ナタリー PowerPush - ニルギリス
「全員脱退」という幸福な結末
約5年ぶりとなる新作アルバム「チュクリ」(コラボレーションアルバム&シングルコレクションの2枚組)のリリースと全国ツアーをもって、全メンバーがバンドを脱退することを発表したニルギリス。ポップスとダンスミュージックを融合させながら、「sakura」(アニメ「交響詩篇 エウレカセブン」オープニングテーマ」)、「SNOW KISS」(アニメ「D.Gray-man」エンディングテーマ)などの優れた楽曲を生み出してきた彼らの“全員脱退”のニュースは、ナタリーでも大きな反響を呼んだ。
今回ナタリーでは、メンバーの岩田アッチュ(Vo, Key, Programming)、栗原稔(DJ, Programming)、稲寺佑紀(Dr, VJ, Programming)にインタビュー。全員脱退に至った経緯、アルバム「チュクリ」の制作プロセス、そして、“ニルギリスとはなんだったのか?”について語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 インタビュー撮影 / 佐藤類
ニルギリスは誰のモノでもない
──「メンバー全員脱退」のニュースは、ナタリーでも大きな反響がありました(参照:ニルギリス、新作リリース+ツアー後に全メンバー脱退)。ニューアルバム「チュクリ」と全国ツアーを最後に3人とも脱退するという決断をしたのはどうしてなんですか?
岩田アッチュ まず「アルバムを作ったあとは、お互いの道を進もう」っていうのは決めてたんですよね。それをどういうふうにお知らせしようかな?って考えてたんですけど、最終的に「脱退」っていうのが一番しっくりくるんじゃないかなって。オリジナルメンバー(佐竹モヨ、伊藤孝氣)は1人も残っていないし、結局ニルギリスって、もう誰のモノでもないと思うんですよ。だったら、解散とか休止ではなくて、ニルギリスという箱だけを残して脱退するのが“らしい”のかな、と。
栗原稔 音源を発表する場所は欲しいなって思ってたんですけど、月日の流れとともにメンバーそれぞれに思うところが出てきて。あるタイミングで「次のアルバムを着地点にして、ひと区切りつけるのがいいよね」っていう空気になったんですよね。違和感は全然なかったよね?
岩田 うん。ケンカとか方向性が違うってことではなくて、ただ「アルバムが出るまではニルギリスでいようね」っていう感じだったので。
──「チュクリ」の制作中も「これが最後」という気持ちがあった?
栗原 アルバムを作り始めたときは、単純に「ニルギリスの次の音を出したい」っていう感じだったんですけどね。もともとニルギリスって「いろいろなメンバーがいて、それぞれ趣味が違うんだけど、一緒にやったら面白い音ができる」というところからスタートしたんですよ。そこからマッシュアップというスタイル──ほかの楽曲を混ぜるっていう──にも発展したんですけど、今回のアルバムは「だったら、メンバー以外の人たちと一緒に作ってもいいんじゃないかな」というところにたどり着いて。自分たちだけ抱え込んで全部やるんじゃなくて、いろんなクリエイターを巻き込みながら、ニルギリスの作品を生み出していくっていう。
「この曲に合う人は誰だろう?」
──「チュクリ」には、livetune、PandaBoY、The LASTTRAKなど、さまざまなフィールドで活動しているアーティストが参加してますよね。
岩田 新しい音とポップスの両方を追求してきたのがニルギリスだと思うんですけど、今回は私たちが作った曲をいろんなクリエイターに渡してみようと思って。その上で、さらに強いポップスを作ろうっていうことですね。フィーチャリングとかゲストボーカルということではなく、トラックの段階から一緒に作っていったので。バンドのメンバーが増えた感じですね。
稲寺佑紀 だから、リミックスとは全然違うんですよ。リミックスは「好きにやってください」ってお願いすることが多かったんですけど、今回は何度もやり取りしながら曲を作っていったので。その中で面白い発見もたくさんあったし。
栗原 いわゆるバンドマナーではなくて、トラックメーカーとして活動してる方が多かったですからね。
稲寺 ここ何年か「クラブニルギリス」というイベントをやってたんですけど、そこでつながった人も参加してくれて。
