NightOwl「dawn.」インタビュー|「だから私たちは自信を持ってライブができる」 (2/3)

今があるのは解散の危機を乗り越えたから

──NightOwlは強固なチームワークを築き上げながらも、去年「解散」という言葉がメンバーの口から出るような状態にまで追い込まれていたそうですね。

雨夜 やっぱりついて回るな、この話(笑)。

折原 たぶん、積み重ねですね。これだけ長く一緒にいるとどこまで踏み込んでいいのか境界線がわからなくなっていくんですよ。去年はそういう関係性を見直すいい機会になったのかもしれない。今、すごくいい空気感で活動できてるのは、その時期があったからだと思ってます。それ以外にも、自分たちの活動に関する悔しさとか、「この先大丈夫かな……?」という焦りとか、いろんな感情が積み重なって爆発したのが去年でした。

──普段からとことん突き詰めて話し合いながら活動しているからこそぶち当たった壁、みたいな。

百城 そうですね。それぞれ真剣に思ってることがあるからこそ、それを表に出したときにぶつかっちゃう。そのときは1カ月くらい話し合って、なかなか落ち着かんというかふわふわしてるというか変な感じやったけど、それぞれが考えた末に「続ける」という結論を出せて。「ほんまに嫌やったら終わろう」みたいな話にもなったんですけど、さっきも話したように、全員が「ファンに何も返せてないし、ここで終わんのは違う」って心から言えたからこそ、今はより結束力が高まっているんだと思います。しんどかったですけど、今となってはあの時期があってほんまによかったです。

百城凛音

百城凛音

折原 口ではずっと言ってきたことだけど、終わりがちょっと見えたときに強く実感したというか。

──グループとして死の淵が見えたからこそ「もっと生きたい」と強く願った。

雨夜 本当にそんな感じです。

折原 自分たちが解散したときのお客さんの悲しむ顔とか、期待してくれてたのに落胆させてしまったときの情景をすごくリアルに想像できてしまって、「絶対今はダメや、なんもできてない」って。

──今回、こうしてアルバムを出せるというのは、皆さんにとってとても大きなことなんですね。

雨夜 そうですね。

百城 あの頃は未来のことなんて考えられへんかったし。

アルバムに宿るメンバーの思い

──間に2枚のEPを挟んでいますけど、フルアルバムをリリースするのは4年ぶり。これまでの話を踏まえると当然のことながら、前作「Dear, Night」(2020年8月発表)と雰囲気が全然違いますね。

折原 そうですね。「Dear, Night」のときは(長谷川)嘉那が入る前で、まだ3人だったんで。

雨夜 うれしいよな。やっとアルバムに初参加できて。

長谷川 私にとって初めてのアルバムで、これまでの曲たちがぎゅっと入っているし、それにプラスして新しい自分たちの要素も入るということで本当にそわそわしました。

──それはどういう意味のそわそわですか?

長谷川 「喜んでほしい、けど喜んでもらえるかな? どんな反応になるんやろ?」っていういろんな気持ちでそわそわしてます。

雨夜 アルバムってどうしてもグループの歴史みたいになりますもんな。

折原 「Dear, Night」に比べると“4人感”の強いアルバムになってると思います。去年の春に配信リリースした「夜行迷路」から新曲「Flight in the Storm」まで収録されてるんですけど、この期間にできた曲は4人の個性のバランスがうまくとれているんですよね。だから、初期の作品とは全然印象が違うと思います。曲調もバラバラで、お祭り系の曲があったかと思えば妖艶な曲があったり、少女のような目線の恋愛ソングも入ってたり、いろんな味が楽しめるアルバムになってるんじゃないかな。

──しかも、さまざまな経験を経たうえでの作品なので、表現面において4人がグッと大人になっていることが感じられます。特に最近の曲になればなるほど、歌の表情がより見える気がするんですけど、それは壁を乗り越えたからこその変化ですか? それともそれはまた別の話ですか?

