ナタリー PowerPush - 岡平健治
弾き語り自走ツアーV2達成 命がけの音楽半生を語る
音楽は想いを届ける手段。だから政治家でもよかったんです
──2008年からは初のソロ活動をスタート。まずは連続でシングル、アルバムをリリースしましたよね。
そしたら皮肉にも3B LAB.☆よりウケちゃってね(笑)。お客さんの入りも良かったです。
──でもちょっと寂しさもあったんじゃないですか?
ありましたよ。今まではいつも楽屋がワイワイしてたのに、ずっと1人だし。でもね、ソロはストイックに歌を伝えられるっていうメリットもある。自分のモチベーションですべてがブッ壊れてしまうっていう怖さもあるけど。
──1回目の自走ツアー含め、1人でやるっていうのはしんどいこと? それとも楽しいことですか?
両方ありますね。やるしかないなっていう気持ちも当然ありますしね。
──そこまで健治さんをストイックにさせるものって何なんですか?
何だろうなぁ。わかんないんですけど、僕は歴史が大好きで。ゲバラとか。あと、冒険家が好きだったもんで、多分、何かやりたいんでしょうね。変革ではなく突然の革命、エボリューションよりレボシューションを。厄介なヤツなんですよ(笑)。
──岡平さんが歌で伝えたいメッセージの根底にあるものって?
やっぱり、自分がどうしてこの世に存在してるのかっていうことと、自分の周りに10人友達がいたら3人ニセモノがいるよってこととか。俺リアルなことや現実も伝えてるんですよ。あとは家族とか大事にしようとか、倫理感みたいな部分。だから、音楽を伝えていきたいというか、僕の学んだ哲学をそのままみんなに跳ね返していきたいという感じ。
──なるほど。
なので、ファンにもハッキリ言ってるんですよね。君たちのためにツアー回ってるけど、君たちのために音楽はしてないって。僕はどっちかと言えば、音楽という手段で、家族のこととか自然界のこと、頑張ることとかを伝えたいという。だから政治家でもよかったんですよ。
──そういう意味では、生きるということへの執着が健治さんの中で強いものとしてあるのかなって思います。
それは強いですね。なぜかというと、僕は長崎生まれの広島育ちなので、ルーツとして何か乗り移ってるのかも(笑)。あとね、ちょっと深すぎるかもしれないですけど、戦争で沖縄と広島と長崎が、日本国内で一番大変だった地域じゃないですか。でも、そこってミュージシャンが多いなって思ってて。亡くなった人たちがメッセージを伝えてくれって僕たちに乗り移ってるのかなとか思ったりするんですよ。
10代の頃のピュアなパワーにあやかりたかった
──最新アルバム「純粋」には、10代の頃の未発表曲も多く収録されていますね。
11歳から30歳までの曲がね(笑)。単純にここで昔の作品をギュッと出したかったんです。
──なぜ今だったんでしょう?
うーん、この当時のピュアなパワーにあやかりたかった。純粋無垢でまっすぐな歌詞の世界を見て、今30歳になっていろんな知識が増えて苦しんでいる僕が、そこに助けを求めたっていうのが正直な気持ちですね。
──10代の頃の楽曲で、今回のアルバムに収録したナンバーのセレクト基準は?
歌詞がまともであるっていうのと、メロディが現代でも通用するものであるってこと。ただそれだけです(笑)。500曲くらいストックがあって、中には「梅干と大根」っていうふざけた歌や、「3年5組」っていうクラスの友達の特徴を書いた歌とか、今じゃ絶対書けない歌がいっぱいあるんです。
──改めて当時の歌詞を見てどう思いました?
強烈! わかりやすくて筋が通ってるし。
──その昔の曲の流れの中に新曲「恋島」が入ってるのも面白かったんですよね。やっぱり前後の楽曲との違いを感じて。
そうですね。これは1回目の自走ツアーで沖縄へ片道27時間かけて行ったとき、感動して作った歌です。いろんな海を見てきたんでね。海の名前を一つひとつ入れたんです。
ファン家族のことは本気で尊敬してる
──今回デビュー10周年で、改めて「純粋」というキーワードに立ち返ったのはなぜですか?
純粋じゃない俺が「純粋」というタイトルを使っていいものか悩んだけど、この昔の曲たちがあればみんな納得してくれるだろうと。とにかく、今は音楽という手段を使って、いよいよ何かを伝えたいっていう時期に入ってきたと思うんです。これまでもそうだったけど、今は世の中に対する不満や、みんなが抱えている虚無感とか。
──確かに、そういう時代性はありますよね。
ネットの普及でバーチャルな世界が蔓延しちゃってさ。大変な時代ですよ。でも、そんな僕の意思を受け取って、リアルで温かいものにしてくれてるのがファン家族(岡平はファンのことを愛を込めてこう呼ぶ)だったりするんです。彼らはネットのバーチャルな世界で打ち合わせして、ライブ会場で実際に集まってフラッグに寄せ書きをしたり、アルバムを送ったりしてくれる。ちゃんとバーチャルの世界だけじゃ終わってないっていうのがすごいなと思いますよ。ファン家族のことは本気で尊敬してますね。
──確かにブログを見ても、ファンの方たちの熱意がすごいですよね。
ハンパないです。男も半分以上いて、僕のことを兄貴みたいな感じで見てくれてる(笑)。やっぱり、もがいて頑張ってる姿を見てくれてるのかなーとは思いますけど。僕もファンに対して、ファンも僕に対して、常に本気の熱い気持ちでぶつかってるのは間違いないですね。
CD収録曲
- 音松楽蔵
- ELEGY OF GRADUATION
- 夏の夜空に輝く星を君と見たいから
- 夢・風・水
- 満秋
- 恋島
- 凩
- オンボロの君と僕
- 童心
- 僕之故郷
- 人間交差点
- 大阪ライフ
- LEGEND OF PUNKFOLKER
- 縁側
初回盤DVD収録内容
- 「夏の夜空に輝く星を君と見たいから」ビデオ・クリップ (story ver.)
- 「夏の夜空に輝く星を君と見たいから」ビデオ・クリップ (KENJI ver.)
- アルバム・イメージ・フォト・スライドショー
- 「夏の夜空に輝く星を君と見たいから」メイキング映像
岡平健治(おかひらけんじ)
1979年長崎生まれ、広島育ちのシンガーソングライター。上京後の1998年に岩瀬敬吾と少年フレンドを結成。その後イラストレーターの326と出会い、19(ジューク)として活動をスタートさせる。同年にシングル「あの青をこえて」でメジャーデビュー。翌1999年にシングル「あの紙ヒコーキ くもり空わって」でブレイクを果たし、2002年に解散するまで10代を中心に幅広い支持を得る。2001年に結成したロックバンド3B LAB.☆S(結成時は3B LAB.☆)と並行して、2007年からはソロアーティストとしての活動を本格化。2008年にはソロデビューシングル「告白」をリリースし、以降、自身で車を運転し日本全国を走破するという前人未到の「弾語り自走ツアー」を2度にわたって成功させている。2009年9月、2ndソロアルバム「純粋」をリリース。