NOMELON NOLEMON「感覚派」特集|メンバーインタビュー&MV出演俳優・未菜ソロインタビュー

「フォニイ」「リコレクションエンドロウル」といったボカロ曲のクリエイターとして知られるボカロP・ツミキが、ぷらそにかのメンバーとしても活動するシンガーソングライター・みきまりあとタッグを組んで結成されたユニット、NOMELON NOLEMONの1st EP「感覚派」がリリースされた。

音楽ナタリーでは「感覚派」の配信を記念して2回にわたる特集を展開。第1回となる本稿ではツミキとみきまりあの2人に、ユニット結成の経緯や9月に行われた1stライブ「シャッターチャンス」の手応え、ボカロP時代とは異なる手法で曲を生み出している最新作の制作背景について語ってもらった。

また第2回の特集には「感覚派」の収録曲「線香金魚」のミュージックビデオに出演している未菜(ex. BiS)が登場。未菜がソロになった理由や、女優を目指そうと思ったきっかけ、MV 出演に至った経緯、ソロシンガーとしての今後について話を聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦(P1~2)、田中和宏(P3~4)撮影 / 宇佐美亮

NOMELON NOLEMONインタビュー

決め手になったのはマインド

──まずはNOMELON NOLEMON結成の経緯から伺います。ボカロPとして活躍していたツミキさんがなぜユニットを結成することに?

ツミキ ボカロのアルバム(2021年2月発売の「SAKKAC CRAFT」)を1枚作り終えたあとに、もっと大衆性を帯びた曲を書いてJ-POPシーンに進出したいなという思いが生まれて。周囲の方々にいろんなアドバイスをいただく中で、いいボーカリストとユニットを組んで活動するという案が僕の中でしっくりきたんですよね。それでいろんなボーカリストの方とお会いする中で、みきまりあに出会いまして。

──たくさんのボーカリスト候補の中からみきさんを選んだ理由は?

ツミキ もちろん技術的なものとか、声がいいとか、いろんなところに惹かれてはいたんですが、決め手になったのはマインドの部分。例えば歌い方とか、音楽に対する姿勢とか、そういう部分でシンパシーを感じるところが多かったのがみきまりあでした。

──そのシンパシーはみきさんも感じていましたか?

みきまりあ ツミキさんに会う前は「クリエイターの人って気難しいんじゃないかな」と思っていたんですが、実際にお会いしてみたら思ったよりもくだけた感じで、すごく私に寄り添おうとしてくれたのが印象的で。だから打ち解けるまでも早かったし、好みというか、マインドの部分で合致する部分は確かに多いかもしれないですね。

NOMELON NOLEMON

NOMELON NOLEMON

──ツミキさんには初音ミクやGUMI、可不などさまざまなボカロを使うイメージがあります。なので、固定のボーカリストとユニットを組むというのは少し意外でした。

ツミキ これまでいろんなボカロを使っていたのは、ツミキを軸にしつつ表現のバリエーションを出すことを意識していたからなんです。ノーメロの場合はその軸を“ツミキとみきまりあ”に切り替えている。ノーメロでは歌声を変えるのではなくて、ジャズやロックといったいろんなジャンルに挑戦することで表現のバリエーションを付けるよう意識しています。なのでボーカルが固定だからといって表現が狭まることもなくて、2人でどんな表現ができるのか追求していくことで満たされている感覚がありますね。

自分をさらけ出す“勝負のとき”

──9月にはノーメロとしての1stライブ「シャッターチャンス」が開催されました。ユニットを組むことの大きなメリットの1つに、ライブがしやすくなることが挙げられますよね。

ツミキ 確かに、ユニットを組むことでライブをしやすくはなったんですが、結成当初はライブのことをまったく視野に入れていなかったんですよ。祖母がライブハウスの経営をしていたこともあって、僕は小さい頃からライブを観るのが大好きな人間で。「いつかステージに立ちたい」という思いはずっと持っていましたが、ノーメロの最初の制作時点ではステージでどのように演奏するか、みたいなことはまったく考えていなかった。「ライブをやってもいいな」と思い始めたのは、ノーメロとしての活動が軌道に乗ってからでした。

──ライブを想定していなかったノーメロが、ライブ開催に踏み切れた理由は?

ツミキ ノーメロとして1枚アルバムを出して、それまで顔を出さずに音楽をやってきたツミキとして「自分をさらけ出す勝負のときが来た」と感じたのが大きいですね。ライブが大好きだったということもあり、自分の体でちゃんと演奏を届けることが大事なこともわかっていて。ライブで育ってきたからこそ、僕もライブという文化を伝承していきたいし、シーンに還元したいとも思っていたので。

ツミキ

ツミキ

──相方であるみきさんにとって、ライブとはどういうものですか?

