ナタリー PowerPush - RAM WIRE

鉄拳と語るパラパラマンガPV制作秘話

大人の事情でかなりカットされました(笑)

──たしかにがんばった人と、そうではない人が放つ言葉って説得力が違いますよね。

鉄拳 そうなんですよね。このパラパラマンガにも、いろんな人の挫折したシーンと、その人たちがいろんな人に支えられて、毎日同じ日を繰り返して進んでいくという絵を描きたいなって思ったんです。……まあ、結構カットされたんですけどね。

ユーズ えー、それは見たかった!

鉄拳 まあ、いろんな大人の事情でカットされまして(笑)。僕もすごく悲しいんですけど、それが社会というものらしくて(笑)。

インタビュー風景

MONCH でも、2番で苦労している人たちが報われるシーンがしっかり描かれていますよね。

鉄拳 あれは半分なんです。勝ち残った人たちが生き残りました……。

ユーズ あはは(笑)。そこはすごく感動しました。その挫折のシーンは、みんなそれぞれ自分を重ねられるんですよ。私は頭を下げている工事現場のおじいちゃんに泣けましたね。

鉄拳 あれは僕が実際に工事現場で働いていたときにいたおじいちゃんがモデルになっているんです。工事現場って、いろんな人が働いているんですよ。奥さんがいない子持ちのお父さんとか、定年退職したあとのおじいちゃんとか、すごくみんながんばって働いているんですよね。その姿をしっかりと形にできたのは、すごくうれしかったですね。

MONCH 僕もついこの間まではバイトをしないと音楽はもちろん、生活ができない状態だったんです。そこでは本当に悔しい思いで頭を下げたりすることも多くて。どうしてそこまでやるかというところには、自分の大切なものがあるからなんですよね。そこをリアルに表現してあったのですごく共感できて、……涙腺が崩壊しました。本当にエネルギーをもらえました。

鉄拳 うれしいです。

絶対にこの人たちを裏切っちゃいけない

──2組が同じような体験をしているからこそ、通じ合えたのかもしれないですね。

インタビュー風景

RYLL みんなそうだと思うんですが、自分たちの音楽って客観的になれないんですよ。だからこそ、こうやってビデオクリップを作っていただいて、初めて客観的に自分たちの曲を聴くことができたんです。そしたら、自分たちでいうのもなんですが、本当にいい曲だなって思ったんです(笑)。

鉄拳 いや、ホントいい曲ですって! ビデオクリップはおまけです!

RYLL いやいや(笑)。このビデオクリップのおかげで、自分たちの曲に改めて自信が持てました。いろんな人に聴いてもらいたい、見てもらいたいと心から思うんです。

──RYLLさんは、この数年、膨大な数のトラックを武者修行のように作っていたとお聞きしましたが。

RYLL そうですね。とはいえ、僕は自分勝手ですごくワガママな生き方をしていると思うんです。だからこそ、ちゃんと結果を出して、両親や近しい人たちに恩返ししたいな、って思うんです。

──皆さんの熱い思いが集まったからこそ、ここまで伝わる楽曲ができたんですね。改めてRAM WIREの思いを聞いていかがですか?

鉄拳 なんかハードルが……すごく高くなりましたが(笑)、もっともっと書き直したくなりましたね。改めて知るともっと深くなるというか。

──たしかに、知れば知るほど、違う印象も出ますもんね。

鉄拳 そうなんです。でも、作る前に3人のことは少し聞いていたんですよ。路上ライブをしていて、ライブを観に来てくれたおばあちゃんの手を離さないとか……。

ユーズ え? 私たちの話ですか?

鉄拳 ……え? 違うの?

MONCH いや、ウチらの話でしょ(笑)。説明すると、以前僕の故郷でライブをしたときに、僕のおばあちゃんが来てくれたんですよ。

ユーズ あ、そうそう! 島根ね!

MONCH 鳥取だけどね。

ユーズ そうそう、鳥取!

──その間違い方の気持ちはわかりますけどね(笑)。

ユーズ すいません(笑)。そこでMONCHのおばあちゃんに挨拶をしたら、手を握って頭を下げて、ありがとうって言ってくれたんです。しかも頭を全然上げてくれないんですよ。でも手の体温から気持ちがしっかり伝わってきて、私も号泣しちゃって。やっと顔を上げたおばあちゃんも号泣していたんです。そこで、絶対にこの人たちを裏切っちゃいけないなって思ったんです。

MONCH おばあちゃんはもうかなり高齢で、なかなかライブも見せられないから、もっと早く大きなところでできるようになって、おばあちゃんやおじいちゃん孝行をしたいな、って思うんです。

インタビュー風景

鉄拳 そうそう! その話を聞いていたから、そのシーンもパラパラマンガにしたんですよ。でも、これまた大人の都合でカットされました(笑)。

ユーズ えー! それは見たかった!

──となると、実際は相当な枚数の絵を描いたわけですね。

鉄拳 そうなんです。1500枚描いて、たくさんのエピソードを込めたんですが、結構カットされて……。まあ、厳選されたエピソードが詰まっているので、それはすごくうれしいですね。

──1500枚って、多すぎてあまりピンと来ないですが、すごい大変ですよね?

鉄拳 実は最初にお話をいただいたときは、1分のショートバージョンだと聞いていたんですよ。それを4月の中旬にお伺いして、5月頭までに締切ということだったので、「やります」とお受けしたんですが、気づいたら4分になっていたんです。

ユーズ 4倍!

鉄拳 そうなんですよ。そして締切は5月中になっていて。これは4倍になっていなかったんですよね(笑)。でも、この曲は絶対にやりたかったので、かなりがんばりました。

RAM WIRE ありがとうございます!

CD収録曲
  1. 名もない毎日
  2. Vernally
  3. ALIVE
  4. Lies
  5. 歩み
DVD収録内容
  • 名もない毎日 Music Video
  • 歩み Music Video
RAM WIRE(らむわいやー)

ユーズ(Vo)、MONCH(Vo)、RYLL(Trackmaker, DJ)の3人からなるユニット。2001年、千葉のクラブを拠点にユーズとMONCHの2人で活動を開始し、2005年よりRYLLが加入する。その後はライブや自主制作盤のリリースなどを中心として活動を展開。2008年にはRAM WIREと並行してトラック制作を続けていたRYLLの楽曲が、Spontania feat. JUJUのシングル「君のすべてに」としてリリースされる。これがきっかけとなりRAM WIREも大きな注目を集め、2010年にミニアルバム「Beautiful World」でメジャーデビューを果たす。2011年9月リリースのシングル「歩み」は映画「僕たちは世界を変えることができない。But, we wanna build a school in Cambodia.」の主題歌に起用されてスマッシュヒットした。2012年6月、ミニアルバム「名もない毎日」を発表。タイトル曲のビデオクリップはお笑い芸人・鉄拳によるパラパラマンガで構成され、話題を呼んでいる。

鉄拳(てっけん)

1997年にデビューしたお笑い芸人。スケッチブックに自筆したイラストを用いたネタで人気を呼び、数々のテレビ番組やライブを中心に活動する。卓越したイラストとストーリーテラーとしての腕前を生かしたパラパラマンガ家としても活躍しており、テレビ番組の企画で制作された作品「振り子」はパラパラマンガの域を超えた感動作として海外からも注目を集めた。