音楽ナタリー Power Push - polly
バンドの分岐点となる自信作
軽やかだけど、どこか恐ろしい雰囲気を持った曲
──2曲目の「Addict」はすごく軽やかで聴きやすい1曲なんですけど、よく聴くと「I want you to die」って歌ってません? 歌詞では「I want you to xxx」となってますが。
ふふふ(笑)。そこはご想像にお任せします。お客さんでは「I want you to fly」に聴こえるっていう人もいましたよ。いろいろ想像して楽しんでほしいなと思っています。
──3曲目の「ひとのよう」も同じような雰囲気をなんとなく感じました。
同じ時期に並行して作っていた曲だからかもしれないです。「ひとのよう」はかなりギターを前に打ち出した曲なんですけど、サウンド的にはカラッと踊れるようなイメージです。リズムはナイジェリアとか、アフリカのほうの民族が演奏してそうなものを意識しています。ドラムのラインとかもシンプルに作って、誰でもリズムを取りやすく仕上げました。サビでグッと変化を付けたかった曲でもあって、それがうまくできたかなと思っています。ギターのフレーズはやんす(飯村悠介)にほとんど任せました。彼のセンスをうまく引き出せた曲だと思います。
──「堕ちていく」はコーラスに少し狂気を感じました。
コーラスの感じは儀式とかでみんなで歌いそうな感じを意識してますね。ちょっとわかりません? 輪になって焚き火を囲んで歌ってるような……。一見楽しそうに見えるけど、やってることは残酷だったり、儀式ってそういうものだと思いませんか?
──生け贄を捧げたりとか?
そうそう。この曲を作ってるとき、生け贄っていうキーワードがありました。リズムが跳ねてるし、三連符を使ったりしてるので軽やかなんですけど、どこか恐ろしい雰囲気を持った曲にしたかったんです。
──タイトルトラックの「哀余る」は全編ファルセットボイスで歌われてますね。
全編ファルセットっていうのはずっとやってみたかったんです。ファルセットで歌ったのもそうだし、サウンドの感じも、僕の中ではシューゲイザーを意識しつつ作りました。でもリズムは踊れる感じになっていて、pollyの得意な部分をうまく組み合わせられた曲だという自負があります。
pollyの分岐点になるアルバム
──「ふつうのせいかつ」は派手なシンセサウンドが印象的で、ここまでのミニアルバムの流れをガラリと変える1曲です。
もともとはもっとイナタイ感じだったんですよ。シンセが入ってかなり垢抜けました。ミドルテンポでキックが4つ鳴ってるものをずっとやりたいなと思っていたので、それありきで作った曲です。今回のアルバムの収録曲はノれるものにしたいという思いが強かったので、全部リズムをすごく大事にしています。この曲はけっこう前からあったんですけど、シンセを手に入れたことで、ハマるアレンジが完成しました。音源化することができてうれしいですね。
──「言葉は風船」は今までのpollyっぽさを感じます。シンプルなアレンジで、歌詞がよく聞こえる曲だなと。
なんかお客さんにもこの曲が褒められがちなんですけど、この曲、そんなにいいですか? 30分くらいで書いた曲なんですよ、これ。
──どの曲も歌がしっかりしているんですけど、シンプルなアレンジで聴くとよりそれが際立つ気がします。
なるほど。誰にでもいい曲に聞こえる自信はある1曲ですね。シンプルな分、言葉の力が強い1曲なのかもしれない。この曲は珍しく詞先の曲なんです。僕はあんまりホッとすることってないんですけど、自分の部屋にいるときにホッとすることがあって。それは部屋の温度とかが自分の気持ちとピタッとハマったときに感じるんですけど。そういうときにこの歌詞を書いたんです。なんかその感覚をサウンドで伝える必要もないなと思うぐらい、歌詞でその気持ちが表現できたからかなりシンプルなアレンジになりました。これもずっと作品にしたいなと思っていた曲の1つです。
──そして最後に「post」というアウトロが収録されています。
アートギャラリーに足を運ぶことが多いんですけど、マルク・シャガールという方の作品展を観に行ったとき、最初と最後に似た感じの絵が飾られていて。頭の中に最初の絵の記憶も残っているから、もう一巡して確かめたいなって思ったんですよね。なんかこのアルバムはそういう1枚にしたかったんです。一貫性はないかもしれない。でももう1回通して聴いてみたいと思ってもらいたかった。だから「沈めてくれたら」につながるようなアウトロにしました。
──この1枚が完成してどういう気持ちですか?
早く次作を作りたいですよ。で、皆さんにもこの1枚を聴いて、次作がどうなるのか想像していてほしい。確実にpollyっていうバンドの分岐点になるアルバムだから。現在と未来に関してものすごく自分自身楽しみにしているので、皆さんもそう思ってくれたらいいなと思ってます。
──バンドとしては上り調子ということなんでしょうか?
バンドとしてはどうかな?(笑) でも、僕個人としては制作意欲がすごくあって、作家として健康な状態だと思う。僕が健康だったらこのバンドは大丈夫です。
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収録曲
- 沈めてくれたら
- Addict
- ひとのよう
- 堕ちていく
- 哀余る
- ふつうのせいかつ
- 言葉は風船
- post
polly(ポーリー)
2012年に栃木県宇都宮で越雲龍馬(Vo, G, Syn)、飯村悠介(G)、刀川翼(B)、高岩栄紀(Dr)によって結成された4人組バンド。地元・宇都宮を中心に活動し、2013年にRADIO BERRY(エフエム栃木)が主宰するコンテスト「ベリコン2013」でグランプリを受賞する。2015年6月にミニアルバム「青、時々、goodbye」でUK.PROJECT内のレーベルDAIZAWA RECORDSより全国デビュー。同時にメンバー全員で上京する。2016年3月に東京・下北沢CLUB Queで都内初のワンマンライブを開催。7月に2ndミニアルバム「哀余る」をリリースした。