声優になってなかったら自分の声の魅力に全然気付かなかった
──先ほど芸歴のお話もありましたが、尾崎さんは声優としてのキャリアはまだ3年ほどですけど、役者としてのキャリアは長いんですよね。
東山 由香ちゃんはもともと子役さんですもんね。おいくつのときからやってるんですか?
尾崎 デビューが0歳なんですよ。
東山 0歳! 赤ちゃん! じゃあ今回のアシベでの役どころは原点に立ち返ったところもあるんですね。
尾崎 確かに!(笑) だから物心ついたときにはもうやっていたという記憶しかなくて、子供の頃から役者をしてるのが当たり前だったんですよ。
東山 そこから声優という新しい場所ができ始めて、違いとか難しさみたいなものは感じた?
尾崎 いっぱいありましたね。それまでは人同士で息を合わせてお芝居することばかりで、絵に合わせて声だけでお芝居することに慣れてなかったので。特にワンカットごとの気持ちの入れ替えが難しかったですね。声優さんって悲しい演技をしてても、場面転換によってはそこからすぐにうれしい演技をしなくてはいけないこともあるじゃないですか。声の芝居はその切り替えが難しく感じました。
東山 でもドラマとかだと、撮影の時系列がバラバラだったりするから、先に結末を演じたりすることもあるんですよね? 「あの出来事があったからこの感情がある」というのは、台本を読めばわかるのかもしれないけど、ある種、自分の心を騙して演じる感じだもんね。それは声優とはまた違った難しさがあるんだと思う。
尾崎 確かにそのシーンに入り込むと言うか、その時系列の前のことを経験したかのように演じてました。やっぱりどっちも難しいですよね(笑)。
東山 慣れですよね!
──お二人が声優というお仕事を選んでよかったと思う瞬間は?
東山 私はもともとアニメファンだったので、アニメを観てるときに「このキャラクターが本当にいてくれたらいいのになあ」という気持ちで観てたんです。なので、いざ自分がアニメに携わることになったときに、自分の演じるキャラクターに自分で観ても血が通ったと思えた瞬間がうれしいですね。キャラクターに生活感が感じられるようになると、お話もフィクションじゃなくなってくるし、それがうまくいったと思う映像を観たときに、自分もその世界に入り込んで同じ体験をしてるように思えるんです。そういうときには自分の役目を果たせたと思いますし、自分がアニメを好きだからなおさらそう思えるんでしょうね。
尾崎 私は声優になるまで、自分の声に負のイメージを持ってたんです。声が小さめだったし、明るさがないのかなって考えてたんですけど、声優を始めてキャラクターに声をあてることで、いろんな方に「元気をもらえる」とか「特徴のある素敵な声だね」と言ってもらえるようになって、自分にすごく自信が付いたんです。だからもっといろんな役に声を吹き込みたいし、今からがスタートだなと思ってて。声優になってなかったら自分の声の魅力に全然気付かなかったと思います。
東山 かわいい声なのに。
尾崎 いやいや、自分の中ではあんまりよく思ってなかったんです。それと子役のときから役につられることがよくあって。役者をやってるときはおとなしい子の役が多かったから、私生活でもおとなしくなったりして、笑えなくなったりしたんですよ。でも、声優になってからは、「けものフレンズ」のサーバルとか、元気な役をいただいて、自分も役につられて元気な部分を見つけることができて、そういう要素がプラスされて今の自分になれたと思うんです。そうやって自分の中の引き出しを1つ開けられたのかなと思ってます。
「自分の歌というのは、自分の声で歌うことなのか?」という疑問
──お二人はソロ名義のアーティスト活動について、ご自身の中でどう捉えてるのでしょうか?
尾崎 今まで歌ってきたキャラクターソングは、私ではなくて役になりきって歌う感覚だったので、今回の「LET'S GO JUMP☆」が尾崎由香として自分に向き合う初めての曲だったんです。なのでレコーディングのときは、自分らしさを乗せることを第一に考えてたんですけど、それがすごく難しかったんです。まず「自分の歌声ってなんだろう?」という壁にぶつかりましたね。今でも少しわかってなくて、「何が自分の歌声なんだろう?」って模索しながらやってます。
東山 もともと子役さんのときに歌のお仕事をされたことは?
