レキシ|その時「ムキシ」が動いた 6thアルバムを紐解く6つのエピソード

【弐】バンドメンバー

──今回のレコーディングも基本はいつものバンドメンバーで?

ほぼ、そうだね。蹴鞠Chang(玉田豊夢 / Dr)、ヒロ出島(山口寛雄 / B)、俺の3人でアレンジの基盤を作って。いつも本当の基盤の基盤は3人でリハに入って作ってる。そこにギターの健介さん格さん(奥田健介)やDA小町(町田昌弘)にたまに入ってもらったり。

──今回、アルバムを通してソウルやファンクの匂いを感じる楽曲が目立っていて。6作目にして、改めてブラックミュージック寄りに戻ってきてる印象を受けました。

そうだね。そこは意識したかな。いろんなところでレキシは「ファンク、ファンク」ってすごい言われるから。「日本史をファンクに乗せて」とか。俺が一番それに違和感を感じてたから(笑)。この曲はファンクじゃないからって。

──特にここ数年は、あえてブラックミュージックから距離を置いた曲も多かったですしね。

そういうのもあったから、ここでもう一度、ちょっとブラックミュージックっぽい感じに寄せようっていう気持ちはあったかもね。でも、そう意識して曲を作ったというよりは、できた曲の中から、そういうタイプのものを集めたっていうほうが正しいかも。

──「奈良に大きな仏像」とか、もろカーティス・メイフィールドって言うか。70年代のブラックスプロイテーション映画の主題歌みたいなカッコよさがありますね。

ちょうどそのとき俺の中でスティーヴィー・ワンダーが流行ってて。それを蹴鞠Changとヒロ出島に伝えて。あの2人はそのへんすごい聴いてるから、転調の具合とか、いっぱいアイデアを出してくれて。俺が「次のメロは、こういうところに行きたい」って言ったら、すぐにぴったりくるコードを当ててくれたり。そういう意味で言うと、本当に“バンド”なんだよね。3人でバンドやってる感じがすごくある。

──アルバムの冒頭を飾る「なごん」は、「yes! 清少納言!」ってフレーズが最高です。

ははは。実はこの曲、2、3年前ぐらいにできてたの。最初のフレーズだけリハですぐできたんだよね。そこからメロを先行させちゃったのがよくなかった(笑)。それはなぜかって言うと、俺が曲に合う歌詞を書けなかったから。だけど、この曲はずっと気に入ってて、アルバムに入れたいなと考えてた。今回、足軽先生とミーティングしてるときに、先生が「清少納言って元祖サブカルだよね」ってアイデアを出してくれて。他人があんまり好きって言わないものを、作品を通じて「好き」って初めて日本で言ったのが清少納言じゃないかって。その話を聞いてすぐに歌詞のイメージが湧いた。「好きなものは好きと 胸はって言えるなら」っていうフレーズにつながって、歌詞がやっと書けたんだよ。

【参】アルバムタイトル

──レキシのアルバムは、毎回タイトルが通算の枚数にかかってますよね。

レキシ「ムキシ」ジャケット

5作目の「Vキシ」が出た直後から、次は「レキシックスですか?」とか、「レキロク」「レキム」って、勝手に予想されて。実際、最初は「レキシックス」ってタイトルだったんだよね。表記は「レキ6」で。でも実際に書いてみたら、「6」を筆で書くのが難しい! 6の下の部分のマルを小さくきれいに書くのが思いのほか書きづらくて、時間がかかることに気付いたんだよね。そしたら「手書きで1万枚書くのは無理や!」ってことになり、その場で「ムキシ」に変えた(笑)。そう言えば、最近になって「レキシ」「レキツ」「レキミ」ってタイトルが続いてることに、「えっ!? これってアルバムの枚数とリンクしてたの?」って気付く人が意外と多いってことが判明して。俺からしたら「え、気付いてなかったの?」みたいな(笑)。それにはけっこうびっくりしたね。

【四】手書きジャケット

──毎回、初回限定盤は池ちゃん自身が手書きでジャケットに文字を書いていますが、今回は何枚手書きしたんでしたっけ?

16666枚目の手書きジャケット。

16666枚。前回は一休さんのコスプレをしたから、それに引っ掛けて11930枚だった。だから5000枚増えたんだよね。大体、2500枚くらい書くのに、1日かかるの。昼の1時から始めて、晩飯ぐらいまで書いたとして、2500枚。ヘトヘトですよ、もう。腕は疲れるし、背中も痛くなるし……ハンコ押す人、並べる人とか、いつも作業するときには4、5人いるんだよね。それでワイワイやってるときはいいんだけど、何回か“魔の時間”が訪れる(笑)。みんなが黙って、部屋がシーンと無音になるの。これ、ふとした瞬間にケンカになるんじゃないかって(笑)。俺が軽く舌打ちしただけで、殴り合いに発展するんじゃないかっていうぐらいピリピリしててさ。

