだけじゃなくて、普段は一番冷静に見ている一面もあって。私が「こういうことしたい、ああいうことしたい」って言うと、ギガちゃんは「うんうん」って頷いてくれる。でもお菊は「これは、いいと思う」「それはダメだと思う」みたいな感じで冷静に判断してくれるんですよね。いろんなことについて、お菊が最終判断を下すというか、裁判長みたいな感じになってる。

ギガ 裏のボスだよね。

れをる そう(笑)。実はお菊が裏のボスなんです。

──3人が技術的に異なるスキルを持っているだけでなく、性格的にも3人が違うものを持っていて支え合ってる部分があるんですね。

れをる 4人だったら考えを共有できなくなると思うし、2人だったら止める人とか引っ張っていく人がいなくなっちゃう。だから3人がベストだなと思ってますね。

れをるは広告塔

──アルバム発売後にはワンマンライブの開催も決定していますが、れをるさんがワンマンでライブをするのって今回が初めてですよね?

れをる ずっとワンマンライブをする頃合いを見計らってたんです。自分の中での構想がまだまとまってなかったというか。どういうライブにしたいか試行錯誤してたところもあったし、力量不足だとも思ってたし。

「ロジックエージェント(Reol Silhouette ver.)」MVのワンシーン。

──今回はもろもろの準備が整ったからこそ、実施するライブであると。

れをる それもあるし、タイミングが一番いいなと思って。今回のソロアルバム発表のタイミングしかないだろうとは思いました。

──この日のライブはどんなライブになりますか?

れをる ライブタイトルになってる「High Fidelity」って、“高再現度”って意味なんです。だから「極彩色」のアルバムをどれだけハイクオリティに見せるかってことに特化したライブにしようと思ってます。でも今回のライブは私にとっても区切りになるかなと思ってるから、アルバムの曲だけじゃなくて、今まで発表してきたカバーもセットリストに組み込んで。

お菊 第2章みたいな感じだよね。

れをる そう。章の終わりと、新しい章の幕開けをライブでやります。

──お菊さんとギガさんも、もちろんライブに関わってくるわけですよね。

お菊 そうですね。私はライブ用に映像を作る予定です。ギガちゃんは?

ギガ マニピュレーターみたいなことを。

れをる その場でボーカルの声を加工する「リアルタイムオートチューン」っていう装置があるんです。それをギガちゃんにやってもらえないかなって、今は試行錯誤してます。

──ライブも3人全員が取り組むライブになるということですね。

れをる 傍から見たら私が主役に見えると思うんですけど、“れをる”は単なる広告塔なんです。私が表に立つことで2人の活動をもっとよく見てもらいたいし、作品に触れてもらえれば3人とも主役なのがわかるから。今後も目を離さないで欲しいなと思います!

ニューアルバム「極彩色」 / 2015年7月29日発売 / Victor Entertainment
初回限定盤A [CD+DVD] 3240円 / VIZL-850
初回限定盤B [CD+ブックレット] 3240円 / VIZL-851
通常盤 [CD] 2484円 / VICL-64391
CD収録曲
  1. -nil-
    [Music:ギガ]
  2. 極彩色
    [Music & Arranged:ギガ / Lyrics:れをる]
  3. 生命線
    [Music & Lyrics / Arranged:L.Petty]
  4. 水底游歩道
    [Music & Lyrics / Arranged:かめりあ]
  5. ハルシアン
    [Music & Lyrics:れをる / Track:ギガ]
  6. ロジックエージェント
    [Music & Lyrics / Arranged:niki]
  7. -orderly-
    [Music:ギガ]
  8. mede:mede
    [Music & Lyrics:れをる / Track:ギガ]
  9. Syrup
    [Music & Lyrics / Arranged:monaca:factory]
  10. ラ・タタン
    [Music & Arranged:ギガ / Lyrics:れをる]
  11. ミッドナイトストロウラ
    [Music & Lyrics / Arranged:EZFG]
  12. Behind The Night
    [Music & Lyrics / Arranged:takamatt]
  13. ROXY
    [Music & Arranged:ギガ / Lyrics:れをる]
  14. 約束の蒼
    [Music & Lyrics / Arranged:やいり]
  15. MONSTER
    [Music & Lyrics / Arranged:梅とら]

  16. [Music & Lyrics:れをる / Arranged:ギガ]
初回限定盤A DVD収録内容
  1. 極彩色 Music Video
  2. ロジックエージェント(Reol Silhouette ver.) Music Video
  3. 極彩色制作メイキング
れをる「れをる単独公演 極彩色High Fidelity 東の宴」

2015年10月23日(金)東京都 TSUTAYA O-EAST
OPEN 17:30 / START 18:00

れをる

ニコニコ動画やYouTubeといった動画共有サイトを中心に活動する女性ボーカリスト。2012年に投稿した楽曲「ギガンティックO.T.N」では作曲をギガが、作詞と歌をれをるが、動画をお菊が担当。同曲は“歌ってみた”“踊ってみた”をはじめとしたさまざまな二次創作動画が作られ、その知名度を一気に広めた。その後も「+♂」「No title」などれをる、ギガ、お菊の3人が制作に携わった動画を多数投稿し、人気を集めている。2015年7月には1stソロアルバム「極彩色」をリリース。また10月には東京・TSUTAYA O-EASTにて1stワンマンライブ「極彩色High Fidelity 東の宴」を開催する。