OddRe:「THE GOLDEN PROTOTYPE.」特集|バラバラの個性持った3人が提示する“新たな時代のバンド像” (2/2)

音が鳴るものってオモロくないですか?

──さっきの結成の話を聞くと、SOIさんもAirAさんも「サダさんとなら」ということでバンドが始まっているし、サダさんのバックグラウンドもとても気になるのですが、なぜ音楽をやりたいと思ったんですか?

サダ 親も音楽が好きで、物心ついたときから音楽に囲まれていたんです。親が聴いていたハイスタ(Hi-STANDARD)とか。あとなんだっけ? お父さんが好きなバンド……。

SOI 俺に聞かれてもわからん(笑)。

サダ あ、Green Dayだ! ほかにはアヴリル(・ラヴィーン)とかもずっと家で流れていました。私自身は「のだめカンタービレ」を何回も繰り返し観るくらい大好きで、「『のだめカンタービレ』に出てくる曲を弾きたい!」とピアノを始めたんです。そもそもずーっと、音が鳴るものが好きなんですね。「セーラームーン」の変身コンパクトとかを、ずっと持ち歩いて音を鳴らしているような子供でした。で、ピアノから始まって広く浅くですけど、いろんな楽器に触れてきました。音が鳴るものって、オモロくないですか?

──オモロいと思います(笑)。ベースはいつ頃から始めたんですか?

サダ 2年前ですね。それまでもベースの音は好きだったんですけど、とにかく目立ちたがり屋なので、バンドではリズム隊をやったことなかったんですよ。ヴォイスにもギターで入ったんですけど、入塾して3カ月くらい経った頃にヴォイスの人に「お前はベースやれ。アコギは似合わん」と言われて(笑)。とりあえず、私は音が鳴ればいいから「はーい。今からベース買ってきます」って、その日にベースを始めました。で、実際に練習してみたらめっちゃ楽しくて、今は一番好きな楽器です(笑)。

AirA めちゃめちゃ似合ってるよね、ベース。

サダ うん、ヴォイスの人が言ってたことは正解だったと思う。

OddRe:

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──さっきSOIさんが言っていた「とにかくアイコニック」という部分については、どうして自分はそういう人間になったんだと思いますか?

サダ とにかく昔から人よりも何倍も目立ちたがり屋だったんですよ。リレーで逆走するような子供で(笑)、とにかく人と違うことがしたいし、逆張りがしたい。それはもう保育園の頃からなんです。ステージ上でも、マジでなんも考えず「自分が楽しければいいや!」と思って演奏してます。人のことなんて何も考えてない(笑)。だからよかったなと思います、音楽があって。音楽以外で自分は世に溶け込めないと思いますもん。

SOI ホント天職だよ。

俺の歌を聴け!

──AirAさんはどのように音楽にのめり込んでいったんですか?

AirA 私のお母さんは歌をやっている人で、その影響で小さい頃からQueenやレディー・ガガを聴いて育ったんです。家の中ではライブ映像も流してくれていて、私は毎日それを観ながら真似っこしているような子供でした。そしたら、お母さんが「じゃあ、AirAも歌やってみる?」と言ってくれて。私が本気で歌手になりたいと思ったのは小学校の頃で、本気で音楽を“学ぼう”と思ったのは中学生の頃。その頃は弾き語りや“歌ってみた”をネットに投稿していたんですけど、ずっと1人で練習していても技術は身に付かないんじゃないかと思ったんです。で、その頃聴いていたVaundyさんのインスタライブでヴォイスの存在を知りました。

──歌は自分自身に合っている表現だと思いますか?

AirA はい。でも、それはお母さんのおかげかもしれない。母が歌う姿をたくさん見てきたので、その影響でずっと私も歌ってます。

──ステージの上で歌うときはどんなことを意識してますか?

AirA 「俺の歌を聴け!」って感じで歌ってます(笑)。それはずっと変わらないですね。

OddRe:

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思う存分遊べる時代が来た

──SOIさんの音楽活動のルーツはどこにあるんですか?