──スタッフからしたら「お前、誰のために手伝ってると思ってるんだ?」ってことですもんね(笑)。

16666枚のジャケットと写真に収まるレキシ。

そうそう。自分自身も「なんでこれやってんだろう?」って思うもん。毎回思う。でも、不思議なことに、目標枚数に近付いてもうすぐ終わりってなってくると、ちょっと寂しいの(笑)。ほんと、びっくりするんだよねー。で、また新たに書き出すときは、「なんでこれやってんだろう?」って思う(笑)。あれは不思議な感覚なんだよね。そう言えば、この間、直筆のジャケットを16666枚、体育館に全部並べて写真に撮ったんだよ。今まで書いてるやつ、全部映像でも記録してあって。それは「SEGODON」のミュージックビデオになる予定。

──それは壮観です。

ちなみに今回、世界新記録を狙おうと思って、ガチでギネスとやり取りしたんだけど断られました(笑)。そのカテゴリー無理って(笑)。

──ギネスって意外となんでも世界記録になるかと思ったら。

あっさり断られた。1回も休まず、飲まず食わずで書き続けるとかだったらいいらしいんだけど、休み休みじゃダメとか、違う言葉を書いたらダメとか。で、結局、挑戦すらさせてもらえなかった(笑)。まあ規則通りにやっても、俺らが初めにやりたかったことと変わってきちゃうから。だから心のギネスブックに記録されればいいやって。

【五】コスプレ

──レキシはアーティスト写真を撮るたびに、歴史上のいろんな人物のコスプレをしてますが、今回のテーマは石川五右衛門でした。

目玉のおやじのコスプレで九十九里浜を走るレキシ。

「S & G」のアー写を撮ったときに、「ゲゲゲの鬼太郎」の目玉のおやじをやって。いつも帝国ホテルの写真館で撮ってもらってたんだけど、そのコスプレで九十九里浜に行って撮ってみたら、「あー! こっちだったか!」と気付いてね。「ガワじゃなくて、シチュエーションだったか!」と。なので今回、写真館で撮るっていうコンセプトを外して考えてみて。その中で、「蜷川実花さんに撮ってもらったらどうだろう?」っていうアイデアが出た。ダメ元で蜷川さんにオファーしたら、息子さんがレキシを聴いてくれてるみたいで。それでOKになったんだよね。

──石川五右衛門っていうコスプレのテーマは最初から決めてた?

蜷川実花の撮影による最新アーティスト写真。

そうだね。蜷川さんだったら五右衛門の世界観が合うかもって話になって。歌舞伎者っていうイメージも、蜷川さんの世界観とマッチしそうだし。今回はちょっとアーティスティックな感じにしたら、さらに馬鹿馬鹿しくなるんじゃないかなと思ったんだけど、実際に蜷川さんに撮ってもらったら、馬鹿馬鹿しくならずに、きちんとアーティスティックになった。蜷川さんのカラーの強さを、改めて知らされた感じだったね。

【六】ライブ&ツアー

──「ムキシ」の収録曲で、池ちゃん自身がライブ映えしそうだなって思うのはどの曲ですか?

毎回曲を作るときはライブで演奏することを考えて作ってるから、全部と言えば全部かな。逆に言うと、ライブ映えしそうだなと思ってるけど、そうじゃなかったらどうしようと思ってる曲はある(笑)。でもまあ変な話、ライブはライブだから、それこそアレンジなんかガラっと変わっちゃう。それはほとんど全部の曲がそうだよね。レキシの初期に作った、「きらきら武士」も「狩りから稲作へ」もレコーディングしたときのアレンジとは、いまや全然違うんだから。しかも、ライブをやるたびに毎回変わっていってる。

2017年10月10日に東京・日本武道館で行われたワンマンライブ「不思議の国の武道館と大きな稲穂の妖精たち ~稲穂の日~」の様子。(撮影:田中聖太郎)

──確かに「きらきら武士」のオリジナルバージョンと、「KATOKU」に収録されたライブバージョンを聴き比べると全然違いますもんね。

そうなんだよ。全然違うでしょ? ライブはライブだって思ってるから、それは当然変わってくるよね。

──今回の収録曲で言うと、「SAKOKU」なんかはライブですごく変化しそうで楽しみです。

確かに。さらに言えば、どう変化するかなっていうのも未知数だよね。それはネタにもよるし。いきなり全部朗読になったりね。ちょっと高めの椅子に座って、アナウンサーがやってる朗読劇的なやつをやってみたりとか。

──「ラブレターズ」的な。横浜アリーナでやることではないかと思いますが……それはさておき、11月にスタートする全国ツアーはどんな内容になりそうなんですか?

まだ何も決まってない。今回は、なるべくオールマイティに対応できる、どうとでも取れるようなタイトルにしようって話になって。それで「レキシ TOUR2018 まんま日本ムキシばなし」にしたんだけど。今少しずつ構想を練ってるところです。

──前回のシングルにも「BANASHI」という、創作の昔ばなしを池ちゃんが朗読するだけの曲が入ってましたし。それも関連してくる?

