サビでNirvanaが乱入してきた
──「fragile Report」をもう少し包括的に捉えると、「さまpake」ができたときにアルバムのコンセプトができたともマナミさんはnoteに書いていましたよね。そのときに浮かんだのはどういうアイデアだったのでしょうか?
マナミ 最初に「さまpake」のデモを作ったときは、もっとルーツっぽい、ゆったりした曲調だったんですよね。それをオオスカに投げたらギターがいろいろ重ねられて返ってきたんです。サビでNirvanaが乱入してくるみたいな、そういうギターロックに「さまpake」が変わったんですよ。
オオスカ Nirvanaのことをギターロックって、めちゃめちゃ炎上したらどうする?(笑)カート・コバーンのことをギターロックって……。
マナミ いやいや、リフはNirvanaじゃん(笑)。まあギターロックが何かはよくわかんないんですけど……自分がロックバンドについてわかってないから、その部分はオオスカに任せようと思って「さまpake」のデモを投げました。それでNikoんとしてバランスの取れた曲が録れたから、アルバムは自分のメロディを作りさえすれば形にはなるなってそのとき気付きました。
Nikoんは「友達のまま続ける」
──歌詞の面でも、「fragile Report」はマナミさんのカラーが垣間見えるような作りになっていますよね。1stの頃とは違って、徹底して誰かの生活が歌われているというか。
マナミ そうです、自分の話しかしてない(笑)。そういう歌詞しか書けないんです。
オオスカ 本人は否定するんですけど、ぺやんぐって詞の人なんですよ。歌詞って後ろに流れるリズムがあって、それに乗っかる演奏のリズムもあって、そこから外れたら変に聞こえてしまうっていう制約がある。だからいろいろ考えるわけで、結果的に歌詞としては美しいけど、自分じゃない言葉を書いちゃったりするんですよね。Nikoんはそれをやらずに、ボーカルの人間性が一聴してわかるような歌詞を心がけていたんです。それでぺやんぐに頼んだら、何も言わずに人間の見える詞を書いてきた。歌として歌っている意味がある言葉なんです。
──例えば「RE:place public tour 2025」で関西や九州を移住しながら回っていると、2人の見ている景色が限りなく近いものになっていくと思うんです。それでも歌詞からは新鮮さを感じますか?
オオスカ うーん、そうだな……例えば、友達と恋人って許せる範囲が違うじゃないですか。恋人だとしたら許せないけど友達なら我慢できる、みたいな。それと同じように、バンドメンバーとしてのジャッジもある。普通はそうなんですけど、Nikoんはそもそも「友達のまま続ける」っていうバンドなんです。
──はいはい。
オオスカ ぺやんぐとか東さんとツアーを回っていて、同じAirbnbに泊まっているときでも、最初に友達として出会ったときの気持ちと根本は変わってない。近すぎないからリスペクトがあるし、「友達でいること」を最優先にしているから、嫌なことはしない。でも友達にはカッコよくいてほしいから、お互いに意見を言う。だから同じ景色を見ていて違う言葉が出てきても、そのことを尊重できるんです。むしろ、そういう話をどんどん聞きたい。
リスナーと著名人の言葉で何が違うのか
──やっぱり、Nikoんって関係性について考えているバンドですよね。例えば「fragile Report」のレビューを募ったり、お客さんとも能動的な関係を築きたいというか。
オオスカ そうですね。
──サブスクを停止して「観たければライブに来い」と突き放すようなバンドだと捉えられそうですけど、YouTubeやXで積極的にライブ映像を公開したり。
オオスカ Xのライブ中継は手伝ってるおじさんが勝手にやりだしたんですけど(笑)。
──(笑)。バンドメンバーだけじゃなくて、Nikoんという場所をお客さんも含めた全員で遊んでますよね。
オオスカ 俺が何もしないと、お客さんから遠くなっちゃうんですよ。「ライブにお金払って来てくれるお前のために歌うぜ!」みたいな……激サムいと思ってるんですよ、そういうの。でも、そのお客さんが1人で本当に苦しんでいたら、「今日はお前のために歌うわ」って心から歌えるはずなんです。その気持ちを確認するためにはバンド側から近付くしかない。
──確かに。
オオスカ ただ、「それをしないことが売れることだ」ってよく言うじゃないですか。