SOI 僕も親が音楽好きだったので、幼稚園の頃からずっと家でLinkin ParkとかSum 41の曲が流れていたんですよ。その中でも、国内だとELLEGARDENとONE OK ROCKは子供ながらに「これはカッコいい」と特別に感じた。当時、ELLEGARDENは活動してなかったんですが、ONE OK ROCKはZepp Tokyoのライブを観に行くことができたんです。子供だから、最後尾で親にバリケードされながら観たんですけど(笑)、親の背中越しにライブを観ながら「これで食ってる大人がいるなら、俺もこれになりたい」と。それに俺もサダと同じ目立ちたがり屋な子供で、「目立ってお金が稼げるっていいな」と、よこしまなところから音楽への憧れはスタートした気がしますね。で、小中学生の頃から歌詞を書くようになって、カラオケに行って歌を歌うっていう生活をしていました。

OddRe:

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──SOIさんにとってワンオクはめちゃくちゃ大きな存在なんですね。

SOI そうですね。あと、中学生の頃に出会ったSet It Offというアメリカのバンドがいるんですけど、当時、彼らがすごくユニークなアルバムを出したんです。Set It Offはずっとポップパンクみたいな音楽をやっていたんですけど、その作品はマイケル・ジャクソンやディスコ、モータウンの要素を含んだ内容で、しかも1曲目がメタルなんです。そのアルバムを聴いたときに、「音楽ってこんなにいろんなことができるんだ!」と可能性を感じました。自分が見過ごしてきたいろんな音楽が大好きなロックと共存しているのを感じて、「音楽って、全部取り扱っていいんだ」と気付かされた。僕の曲作りの根本はそこですね。自分でいろんな要素を掛け合わせたミクスチャーをやりたいっていう。

──それは今、OddRe:で作っている音楽の方向性にもつながっていますか?

SOI 「この音楽とこの音楽の掛け合わせは、今のところ俺の頭の中にしかないな」というものがあるんです。基盤はロックだけど、そこにディスコやファンクの要素をはらませつつ、サウンドはエレクトロな要素も強い……みたいな感じで、「これとこれとこれを調合したら最強じゃねえ?」というアイデアがたくさんある。OddRe:はそれを表現するには十分なメンバーがそろっていると感じています。僕らは「音楽はもうやり尽くされている」と言われる時代にバンドをやっているけど、逆に新しい音楽を作るための素材がそろっているのが今だと思うんですよ。やっと思う存分遊べる時代になった。「音楽は出尽くした」なんてすごくつまらない議論だと思う。

これは僕らのマスターピースになる

──SOIさんはずっとギターがメインなんですか?

SOI ギターですね。僕が今使っているストラトキャスターはもともと、母親が高校生の頃に文化祭用に買ったフェンジャパ(フェンダー・ジャパン)なんですよ。1980年代のモデルで、今ではかなりいい感じの値段が付くようなものなんですけど、そのギターと自分の背丈が同じくらいの頃から、ギターをクローゼットから引っ張り出してペンペン叩いていた記憶があります(笑)。で、小学生の頃に「まずワンオクを弾いてみるか」って、そのストラトで練習して、そのあとはSet It Offを弾いて、マイケル・ジャクソンを弾いて、そのままヴォイスに入ったという感じですね。

──例えばOddRe:として最初に発表した「FEVER TIME」は、ブルースロックのエッセンスも色濃く入っていますよね。そこが個人的にはすごく新鮮だったんです。ブルースって、この10年間そこまでメインストリームに現れなかった要素だと思うんですけど、それが「FEVER TIME」では見事にモダンに昇華されているなと思いました。

SOI 僕にとってブルースはめちゃくちゃ大きいです。ジミ・ヘンドリックスに始まり、(スティーヴィー・)レイ・ヴォーンとか、すごく好きです。ただ、好きなんですけど、そのあたりの音楽を現代的に落とし込んでいる人がいなかったから、いちリスナーとして物足りなかった。でも、確かにあのいなたいリフを現代的なBPMやエレクトロニックなサウンドに合わせるのはなかなか難しいし、今の音楽はコンプレッションを強くかけるので、エレクトロなサウンドと共存させようとすると、ブルースの基盤であるピッキングのニュアンスが崩れちゃうんですよね。「FEVER TIME」はそれを共存させるためにかなり実験した曲です。ブルースロックにリスペクトを込めた、新しいJ-ROCKを作りたかった。僕は洋楽のルーツが大きいけど、日本の音楽も大好きで、ボーカロイドやJ-ROCKが持つ変幻自在なサウンドにも魅力を感じる。その要素を持っているブルースロックやエレクトロロックはないから、「FEVER TIME」で実現したいと考えていました。あと、「この曲は僕らのマスターピースになる」と思ったので、言いたいことを全部言ってやろうと、歌詞をガーッと書いた記憶があります。うまいこと全部解読してくれたら、俺が何を言いたいか理解できるんじゃないかな。

