人間っぽいズレがNIKO NIKO TAN TANらしさ
──「MOOD」はどんなふうに作っていきましたか?
OCHAN その前に作った「IAI」が「怒り」をテーマにした曲だったので、「MOOD」はもう少し力が抜けた感じにしようと思いました。間奏部分にちょっとドラムンベース的な展開をぶち込んで、それをフックにしています。これ、単調な雰囲気にならないようにリズムはめちゃくちゃ試行錯誤しましたね。結果、何を参考にしたんだっけ?
Anabebe Destiny's Child(笑)。
OCHAN そうそう(笑)。曲を作って煮詰まってくると、いつもAnabebeに「こういう曲調で、このくらいのBPMなんだけどなんか面白いアイデアない?」と投げているのですが、そうするといつもめちゃくちゃたくさん参考曲を送ってくれるんです。「MOOD」のときはそれがディスチャだったんだけど、ムズすぎて(笑)。
Anabebe えげつないリズムパターンだったよね(笑)。できるだけそれに近付けたいと思って叩くんだけど、やっぱり人間なので機械のようには叩けない。その人間っぽいズレが、NIKO NIKO TAN TANらしさになっているのかなと思いますね。
──MVは3D / CG監督のYuya Utamuraさんとのコラボですね。
Drug Store Cowboy スタッフチームからUtamuraさんを提案してもらって、作品を観たら、この曲のために考えていた企画がすごくハマりそうだなと。実際の撮影や演出は監督にお任せだったのですが、僕が考えていたものをさらに面白くしてくれました。
──悪夢が現実になっていくような恐ろしさと、ひと昔前のホラーゲームみたいなチープさのギャップが面白いですよね。
Drug Store Cowboy これも80年代の映画になっちゃうんですけど、例えば「エルム街の悪夢」(1984年)みたいな、夢の中に入っていく恐ろしさを描きたいという考えがまずあって。しかもOCHANもAnabebeもキャラクター性がすごく強いので、2人をそのホラーの世界にぶち込んだらどうなんだろう?みたいなアイデアをUtamura監督に具現化してもらいました。
仕上がりが違う「Only Lonely Dance」MV
──「Only Lonely Dance」は、中澤太さんが映像監督を務めています。
Drug Store Cowboy 中澤さんも、チームのスタッフからご提案いただいて。この曲は企画の段階からすべてお任せしました。MVに関して、僕はNIKO NIKO TAN TANとしか今までやったことがなくて。お手伝いとかで現場に行ったことはありましたけど、こうやって間近でほかの監督のやり方を見ることができてとても勉強になりました。
OCHAN 僕らもDrug Store Cowboy以外の監督とやったことがなかった。というか、いつも自分たちで照明を立てたり、ときにはiPhoneのカメラを使って撮影したりしながら作っていたよね(笑)。
Drug Store Cowboy 「Anabebe、照明そっち立てて!」とか、「OCHAN、音出して!」とか言いながら、演技もしてもらいつつ手作業で作ったものとは今回、仕上がりが全然違いますよね。貴重な経験でしたし、これからもいろんな方とやってみたいです。
悲しみを落とし込んだ楽曲も、俯瞰で見るとちょっと笑える
──これらの曲が収録されたメジャーデビューアルバム「新喜劇」ですが、タイトルの由来は?
OCHAN 今作は、これまでリリースしてきた楽曲に書き下ろしを加えたもので、制作期間がすごく長いんです。その間、つらいことや悲しいこともいろいろあって、それらを落とし込んだ楽曲たちを俯瞰で見るとちょっと笑えるというか。チャールズ・チャップリンの「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である」という名言を思い出したんです。「喜劇」ではなく「新喜劇」にしたのは、単純に言葉の面白さもあり、あまりこういうタイトルは見たことないなと。
──ジャケットはYUGO.さんがイラストを担当しています。先ほどウォン・カーウァイやクエンティン・タランティーノの名前も出ましたが、どんなふうに作っていったのですか?
Drug Store Cowboy 打ち合わせはほぼ居酒屋でしたね(笑)。いろいろ、二転三転……いや、五転くらいしたんですけど、結果的に最初にYUGO.が上げてくれたラフが元になっています。そこにいろんなモチーフ、例えばテーブルに散らばっているピザやドーナツ、ハンバーガーなどを、現物からスキャンして取り込んでいます。
OCHAN 僕からは、ジャケットの中に「予感卵」という、持っていると「いい予感」がする卵を登場させてほしいとだけリクエストしました。それと、イラストの中のキャラが読んでいる新聞に書かれている記事は、全部にちゃんと意味があるんですよ。
──拡大してよく見ると、「新元号が『微笑』に決定」みたいな架空のニュース記事も掲載されてますね(※NIKO NIKO TAN TANが2020年に発表したインディーズ1stアルバムのタイトルが「微笑」)。
OCHAN そうなんです。「可可 feat. ぷにぷに電機」で登場した「N-ファイル」のネタも仕込んであるし、「カレイドスコウプ」という曲は「子供心を忘れずにいろよ」というテーマの曲なのですが、その子供心を盗みにくる「童心泥棒」が僕らという設定の架空の記事も掲載されていて。そういう誰も気付かないような、めっちゃ細かいところにもこだわっていますね。
──そのアルバムを携えてのツアーも予定されていますが、もちろんDrug Store Cowboyさんの映像と一緒に楽しめるものになるんですよね?
Anabebe はい。音楽を映像と一緒に楽しめるように、セットリストもだいぶ練っています。
Drug Store Cowboy 今年の目標はとにかく映像と音をがっつりリンクさせるということ。やっぱりライブでは映像に没入しながら踊ってもらいたいので。
OCHAN これまで以上に踊れるライブにしたいと思っているので、ぜひ期待していてほしいです。
公演情報
NIKO NIKO TAN TAN ONE-MAN TOUR 2024「新喜劇」
- 2024年10月18日(金)大阪府 Music Club JANUS
- 2024年10月26日(土)愛知県 新栄シャングリラ
- 2024年10月27日(日)福岡県 BEAT STATION
- 2024年11月4日(月・振休)北海道 Sound Lab mole
- 2024年11月23日(土・祝)宮城県 仙台MACANA
- 2024年11月29日(金)東京都 LIQUIDROOM
プロフィール
NIKO NIKO TAN TAN(ニコニコタンタン)
2019年結成。ジャンルを超越した音楽×映像×アートを創造するクリエイティブミクスチャーユニット。音楽を担当するOCHAN(Vo, Synth, etc)とAnabebe(Dr)、映像・アートワークを担うDrugStoreCowboyの3名からなる。2021年9月に本格始動後、2022年6月に1st EP「?」をリリース。同年に「FUJI ROCK FESTIVAL」「SUMMER SONIC」への出演を果たし、初の東阪ツアーをソールドアウトさせる。2023年、3枚の配信シングル「Drama」「琥珀」「Jurassic」リリースを経て、「FUJI ROCK FESTIVAL」メインステージのRED MARQUEEに出演した。2024年8月にアルバム「新喜劇」でビクターエンタテインメント内のレーベル・Getting Better Recordsからメジャーデビュー。10月から11月にかけてワンマンツアーを行う。
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