尾崎 ないんですよ。
東山 じゃあ声優のお仕事を始めてから、歌のお仕事とかいろんなお仕事が急に増えたんですね。
尾崎 だから声優さんはいろんなことをするお仕事なんだって実感しました。子役時代はイベントのお仕事も全然なかったので、そこも初心者なんですよ。私は舞台にも出たことがないですし、ファンの方の前で何かをする経験がなくて。
東山 そっかー。じゃあ怒涛の日々でしたね(笑)。
尾崎 そうなんですよー(笑)。よく「子役のときからやってるからベテランなんですよね」というふうに思われるんですけど、本当に新人なんです。イベントも全然やったことないですし(笑)。恥ずかしいし怖かったので、もう役になりきるしかないんですよ。アーティストデビューすると尾崎由香としてイベントに出ることになるので、今から緊張してます。やっぱりソロアーティストとしてステージに立つのはほかと違いますか?
東山 違いますね。作品のイベントに出る場合、皆さん私だけを観に来てるわけではないので、自分があまり前に出ていくのもよくないかなと思ったり、一方でイベントに出させていただくからには何か爪跡を残さなくてはいけないと思ったり、すごく悶々としてたときがあったんです。でも、ソロのステージは、そこに来てくれる皆さんが私を観に来てくださってるという安心感もあるし、だけど今度は私だけで皆さんを楽しませなくてはいけないというプレッシャーもあったりして。
尾崎 そうですよね。
東山 ソロデビューして最初の頃は、すごくドキドキして、それこそ「自分らしさ」とか「自分の歌」について考えたりしましたね。私は声優を始めて9年目になるんですけど、その中でキャラソンを歌うときは、自分の個性をゼロにして、キャラクターを100%にしたいと思ってやってきたんです。だから歌手活動を始めてからは、逆に自分の個性を付けて歌うことが新境地と言うか、まったく白紙の状態から始めなくてはいけなかったので、すごく難しかったです。
尾崎 でも、そこから自分の個性を見つけ出せるものなんですか?
東山 私はデビュー1年目はそれで産みの苦しみをすごく味わって。私は最初の頃、曲の中に登場人物を作って、その登場人物として歌う感覚でやってたんです。歌の中で「会いたい」という気持ちを歌う場合、その登場人物に「会いたいよね、わかるよ、その気持ち」って寄り添う感じで歌ってたので、キャラソンを歌う場合と似たアプローチだったんですよ。でも、2年目に入って、私の中で突然意識が変わって、自分の中でちゃんと「会いたい」という気持ちを作れるようになって。当たり前のことなんですけど、それまでは自分自身の中に気持ちを作って歌うことがなかったので、それがわからなかったんです。それからは自分の歌が歌えるようになったと思ってて。
尾崎 ああ、なるほど。
東山 そもそも「自分の歌というのは、自分の声で歌うことなのか?」という疑問があって。じゃあ「自分の声ってなんだろう? 自分の歌いやすい声質で歌うこと?」という考えも自分の中でしっくりこなくて。私は合唱部出身なので(声楽ふうに)「ハーッ」みたいな歌い方が一番歌いやすいんです。でも、その歌い方で(声楽ふうに)「LET'S GO JUMP☆」って歌っても違うだろうし(笑)。であれば、その曲で自分が一番表現したいことを行うのが自分の歌なんじゃないかなと思って。それに気付いてからは、だいぶ楽になりました。
尾崎 今一番悩んでたことが解決しました! すごくいい話をありがとうございます!
東山 よかったー! 私はこのことに気付くまでにだいぶ時間がかかっちゃったので。声優という固定観念の中でずっと生きてきた分、歌手として自分1人が丸裸になるまでに時間がかかったタイプなんです。
普段の自分にとって、実はロックってなじみ深いんです
──アーティストの先輩である東山さんからのアドバイスもいただいたところで、尾崎さんの今後のアーティスト活動の展望を教えていただけますか。
尾崎 私はデビューするからにはソロライブをしたいです。そのためにはこれからいろんな曲と出会って、今までの尾崎由香にはない新たなジャンルの歌も歌って、たくさんの曲をライブで歌えるようになりたいという夢があります。
東山 由香ちゃんは今回3曲歌ってるんですよね。残りの2曲はどんな曲なんですか?
尾崎 初回盤のカップリングが「僕のタイムマシン」という曲で、渋谷系ってご存知ですか?