──お客さんの顔がだんだん見えなくなっていく、という。
オオスカ お客さんの言葉が入らなくなって、代わりに著名人のコメントがリリースのたびに寄せられる、みたいな。よくあるプロモーションですけど、リスナーと著名人とで何が違うんだよって思うんです。だって同じ人間だし。
──聴いているものは一緒ですもんね。
オオスカ 価値のある言葉って、どこの誰からいつ出てくるかわからないんです。ホームレスのおっちゃんかもしれないし、近くにいる家族なのかもしれない。要はそのときに自分がどう捉えられるかですよね。その言葉が聞き取りやすいような環境にしとかないと、自分の言葉も出てこなくなる。だから、そういう場所をなるべく提供して、俺らもその言葉で触発されたいんです。
──そのために自分たちは足を運ぶ、と。そうじゃないと下北沢の駅前でフライヤー1000枚配りませんもんね(参照:Nikoん、フライヤー1000枚配り終えるまで帰れま1000)。
マナミ 確かに(笑)。
オオスカ あれはわかりやすかったですね。100人に1人くらいなんですよ、もらってくれるのなんて(笑)。でも、自分もそうだったと思うんですよ。ポケットティッシュでもない、ただの紙のフライヤーなんてもらわない。でも、1000人もらってくれたんです。そう考えると、その1000人に対して感謝をするじゃないですか。それと同じように、当日になって行きたいかどうかもわからないようなライブのチケットを予約して、ライブハウスに来てくれて、なんなら物販も買ってくれて……みたいなことってまったく当たり前じゃないわけで。そのためにカッコよくありたいな、っていうことに気付かされましたね。
ひたすらライブをやってきた自覚も自信もあるんで
──「fragile Report」の購入者限定での47都道府県ツアー「アウトストアで47」も、まさにお客さん1人ひとりの顔を見て回るための施策ですよね。自分たちの身体と近いところでリスナーとつながっているというか。
オオスカ 単純に、「どれぐらいいんの?」っていうのを知りたいんです。CDが3000枚売れてましたって言われても実感がないけど、この県にはお客さんがこのくらいいましたっていうのを知りたい。それに初めてライブを観た人の熱量も知りたいし、全国のライブハウスの店員にも会いたいんですよね。
マナミ あと、いっぱいライブできるし(笑)。
オオスカ 「fragile Report」のCDはライブ付きのチケットにもなってて、しかも友達を1人呼べるんです。だからCDを買えば無料で2枚のチケットが手に入って、それを47都道府県のどこかで使うことができる。1人でライブハウスに来るのが怖くても友達と来ればいいし、Nikoんの存在もそこで広まる。
──正直、採算度外視ですよね(笑)。
オオスカ どうなんですかね、もちろん度外視ではあるんですけど(笑)。ただ、ほかのバンドみたいな大きいプロモーションはしてないんですよ。渋谷のでっかいビジョンで曲を流したり、スタイリングに金をかけて高級なMVを撮ったり、みんなそういうことをしちゃう。でも俺らが金を使いたいのはそういうことじゃないんです。出たとこ勝負でもあるんですけど、そもそもCDが売れれば黒字にはなるし、それが達成できればいいだけなんで。
──んー、なるほど。
オオスカ それに、ひたすらライブをやってきた自覚も自信もあるんで。変わったことをするよりも“2500円分のライブできんのか?”みたいなとこで戦いたいし、それに関してはお客さんを納得させられるとも思うんです。全国各地で観てもらって、どこも恥ずかしくない演奏はできるはずです。
──それを2人で実現すると。
オオスカ そう、この人(東)はやらされてるんですけど(笑)。
東 まあ全部は行かないと思うけど(笑)……一緒にやりたいよね。
オオスカ あとは「アウトストアで47」以外にもブッキングライブは各地でやるつもりで、これからの5カ月で100本くらいはライブをやる予定なんです。「アウトストアで47」のスケジュールが合わなくても、そこで観に来てほしいですね。50本くらい叩いてもらってもいいんですよ?
東 予定が合えばね……(笑)。
──ちなみに、先日のツアーファイナルでは2人で一緒に歌う新曲も披露されていましたが、次の作品の構想はすでにあるんですか?
オオスカ ないっす!
マナミ ない!
