音楽ナタリー Power Push - polly
バンドの分岐点となる自信作
どの曲でもシングルカットできる
──今回のアルバムの収録曲って、3月にやったワンマン(参照:polly、都内初ワンマン「ああ、それは、ひとのよう」で新曲続々)で「post」以外の曲を全部披露してますよね。
とにかく僕は新曲ができたらどんどんバンドでやりたいタイプで、「今、僕らはこういう音楽をやってますよ」っていうのを観に来てくれるお客さんに提示したいんですよね。
──シンセサイザーを取り入れ出したのも、この日のライブからでしたね。
そうですね。新曲で鳴らしたい音がギターじゃなくてシンセだなと思って、今年の1、2月あたりに買って。楽器を持たずに歌うのが苦手なので、僕がシンセも弾いてます。
──「哀余る」についても話を聞きたいんですが、アルバム全体を通して、どんな作品になったと思いますか?
単純に入ってる曲が全部好きです。収録曲はどれでもシングルカットできると思っています。
──「哀余る」というタイトルトラックがありますが、これが起点になったというわけでは?
そういうわけではないんですよ。曲目がそろったときに、全部をまとめる言葉として「哀余る」がハマったというだけで。そもそも「哀余る」って言葉、存在しないじゃないですか。でも響きとか字面から想像できる意味とか、すごくいいなと思ったんですよね。だからアルバムタイトルにしました。
憧れの海と愛犬の死
──1曲目の「沈めてくれたら」は海のことを歌った歌ですよね。栃木って俗にいう“海なし県”ですけど、そういうところで育った越雲さんのイメージする海が描かれているのでしょうか?
まさにそうです。ダサい話だと思うんですけど、海に憧れがあったんですよ。だからいつか海について曲を書きたいと思っていた。この曲は先にメロとオケがあって、歌詞を考えるために江ノ島の海に1週間くらい毎日毎日通ったんですよ、1人で。今の時期の海は海水浴シーズンだからにぎわってると思うんですけど、僕が行ってた頃は全然人がいなくて。しかも夕方くらいから行くことがほとんどだったので暗かったです。
──そんな寂しい海に……。
いやいや、波の音をサンプリングしたりして楽しかったですよ。そのとき、浜辺にクラゲが大量に打ち上がってたんです。前作を作ってた頃、クラゲにハマってたんですよ。で、浜に打ち上がったクラゲが死んでるのを見たら、なんか前作を作っていた頃の気持ちも“死んだんだな”と思って。それで、海と人間の死みたいな内容で歌詞を書こうと閃きました。
──クラゲって歌詞には出てこないですよね。
はい。クラゲって潮の流れに乗って移動するんですよ。海が荒れてるときはクラゲも一緒に荒波に乗らなきゃいけないし、穏やかなときはプカプカその場に浮いてる。だからクラゲは海と共同体みたいなイメージがあって。あとちょうど制作期間中に13年飼ってた実家の愛犬が死んじゃって。死ぬとか終わるとかそういうものにものすごく敏感な時期だったから、「海」「クラゲ」「死」みたいなものが頭の中でリンクしていってこういう歌詞になりました。
──サウンド的にはシューゲイザーの要素が強くて、海の荒々しさみたいなものを感じました。
これが僕が想像してた海なんです。サーフミュージックみたいな陽気な海は全然イメージできなくて。今回番場秀一さんに作っていただいたミュージックビデオもすごく気に入っていて、映像と合わせて聴くことでより好きになりました。
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収録曲
- 沈めてくれたら
- Addict
- ひとのよう
- 堕ちていく
- 哀余る
- ふつうのせいかつ
- 言葉は風船
- post
polly(ポーリー)
2012年に栃木県宇都宮で越雲龍馬(Vo, G, Syn)、飯村悠介(G)、刀川翼(B)、高岩栄紀(Dr)によって結成された4人組バンド。地元・宇都宮を中心に活動し、2013年にRADIO BERRY(エフエム栃木)が主宰するコンテスト「ベリコン2013」でグランプリを受賞する。2015年6月にミニアルバム「青、時々、goodbye」でUK.PROJECT内のレーベルDAIZAWA RECORDSより全国デビュー。同時にメンバー全員で上京する。2016年3月に東京・下北沢CLUB Queで都内初のワンマンライブを開催。7月に2ndミニアルバム「哀余る」をリリースした。