ナタリー PowerPush - RAM WIRE
鉄拳と語るパラパラマンガPV制作秘話
「名もない毎日」は誰にでも当てはまる曲
──先程からお話を聞いていると、4人が同じ気持ちを持っていたからこそ、こんなにも共感できるんでしょうね。
ユーズ そうですね。
鉄拳 それに、この「名もない毎日」って、誰にでも当てはまるんですよ。平凡な毎日だけど、そばに好きな人がいてくれるだけで、毎日が変わるんですよね。
ユーズ そうなんです。なんでもない人と過ごした時間が、あとで素晴らしい思い出に変わるんです。そのときには気付かないんですけどね。
──今思うと、良かったなって思う日はどんな日ですか?
鉄拳 僕は10年くらい前かな。生活は大変だったし、当時彼女と生活していた部屋も汚くて狭くて。いつか広くて綺麗なところに連れてってあげたいって思っていたんです。貧しかったですけど、彼女との生活は悪くなかったんですよ。あのときがあるから、今があるんだな、って思うんです。
ユーズ 優しい方なんですね。
鉄拳 そうですね!(即答) でも全然モテないんですけど!
RYLL でも、憧れますよ、その肩の針とか。
鉄拳 男子はね、この針だけに憧れてくれるんです(笑)。
RYLL いや、実は僕、10年ほど前の誕生日に鉄拳さんの「こんな○○は××だ」っていう本をもらったんです。それが大好きで。なので今日、お会いできてすごくうれしいんです。
──RYLLさん、実は普通に……。
RYLL ファンですね!(笑)
──あはは(笑)。でも、だとしたら10年前、すごく苦労していたときの本を今でも大事にしている人がいるというだけでうれしいことですよね。しかも今、一緒に仕事をしているという。
鉄拳 人生は導かれているんだなって思いますね。
RAM WIRE おおおおおお!
鉄拳 は、恥ずかしいですね(笑)。
夢への挫折がリアルに描かれていて共感できるんです
──では、このパラパラマンガビデオクリップの見どころを教えてください。
鉄拳 まずは、これがパラパラマンガだということを頭に入れて観てほしいです。すぐに内容や素晴らしい歌に意識が行きがちですが、なんというか、こう……。
──苦労を知ってほしいと。
鉄拳 そう! 大変なんです、本当に! 内容はその次です(笑)。パラパラマンガなので雑な部分や観にくい面もあると思いますが、これはパラパラマンガなので! 1500枚描いたことをぜひ、念頭に置いて観てもらいたいです(笑)。あとは、一度観ただけではわからない伏線を散りばめたので、何度も何度も観てもらいたいですね。あとは僕が隠れているので、ぜひ見つけてもらいたいです。
ユーズ ビデオクリップでは夢への挫折がすごく丁寧に描かれていて、気持ちがわかるんです。部屋の隅っこに膝を抱えて座っていたり、自暴自棄になったり……。でもそんな姿をしっかりと優しい顔で見ている彼氏が素敵すぎて……。
鉄拳 実はあのシーン、何度も何度も描き直したんですよ。大切な人を見守る表情ってどんななんだろうと思って、何度も描き直したので、そう思ってもらえるとうれしいですね。そのほかにもたくさん描いたんですけど、まあここもカットされて。
──なんかすごい恨みを感じますね……(笑)。
鉄拳 いやいや(笑)。いつか完全版を見てもらいたいですね。
ユーズ あとは、気持ちの描写がすごく繊細ですよね。
RYLL 僕らも切なさや、気持ちの機微をテーマとして作っているので、通じる部分があったよね。
ユーズ そう! すごくわかり合える気がしました。そして案の定、ここまで共感できるビデオクリップができたので、感動しているんですよ。
MONCH 僕が一番感動したのは、2番の部分です。どんなに理不尽なことがあっても、家に帰ると愛する家族がいて、そのためにがんばれるというシーンが最高なんです。
RYLL 楽曲としては、どこが聴きどころというのではなく、1曲を通して聴き終えたあとに気持ちの変化があったらいいなと思うんです。ビデオクリップでは、本当に大変な思いをして1500枚を描いてくださってるので、その手作りの大変さと、温かさを感じてもらえたらと思いますね。
──ちなみにこの曲が収録されるミニアルバム「名もない毎日」は、どんなアルバムに仕上がっているんですか?
ユーズ この曲が全てを物語っているんですが、やはり身近な人に支えられているということを実感してもらえたらいいなと思います。全ての曲に変わらないメッセージがつめこまれているので、そこが心に響いたらうれしいですね。
僕の顔はメイクではなく、念写です!
──では最後に、音楽以外のことでお互いに訊いてみたいことはありますか?
RYLL 僕は鉄拳さんのファンなので大体のことは知っているんですが、何よりも気になるのが移動手段なんですが……。
ユーズ そのメイクはどのタイミングでしているんですか?
鉄拳 いや、そもそも、これはメイクではないんですよ。生まれつきです。
──その状態で生まれたんですか?
鉄拳 そうです。おでこの文字は浮かび上がってくるんですよ。そのとき考えていることが出てきちゃうんです。
MONCH 色も変わりますよね。子供番組などで変わっているのを見たんですが……。
鉄拳 子供の期待に応えるため、がんばって念写するんです。
ユーズ 念写! じゃあ「今変えて!」って言ったらできるんですか?
鉄拳 できますよ! ただ30分くらいの時間と、お湯とタオルさえあれば(笑)。
RYLL 帰りはどうするんですか?
鉄拳 人間の念写をするんですよ。まあ、バレないですね(笑)。なので普段はサミットや生協、コープなどにも出没しています。
RAM WIRE おおー!
──では2組の今後の活躍にも期待しています。
鉄拳 はい! では次回のビデオクリップもぜひ依頼をお願いします(笑)。
RAM WIRE よろしくお願いします!(笑)
ミニアルバム「名もない毎日」 / 2012年6月27日発売 / Sony Music Associated Records
CD収録曲
- 名もない毎日
- Vernally
- ALIVE
- Lies
- 歩み
DVD収録内容
- 名もない毎日 Music Video
- 歩み Music Video
RAM WIRE(らむわいやー)
ユーズ(Vo)、MONCH(Vo)、RYLL(Trackmaker, DJ)の3人からなるユニット。2001年、千葉のクラブを拠点にユーズとMONCHの2人で活動を開始し、2005年よりRYLLが加入する。その後はライブや自主制作盤のリリースなどを中心として活動を展開。2008年にはRAM WIREと並行してトラック制作を続けていたRYLLの楽曲が、Spontania feat. JUJUのシングル「君のすべてに」としてリリースされる。これがきっかけとなりRAM WIREも大きな注目を集め、2010年にミニアルバム「Beautiful World」でメジャーデビューを果たす。2011年9月リリースのシングル「歩み」は映画「僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia.」の主題歌に起用されてスマッシュヒットした。2012年6月、ミニアルバム「名もない毎日」を発表。タイトル曲のビデオクリップはお笑い芸人・鉄拳によるパラパラマンガで構成され、話題を呼んでいる。
鉄拳(てっけん)
1997年にデビューしたお笑い芸人。スケッチブックに自筆したイラストを用いたネタで人気を呼び、数々のテレビ番組やライブを中心に活動する。卓越したイラストとストーリーテラーとしての腕前を生かしたパラパラマンガ家としても活躍しており、テレビ番組の企画で制作された作品「振り子」はパラパラマンガの域を超えた感動作として海外からも注目を集めた。