東京・下北沢発のユニットOffo tokyoがテイチクエンタテインメント内のレーベル・Imperial Recordsよりシングル「Your Song」を配信リリースし、メジャーデビューを果たした。
Offo tokyoはシティポップをベースに、ソウル、ロック、R&Bなどを組み合わせたサウンドを奏でるユニット。Shota Kaya(Compose, G, Sax)、Hiira(Vo)、Seiya Ozaki(Compose, Key)、NEMO(DJ, Cat)の“3人+猫1匹”という特異なメンバー構成で活動している。彼らはいったいどのように結成され、どのようなこだわりを持って音楽を制作しているのだろうか? テレビ東京ほかで放送中のドラマ「マイ・ワンナイト・ルール」のエンディングテーマに使用されている「Your Song」の話題を交えつつ、メンバーに話を聞いた。
取材・文 / 西廣智一撮影 / はぎひさこ
Offo tokyoの成り立ち
──まず最初に、皆さんの出会いやOffo tokyo結成に至るまでのお話を聞かせてください。
Shota Kaya(G, Sax) そもそもは僕が2019年頃、下北沢を拠点としたOffoという2人組音楽ユニットを始めたんですけど、ライブをするにあたってサポートメンバーを入れたりしていくうちにどんどん関わる人が増えていって。グッズデザインが得意な人がいたり映像が得意な人がいたりと、わりと自分たちでなんでもできるようになり、活動の幅がどんどん広がっていったんです。
Seiya Ozaki(Key) 僕とShotaは同じ音楽学校出身で、彼がOffoを始めたことは知っていたんですけど、当初は一緒には音楽をやっていなくて。でも、あるとき「Offoのサポートメンバーが抜けるから、一度一緒にやらないか?」と声をかけられて、参加してみたらいつのまにか正式メンバーになっていました(笑)。
──当初は音楽的にどういうことを表現したいと考えていたんですか?
Shota 基本的には今とそんなに変わらないですね。
Seiya 根底にAORがあるのでそれを昇華したポップス、それが日本だとシティポップと言われるという。
Shota 便宜上わかりやすく言ってますけど、僕ら自身はシティポップをやっているという自覚はあまりないですね。
Hiira(Vo) 僕は当初、1人で弾き語りをやっていたんですけど、よく立ち寄る下北のバーがOffoのメンバーの溜まり場で、なんとなく仲よくなってイベントで一緒になる機会が増えていったんです。で、ボーカルが抜けるタイミングで「サポートで歌ってみない?」と言われたのが2020年1月。当時は4人ぐらいボーカリストがいたんですけど、気付いたら僕1人になってました。
Shota 大世帯になればなるほどメンバー間のスケジュールが合いにくくなるので、自然と「この日に稼働できるメンバーで」みたいな形になって、最終的に彼が固定メンバーになったんです。その頃から「もう一度音楽に絞ってやり直しましょう」という話が上がり、2021年の夏頃にOffo tokyoとして再始動しました。
──2021年と言うと、まだコロナ禍の最中ですよね。
Shota コロナの直前ぐらいにOffo tokyoを立ち上げて、さあ活動しようというタイミングでライブができない状況になって。最初の1、2年は表立っては何もできなかったので、主に制作をしていました。結果的にいい準備期間になりましたね。
僕らなりの東京に対する憧れ
──このユニットは、本日の取材では撮影にのみ参加したNEMOさんの存在も大きいと思います。Offo tokyoにとってNEMOさんはどういう存在なのでしょうか?
Seiya メンバーでもあり、ちょっとマスコットキャラでもありみたいな感じなんですけど、メインの担当はDJ。普段から忙しい人なので、僕らも深くは会話できていないし、謎が多いんですよね。
Hiira 昔から下北にいたらしくて、目撃情報はよく耳にします。
Seiya 「Offoの猫いた」みたいに、インスタに載ってることも多いし。
Hiira そうそう(笑)。今日もこのあと、ロスに買い付けに行くらしくて。
Seiya あと、M&Aが趣味らしいです……そう聞くと、より謎が深まりますよね(笑)。
Hiira しゃべらないので、こちらから感じ取るしかないという。
Shota ただ、DJとしていい腕をしてます。
──なるほど(笑)。改名にあたりユニット名に「tokyo」というワードが加わりましたが、それはどうして?
