ナタリー PowerPush - ニルギリス
「全員脱退」という幸福な結末
音楽はいつでもできる
──メンバーの皆さんにとって、特に印象に残ってる曲は?
岩田 やっぱり「sakura」ですね。それまでは「好きなことをやるから、聴きたい人は聴いて」っていう感じだったんですけど、「sakura」のおかげで普通だったら出会えない人たちにまで自分たちの音楽が届いたと思うので。やっぱり、いろんな人に聴いてもらえることが一番うれしいですからね。
稲寺 私は「サンダー」かな。私がニルギリスに入るきっかけになった曲なんですよ。最初はライブで聴いたんですけど……。
岩田 「サンダー」を聴いて「ニルギリスに入りたい」って思ったんでしょ?
稲寺 そうそう。当時のライブでは、音源とは違う曲をサンプリングしてたんですよね。それがすごく好きな曲だったっていうのもあって。
岩田 そのときにサンプリングしてた曲って、ホントは使っちゃいけない曲だったんだけどね(笑)。
稲寺 だから音源では使ってないっていう(笑)。その後、バンドに入ることになって「この曲を練習しておいて」ってデモをもらったんだけど、全然タイプが違う曲ばっかりだったんです。四つ打ちもあるし、テクノっぽい曲もあるし……。
岩田 変なバラードとか(笑)。
稲寺 ホントにいろんな曲があったんだけど、それが全部ニルギリスの音楽になってるのが面白いなって。特に「サンダー」はメンバーが5人だったときのガチャガチャしてる感じが一番反映されてる曲だと思いますね。
栗原 「kiseki」(アニメ「鉄腕バーディー DECODE:02」オープニングテーマ)も印象に残ってますね。「sakura」はいろんな人がアイデアをどんどん重ねることで形になっていったんですけど、「kiseki」はメンバー同士でトスし合ってる感じだったんです。まず自分がデモを作って、「イメージはあるけど、うまく形にできないな」って思ってたら、アッチュに「誰かに渡したほうがいい」って言われて。あと「いい曲だから、死なすな」って言われたのもすごく覚えていて。
岩田 私はあんまり覚えてないけど(笑)。
栗原 で、メンバーに渡しながら、1周するうちに現在の形になったっていう。
岩田 曲の作り方にも、いろんなバリエーションがありましたからね。スタジオに入って“せーの”で音を出しながら作った曲もあるし、お互いのデモを聴かせながら形にしたものもあるし。
栗原 「どうすれば一番曲が生きるか?」という発想なんですよね。それは今回のアルバム(「チュクリ」)にもつながっていると思うし。そういう意味でも「kiseki」は重要だったと思いますね、個人的にも。
──DJ的な感覚だったり、編集のセンスに優れたメンバーだからこそ、いろいろな作り方ができるんでしょうね。
岩田 とにかくメンバーが好きなものが違うから、みんなでアレンジをしているだけで自然といろんな要素がマッシュアップされるんですよね。
栗原 一番面白かったのは、そこだったかもしれないですね。単に音をサンプリングするだけではなくて、それぞれのメンバーが持っているバックボーンもマッシュアップされるから、「ルーツはわからないけど、面白いね」っていう曲ができる。それが楽しかったから、ここまで続けられたんじゃないかな、と。
岩田 それも前のメンバーから受け継いだ伝統なんでしょうね。結局、前のメンバーが全然違う脳を持っている私たちを引き合わせてくれたので……。だから、「ありがとう」って言いたいです。
栗原 うん、今だったら言えるな(笑)。
──ニルギリスとしてはやれることはやり切ったという感覚もあるんですか?
岩田 それもありますね。もっとやれる部分もあるんだろうけど、ニルギリスとして好きなことをやってきたからこそ、ほかの人生も楽しんでいきたいっていう気持ちもあるし。
──なるほど。音楽だけが人生じゃないというか……。
岩田 けっこうニルギリスでいる時間が長いですからね。1週間に何度も会って、打ち合わせして、ライブのリハーサルとかもあって。それはすごく楽しいんだけど、ほかにもいろいろあるじゃないですか。年相応の楽しみ方っていうか……私、ヤバい?(笑)
栗原 いや、そんなことないよ。
稲寺 時間には限りがありますからね。ずっと同じ形で続けていくっていうのも、いびつなのかなって思うし。
岩田 ニルギリスは楽しいから、ついほかのことをやらなくなっちゃうんですよ。親離れじゃないけど、ニルギリスという場所から離れて、ほかのこともやってみたいなって。好きだから別れる、みたいな(笑)。
栗原 ハハハハハ(笑)。“みんなで一緒にやる”ってことを続けていくと、結果的に“じゃあ、1人では何ができるの?”というところに行き着くような気がするんですよね。それは脱退を発表したあとで思ったことなんだけど。
岩田 いいことだと思うよ。音楽はいつでもできるんですよ、やろうと思えば。今はもっと長い目で見て、ずっと音楽と付き合っていく方法を見つけたいっていう気持ちなんですよね。もっといろんなものを見たり経験していけば、歳を取ってもやれるんじゃないかなって。
ツアー最終日にみんなで脱退
──9月から10月にかけて行われる「NIRGILIS LAST DANCE TOUR」はどんなツアーにしたいですか?
