ナタリー PowerPush - 踊ってばかりの国

共感不要の傑作アルバム「世界が見たい」

1stアルバム「SEBULBA」のリリースからわずか7カ月。踊ってばかりの国がニューアルバム「世界が見たい」を完成させた。

今年2月に結成以来のメンバー滝口敦士が脱退し4人体制となった彼らだが、新体制となる今作では、ユルい心地よさを持った彼ら独自のサイケデリックなポップがさらに進化。奔放で辛辣な歌詞の世界観もあいまって、深い聴き応えをもたらす1枚に仕上がっている。

ナタリー初登場となる今回は、バンドを率いる下津光史(Vo, G)にインタビューを実施。彼の音楽的なルーツから、アルバムの成り立ち、表現者としてのスタンス、2011年の日本に感じることまで語ってもらった。

取材・文 / 柴那典 インタビュー撮影 / 中西求

 
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速い音楽がしんどくなって始めた

──アルバムすごく良かったです。いい意味で、久々に聴いた“お行儀の悪い”アルバムだと思った。

ああ、最高っすね! その感想は。

──今回のインタビューでは、改めてバンドの成り立ちから訊いていこうと思うんですけれども。そもそも踊ってばかりの国というバンドはどうやって始まったんでしょう?

下津光史(Vo, G)

始まりは、今は辞めちゃったギターの滝口くんと僕で「アシッドフォークをやろう」って組んだんですよ。最初は2人やったんですけど「バンドがええわ」ってなって、メンバーをどんどん入れていって。ホンマは滝口くんと一緒に始める前に違うバンドメンバーがおったんですけど、そいつらは全員クビにして。僕があとから入ったのに、バンドを乗っ取ったみたいな形なんですよね。で、バンド名だけが残って。

──今は滝口さんも辞めてしまったわけで。それで乗っ取りが完了したという?

はい(笑)。完全に乗っ取りました。

──下津さんの音楽のルーツは、洋楽にあるんですよね。

そうですね。あんまり日本人の音楽は聴いてないです。

──小さい頃から親がたくさんレコードを持ってたり?

なんかね、サザンロックとか、ウエストコーストの時代のEAGLESとか、THE ALLMAN BROTHERS BANDとか、そのあたりは小さいときからずっとコピーしてました。あと、ポール・サイモンとかですかね。70年代とか80年代前半の音楽をめっちゃ聴いてました。

──思春期の頃を振り返るとどうでしょう。そのときの自分にとっての憧れは?

そのときは……BAD BRAINSも好きやけど、BUMP OF CHICKENも好きみたいな、10代特有のよくわからない感じですね。パンクはめちゃ好きでした。悪そうなヤツに惹かれてたという。ちょうど2000年前後やったんで、THE LIBERTINESとかTHE STROKESも聴いてました。

──踊ってばかりの国は、パンクとかハードコアにハマっていた時期のあとに始まったバンドだった?

そうなんです。なんかね、速いのがしんどくなってきたんですよ(笑)。そんとき、神戸にvalvaというアシッドフォークロックみたいなことをやったバンドがおって。そこのライブで「こんなんやろう」って言って始まったんですね。ま、ダルくなったんでしょうね、ホンマに。

──デヴェンドラ・バンハートとか、フリークフォークあたりの影響もありました?

うん。ジョアンナ・ニューサムとデヴェンドラ・バンハートの登場はデカかったですね。「これはええぞ!」って。自分らがやりたいこととめっちゃリンクしましたね。

風通しがいい感じになった

──前作の「SEBULBA」を作った直後に滝口さんが脱退したわけですね。今から振り返ると、あのアルバムはどういうものでした?

コンセプトはないですね。できた曲を録るって感じなんで。ただ、あれはメンバー各々がやりたいことやるっていうアルバムやったかな。今回からは俺主導ですからね。メンバーが抜けたんも「いらんな」と思って、辞めてもらったわけですから。ホンマはそんなきれいなもんじゃなかったんですけど(笑)。

──音楽の方向性とかやりたいことが違ったということで、脱退に至ったわけですよね。どういうところが違ったんでしょう?

下津光史(Vo, G)

プレイですかね。「そんなんせんでええやん」ってことをめっちゃしてたので。僕のタイプじゃなくなってしまったんですよ。やりたいことが違うというのも大きかったですね。彼のフィルターがあることによって、俺がええと思ってた曲がボツにされたりして。それもいらんなと思ったんで。そういうとこですかね。

──このアルバムと比べると「SEBULBA」にはある意味フィッシュマンズにつながるような邦楽らしい感覚も残ってますよね。

「SEBULBA」の頃はまだ邦楽を聴けとったんですよね。最近はホンマに聴けなくて。フィッシュマンズも好きなんですけれど、僕自身、今、ちょっと日本語詞が好きじゃないんすよね。ダサく聞こえるんですよ。自分が日本語の歌詞を歌ってるくせにそんなこと言うんは、どうかと思うんですけれども(笑)。

──メンバー編成が4人になって、何が一番変わりました?

レコーディングとか制作はスムーズになりましたね。風通しがいい感じになった。辞めてもらって正解だったな、って。

──どういうところがスムーズになった?

僕だけしか作るやつがおらんので。めっちゃ話が早くなりましたね。「こんなん、やりたない」というメンバーがおらんくなったので。

ニューアルバム「世界が見たい」 / 2011年11月2日発売 / 2500円(税込) / Mini Muff Records / MDMR-2018

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収録曲
  1. 世界が見たい
  2. !!!
  3. going going
  4. 言葉も出ない
  5. ドブで寝てたら
  6. 僕はカメレオン
  7. EDEN
  8. 反吐が出るわ
  9. よだれの唄(リアレンジ)
  10. 悪魔の子供(アコースティック)
  11. お涙頂戴
  12. 何処にいるの?
  13. セレナーデ
踊ってばかりの国(おどってばかりのくに)

下津光史(Vo, G)、林宏敏(G)、柴田雄貴(B)、佐藤謙介(Dr)からなる4人組バンド。2008年神戸で結成。2009年3月に発表した自主制作盤1stミニアルバム「おやすみなさい。歌唄い」と2010年3月の2ndミニアルバム「グッバイ、ガールフレンド」がともに好評を得、同年「FUJI ROCK FESTIVAL」「RUSH BALL」などの大型フェスに出演。2011年3月には初のフルアルバム「SEBULBA」を発表し、全国ツアーを行うなど活動の幅をさらに拡大させる。同年11月には2ndフルアルバム「世界が見たい」をリリース。