Shota 僕らは3人とも地方出身で、それぞれ意思を持って東京に何かを探しに出てきているので、僕らなりの東京に対する憧れというか。東京出身の人が感じる東京とはまた違う見え方があると思うし、僕らなりの「東京の輝いている感じ」を歌にしているところもあるので、だったら……と。
Seiya そういう意味では、東京が1つ重要なキーワードになっているのは間違いないです。
──ちょっと抽象的かもしれませんが、いわゆるシティポップと呼ばれるジャンルで歌われている歌詞には、東京で生まれ育った人たちとは違った、外側から入ってきた人たちのイメージが入り混じっている印象があって。
Seiya 確かに、シティポップと言われる曲の歌詞はそういうものが多いですよね。
──だから、皆さんの出身地を知ったときにすごく腑に落ちるものがあったんです。ちなみに、皆さんは東京に対してどんなイメージを持っていましたか?
Shota 僕は札幌出身で、親には特に不自由なく育ててもらいましたけど、やっぱり田舎の若者にとってはそれが窮屈だったりすることもあるんですよ。「ここではないどこかへ」みたいな感覚で、「東京には自由があるんじゃないか?」という希望をずっと持っていました。今はその頃の気持ちと、実際に東京に出てきてしばらく生活してからの思いが入り混じっている感じです。
Hiira 僕は四国、愛媛県のど田舎出身なんですけど、県民性なのかすごくミーハーなところがあって、音楽とかいろんなカルチャーにおいて「東京で流行っているものはイケてる」みたいなイメージがありました。もともと愛媛で5年ぐらいインディーズで活動して、そこでローカルスターを目指していたんですけど、もっとでっかいことを夢見たいなと思って東京に出てきたので、東京は夢追い人の街というイメージですね。
──Seiyaさんは埼玉出身で、ShotaさんやHiiraさんとは違い、距離的には東京から近いところで生まれ育ったんですよね。
Seiya 2人に比べたらね。東京は日本の経済やカルチャーの中心だと思っているので、自分が東京で暮らしたり、東京で仕事をしたりすることは当たり前のように感じていました。
懐かしさがありつつグルーヴ自体は最新
──Offo tokyoとしてのリリースは2023年後半から本格化し、昨年10月には1st EP「COCO TOKYO」が配信リリースされました。Offo tokyoで表現する音楽はOffo時代からの延長線上にあると思いますが、曲作りにおいて皆さんはどういうことにこだわっていますか?
Shota 僕やSeiyaが影響を受けたアーティストは1970年代や1980年代の、AORやオールディーズと呼ばれるような人たちばかりで。その影響を今の時代にフィットさせるようなバランスは、すごく心がけています。
Seiya 「Paradise」や最新曲の「Your Song」がまさにそうで、ちょっと懐かしさがあるんだけどグルーヴ自体はめちゃくちゃ最新みたいな。「やりたいことはこれだよね?」という共通言語がメンバーの中にあって、そのエッセンスをどう取り込んでどこまで見せるかというところで日々戦ってます。
Hiira 僕は声が自分の武器だと思っているので、「これは感情抑えめで歌ったほうがいい」とか「ここは強めに歌ったほうがいいよね」とその楽曲とのバランスを探ることを大切にしていて。最終的にはポップスとして、より幅広く聴いてもらえるようにと意識しています。
──僕のように80年代に青春時代を過ごした人間にとっては親しみやすい懐かしさがありますが、グルーヴ感は完全に現代的。今の若い世代は、このサウンドに新しさを感じて楽しんでくれるのかもしれませんね。
Seiya おっしゃるようにグルーヴは決して古いものじゃないので絶対にノれるし、若い世代にも好きになってもらえると自負しています。実際、SNSにも「ノリがいい」とか「心地よくて踊りたくなる」という声が多いですし。僕らは70's、80'sの音楽がルーツにあるので、僕らよりも大人の世代の方は懐かしいと解釈するかもしれないですけど、同世代や下の世代からは新しいと言われるものなのかなと。そのへんは自分たちの強みだと思います。
──「Lemon & Love Song」や「iiima」はアゲすぎずスローすぎずと、テンポ感が絶妙ですよね。
Hiira そうですね。かなり我慢してます(笑)。
Shota ある意味、アゲるとか跳ねるとかトッピングを施すと、どんな曲でもそれなりに聴けちゃうんですよ。でも「もっとストイックに、素の味で勝負します」という宣言をしているのかもしれないです。
──歌に関してはいかがですか? 歌っていて気持ちいいテンポ感というのもあると思いますが。
Hiira このメンバーの中で僕だけフォークや歌謡曲がルーツなんですよ。それもあって、ゆったりとしたテンポ感で細かく感情を表現する歌い方が得意だったり好きだったりするので、Offo tokyoのテンポ感は個人的にも気に入ってます。
次のページ »
ちょっともの足りないぐらいがちょうどいい