ナタリー PowerPush - orange pekoe

最新アルバム「CRYSTALISMO」の魅力伝えるライブツアー東京公演 密着レポート

7月8日に待望のニューアルバム「CRYSTALISMO(クリスタリズモ)」をリリースしたorange pekoe。このアルバムはバンドによる一発録音を基本に制作された、ライブ感あふれる1枚だ。

orange pekoeはアルバムリリースに前後して、全国9都市を回るツアー「orange pekoe tour 2009 CRYSTALISMO」を行った。今回、このPower Pushのコーナーでは、アルバム発売翌日の7月9日に渋谷duo MUSIC EXCHANGEで行われたステージの模様をレポートする。

取材・文/臼杵成晃

ライブ写真

開場時刻の18:00少し前、会場前には平日の早い時間にもかかわらず、この日を待ちかねた大勢のファンが集まっていた。定刻どおりに入口のドアが開けられ、18:30を回る頃にはフロアはすでに一杯。男女の比率はおよそ半々ぐらいか。どの観客も一様に笑顔でステージの明かりが灯るのを待ちわびている。ひと足早い夏祭りの様相だ。

19:00過ぎに客電が落ちると、フロアからは一斉に歓声が上がる。ギタリストの藤本一馬を筆頭に、“師匠”こと岡部洋一(Perc/ROVO, ボンデージ・フルーツ, THE THRILL)、工藤精(B)、斉藤良(Dr)、鈴木恵子(Key/This Time)とレコーディングを共にしたバンドメンバーが揃い、演奏をスタートさせた。まずは最新アルバムの冒頭を飾ったインストナンバー「Theme of "CRYSTALISMO"」だ。グッと温度が上がるフロア。最後にナガシマトモコが姿を見せ、一際大きな歓声が上がる中、続けて新曲「Music is Freedom」が披露された。ナガシマは大きく手を挙げ、両手でピースサインを作りながら熱唱。この日のムードを象徴するかのような、まさに“Music is Freedom”な空間が初っ端からできあがっていく。

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「ただいま東京! 今日はみんなをメチャクチャ楽しましたる!」というトモジの声に続いて鳴らされたのは、16ビートのグルーヴィーな演奏が心地良い「踊る星」。後半の大サビではこの日最初の大合唱が巻き起こった。

曲が終わると、トモジは椅子に座り、突然アコースティックギターを構える。「みんなをビックリさせようと思って、ギターを始めました」とはにかむトモジに、客席から「かわいい!」「似合ってんで!」とフランクな声が飛び交った。真剣な表情で奏でられたのは、こちらも新曲「スパークル・ジャーニー」。彼女の初々しい演奏に、一馬のブルージーなギターが絡む。オレペコの新しい可能性を見せるパフォーマンスとなった。

さらにトモジはこの後、オーストラリア大陸の先住民アボリジニが使用する木管楽器、ディジュリドゥの演奏も披露。彼女の背丈以上はあるかという巨大な木管が生み出す不思議な音色に岡部の鳴らすタブラが合わさった、神秘的な響き。このディジュリドゥを使った演奏は最新アルバムの中で聴くことができるので、未体験の方はぜひチェックしてみてほしい。

ライブ中盤では、ウッドベースの響きがたまらない「ホットミルク」や、ジャズタッチの人気曲「やわらかな夜」など、じっくりと聴かせるナンバーが続く。そして、この春放送され大きな話題を集めたフジテレビ系アニメ「リストランテ・パラディーゾ」のテーマソングに起用された「マリーゴールド」のイントロが流れると、フロアのそこかしこから歓声や拍手がワッと起こった。多くの新しいファンを獲得することとなったこの曲。自然と体が動いてしまうリズムとポップなメロディは、ライブでも一際映える。今後ステージでの定番ソングとなりそうだ。

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この曲をきっかけに、ライブは怒濤の大盛り上がり大会へと突入する。「マリーゴールド」のエンディングにかぶさる一馬のボサノヴァギターから始まった「空に架かる circle」では、ハンズアップ状態で踊りまくる観客とのコール&レスポンスも。さらにメンバー全員が順に披露したスキャットソロでは、ドラマー斉藤がボイスドラム、ベーシスト工藤が重低音スキャットを即興で披露し、会場の笑いを誘った。

あたかもDJプレイのように繋げられた「ユートピア」では、四つ打ちハウスさながらの強いビートがフロアをさらに煽る。そして人気のシングル曲「キラキラ」と続き、そして最後は、現在のオレペコの全てが詰まっていると言っても過言ではないポップチューン「クリスタリズム」で締めくくられた。

アンコールの声を受け、お揃いのツアーTシャツ姿で再びステージに登場したトモジと一馬。「私たちも結成10周年を迎えて、気がつけば2人とも30歳です。でも、こうやってな、いくつになっても、歌い踊りながらやっていかへん?」とナカジが問いかけると、客席からはこの日一番の大きな歓声が上がる。そして2人だけの演奏で、昨年10月に発表された10周年記念シングル「Selene」が歌われた。

その後もう一度、一人ひとりバンドメンバーを紹介しながら呼び込むと、ベーシスト工藤の登場時にうれしい報告が。なんと、アルバム発売日となった7月8日、彼は子供を授かったのだという。“クリスタリズモベイビー(命名トモジ)”の誕生を祝う声と拍手が飛び交う中、「じゃあ最後に、また次会えるときまでの、orange pekoeからのたっぷりのラブを込めて」と「LOVE LIFE」が披露された。

ふたたび客電が灯されても、なおアンコールを求める拍手が鳴り止まない。想定外のダブルアンコールに、笑顔でステージへ戻ってきたオレペコとバンドメンバーは、「ほなもう1曲、騒いでいこかー!」と、代表曲「Honeysuckle」を熱演。場内をハッピーな空気で満たした。

ライブ写真

ニューシングル『CRYSTALISMO』 / 2009年7月8日発売 / BMG JAPAN

  • 初回生産限定盤 [Blu-spec CD™仕様+DVD] 3675円(税込) / BVCL-20001~BVCL-200002
  • 通常盤 [CD] 3059円(税込) / BVCL-11
CD収録曲
  1. Theme of "CRYSTALISMO"!
  2. クリスタリズム (Long Version)
  3. Music is Freedom
  4. Introduction ~ yuragi
  5. ゆらぎ
  6. スパークル・ジャーニー
  7. Introduction ~ Didgeridoo
  8. 神秘
  9. マリーゴールド
  10. 踊る星
  11. ユートピア
  12. スピカ
DVD収録曲(初回盤のみ)
  • Selene
  • マリーゴールド
orange pekoe(おれんじぺこー)

ナガシマトモコ(Vo/作詞)藤本一馬(G/作曲/編曲/プログラミング)の2人からなるポップ・ユニット。1998年に結成され、関西のカフェやクラブを中心にライブ活動を展開する。ジャズやブラジル音楽、ソウルなどさまざまなワールド・ミュージックを独自に昇華したサウンドが好評を博し、DJやクリエイターからも圧倒的な支持を得る。2002年にシングル「Happy Valley」でメジャーデビューを果たし、1stアルバム「Organic Plastic Music」は35万枚以上ものセールスを記録。2006年には初のリミックス集「Best Remixes」が、大きな話題を集めている。