東山 うん、好き好き。
尾崎 この曲はまさに渋谷系!って感じですね。TWEEDEESの沖井礼二さんと清浦夏実さんが作ってくださったんですけど、すごくおしゃれで、リラックスできる感じです。「LET'S GO JUMP☆」とは全然違う感じなんですよ。通常盤のカップリングの「ハートビート・サイレン」は、buzzGさんに作詞作曲していただいて、ギターロックに挑戦しました。
東山 えー! ロックな由香ちゃんって想像できない。
尾崎 実はロックって普段の自分にとってなじみ深くて、聴くのも歌うのも好きなんですよ。アーティストデビューが決まったときにも、そういう一面を出せたらなと思ったんです。
東山 聴きたーい! でも1stシングルでこんなにバラエティ豊かだったら、次はどんな由香ちゃんが観られるのか楽しみ。
尾崎 ハードルが上がってしまいました(笑)。
東山 由香ちゃんのいろんな一面を観たいですし、プロジェクトの皆さんにも「次はこういう曲を歌う由香ちゃんを観たい」というアイデアがあるでしょうし、期待しちゃいますね。今回のMVでもいろんな由香ちゃんが観れましたけど、まだカッコいい由香ちゃんはいなかったので、次はそういう由香ちゃんが観られるといいな。
尾崎 ぜひ! 取り入れます!
- 尾崎由香「LET'S GO JUMP☆」
- 2018年8月1日発売 / Warner Music Japan
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初回限定盤 [CD+DVD]
2160円 / WPZL-31482~3 -
通常盤 [CD]
1404円 / WPCL-12911
- 初回限定盤CD収録曲
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- LET'S GO JUMP☆
- 僕のタイムマシン
- LET'S GO JUMP☆ inst
- 僕のタイムマシン inst
- 初回限定盤DVD収録内容
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- LET'S GO JUMP☆ MV
- LET'S GO JUMP☆ メイキング
- 通常盤収録曲
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- LET'S GO JUMP☆
- ハートビート・サイレン
- LET'S GO JUMP☆ inst
- ハートビート・サイレン inst
- 尾崎由香「尾崎由香1st写真集 ぴ(ゅ)あ」
- 2018年7月19日発売 / 講談社
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単行本 2592円
- 東山奈央「灯火のまにまに」
- 2018年5月30日発売 / FlyingDog
-
初回限定盤 [CD+DVD]
1944円 / VTZL-144 -
通常盤 [CD]
1404円 / VTCL-35275 -
アニメ盤 [CD]
1404円 / VTCL-35276
- CD収録曲
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- 灯火のまにまに
- ネバギバ音頭
- Mode Style
- 灯火のまにまに Instrumental ver.
- ネバギバ音頭 Instrumental ver.
- Mode Style Instrumental ver.
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 灯火のまにまに MUSIC VIDEO
- 灯火のまにまに メイキング
- 東山奈央「東山奈央1st LIVE「Rainbow」at 日本武道館」
- 2018年5月30日発売 / FlyingDog
-
[Blu-ray Disc]
7560円 / VTXL-33
- 尾崎由香(オザキユカ)
- 1993年5月15日生まれ東京都出身。0歳でパンフレット写真のモデルなど芸能活動を開始し、小学3年生の頃に舞台やテレビを中心に子役として活動。2015年4月に響にて声優活動を開始し、2016年に「ラクエンロジック」のコーナーアニメ「私たち、らくろじ部!」の主人公・須木菜乃花あど役でアニメデビューする。2016年7月には講談社ミスiDのセミファイナリストに選出される。2017年に放送されたテレビアニメ「けものフレンズ」でサーバル役に。2018年8月にシングル「LET'S GO JUMP☆」で歌手デビューした。
- 東山奈央(トウヤマナオ)
- 2010年に「神のみぞ知るセカイ」中川かのん役で声優としてテレビアニメデビュー。その後「きんいろモザイク」九条カレン役、「ニセコイ」桐崎千棘役、「マクロスΔ」レイナ・プラウナー役、「魔法少女育成計画」スノーホワイト役をはじめとした数々の人気作品に出演する。また声優業の傍ら、Rhodanthe*やワルキューレといったグループにも所属。2017年2月に「True Destiny / Chain the world」でソロデビューし、2018年2月に東京・日本武道館でのワンマンライブを成功させた。