ナタリー PowerPush - One by One - kzk soundtrack from adidas Originals by Originals
RYUKYUDISKO×AFRA & I.B.B.が赤裸々に明かす倉石“kzk”一樹ワールド
ライフスタイルブランド・adidas Originalsの新たなプロジェクト「Originals by Originals」設立を記念したコンセプトアルバム「One by One」が2月25日に発売される。
本作にはイアン・ブラウン、Grapefruit、Happy Mondays、TrickyといったUK勢、ジョン・メイヤーやトミー・ゲレロといったUS勢、さらにdelofamiliaやBEAT CRUSADERSら日本勢など、豪華アーティストが楽曲を提供。一見ジャンルレスでバラバラに見える参加アーティストをつなぐ絆は、adidas Originalsデザイナーでありアルバムの監修を務める倉石一樹だった。
今回は、本作で初めてコラボレーションを披露しているRYUKYUDISKOとAFRA & INCREDIBLE BEATBOX BANDを直撃。2組の出会いやプロジェクトの成り立ち、彼らから見た“倉石一樹像”についてたっぷり語ってもらった。
取材・文/野口理香
adidasのCM撮影現場から始まったコラボレーション
——まず、RYUKYUDISKO(以下RYUKYU)とAFRA & INCREDIBLE BEATBOX BAND(以下AFRA & I.B.B.)の出会いについて教えていただけますか?
陽介 僕が初めてAFRA & I.B.B.を観たのは「WIRE06」だったかな。でも一緒に仕事をするようになったのは(倉石)一樹さんつながりですね。
AFRA パーティで一緒にプレイしたり、夏のイベントで一緒になったり。
——このプロジェクトへの参加については、バラバラにオファーがあったんですか?
AFRA そうです。kzk(=倉石一樹)に声をかけてもらって。
陽介 えっとね、そもそも始まりは、アメリカで放送されているadidasのCMでRYUKYUとAFRAが共演したことなんですよ。LAで撮影したんだけど、そこで「何か一緒にできたらいいよねー」みたいな話があって。
哲史 その後日本に帰ってきて、具体的にこのプロジェクトが動き出したときに、じゃあRYUKYUはAFRA & I.B.B.と一緒にやろうということになったんです。AFRA & I.B.B.はヒップホップだけじゃなく、テクノでも何でも積極的に取り入れてるから、すんなりうまくいくんじゃないかな、と思いました。
——みなさん、プロジェクト参加前にも倉石さんと一緒にお仕事をしたことがありますよね。
AFRA そうですね。僕らと一樹さんの関係は、イアン・ブラウンのツアーからかな。2005年にイアン・ブラウンがUKツアーをやったとき、僕らが前座をやらしてもらったんですよ。そこから、イアン・ブラウンと仲が良い一樹さんと親しくなって。その後リリースされた僕らのDVDのジャケットデザインを一樹さんが手がけてくれたりしてるんです。
陽介 あ、RYUKYUのジャケットも、メジャーデビューしてからは全部一樹さんにお願いしてます。
——じゃあ、それぞれ倉石さんを中心につながっていた人の輪が広がっていって今回のプロジェクトに発展したんですね。
AFRA そうですね、kzkを中心に(笑)。
——その中にイアン・ブラウンもいて。
AFRA そうそうそう(笑)。
——「One by One」プロジェクトとしては、一樹さんが「アルバムを作りたいんだよね」っておっしゃったのが発端なんでしょうか?
スタッフ はい、そういうCDを作りたいという話がまずありました。曲は全部、自分の知っているミュージシャンにお願いしたいんだ、っていう依頼を受けて、みんなに話を振っていったんです。RYUKYUとAFRA & I.B.B.に関して言うと、オファーはバラバラにあったんですけど、このタイミングならせっかくだから一緒にやっちゃおうよって話になったんですよ。
——なるほど。一見すると共通項がないように思えるアーティストが集まっているなと思ったんですけど、みなさん倉石さんつながりなんですね。
AFRA そうですね。一樹さんワールド。
哲史 すごいですよね。国内 / 海外問わず、これだけのメンツがそろってこのコンピができるっていうのはなかなか刺激的です。
このアルバムは倉石一樹のためのサウンドトラック
——みなさんマスタリング済みの音源は聴きましたか?