2017年10月10日に東京・日本武道館で行われたワンマンライブ「不思議の国の武道館と大きな稲穂の妖精たち ~稲穂の日~」の様子。(撮影:田中聖太郎)

ちょっと絡められるかもね。ただ、「BANASHI」がどれくらいファンの間で浸透してるかもあるじゃない。あるいは「ゲゲゲの鬼太郎」に寄せて、でっかい墓がステージのど真ん中にあるとか(笑)。今まででっかい埴輪、仏像ときてるから、次は墓だよ。横浜アリーナにでっかいお墓があって、パカーンって開いて、墓の中から俺が出てくる。

──おっ、ちょうど映画「カメラを止めるな!」も流行ってますし。

いいね、ゾンビ。やっぱりそっちだな。うん、決まってきたわ! 昔ばなしとは、どんどん関係なくなってきてるけど(笑)。

レキシ「ムキシ」
2018年9月26日発売 / 伽羅古録盤
レキシ「ムキシ」手書きジャケット付き初回限定盤

手書きジャケット付き初回限定盤 [CD+DVD]
4104円 / VIZL-1440

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レキシ「ムキシ」通常盤 [CD+DVD]

通常盤 [CD+DVD]
4104円 / VIZL-1441

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レキシ「ムキシ」通常盤

通常盤 [CD]
3240円 / VIZCL-65054

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CD収録曲(初回限定盤 / 通常盤 共通)
  1. なごん
  2. GOEMON feat. ビッグ門左衛門
  3. GET A NOTE ~下駄の音ver.~
  4. 出島で待ってる
  5. TAIROW ~キミが目指してんのは~ feat. カモン葵
  6. KATOKU
  7. SEGODON
  8. 奈良に大きな仏像
  9. SAKOKU feat. オシャレキシ
  10. マイ会津 feat. 足軽先生、シャカッチ
DVD収録内容
  • バラエティー風ドキュメンタリー番組「レキシどうでしょう~稲じゃなくていいねが欲しい~」
ツアー情報
レキシ TOUR2018 まんま日本ムキシばなし
  • 2018年11月7日(水)北海道 旭川市民文化会館 大ホール
  • 2018年11月8日(木)北海道 わくわくホリデーホール
  • 2018年11月15日(木)岩手県 盛岡市民文化ホール
  • 2018年11月16日(金)宮城県 仙台銀行ホール イズミティ21
  • 2018年11月19日(月)東京都 中野サンプラザホール
  • 2018年11月21日(水)群馬県 桐生市市民文化会館
  • 2018年11月29日(木)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
  • 2018年11月30日(金)広島県 上野学園ホール
  • 2018年12月4日(火)神奈川県 神奈川県民ホール
  • 2018年12月5日(水)神奈川県 神奈川県民ホール
  • 2018年12月10日(月)香川県 サンポートホール高松
  • 2018年12月12日(水)熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
  • 2018年12月13日(木)福岡県 福岡サンパレス
  • 2018年12月17日(月)兵庫県 神戸国際会館
  • 2018年12月18日(火)京都府 ロームシアター京都
  • 2018年12月20日(木)千葉県 市川市文化会館
  • 2018年12月23日(日・祝)石川県 金沢市文化ホール
  • 2018年12月26日(水)静岡県 静岡市民文化会館 中ホール
レキシ TOUR2019 まんま日本ムキシばなし
  • 2019年1月22日(火)神奈川県 横浜アリーナ
  • 2019年1月23日(水)神奈川県 横浜アリーナ
  • 2019年2月6日(水)大阪府 大阪城ホール
レキシ
レキシ
1974年福井県生まれの池田貴史によるソロプロジェクト。池田は1997年にSUPER BUTTER DOGのキーボーディストとしてデビューし、2004年からは100sのメンバーとしても活躍。その日本史マニアぶりを生かし、2007年にレキシとしての1stアルバム「レキシ」を発表した。2011年3月に2ndアルバム「レキツ」、2012年12月に 3rdアルバム「レキミ」をリリース。2014年6月に4thアルバム「レシキ」を発表した。同年8月には初の日本武道館公演を開催。12月には上原ひろみを迎えた東名阪ツアーを実施した。2015年9月には青森・三内丸山遺跡でのワンマンライブを成功させる。同年11月25日に、初のシングル作品である「SHIKIBU」を発表。2016年6月に5thアルバム「Vキシ」をリリース。2017年4月にはニューシングル「KATOKU」を発売する。同年10月には大阪・大阪城西の丸庭園にて初の野外公演、東京・日本武道館で初の2DAYS公演を実施し、それぞれ成功に収める。2018年1月に放送が開始されたNHK大河ドラマ「西郷どん」のパワープッシュソングに新曲「SEGODON」を提供。4月には地元福井県鯖江市で凱旋となる野外公演を開催した。5月にリリースされた椎名林檎のトリビュートアルバム「アダムとイヴの林檎」に参加し、「幸福論」をカバー。2018年7月に初の両A面シングル「S & G」を発表した。同年9月に6thアルバム「ムキシ」をリリース。