みき 私にとっては、実際にリスナーさんと直で対面できる貴重な機会ですね。ネットを通じて歌を届けているだけだと、コメントをいろいろもらえたとしても本当にどう喜んでもらえるのか、歌声がちゃんと届いているのか不安になる瞬間もあって。直接顔を見て歌えば、それが伝わっていることが実感できるし、ライブは私にとってお客さんとちゃんとつながれる場所だという感覚があります。

──無事1stライブを終えて、手応えはいかがでしたか?

ツミキ 正直に言うと、手応えはすごくありました。というのも、開催前は不安が大きかったんですよ。僕らはネットを通じて音楽を届けていたから、ライブを開催するまでどんなお客さんが僕らの音楽を聴いてくれているのか、全然わからなくて。男性が多いのか、女性が多いのか、学生に支持されているのか、年配の方々に注目されているのか。それを確かめるような初ライブだったので、不安の中で開幕したところはあったんですが、いざ蓋を開けてみたら初ライブなのに一斉に手を上げてくれたり、僕らの音楽がちゃんと届いていることが手応えとして伝わってきた。ちゃんと人間の「音楽が好き」という感情が自分たちを支えてくれていることを実感した1日でした。あの日を経て、音楽に対してより誠実になろうという気持ちになりました。

──ライブではツミキさんがドラムを叩く曲があり、ギターを弾く曲があり、みきさんと歌う曲があり……と、かなりマルチに活躍されているのが印象的でした。

ツミキ 本業はドラムなんですが、曲によってはギターを弾くのも、歌うのもなんでもやれたらやろうと思っていて。僕が弾きたいことをわがままにやっているというより、音楽を構成する1つのパーツとしていろんな楽器になれる存在を面白がってもらえたらいいなという思いが強いですね。

みき いろんな楽器を弾かなきゃいけないからリハーサルのときからすごく忙しそうで、心配してました。1曲終わるごとに「ツミキさん、どこにいったかな」って確認して(笑)。

みきまりあ

みきまりあ

ツミキ 大丈夫。やってる本人はけっこう楽しんでるから(笑)。

いい意味で自分の純度を下げた「感覚派」

──昨年リリースした1stアルバム「POP」に対して、9月にリリースしたEPのタイトルは「感覚派」。「POP」とは根本のコンセプトが異なる作品のように感じました。

ツミキ 「POP」というアルバムを1枚出してその反応を見たとき、素直に受け入れてくれた人もたくさんいましたが、“僕らが表現するポップ”を難しいと感じるお客さんもいたように感じまして。僕としてはもっと敷居の低い作品、気軽に聴けるような作品を作りたいと思い、感覚的に楽しめるものとして「感覚派」というコンセプトを考えました。

ツミキ

ツミキ

──どの曲も特徴がハッキリしていて、バラエティに富んでいるのが印象的でした。

ツミキ そこはかなり狙ったところで。「感覚派」の裏テーマは“全A面”で、どの曲もシングルとして出していいくらい力を入れています。「この1曲がすごく好き」みたいな曲を見つけてもらいたい作品ですね。

みき 1stアルバムはレコーディングもかなり緻密に作り込んで歌った印象が強かったんですが、「感覚派」の歌入れは私自身もなるべく感覚的に、そのときの気持ちのままで歌うことを意識しました。作り込みすぎず、そのとき感じたインスピレーションに身を任せて私自身も感覚で歌うようなレコーディングでした。

みきまりあ

みきまりあ

ツミキ 1stアルバムの制作は、基本的には僕のアウトプットがすべてだったというか、よくも悪くもツミキというクリエイターのやりたいこと、表現したいことを僕の責任で出し切った1枚でした。それに対して今回の「感覚派」では僕の表現だけに頼らず、いい意味で誰かに委ねることを実践できた作品でした。それは1stを経たことで携わってくれる方を信頼できるようなことが大きいですね。ミックスに関しては曲によっていろんな方にお願いして自分の感覚だけじゃない音楽に仕上がったと思いますし、そもそも「線香金魚」に関してはまりあに作詞をお願いしてみたり。ボカロの曲は基本的に1から10まですべて自分でやる音楽なので、生まれる作品は自分の純度100%のものなんですよ。「感覚派」ではいい意味で自分の純度を下げて、他人を信頼して作れた初めての音源ですね。そこは僕の中で一番変わったところかもしれません。

2022年11月1日更新