音楽ナタリー Power Push - リフレクト・リフレイン

「愛は止められない」で描いた新たなスタート

NHK BSプレミアム特集ドラマ「クロスロード」の主題歌「愛は止められない」を担当した4人組ロックバンドのリフレクト・リフレインが、1stフルアルバム「愛は止められない」をリリースした。世代で括られることに対する憤りを表現した「世代」、1980年代のディスコサウンドをモチーフにした「スキャンダラス」などを収録した本作は、岩田耀介(Vo, G)の骨太でストレートな歌、ノスタルジックな雰囲気を感じさせるバンドサウンドを軸にした作品に仕上がっている。音楽ナタリーではメンバー4人にインタビューを実施。バンドの成り立ち、懐かしさを感じさせる音楽性の源泉、アルバム「愛は止められない」の制作などについて話を聞いた。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 西槙太一

自然にできる曲が自分の個性

──1stフルアルバム「愛は止められない」は“王道の歌モノ”という言葉がぴったりの作品だと思います。まずはバンド結成の経緯について教えてもらえますか?

岩田耀介(Vo, G)

岩田耀介(Vo, G) 4人共同じ音楽の専門学校に通っていて、僕は元々シンガーソングライターを目指していたんですけど、先輩のバンドを観たときにバンドのグルーブ、一体感に魅せられ、バンドをやりたいと思って、ベースの田丸(将貴)に声をかけたんです。田丸はもともとヴィジュアル系が好きで……。

田丸将貴(B) 音楽に興味を持ったきっかけがNIGHTMAREだったんですよ。あとはthe GazettE、アリス九號.(現A9)とか。 

岩田 僕はヴィジュアル系を全然聴いたことがなかったんですけど、話してるうちにお互いにYUIを聴いていたことがわかって、“歌モノが好き”というところで意気投合したんですよね。あと「将来はアリーナツアーをやりたい」「俺も」という話もして。

田丸 実は(岩田からの誘いを)1回断ったんですけど、岩田は良い曲を書いていたし、シンガーソングライターを目指していた彼と一緒にバンドをやるのも何か得るものがあるかなと思って。

岩田 その後、外山を誘って、外山から西野入につながって。

外山諒太(Dr) かなり強引に誘われましたけどね(笑)。岩田の曲を聴いたのは初めてスタジオに入ったときだったんですけど、そのときに「面白いな」って思ったんですよ。「味噌汁」というタイトルの曲があったり。

──外山さんも歌モノが好きだったんですか?

外山諒太(Dr)

外山 そうですね。両親が趣味でサザン(サザンオールスターズ)やミスチル(Mr.Children)のコピーバンドをやってて、僕も小さいときから自然と聴いていたので。あるとき両親に「ドラム、カッコいいな」って言ったら、すぐにドラム教室に通うことになって(笑)。

西野入亮太(G) 僕はもともとONE OK ROCKみたいなバンドがやりたくて上京したんです。田丸と同じで「シンガーソングライターと一緒にやるのも学ぶことがあるかな」と思って参加したんですけど、やってるうちにどんどん楽しくなってきたんですよ。岩田の曲がよかったし、歌詞もストレート過ぎるくらい直球で。

岩田 真っ直ぐな歌を書こうと思っていたわけではなくて、自然とそうなったんですけどね。頭が悪いのか(笑)、ストレートな言葉しか書けなかったので。それがメンバーに響いてくれたんだと思います。

──岩田さんはシンガーソングライター系が好きだったんですか?

岩田 そういうわけでもないんですよ。高橋優さんはよく聴いてましたけど。

西野入 TVアニメ「バクマン。」のエンディングテーマ(「現実という名の怪物と戦う者たち」)とかね。

岩田 そうそう。でも、シンガーソングライター系だけではなくて、ミスチルも聴いていたし、外山と同じで、親が聴いていたサザンも好きで。ゴリゴリのロックバンドというよりも、やっぱり歌モノに惹かれるんですよね。最近のバンドの曲よりも、昔の歌謡曲のほうが身近に感じるというか。それは自分が作る曲とか、出て来るメロディにも自然と入っているかもしれないですね。

──確かに昭和っぽい雰囲気がありますよね、リフレクト・リフレインの音楽には。

岩田 いつもそう言われるんですけど、特に意識しているわけではないし、狙って作ってるわけでもないんです。だから、ちょっと不思議なんですよね。「ジュリー(沢田研二)を感じました」とか言われると。

西野入 「昭和のアニメソングを聴いている気分になりました」とか(笑)。

岩田 「あ、そうなんだ?」という感じなんですよね、自分たちとしては。

──今のバンドシーンの潮流はラウドロック系、エレクトロ系、シティポップ系あたりだと思いますが、どこにも属してないですからね。

岩田 全然違いますね(笑)。以前は「ミクスチャーみたいな感じの曲を作れたらいいのにな」と思ってたこともあったんですけど、そのうちに「自分の強み、自分が作れるのはそっちじゃないな」と思って。今は自然にできる曲が自分の個性だと思ってるし、それを生かしていきたいんですよね。ただ、ライブハウスで対バンするときに、同じようなジャンルのバンドがいないのはちょっと困りましたけど。

田丸 周りにはラウド系のバンドが多かったんですよ。

岩田 だから、どこでライブをやっても浮いちゃって(笑)。ずっと渋谷を中心にライブをしているんですけど、対バン相手に関しては、いろいろ考えてますね。

ゆとり世代に括られた反骨心を演奏で出している

──これだけストレートに歌を打ち出しているバンドは、今のシーンの中ではかなり稀だと思います。例えば、アルバムのタイトル曲「愛は止められない」には、途中で“語り”が入ってますが、これはどういった経緯で?

