THE PRIMALSインタビュー|光の戦士との再会を果たした約4年ぶりワンマンを振り返る (3/3)

THE PRIMALSを体現する王道のセトリ

──アンコールでは「機工城アレキサンダー」の楽曲が3曲立て続けに披露されました。ゲーム内でも人気のある楽曲ですが、THE PRIMALSにとっても特別な意味を持つ3曲に育った印象があります。

祖堅 「THE PRIMALSというのはこういうバンドです」という要素がこの3曲に凝縮されているんですよね。観てもらえば、ライブエンタテインメントとして僕らが表現したいことが誤解なく伝わると思う。

たちばな THE PRIMALSとしてマストの曲に育ったよね。もうセトリから外れることはないんじゃないかな。

たちばなテツヤ(Dr)

たちばなテツヤ(Dr)

コージ 体に馴染んでいる曲だから、細かいことを考えなくてもすぐにできる。

祖堅 ただアンコール最後の曲を「ローカス ~機工城アレキサンダー:起動編~」にするかどうかはけっこう悩みました。これまでも「ローカス」で締めることが多かったので、今回もそれと同じでいいのかって。

たちばな 約4年ぶりのワンマンライブだったから、今回は期待に応える意味でもベタな展開でいいんじゃないかって話をしたよね。

祖堅 ひさしぶりにTHE PRIMALSのライブを観る人もいるし、もちろん初めて観る人もいる。だったら「THE PRIMALSはこういうロックバンドだ」という王道のセトリ、教科書みたいなセトリがいいんじゃないかという僕らの結論です。王道のセトリだったら、最後はこの3曲でしょう。

──先ほど祖堅さんが触れていましたが、「ライズ」でのタイムストップは本当に圧巻でした。

GUNN すごかったよね。

たちばな もともとライブで「ライズ」を演奏し始めたときって、お客さんは止まってなかったよね?

祖堅 そう。我々が止まるだけでお客さんはわーっと盛り上がっていたんだけど、韓国のワンマンライブで僕らに合わせてお客さんまで動きを止めて。今ではみんなで動きを止めるのが通例になりました。

──タイムストップを会場で目にして、これまでのインタビューで祖堅さんやGUNNさんが「THE PRIMALSのライブは僕らが主役ではなくて、ゲームを体験してきたみんなが主役」と話していた意味がよくわかりました。皆さん、演者の1人のような気構えでライブに来ているんですよね。

祖堅 ははは(笑)。もっと言うと、“皆さんのゲーム体験が主役”なんですよね。皆さんが遊んできたゲーム体験をライブを通して盛り上げるのが僕らTHE PRIMALSの役割で。そのことを肝に銘じてステージに立っていますし、こういうことをやっているバンドはそういないから独特なエンタテインメントなのかなと思っています。ここにいるメンバーの皆さんはそこをすごく理解して演奏してくださるので、めちゃくちゃありがたいです。いつもありがとうございます!

たちばな はい、1万円になります(笑)。

祖堅 うわー、ギャラが発生した!

Blu-rayで生配信をどう超えるか

──僕は現地でライブを拝見させてもらったので違いがわからないのですが、生配信とBlu-rayでは内容がかなり異なると伺いました。具体的にはどのようなところが変わっているんでしょうか?

祖堅 けっこう変わっていると思います。そもそも生配信にもかなりこだわっていて、音も絵もライブ制作中に思い描いていた以上のクオリティのものをお届けできた自負があったんですよ。だからこそ、Blu-rayで生配信をどう超えるかはけっこう大変だったし、手間もかかりました。まずは音ですよね。全部ミックスをやり直して、マスタリングもして、結果的に普通に音源を作る過程と同じ作業をしました。映像面に関して言えば、どのカットを映すかはライブ後だからわかることもたくさんあって。そこはメンバー皆さんに意見を聞きながら、改めてどこを観てもらうのかかなり話し合いました。

GUNN 生配信の反応がすごくよかったし、「このままBlu-rayにすればいいんじゃない?」と思って作業し始めたらこだわりがでてきちゃって、とんでもない沼作業になっちゃった。

祖堅 生配信とBlu-rayでけっこう印象が変わっていると思います。僕らの演奏を観てもらいたいのはもちろん、ライブ中にスクリーンに映していたプレイヤーから公募した映像も注目してもらいたいし、会場の演出も見せたい。そんな中でどこをチョイスして映像作品として提供するかにはかなり頭を悩ませました。皆さんに撮ってもらった公募映像はそれだけでもすごくカッコいいものになったので、全編プレイヤーズビデオだけの映像も別途収録しています。