──(笑)。
オオスカ アルバムだとコンセプトを立てなきゃなんで、EPを何枚か作るのもいいんじゃないかとは思ってます。もしかしたら全曲2人で歌ってるかもしれない。
マナミ もしくはどっちも歌ってないかもしれない(笑)。
公演情報
Nikoん 2nd Album「fragile Report」購入者特典LIVEツアー「アウトストアで47」
関東 / 甲信シリーズ
- 2025年10月15日(水)東京都 SPREAD
- 2025年10月16日(木)神奈川県 横浜B.B.STREET
- 2025年10月18日(土)栃木県 SOUNDHOUSE PICO
- 2025年10月19日(日)長野県 伊那GRAMHOUSE
- 2025年10月20日(月)山梨県 KAZOO HALL
- 2025年10月24日(金)群馬県 前橋DYVER
- 2025年10月26日(日)茨城県 Dandelion Cafe
- 2025年10月27日(月)千葉県 千葉LOOK
- 2025年10月31日(金)埼玉県 MORTAR RECORD
東北シリーズ
- 2025年11月1日(土)宮城県 FLYING SON(昼公演)
- 2025年11月3日(月・祝)山形県 酒田hope
- 2025年11月5日(水)岩手県 ましまし04
- 2025年11月6日(木)福島県 LIVE STAGE PEAK ACTION
- 2025年11月11日(火)秋田県 Club SWINDLE
- 2025年11月12日(水)青森県 八戸ROXX
北海道シリーズ
- 2025年11月14日(金)北海道 VyPass.
- 2025年11月20日(木)北海道 MOSQUITO
北陸シリーズ
- 2025年12月2日(火)石川県 vanvanV4
- 2025年12月3日(水)福井県 HALL BEE
- 2025年12月4日(木)新潟県 WOODY
- 2025年12月5日(金)富山県 Soul Power
関西・東海シリーズ
- 2025年12月7日(日)滋賀県 彦根ダンスホール紅花
- 2025年12月12日(金)三重県 LIVE SPACE BARRET
- 2025年12月13日(土)愛知県 stiffslack
- 2025年12月14日(日)静岡県 ROJI
- 2025年12月17日(水)岐阜県 yanagase ants
- 2025年12月18日(木)大阪府 火影 -HOKAGE-
- 2025年12月19日(金)京都府 Live House nano
- 2025年12月23日(火)和歌山県 OLDTIME
- 2025年12月24日(水)奈良県 生駒RHEBGATE
- 2025年12月25日(木)兵庫県 KOBE BLUEPORT
四国シリーズ
- 2026年1月15日(木)徳島県 bar txalaparta
- 2026年1月16日(金)高知県 Cab's
- 2026年1月17日(土)愛媛県 Bar Caezar
- 2026年1月18日(日)香川県 高松TOONICE(昼公演)
中国シリーズ
- 2026年1月19日(月)岡山県 CRAZYMAMA 2nd Room
- 2026年1月21日(水)広島県 HIROSHIMA 4.14
- 2026年1月22日(木)鳥取県 米子AZTiC laughs
- 2026年1月23日(金)島根県 アポロ
- 2026年1月24日(土)山口県 Organ's Melody
九州シリーズ
- 2026年1月25日(日)長崎県 STUDIO DO!
- 2026年1月26日(月)佐賀県 RIDE
- 2026年1月28日(水)福岡県 public space 四次元
- 2026年1月29日(木)熊本県 NAVARO
- 2026年1月30日(金)大分県 AT HALL
- 2026年1月31日(土)宮崎県 LAZARUS
- 2026年2月1日(日)鹿児島県 WORD UP STUDIO
東京ファイナル&沖縄公演
- 2026年2月15日(日)東京都 WWW
- 2026年2月20日(金)沖縄県 AZAT FANFARE
Nikoん New Album「fragile Report」特設サイト
Nikoん × Apes presents「Risorgimento」Nikoん Re:TOUR -チッタ360 -
2025年10月30日(木)神奈川県 CLUB CITTA'
<出演者>
Nikoん / Apes
プロフィール
Nikoん(ニコン)
オオスカ(G, Vo)とマナミオーガキ(B, Vo)により2023年に結成されたバンド。結成翌年の2024年に「FUJI ROCK FESTIVAL」の登竜門ステージ「ROOKIE A GO-GO」に出演し、同年リリースした1stアルバム「public melodies」は後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)主宰の音楽賞「APPLE VINEGAR -Music Award-」で特別賞を受賞した。2025年9月24日に2ndアルバム「fragile Report」をmaximum10からリリースし、メジャーデビューを果たした。