PEDRO|BiSHで活動を共にする2人から見たアユニ・Dの実像

アユニ・D(BiSH)のソロプロジェクト、PEDROが8月28日に1stフルアルバム「THUMB SUCKER」をリリースした。

PEDROはアユニがベースボーカルを担当するバンド編成のプロジェクト。全曲の作詞と一部作曲をアユニが手がけ、レコーディングおよびツアーには田渕ひさ子(G / NUMBER GIRL、toddle)という強力な助っ人が参加している。音楽ナタリーではアユニと同じBiSHで活動するセントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニーの2人に、アユニの人物像やBiSHにおける立ち位置などを紐解きつつ、PEDROにまつわる思いをたっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 田中和宏 撮影 / 宇佐美亮

秘密裏に進められたアユニ・Dソロプロジェクト

──今日はPEDROの特集でこのお二人に集まっていただきました。

セントチヒロ・チッチ いきなりですけど、なんでこの2人なんですか?

モモコグミカンパニー 確かに(笑)。

チッチ 優しい2人だから?

モモコ BiSHはみんな優しいよ(笑)。

──レーベルの方曰く「話せる2人」とのことです(笑)。本題に入りますけど、去年チッチさんとアイナ・ジ・エンドさんがソロデビューしたタイミング(参照:セントチヒロ・チッチ(BiSH) / アイナ・ジ・エンド(BiSH)「夜王子と月の姫 / きえないで」インタビュー)の裏でPEDROがデビューしました。正直なところ、ファン投票企画「WACK総選挙」でソロデビューを勝ち取った2人とは別の流れでソロデビューしたPEDROについて、どう思いましたか?

チッチ 「そういう感じか」って思いました。

モモコ ざっくりだね(笑)。

チッチ 最初は「そういう感じかー。はいはい」という感じ。私、隠されるのが嫌いなんですよ。

──隠されていたんですか?

左からセントチヒロ・チッチ、モモコグミカンパニー。

モモコ はい。PEDROのソロデビュー前、アユニがずっとなんか別でやってるなって、ちょっとだけ私も感じてましたけど。

チッチ だから「どう思ったか?」と聞かれたら「いや、知らなかったしなあ」って感じです。リリースのちょっと前に知らされたんですけど、それまでずっと隠されていて。「選挙の意味はなんだったんだろう」と言うファンの人もいましたけど、別にそんなことはどうでもよくて。ただ、アユニを見ていてすごく大変そうだなあと思ってました。

──楽器の練習もしなくちゃいけないし。

チッチ そう。PEDROはバンド編成で初めてのことしかないだろうし、BiSHのことでさえも追いつくのに大変だっただろうから、本当にがんばってたんだなと思いました。

──モモコさんはどうでしたか?

モモコ PEDRO自体をどう思ったかと言えば、チッチと同じで「そういう感じか」という。アユニが何をやっているか本当に知らなかったので。でもアユニがPEDROで活動する意味を考えると、まずアユニはBiSHが5人でやっていたとき、6人目のメンバーとして入ってきて、それを機にお客さんが増えたんです(参照:BiSHに新メンバー、アユニ・Dが加入)。末っ子感が強くて北海道から1人で上京してきてがんばっているアユニの姿や成長ぶりから、5人のときとは違ったファン層、例えば若くて普通の感じの女の子もすごく増えているんです。だからPEDROをやったらそういう子たちにもっとウケるんじゃないかなって。そもそも私はアユニが新メンバーで入ってきたときから、自分より潜在能力が高いと思ってました。私だったらBiSH以外の活動で「アルバムを出せ」と言われたらけっこうキツいと思うんですけど、それができるのはやっぱりアユニなのかな。ギリギリだけどできていて、まだちょっと余裕がありそうな感じ(笑)。

メンバーから見たアユニ・Dの変化

──アユニさんがBiSHに加入してちょうど3年になります。当時アユニさんについてチッチさんは「まともに会話ができなかったから通訳していた」、モモコさんは「若いのに根性がある」と言っていましたね。

チッチ 当時は化粧も一切していなくて、東京のことがなんにもわからなくて、マクドナルドで何か1個買うのも困難な感じだったんです。私と2人で初めて会ったときは「あ、すいません、あ……」という状態だったから、本当に純粋な子なんだなと思ってました。でも「秘めた闇の部分もあるのかな?」みたいな印象もあって。

──闇の部分?