──生配信されていたとはいえ、ミックスやマスタリングなどを含めてわずか2カ月で完パケしているのは、かなり早いのでは?(取材は8月に実施)

たちばな 確かに。ほかでライブ映像作品を出そうとしたらもっと時間がかかるよね。

イワイ 俺はもうこのペースに慣れちゃって、なんとも思ってなかった(笑)。

イワイエイキチ(B)

イワイエイキチ(B)

祖堅 実際かなりハイペースで制作が進んでいたと思います。でもゲームサウンド制作よりはこれでもけっこう時間をかけたほうですね。

GUNN Blu-rayの制作があったから、ライブが終わってからのほうがメンバーと話す機会が多くて面白かったな。それくらい、けっこう集中してこの映像の作業に没頭してたよね。祖堅くんはこれとは別でゲーム音楽制作もあるから大変だったろうに。

祖堅 常に仕事は山積みですよ(笑)。でもBlu-rayの映像をいじっているのが楽しかったからチャラかな。

次の目標はロックフェス

──「FF14」は「暁月のフィナーレ」のアップデートをもって、そのストーリーにひと区切りがつきました。THE PRIMALSも今回集大成的なライブを実施しまして、今後どうなるのか気になっているファンも多いかと思います。

祖堅 もちろん「FF14」が続く限りTHE PRIMALSの出番はあるので、今後も僕らの制作とライブは続いていくと思います。

GUNN 次はロックフェスに呼んでもらいたいですね。

たちばな うん。ロックフェスに出ても遜色ないバンドだし、なんとなく観に来たお客さんもしっかり楽しませられると思う。

GUNN さっきも祖堅くんと話していたんですが、THE PRIMALSというバンドはゲーム音楽に紐付いているし、特殊に見えるかもしれないけど、ロックフェスに突っ込めるポテンシャルを持ってる。それにTHE PRIMALSを好きな人がフェスに参加してくれたら、ほかのバンドのライブも絶対楽しんでくれると思うんですよね。そういう架け橋になれるバンドなんじゃないかって、最近考えています。

祖堅 ゲームのプレイヤーって絵に関してもサウンドに関してもすごく興味を持ってくれて、何かきっかけがあると深掘りしてくれる人もたくさんいるんですよ。楽しむことに能動的な人が多いというか。だからフェスのような解放感のある気持ちいい会場で僕らの演奏を聴いたうえで、ほかの音楽と出会ってくれたらどんなふうに楽しんでくれるのか、すごく興味があるんです。僕はゲームが好きで音楽も好きだから、どちらのエンタテインメントも思いっ切り楽しんでほしい。僕らは僕らでロックファンにも演奏を聴いてほしいし、僕らがフェスに出ることでゲームプレイヤーがフェスの空間に足を踏み入れてくれるようになったら面白くなるんじゃないかな。

GUNN 僕らは大丈夫だけど、祖堅くんとコージは忙しそうだから大変だよね。

祖堅 以前、名古屋でインストアイベントのあとに別仕事でシアトルの現場に飛ばされたこともありますからね(笑)。名古屋から東京経由してシアトルに直行だったのはキツかったなあ。会社のみんなも僕を出発ゲートで見送りながら、本当に行くんだって笑ってました。

たちばな 合間を縫って海外にも行けるってこと?

祖堅 そう捉えられちゃうか! でも海外フェスにもすごく興味があるので、ご縁があればぜひ出演してみたいですね。

THE PRIMALS

THE PRIMALS

プロフィール

THE PRIMALS(ザプライマルズ)

「ファイナルファンタジーXIV」サウンドディレクターの祖堅正慶を中心として、2014年に結成された同作のオフィシャルバンド。これまでに公式アレンジアルバム「From Astral to Umbral」「Duality」「Journeys」「Scions & Sinners」の4作品に参加している。その活動は日本だけにとどまらず、北米、欧州、韓国、中国で開催された公式イベント「FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL」でライブを行うなど、ワールドワイドに活躍している。2018年5月には、オリジナル1stアルバム「THE PRIMALS」をリリース。バンドとして初の単独ライブツアー「THE PRIMALS ZeppTour 2018 -Trial By Shadow -」を全国4都市で開催した。また同期間中には韓国・ソウルでの単独ライブも成功させている。「ファイナルファンタジーXIV」の最新拡張パッケージ「暁月のフィナーレ」の主題歌「Endwalker」を2021年11月に7inchアナログで発表。2022年6月に千葉・幕張メッセ 幕張イベントホールで2日間にわたり単独公演を行い、9月にその模様を収録した映像作品をリリースした。