“正しさ”を放棄した一直線の衝動を

──SOIさんの書く歌詞はすごく独特ですよね。「FEVER TIME」だけでなく、「CRASH OUT!!!」や「東京ゴッドストリートボーイズ」もそう。耳で聴くだけでなく文面で歌詞を読むとその異様さがはっきりとわかりますが、歌詞には顔文字が入っていたり、カギカッコやマルカッコでくくられている部分があったり、めちゃくちゃカジュアルな言葉遣いが出てきたと思ったら、「色は匂えど散りぬるを」みたいな言葉が出てきたりする。文体まで表現になっているような歌詞というか。

SOI 今の日本で生きてきて、僕ら世代が血肉にして見てきた言葉は何かと言うと、ネットスラング的なものだったりするんです。“ねらー用語”とか。そういうものをもってしてブルースロックを歌ったら、今の日本人がやっている音楽としてすごくいいものになるし、自然な音楽になるんじゃないかと思ったんです。実際、AirAもサダも自由そうに歌ってくれていて。

AirA うん、自由。「楽しい!」って思いながら歌ってる。

サダ 私はカバーだと言葉に興味がなさすぎて歌詞が覚えられないんですけど、SOIが作ってくれる歌詞は覚えやすいし、しっくりくるから歌いやすい。

──SOIさんは、先鋭的な感覚で小説や詩を書いている現代の作家たちとも通じる言語感覚を持っているのかなという気もします

SOI インスタのストーリーズでポエムを書くタイプの人間ではありますね(笑)。僕自身は活字が得意ではなく、本をたくさん読んできたわけではないんですよ。だけどいろんな人と会話するのは好きだし、その中で聞いた言葉を敏感に覚えていて、気になったらメモしたりしている。歌詞もそういう感覚で書いていますね。

──今感じていることや見えているものを、すごくリアルに書き留めようとしている歌詞のように感じます。

SOI ログとして残したいんですよね、2025年を。音楽って記憶媒体だと思うので。

──先ほどのお話でアニメからの影響も大きいと言っていましたけど、「東京ゴッドストリートボーイズ」は、「東京ゴッドファーザーズ」(2003年公開 / 今敏監督作)からですか?

SOI おお! まさにです。今敏監督の作品が大好きなんですよ。「東京ゴッドファーザーズ」を観たときに「この気持ちをどうしてくれようか?」と思ったくらい。ただ、この曲のタイトルは適当に付けました。いい意味で、ですけどね。意味主義から脱却したかったんです。これは僕らの世代ならではかもしれないけど、すべてに意味を考えてしまうし、正論ばっかりで考えてしまいがちなんです。でも、僕が思う人間が人間たる理由って、やっぱり衝動なんですよね。正論はいつかAIが全部教えてくれる。そのときに大事なのは、何が好きで、直感で何をしたいか。OddRe:で、僕は説教臭いことを1個も言いたくないんです。「これが正しい」とか「こうあるべきだ」とか、そんなこと1つも言いたくない。極端な話ですけど、どんな感情にも同情しないといけないのが音楽だと思うんです。世界最悪の犯罪者にも響く音楽はある。音楽ってそういうものなんです。僕にはそういう音楽を作る使命がある。そういうことを考えたとき、今の時代に僕がやりたいと思うのは、人間の“正しさ”を放棄した一直線の衝動。それを楽曲として残したいんです。「東京ゴッドストリートボーイズ」はまさにそういうことを歌っている曲だと思います。

──今の言葉がOddRe:というバンドを明晰に言語化してくださっている気がします。ライブ活動も活発にやられていると思うんですけど、手応えはどうですか?

SOI ライブはいっぱいやっていますよ。来年の2月にショーケースライブもありますから。これからうちらが生み出す大きな流れ、強いては世代交代の開会式になればいいなと思います。2人はショーケースライブに向けての意気込みはある?

AirA 踊らせるしかないっすよ。

サダ 「踊れ!」って。

AirA うちらはステージ上で勝手に楽しんで、勝手に踊っているので。きっとそれを観たら、みんな踊り出すと思います。

OddRe:

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公演情報

OddRe: showcase LIVE "TAPE:C-46"

2026年2月5日(木)東京都 WWW X

プロフィール

OddRe:(オドレ)

AirA(Vo)、ユウキ サダ(B, Vo)、SOI ANFIVER(G, Composer, Trackmaker)からなる3ピースバンド。ブルースロック、ディスコファンク、ヒップホップ、ハウスなど国外のサウンドをベースに、J-ROCKやボーカロイドなど国内のメロディアスかつ変幻⾃在なサウンドを融合した楽曲で注目を浴びる。2025年11月に1st EP「THE GOLDEN PROTOTYPE.」をリリース。2026年2月には東京・WWW Xでショーケースライブ「OddRe: showcase LIVE "TAPE:C-46"」を開催する。