陽介 聴きました。かなりいいアルバムですよね。
哲史 ジャンル的にも幅広いし、ポップな要素もあればコアな部分もあるから、聴くたびに違う感じで聴けて面白いですね。
——私も聴かせていただいたんですが、いい意味で無国籍だと感じました。
AFRA うん、まさにadidasだね(笑)。
——(笑)。アルバムは、参加アーティスト全員が新曲もしくは新バージョンを提供しているという豪華な内容ですが、他の方の楽曲を聴いた感想を教えてください。
AFRA なんか他にもビートボックス使った曲が入ってて(※アルバム2曲目、Japanese Cartoonの「Army」)「おい!」って思いました。
一同 (笑)
AFRA 「被ってるやん!」って。でも全然違う感じやったんでよかったですけど。曲もすごいよかったし。
陽介 ホントにいいアルバムだと思いましたね。流れもいいし、1曲1曲のクオリティもすごく高い。あんまりコンピレーションっていう感じがしないんですよ。1曲目から14曲目まで通して普通に聴きたくなる。コンピレーションアルバムって普通、自分の気分で、何曲目かだけを選んで聴いたりするじゃないですか。そういうんじゃなくて、このアルバムを聴く時は「1曲目から聴こう」っていう気持ちになる。コンピレーションアルバムではあんまりしない聴き方を、個人的にはしてます。
スタッフ だからサブタイトルをあえて「soundtrack」にしてあるんです。倉石さんにタイトルを決めてもらったんですけど、コンピレーションって言うのはちょっと違和感があるってお話があって。だったら、倉石さんが作った洋服にアーティストがインスパイアされたという意味で、倉石さん本人のサウンドトラックっていうのはどうですか、と提案したんですね。本人の好きなアーティストに声をかけて音楽を作ってもらってるから、ぴったりじゃないかと。
哲史 このアルバム、なんだかすごく一樹さんの作品だと感じるんですよね、全体を通して。一樹さんが自分で聴いてきた音楽をそろえたような感じ。映画で言うと「Directed by kzk」で、僕らは役者。そういうイメージがあるんですよ。
——なるほど。確かに、アルバム全体を通して不思議なまとまりがありますね。
哲史 うん、不思議。都会っぽい曲もあったり、ジョン・メイヤーみたいな、意外とフォーキーな感じの曲もあったり。面白いなと思います。
——曲順も倉石さんが決めたんですか?
スタッフ そうです。
陽介 曲順も「これしかないだろ!」ってものになってますよね。
哲史 世の中にはいろんなアーティストがいるし、音楽を聴く人にもいろんなタイプの人がいると思うんですけど、誰でも絶対このアルバムの中に好きになれる部分があると思うんですよ。歌モノもあるしインストもあるからバランスも非常にいいんじゃないかと。それに、ここから広がる可能性も感じてほしいな。
AFRA そうそう、広がりを期待したいですよね。なんかこう、僕らのことを知らんくても、他の曲で興味を持って「ああ、これはヤバいな」って感じてほしい。逆もあってほしいし。
哲史 僕らもこれを聴くと触発されますよ。僕はGrapefruit聴いてヤバいなって思った。ミニマルな感じで。
AFRA Trickyもイメージと全然違うかったし。
哲史 あれもなんかハマるね。
——Trickyの楽曲は最初に聴いたとき、どれだかわからないぐらいイメージが違いました。
AFRA わからないですよね。しかも女の人が歌ってるからもう。気になるわ。おまけにタイトルが「JAPAN」って(笑)。
スタッフ ちなみにTrickyは、去年「FUJI ROCK FESTIVAL '08」の2日目に出たんですけど、イアン・ブラウンが同じ日・同じステージのトリだったんですよ。そしたらTrickyが「イアンのライブが見たい」って言って残っていて。「イギリスでも全然会ってなくて、何年かぶりにここで会うんだ」と。そのとき、イアンが彼を紹介してくれたんですが、このプロジェクトの説明をしたらTrickyが「やりたいやりたい」って言ってくれたんです。じゃあ、ってRED MARQUEEの裏で参加が決まりました。
——へぇ!それはすごいエピソードですね。
収録曲 / アーティスト
- JUST LIKE YOU (A.D.I.D.A.S) / IAN BROWN
- Army / Japanese Cartoon
- Grapefruit / Grapefruit
- blond head / delofamilia
- 3 SoundS / Sarasa Ifu
- Shangrila (Takkyu Ishino Remix) / Chatmonchy
- Osaka by Okinawa / RYUKYUDISKO×AFRA & INCREDIBLE BEATBOX BAND
- Photographs (Remix) / Happy Mondays
- PERFECT DAY“ART CRUSADERS”MIX / BEAT CRUSADERS
- dark star memory / Rie fu
- Wonder (DSPK Remix) / Silent Poets
- JAPAN / Tricky
- Come When I Call / John Mayer Trio
- another nite another day another way / Tommy Guerrero
RYUKYUDISKO(りゅうきゅうでぃすこ)
沖縄出身の廣山哲史&陽介の兄弟からなる双子テクノユニット。当初は別々に音楽活動を行っていたが、互いの音楽スキルを共有し理解し合えた頃よりRYUKYUDISKOとしての活動を本格的に開始させる。石野卓球に渡したデモテープがきっかけとなり、2004年6月に彼が主宰するレーベルからミニ・アルバム「LEQUIO DISK(レキオ・ディスク)」を発表。同年7月には日本最大級のテクノイベント「WIRE04」に出演し、入場規制かかるほどの人気ぶりをみせた。デビュー当時より、一貫して故郷の「沖縄の音」にこだわった、オリエンタルなサウンドを展開し海外でも注目を集めている。また、自身の音源だけでなくm-flo、ORANGE RANGE、AIR、CHEMISTRYなど、数多くのアーティストのリミックスも担当。斬新なアイディアを取り込んだサウンドは、アーティストの新しい側面を引き出すと評判になっている。
AFRA & INCREDIBLE BEATBOX BAND(あふらあんどいんくれでぃぶるびーとぼっくすばんど)
AFRA、啓、K-MOONのヒューマンビートボクサー3人によるビートボックスグループ。日本のお茶の間にヒューマンビートボックスを浸透させたAFRAを中心に、2005年から本格的な活動をスタートさせる。同年に発売されたFIREBALLのアルバム「999 MUSICAL EXPRESS」にフィーチャリングゲストとして参加。2006年には1stアルバム「I.B.B.」をリリースする。国内外のフェスやイベントにも積極的に参加し、独特の表現力と固い技術で存在感を示している。