セントチヒロ・チッチ

チッチ うん。オーラというか。BiSHに加わるという時点でただ者ではないと思っていたので。あと「若いのに根性がある」という部分に関しては、絶対にその根性がなきゃあのときのBiSHに追い付けなかったと思います。泣きながらでも練習をずっとしていたので、私も根性あるなと思っていました。

モモコ みんなで初めて会ったのは確か渋谷のダンススタジオだったんです。そのときに見た印象は「こういう子がアイドルなんだな」って(笑)。 BiSHはインディーズのとき、“新生クソアイドル”としてやっていたけど、本物のアイドルはこういう子(アユニ)なんだと思った。すごく透明で。

チッチ うん。白かったね。

モモコ そう! 肌が真っ白で、すっぴんなのにかわいくて細くて、手足が長くて、「なんだか普通のアイドルみたいにすごくかわいい子が入ってきちゃった、どうしよう」なんて思ったんです。でも秘めたものを持っていて、これからどんどん変わっていくんだろうなとは、私もそのときからちょっと感じてました。

──アユニさんが加わったあと、BiSHは2016年10月にアルバム「KiLLER BiSH」を発表しました。それから現在までにどんどん活躍の場を広げていますが、その中でアユニさんに変化を感じた瞬間はありますか?

チッチ アユニ自体もBiSHと一緒に成長しているので、「あ、変わったな」みたいな感覚になったことはなくて、彼女なりに一歩ずつ進んでいるなと思います。でもいつからなのかはわからないですけど、踊り方が変わったんですよ。

モモコ へえ……全然そういうのわかんない(笑)。

チッチ かなり違うよ?

モモコ すごいね。よく見てるんだ。

チッチ 昔はほかのメンバーの見よう見まねで一緒に踊っている女の子という感じだったんです。でもあるときから、めちゃめちゃ体を動かしてバッキバキにダンスを踊るようになったんですね。で、「そんなに踊れたんだ」と言ったら、アユニはもう覚えているかわからないけどその当時「最初は本当にわかんなかった。何したらいいかわからなかったし、みんなに付いていくのに必死だったけど、一緒にライブしててチッチとかアイナちゃんとかを見ていて、カッコいいと思ったから私も自分のやりたいようにやるようになった」みたいなことを言っていて。それは自分の心に余裕ができたからだと思うんです。あと最近思うのが、PEDROをやるようになってから歌い方がとても変わって、とてもクセが強くなりました。松隈(ケンタ)さんの指示もあってレコーディングでもそういう歌い方になっていったとは思うんですけど、PEDROでワンマンライブ(参照:BiSHアユニ・DソロプロジェクトPEDROが初ライブ、田渕ひさ子迎え「透明少女」カバー)をしてから完全にライブでの歌い方が変わっていったなと。

──初ワンマンをした2018年9月下旬あたりから徐々に?

チッチ うん。あ、でも歌い方に関して思ったのは最近かな? BiSHのアルバム(7月発表の最新アルバム「CARROTS and STiCKS」)を出す前くらいに特に変化を感じました。

──一方でモモコさんはアユニさんの変化をあまり感じなかったんですか?

モモコグミカンパニー

モモコ ダンスについては最初からうまいなと思っていたので。でも歌い方の変化は私もすごく感じました。普通に歌ってもうまいと思うんですけど、ちょっと変わった歌い方をするようになった。たぶんそれがアユニが自分でカッコいいと思う歌い方だろうし、自分でいろいろ研究していると思います。リンリンもアユニもよくインタビューで「チッチぐらいしかちゃんとしゃべれなかった、なじめなかった」と言っていて、最初はBiSHの誰ともちゃんと話せなくて。でも今は楽屋で誰とでも向き合ってしゃべっているので。そういう部分でメンバーがBiSH自体に慣れて、いやすくなった頃から変わったなと私は思う。居場所を見つけたんだなって。

──BiSHはもともと楽屋でわきゃわきゃしている感じでもないという話を聞いたことがあります。

チッチ 基本は全然しゃべらないです。でも話題があればみんなで普通に話すし、空気が悪いわけではなくて、1人ひとりが自分のやりたいことをやっているという空間なんですよ。寝ている人もいれば、携帯いじっていたり、イヤフォンしてたりする子がほとんどで。だから楽屋が静かというのもあるし、もともとみんなのキャラがそんなに陽ではないから。ハシヤスメは陽キャラかもしれないですけど。アユニはずっとイヤフォンしてるタイプ。でも面白い動画とか、面白いテレビをやってたらその話題を共有してくれるんです。前はそういうこともなかったけど、するようになった。モモコはあんまり楽屋にいない(笑)。

モモコ そうだね(笑)。でも私はメンバーの中だとアユニと一番しゃべっているイメージなんですよ。例えば楽屋が2部屋に別れていて、アユニのほうに人がいなくて1人になったときはこっちの楽屋に遊びに来るし、かわいいなと思います(笑)。

チッチ 意外と寂しがり屋だよね?

モモコ そうだね。

チッチ つんけんして「私は寂しくない」みたいな感じ出してるけど、絶対寂しがり屋だと思う。