栗原 逆に「はじめまして」という人もいたんですけどね。たまたま聴いた音源がすごくカッコよくて、知り合いをたどってコンタクトを取ったり。
岩田 一度も顔を合わせないまま、Skypeとかでやり取りしながら、ミックスまでやったこともありました(笑)。ニルギリスの曲はバリエーションがいろいろあるから、「この曲に合う人は誰だろう?」って考えながら進めていった感じですね。
──EDM、エレクトロを軸にしながら、かなり攻めたサウンドになってますよね。しかもポップスとして成り立っているのもニルギリスらしいな、と。
岩田 うん。ポップスという枠からは外れないっていうのは、ずっと意識してたので。
──リードトラックの「Love Sick feat. akinyan electro」のPVも、ニルギリスらしい遊び心がたっぷり込められていて。シモネタというか、かなり際どい内容ですが……。
栗原 愛の歌ですから(笑)。
岩田 愛の交信ですね(笑)。「最後はみんなで笑って終わりたい」っていう気持ちもあったし。
稲寺 いくら「脱退します」って言っても、あのPVを観て泣ける人ってそんなにいないんじゃないかな(笑)。
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iTunes Storeにて配信中!※DISC 1一部収録曲のみ。
DISC 1「チュクリ」
- WALK feat. DJ'TEKINA//SOMETHING
- Love Stick feat. akinyan electro
- Croquette feat. PandaBoY
- Men Healer Girl feat. Pa's Lam System
- Dreaming Shout feat. livetune
- Ring True feat. T-‐‑‒AK
- Nozomi feat. Novoiski from Moonbug
- My Alien feat. Shandy Kubota
- Shooting Star☆ feat. ZEGAPAIN
- Walküre feat. NGC
- I Love DIY feat. akinyan electro
- Shiny Shiny [Remix] feat. livetune
- Cosmology feat. The LASTTRAK
- sakura vs. The Plan That Cannot Fail feat. London Elektricity(CDのみのボーナス・トラック)
DISC 2「シングル・コレクション」
- ソプラノ
- サンダー
- オドレミ
- VUNA
- 真夜中のシュナイダー
- KING
- LEMON
- アイススケート・フォー・ライフ
- コモンガール
- sakura
- 24サーチライト
- SNOW KISS
- アップデート
- Brand New Day
- チックチックチック
- kiseki
- Shiny Shiny
ニルギリス「NIRGILIS LAST DANCE TOUR」
2014年9月6日(土)広島県 HIROSHIMA 4.14
2014年9月13日(土)京都府 METRO
2014年9月23日(火・祝)大阪府 北堀江club vijon
2014年9月27日(土)高知県 Club DAHLIA
2014年10月4日(土)愛知県 CLUB SARU
2014年10月25日(土)東京都 新宿MARZ
ニルギリス
近畿大に通っていた佐竹モヨと伊藤孝氣の2人によって1993年に結成。その後、メンバーが入れ替わり、2007年より岩田アッチュ(Vo, Key, Programming)、栗原稔(DJ, Programming)、稲寺佑紀(Dr, VJ, Programming)の3人で活動している。2003年9月に「真夜中のシュナイダー」でメジャーデビューを果たす。ダンスミュージック、ロック、ポップスを融合させたサウンドで音楽ファンを魅了。2006年3月に発表した「sakura」がアニメ「交響詩篇エウレカセブン」のオープニングテーマとして採用されたことを期に新たなファンを獲得した。2014年6月に突然、秋に開催するツアーをもって全メンバーが脱退することを発表。同年8月にさまざまなアーティストとコラボしたDISC1とベストアルバムDISC2からなる2枚組アルバム「チュクリ」を発表した。