踊Foot Works「GOKOH + KAMISAMA」 PR

WHO IS ODD FOOT WORKS? 踊Foot Works特集|ロングレビュー&ミュージシャン8人のコメントで迫る噂の4人組の実像

踊Foot Worksが4月に配信リリースされた最新アルバム「GOKOH」とニューシングル「KAMISAMA」をセットにした2枚組CD作品「GOKOH + KAMISAMA」を7月3日に発表した。

「GOKOH」はオカモトレイジ(OKAMOTO'S)をゲストボーカルに迎えた「GOKOH feat. オカモトレイジ」やAAAMYYYとのコラボ曲「髪と紺 feat. AAAMYYY」などを収録した12曲入り。「KAMISAMA」は表題曲と「メスゴMIRROR」の2曲を収めた作品だ。洗練されたサウンドメイキングが光る計14曲からは、踊Foot Worksのポテンシャルの高さを感じることができる。

今回、音楽ナタリーではライターの宇野維正によるレビューと、井口理(King Gnu)、佐藤千亜妃、高岩遼(SANABAGUN.、THE THROTTLE)、津野米咲(赤い公園)、TENDRE、成田ハネダ(パスピエ)、hime(lyrical school)、Ryohuのコメントを通して踊Foot Worksと新作「GOKOH + KAMISAMA」の世界を掘り下げていく。

文 / 宇野維正(P1) ライブ写真 / Machida Chiaki

踊Foot Works「GOKOH + KAMISAMA」ロングレビュー

これが真ん中でいいのに。

踊Foot Works
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最初にバンド名を見たときはどう発音したらいいのかもよくわからなかったし、そもそもバンドと呼ぶべきなのかグループと呼ぶべきなのかも判然としないし、歌ってると思ったらラップっぽくなるし、ラップしてると思ったら歌っぽくなるし。メンバー4人の佇まいもオシャレなのかオシャレじゃないのか、悪そうな連中なのか行儀のいい連中なのか、頭がキレる連中なのかぼんやりしてる連中なのか、野心たっぷりなのか「別に趣味の延長でやってるだけっすよ」という感じなのかもよくわからなかった。いや、名前の呼び方以外は今もまだよくわからないことも多いのだが、今回2ndアルバムと1stシングルを2枚組としてフィジカルリリース(そのパッケージの仕方も謎だが)した「GOKOH + KAMISAMA」を聴いてはっきりと感じたのは、「これが真ん中だったらいいのに」ということだ。

踊Foot Worksの立ち位置は、現在の日本の音楽シーンでは言葉本来の意味において“オルタナティブ”ということになるのだろう。ラッパーとギタリストとベーシストとコーラス&トラックメイカー / マニピュレーターという変則的な編成。いかにもヒップホップのコンセプトアルバムっぽいプロローグ曲「2019 IN EXCAVATE」で幕を開けるアルバム「GOKOH」は、2曲目の「JELLY FISH」でいきなりギターのリフが楽曲をリードしていく。そしてTempalayのメンバーでもあるAAAMYYYをゲストボーカリストとしてフィーチャリングした3曲目「髪と紺」は、まるで往年のm-floを思わせるようなスイートでフィールグッドなダンスチューン。そんな調子で、OKAMOTO'Sのオカモトレイジ(Dr)をゲストボーカリストとしてフィーチャリングした、メロウでいなたいサビが耳にこびりついて離れないラストの「GOKOH」まで、まったく油断も隙もない仕上がり。楽曲単体でいろいろ能書きを垂れていくことは可能だが、アルバム全体で描かれたバンド像というかグループ像は「ほかの何にも似てない」としか言いようがない。

それぞれのメンバーの音楽的バックグラウンドの広さから、そんな放っておいたら拡散してしまいがちな踊Foot Worksのサウンドを「GOKOH + KAMISAMA」で見事にまとめあげているのはミックスを担当したillicit tsuboi。90年代初頭からA.K.I.PRODUCTIONS、キエるマキュウ、ECDの作品などで活躍し、近年もPUNPEEやKANDYTOWNなどの作品にエンジニアやプロデューサーとして参加してきた彼の貢献もきっと大きいのだろう。いわゆる「ヒップホップ的」ではないフロウや音のエレメンツが次から次へと放り込まれているにも関わらず、「GOKOH + KAMISAMA」は日本のヒップホップ史の延長上で捉えることもできる作品になっている。

実は以前、踊Foot Worksのマネージメントを手がけている三宅正一氏に、直接的に踊Foot Worksについての話ではなかったが「どうして多くの日本の若いラップのグループが『ヒップホップとは?』みたいなことにずっと足を絡め取られていて、海外の同時代のトラップのビートやフロウを積極的に取り入れないのか自分には意味がわからない」という話をしたことがあった。歴史をリスペクトすることと新しいものを取り入れることは別に矛盾しないし、そもそも「歴史をリスペクトしない」というのもヒップホップ的には間違ってるかもしれないけれどラップミュージックの1つのあり方としては別に全然ありというか、今のアメリカの状況はそういう新しい世代が牽引しているんじゃないか、みたいな。

踊Foot Works
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で、今もそういう頭の中の見取り図はあるにはあるのだが、やってることはほかの何にも似てないのに、ちゃんとヒップホップのトーン&マナーに沿っている「GOKOH + KAMISAMA」を聴きながら、ちょっと考えを改めつつもある。その背景としては、昨年から今年にかけてリリースされたアール・スウェットシャツ「Some Rap Songs」やタイラー・ザ・クリエイター「Igor」が、まさに「ほかの何にも似てないのに、ちゃんとヒップホップのトーン&マナーに沿っている」ことによって生み出された傑作だったことも大きい。「いきなりUSラップの話をされてもなー」と思われるかもしれないが、踊Foot Worksの「踊」の英字表記が「Odd」であることを踏まえれば、かつてOdd Futureの中心メンバーだったアール・スウェットシャツやタイラー・ザ・クリエイターの話をここでするのはそんなに見当違いなことではないだろう(当然、踊Foot Worksにとって名前の由来の1つでもあるはずだ)。

トラップの極端に簡素なビートとシンプルな構成が音楽シーンのメインストリームとなったアメリカで、アール・スウェットシャツやタイラー・ザ・クリエイターの「これでもか」というほど複雑なサンプリングやエディットを駆使して構築された作品は、メインストリームで現在支配的な価値基準に揺さぶりをかける“オルタナティブ”として批評家からもリスナーからも大いに受けた。一方、現状で日本の音楽シーンにおける踊Foot Worksは、ラップミュージックという“オルタナティブ”のさらに“オルタナティブ”ということになる。でも、自分は日本でもこういう音楽が「真ん中」に来る時代に来てほしいのだ。いや、どうせ来るんだけど。できるだけ早く!