岩田 あれは西野入が言い出したんですよ。「間奏に言葉を入れてみたら?」って。

西野入亮太(G)

西野入 ギターソロのあとに、何か語りがあったら面白いかなって。

岩田 そう、最初は面白半分というか、遊び心だったんですよ。でも、そのうちにここまでやり切ってしまって。聴いてくれた方々にも思いがけず注目してもらっていて、よかったです(笑)。「愛は止められない」はもともと、シャワーを浴びているときにフッと思い付いたフレーズがもとになってるんですよ。その頃Superflyさんの「恋する瞳は美しい」が好きで、自分でもあんな感じの曲を作ってみたいと思っていたときに「愛は止められない」というメロディと言葉が浮かんできて。「これはカッコいいんじゃないか!?」と思ってすぐに形にしたんですよね。結局「恋する瞳は美しい」とは全然違う曲になってますけど。

──ほかの男性と付き合っている女性に対する気持ちを止められない男性を描いている歌ですが、これは岩田さんの実体験なんですか?

岩田 僕の体験ですね(笑)。「雨つぶ」(別れた彼女への思いを綴ったノスタルジックなミディアムチューン)もそうですけど、自分の物語を歌にすることが多いので。

──岩田さんが作る歌の背景は、メンバーの皆さんも知ってるんですか?

外山 はい、もちろん。どんなことがあって、その曲ができたかは全員知ってると思います。(岩田が)思い入れの強い曲は、演奏に対する指示もはっきりしてるんですよ。「ここはこういうイメージで」というのをメンバーの間で統一してから演奏するので。例えば「夜の公園で2人がしゃべってる感じ」とか。

田丸将貴(B)

田丸 「雨つぶ」のときは「ノスタルジックで寂しい感じ。でも、ちょっと熱い気持ちもあって」みたいなことを言ってました。フレーズに直接関わるというより、「こういう気持ちで弾いてほしい」ということですね。

岩田 ライブのときも言いますね。「この歌詞を歌ってるとき、下を向いて弾かないでくれる?」とか。弾いているときの目線とか姿勢からにじみ出てくるものもあると思うんですよ。特に歌モノの場合は、そこが大事なんじゃないかなって。音だけではなくて、歌詞、その中にあるイメージを関連付けて曲を作ってる感じですね。

──なるほど。「世代」は強いメッセージが伝わってくるナンバーです。普段思っていることをそのまま曲に結び付けるのも、リフレクト・リフレインの特徴かもしれないですね。

岩田 そうですね。反抗してるんだけど上手に怒れない感じですかね。バブル世代とか“○○世代”っていろいろあるじゃないですか。僕らはゆとり世代に括られてますけど、「自分は自分。決め付けてほしくない」という気持ちもあって。そういう反骨心を4人の演奏で出せた手応えはありますね。

──そういう反骨心も全員で共有している?

西野入 普段からそんな話をしているわけではないですけど、「見てろよ」という気持ちはありますね。東京に出て来るときに、高校の先生に「東京に行って音楽の専門学校に入って、将来、何になるつもりだ」って言われて。そのときも「見返してやる」って燃えたぎってましたから。高校の頃って、頭から「ダメだ」って押さえ付けられたら、なかなか言い返せなかったりするじゃないですか。自分の度胸がなかっただけかもしれないけど、反骨心というか、心の中にたまっていた気持ちはずっとあったので……。それをこの曲で放出した感じですね。

岩田 ずいぶんためてたね(笑)。「世代」はライブでやるのも楽しみですね。同世代の人たちと気持ちを分かち合えたらいいなと思うし、違う世代の人たちが聴いて、どう感じるのかも知りたいので。

1stアルバム「愛は止められない」2016年12月21日発売 / 2160円 / Robby Records / RP-30001
「愛は止められない」
Amazon.co.jp
収録曲
  1. 愛は止められない(rock version)
  2. 世代
  3. チャンスの足音
  4. 雨つぶ
  5. Pinball Game
  6. スキャンダラス
  7. LOVE 不眠SHOW
  8. 君だけは…
  9. 愛は止められない(acoustic version)
全国ツアー「愛は止められない」(※終了分は割愛)
  • 2017年1月14日(土)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2017年1月15日(日)埼玉県 Livehouse KYARA
  • 2017年1月16日(月)東京都 TSUTAYA O-Crest
  • 2017年1月18日(水)広島県 CAVE-BE
  • 2017年1月19日(木)福岡県 UTERO
  • 2017年1月22日(日)愛知県 SiX-DOG
  • 2017年1月24日(火)大阪府 梅田Zeela
  • 2017年2月5日(日)栃木県 宇都宮POP Garage
  • 2017年2月7日(火)宮城県 enn 2nd
  • 2017年2月12日(日)神奈川県 Thunder Snake ATSUGI
  • 2017年2月17日(金)東京都 TSUTAYA O-Crest
リフレクト・リフレイン
リフレクト・リフレイン

西野入亮太(G)、岩田耀介(Vo, G)、田丸将貴(B)、戸山諒太(Dr)からなる4人組ロックバンド。2014年11月に結成し、翌2015年3月にオリジナル曲でライブ活動を開始。ノスタルジックな雰囲気を持つ楽曲が特徴で、飾り気のない歌詞で“ありのままの現実”を歌う。2016年2月に舘ひろし、神田正輝出演のBS プレミアムTVドラマ「クロスロード」の主題歌に「愛は止められない」が決定し、3月に楽曲配信がスタート。同年12月に1stアルバム「愛は止められない」を発表した。2017年1月8日にアルバムを携えた全国ツアーをスタートさせた。