ナタリー PowerPush - Q;indivi
クラシックとハウスを融合した歌モノカバーアルバムが誕生
気鋭のプロデューサー・田中ユウスケが率いる音楽ユニット、Q;indivi。彼らのスピンオフ企画盤アルバム「Celebration」がこのほどリリースされた。
既存クラシック曲に全編英詞ボーカルを乗せてリアレンジされたクラシック×ハウスの11曲は、さまざまな祝祭のシーンに映えそうなキラキラしたキャッチーさが魅力。今作ができた経緯や制作秘話について、ユニットのブレーンである田中ユウスケに語ってもらった。
取材・文/川倉由起子
Rin Oikawaの生歌を前面に押し出したアルバムに
──クラシックとハウスを融合した、素敵なコンセプトアルバムになっていますね。
ありがとうございます。
──この1枚が出来た経緯をお伺いする前に、まずは現在のQ;indiviについて簡単に紹介していただけますか?
もともとQ;indiviっていうユニットは、そもそもコンセプトがあまりないんですよね。僕個人では他のアーティストの作曲やプロデュース、アレンジやCMの仕事などいろいろなこともやっているんですが、それでもやっぱり自分で「こういうモノも作りたいな」っていうのが出てくるんですよ。そういうのを成就させる場じゃないけど、遊び場を作りたいなと思って始めたのがQ;indiviなんです。レギュラーメンバーのボーカリストであるRin Oikawa、アートワーク担当のKevinも加わったり加わらなかったりその時々で変わるので、形のないちょっとふわっとした感じですね。特定のメンバーを持たないという意味では。
──そのRin Oikawaさんは、今回Starring Rin Oikawaという形で参加されてますよね。これはどうしてですか?
やっぱりQ;indivi名義の作品では、例えば声を加工したりして、少しわかりにくいことをしたくなりがちなんです。でも今回はそういうQ;indiviではできないことをやりたいと思って。もうちょっとRin Oikawa本人のパーソナリティや顔が見えるものを作りたいというところで名義を変えました。
──生歌を活かした歌モノだという部分を“Starring Rin Oikawa”に込めたと?
そうですね。今回は彼女の歌を前面に押し出しました。もともとは僕個人も彼女の生歌をもっと聴きたいとは思っていたので、今回のstarringシリーズを作ったんですよね。
クラシックを英詞で歌うだけで不思議とめでたい感じがする
──今回のクラシックとのコラボなんですが、これはどういうところから生まれた発想なんですか?
実は前作でも1曲「LOVE YOU」というバッハのメヌエットを取り入れた曲をやってるんです。で、それがすごい感触がよかったので、これは何かあるんじゃないか、広げてみたいなと思って。クラシックの曲を英詞にして歌うだけで、不思議と“めでたい”感じがするなと思ったんです。
──めでたい感じ?
そう、それがすごくあって。クラシックは今のビートに乗せると何かしらの化学反応が起きるんじゃないですかね。あと、最近は知り合いから「結婚式でQ;indiviがかかってた」とか、「新宿の韓国料理屋でいきなり照明が暗くなったと思ったら、誰かの誕生日でQ;indiviの『リトルマーメイド』がかかった」とかって話をよく聞いてて。
──街のBGMとしても広がりを見せていたんですね。
そうみたいですね。だったらそこにフォーカスして作ってみるのも反応があるんじゃないのかなと思って。
運転手さんが「お客さん、それ『別れの曲』ですよ」って(笑)
──今回の選曲に関してはどういう基準で?
やっぱりメロディがキャッチーで、歌えるモノであるということですかね。
──もう本当に全部、イントロから知ってる曲ばっかりなんですよね。
そうですね。いわゆるクラシックの専門的な教育を受けてない人でも楽しめる間口の広いものにしたいなと思っていたので。
──なるほど。
そういえばこのアルバムの制作中に、タクシーの中でふと「別れの曲」をやりたいなと思って、でもそのときタイトルが思い出せなくて、知り合いに電話してメロディを歌ってたんですよ。で、「これ何だっけ?」っていう話をしたら、運転手さんがパッと振り返って「お客さん、それ『別れの曲』ですよ」って(笑)。
──それはすごい(笑)。
「あ、ですよね?」って(笑)。でも運転手さんも知ってるっていうところで、あ、これはいけるなって。音楽のプロなのにこちらが教えられたんです。
──でもその時点でこの企画の成功は見えたようなものですよね?
ええ、本当に。(運転手は)4~50歳くらいの方だったんですけど、そういった方でも知ってらっしゃるという。
CD収録曲
- Air On The G String~G線上のアリア
- Pomp and Circumstance~威風堂々
- Wedding March~結婚行進曲
- Salute D'amour~愛の挨拶
- Turandot~トゥーランドット
- Serenade for Strings~弦楽セレナーデ
- Pathetic~悲愴
- Gymnopédie~ジムノペティ
- Clair de Lune~月の光
- Etude~別れの曲
- Jesu, Joy Of Man's Desiring~主よ人の望みの喜びを
Q;indivi(キューインディヴィ)
YUKIやHALCALI、元気ロケッツなどへの楽曲提供で知られる田中ユウスケ(Sound Produce/Compose)を中心としたサウンドプロデュースユニット。
近年ではクレイジーケンバンド、倖田來未、Sweetboxらのリミックスを手がけるなど、エレクトロからクラシックまで幅広いサウンドをクロスオーバーさせ、ジャンルにとらわれない自由な発想で、新世紀のポップミュージックをクリエイトしている。