岩田 東京が最後なんですけど(10月25日に新宿MARZで開催)、会場に来てくれた人にニルギリスのメンバーになってもらって、みんなで脱退したいですね(笑)。
栗原 そう、みんなで“ex.NIRGILIS”を名乗って。
岩田 ニルギリスは誰のモノでもないって考えたら、それもアリだと思うんですよね。
──個人的にはニルギリスの可能性はまだまだあると思うし、現在のシーンにもすごく合うと思っていて。いつでもいいので、また活動してほしいですけどね。
岩田 (栗原、稲寺に向かって)やるときは言ってね。
稲寺 アッチュもディナーショーとかやんないでね(笑)。
岩田 あ、それいいかも。「sakura」ばっかり歌うとか(笑)。
栗原 いろんな桜ソングを歌って、最後に「sakura」を歌ったりするのもいいんじゃない(笑)。3月末から4月にかけて。
──桜前線とともに北上して(笑)。
稲寺 (笑)。いつ何が起きるかわからないですからね。知り合いで「ニルギリスに入りたい」って人もけっこういるんですけど、ほとんど踊る人なんですよ。
栗原 いいんじゃない? ダンスユニットとして再出発してもらって。
岩田 ハハハハハ(笑)。いいね、それ。面白い。
──メンバー全員脱退のインタビューなのに、最後はなんだか楽しくなっちゃいましたね(笑)。
岩田 そうですね(笑)。ニルギリスは楽しかったです、ホントに。
ニルギリス/Love Stick feat. akinyan electro
iTunes Storeにて配信中!※DISC 1一部収録曲のみ。
DISC 1「チュクリ」
- WALK feat. DJ'TEKINA//SOMETHING
- Love Stick feat. akinyan electro
- Croquette feat. PandaBoY
- Men Healer Girl feat. Pa's Lam System
- Dreaming Shout feat. livetune
- Ring True feat. T-‐‑‒AK
- Nozomi feat. Novoiski from Moonbug
- My Alien feat. Shandy Kubota
- Shooting Star☆ feat. ZEGAPAIN
- Walküre feat. NGC
- I Love DIY feat. akinyan electro
- Shiny Shiny [Remix] feat. livetune
- Cosmology feat. The LASTTRAK
- sakura vs. The Plan That Cannot Fail feat. London Elektricity(CDのみのボーナス・トラック)
DISC 2「シングル・コレクション」
- ソプラノ
- サンダー
- オドレミ
- VUNA
- 真夜中のシュナイダー
- KING
- LEMON
- アイススケート・フォー・ライフ
- コモンガール
- sakura
- 24サーチライト
- SNOW KISS
- アップデート
- Brand New Day
- チックチックチック
- kiseki
- Shiny Shiny
ニルギリス「NIRGILIS LAST DANCE TOUR」
2014年9月6日(土)広島県 HIROSHIMA 4.14
2014年9月13日(土)京都府 METRO
2014年9月23日(火・祝)大阪府 北堀江club vijon
2014年9月27日(土)高知県 Club DAHLIA
2014年10月4日(土)愛知県 CLUB SARU
2014年10月25日(土)東京都 新宿MARZ
ニルギリス
近畿大に通っていた佐竹モヨと伊藤孝氣の2人によって1993年に結成。その後、メンバーが入れ替わり、2007年より岩田アッチュ(Vo, Key, Programming)、栗原稔(DJ, Programming)、稲寺佑紀(Dr, VJ, Programming)の3人で活動している。2003年9月に「真夜中のシュナイダー」でメジャーデビューを果たす。ダンスミュージック、ロック、ポップスを融合させたサウンドで音楽ファンを魅了。2006年3月に発表した「sakura」がアニメ「交響詩篇エウレカセブン」のオープニングテーマとして採用されたことを期に新たなファンを獲得した。2014年6月に突然、秋に開催するツアーをもって全メンバーが脱退することを発表。同年8月にさまざまなアーティストとコラボしたDISC1とベストアルバムDISC2からなる2枚組アルバム「チュクリ」を発表した。