ナタリー PowerPush - People In The Box

3曲で紡ぎだす独自のストーリー 初シングル「Sky Mouth」完成

昨年10月にリリースした3枚目のミニアルバム「Ghost Apple」で、スリーピースのエモーショナルなサウンドの中に、鋭い描写とナイーブな生命力を持つ言葉を宿した独自の世界観を堂々と提示して話題となったPeople In The Box。その後のリリースツアーの熱狂も冷めやらぬうち、2月17日に届けられるのは1stシングル「Sky Mouth」。

今作は2曲目の「天使の胃袋」を中心とした3曲入り。1曲目の、どこか幻想的なアプローチのサウンドとささやくような声が特徴的な「生物学」を抜けると、獰猛かつアグレッシブな「天使の胃袋」へとなだれ込み、3曲目の「冷血と作法」ではスピリチュアルな浮遊感を漂わせるという、なんとも彼ららしい攻撃性と遊び心に満ちた1枚に仕上がっている。シングルの概念を覆す手法と、なおかつ3曲で完結するような濃い内容と表現力で、まさにPeople In The Boxというバンドの可能性と揺るぎない在り方を示した1枚。今作について3人が語ってくれた。

取材・文/上野三樹

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シングルとアルバムが違うのは曲数だけ

──今回「シングルを出しましょう」という話になったとき、バンドとしてはどういうものにしたいと考えましたか。

波多野裕文(Vo,G) とにかく「3曲入り」ってことしか決めてなかったんですけど(笑)。アルバム「Ghost Apple」より前に作った「天使の胃袋」っていう曲があって、それをレコーディングしようと思っていたので、その曲を中心にした3曲にしようっていうことを漠然と考えながら作業を進めていった感じです。シングルということで最初は気負った部分もあったんですけど、作る段階になって気負わなくていいなと思って。単純にアルバムやミニアルバムと同じ。違うのは曲数だけっていう発想に立ち返ったというか。それが僕らにとって自然な在り方かなと思いました。

──普通なら「中心に持って来たい曲」はシングルの場合1曲目の表題曲になり、カップリングがあり、っていうことになると思うんですが。今作はそうではないですよね。

波多野 もう僕らはいいかなと思って(笑)。なんか、そういうことを別にやらなくても。

山口大吾(Dr) うん。僕からすると、1曲目に表題曲がないことってそんなにショックなことなのかな? って思いますし。もし「天使の胃袋」を1曲目に置いたら、その後にどういう曲を持ってきたらいいかっていうイメージも湧かなかったと思うんだよね。

波多野 あ、そっか(笑)。

山口 2曲目は1曲目からクロスフェードで入ってるんですけど。そういうのも踏まえて「天使の胃袋」は2曲目のほうが落ち着くんじゃないかと。

──シングルとしての反則技だらけな感じですが(笑)、周りからもあんまり細かいことを言われないんですか。

波多野 もう全然、言われなくなりました(笑)。僕らは結構自由にやらせてもらってるほうかもしれませんね。でも、それが普通であるべきですよね。

──うん。そういう自分たちのやり方で勝っていかないと、そこに喜びはないでしょうし。

波多野 そうですよね。なんか意味合いとか本質のレベルになってきますね。ピープルなりの自然な感じ、っていうところで言うと、これが僕らにしっくりくるので。

出しまくって、削ぎまくるんです

──形はユニークですが、マニアックにならずちゃんと耳と心に残る、このバンドらしいシングルになりましたよね。「天使の胃袋」を最初に作ったときの感触としては、これはアルバムに入れずに取っておこうというような感じだったんですか。

波多野 それも自分たちでは特に意識していなくて。単純にストックとして置いてた曲で、ライブでも何回かやったんですよ。ただ、前作「Ghost Apple」を作った後だと、前の表現が古いというか浅い感じがしたので、その頃とは歌詞もメロディも7割近く変えました。もう1回、今の息を吹き込んでやる必要があって。だから同じ曲ではあるんですけど実はだいぶ変わってるんですよね。

──7割も変わるとだいぶ違いますよね。

波多野 でも曲のテイストはほとんど変わってないです。ギターとかは結構変えましたけど。

──シングルの作りとしてはまず1曲目に「生物学」が収録されているんですけど、これは何かの始まりを予感させるような神秘的で幻想的なオープニングですね。

福井健太(B) 「森っぽく」っていうキーワードがあったんですけど、できあがってみると宇宙っぽい感じになりましたね。

波多野 でもそういうキーワードってほんとに音を出しながら、冗談みたいに出てくるもので。こないだ作ってた曲なんかはキーワードは「コソ泥」だったのに、どんどんサイバーな感じになって(笑)。

福井 最後に「コソ泥」っぽさはなくなっちゃったもんね。

──そのへんはいつもフレキシブルですよね。

波多野 だから自分たちでもともと「こういう感じにしよう」って始めることはないんです。テーマとかに固執したりすることは全くなくて、すごく軽やかなんです。しかも1回、型のようなものができてしまうと、僕らは早くそこから外れようとします。前に似た曲があったら、そこからどんどん離れていくのは、もう当然だと思うんですよね、やっぱり。自分たちで飽きることはしたくないし、常に自分たちのやってることが刺激的でありたいと思えば思うほど、やっぱりそういうところからはどんどん離れていかないと。

──そういう意味でも7割程度崩すという作業があって今回の「天使の胃袋」ができたと。それってバンドが曲を生み出していくシステムとしては楽しくもあり、タフな作業でもありますよね。

波多野 タフです。その苦労はね、すごく時間もかかることなんですけど。そういうことで苦しむのはむしろウェルカムというか(笑)。

山口 出して、出して、出しまくって、削ぎまくるんです。

福井 でもそこには苦しみよりも楽しさのほうが大きくあるんですよ。3人それぞれが担っているものも違うし、そのへんは自然に。合わせるというよりも広がっていく感じがあります。

1stシングル『Sky Mouth』 / 2010年2月17日発売 / 1200円(税込) / CROWN STONES / 残響record / CRCP-10243

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CD収録曲
  1. 生物学
  2. 天使の胃袋
  3. 冷血と作法
People In The Box
(ぴーぷるいんざぼっくす)

波多野裕文(Vo,G)、福井健太(B)、山口大吾(Dr)による、スリーピースバンド。トリオ編成を活かしたスマートなサウンドと、複合的なリズムにポップな歌メロ、そしてイノセントな声が不思議な世界観を構築している。2007年に残響レコードから1stミニアルバム「Rabbit Hole」でインディーズデビュー。2009年10月に3rdミニアルバム「Ghost Apple」をクラウンレコードからリリース。独自の音世界を追求し続けている。