折原 別かなあ。

百城 私は半々です。私はけっこう気持ちが歌に出る人間でして、しんどいときはキュッとなった歌い方しかできないんですけど、テンションが上がっていると幅広い表現で歌いやすくなるので。最近の曲は全部ジャンルが違うんですけど、そこでいろんな歌い方ができたのは今の気持ちが楽だからなのかなって思います。あと、歌のうまい下手ももちろん大事ですけど、どういうことを伝えたいかということを最近意識するようになったので、そこも歌に出てるかもしれない。

NightOwl

NightOwl

経験を積んだからこそ表現できる歌

──歌のうまさだけではない気がします。例えば、「渡羽」は表現により重きを置いているように感じました。

百城 できあがった音源を聴いたら全部知らん声で、「え! みんな、かわいい!」みたいな(笑)。これまでに聴いたことのない雰囲気の歌い方で、「こんなん好きになるやん!」という仕上がりだったから新鮮でしたね。

折原 レコーディングのときに、ディレクターから「大好きな人に思いを伝えられなくて枕に顔を埋めて『好きー!』って叫ぶような気持ちをマイクの前で表現してほしい」っていうリクエストがあって。恋心を宿らせて歌ってほしい、みたいな。この曲にはそれが出てるのかもしれない。

雨夜 「渡羽」は恋愛の曲に聞こえるけど、アイドルとファンの関係性を歌った曲にも聞こえるし、聴く人によって感じ方が異なる曲だと思うので、それぞれの解釈を邪魔しないように、いろんな情景が広がるように歌いました。難しかった。

折原 いろいろあるよね。家族でも友達でもいいし、恋人でも推しでもいいし。

雨夜 フクロウは羽を渡すことが求愛サインらしくて、だから「渡す羽」。いいタイトルです。

──相手を慈しむような声に聞こえます。この曲、1年前に歌えていたと思いますか?

折原 たぶんリリースしてもライブのセットリストには入れてなかったと思います。

百城 今やから歌えるのかもな。それぐらい穏やかな気持ちで歌えてる。

雨夜 1年前なら「どういうマインドで届けるんだろう……?」って困ったと思う。これまでの流れがあったから歌えてるのかもしれないですね。

──「Shooting Star」からラスト「黎明」までの流れが好きです。今作は既発曲が多く、わりとリリース順に近い流れになっていますけど、4人が壁にぶち当たったストーリーまで含めて考えると、こういった曲順になるのは必然だったのかなと。

百城 その時々の私たちのマインドにあった曲を作家の方々が作ってくださるので、おっしゃる通りだと思います。

折原 「七日間戦争」がリリースされたのはみんなで話し合いをした直後で。「こういうことがあったけどいつか笑おうね」というテーマのもとで作られた曲なんです。そのあとに出た「Shooting Star」の歌詞が「また初心に帰って約束をしよう」という内容になっていて、アルバムのラストナンバー「黎明」は「また大きな光の海を作ろう」という、LIQUIDROOMで見た景色を描いた曲になっているので、ちゃんと時系列になってるんですよね。

折原伊桜

折原伊桜

──グループの物語性をかなり強く表した作品になっていることがこれまでのお話でわかりました。新曲「Flight in the Storm」はSE「梟楽」のあとにアルバムの実質的な1曲目として収録されていますが、新たな決意を表明している曲で、そういった意味では本来ラストに配置される曲なのかなと。

折原 「Feel Alive」というNightOwlで一番熱い曲があって、どのライブでやっても爆発力がすごいんですよ。でも、それを上回るぐらいの曲が欲しいっていうオーダーを以前からしていて、今回それが叶いました。「今の私たちならもっと大きい雷を落とせるぞ!」みたいな。

──これも今だからこそ気持ちを乗せられる歌になっていますね。

折原 でも、この曲が本当に意味で完成するのは、11月4日にあるYokohama Bay Hallでのワンマンだと思います。それまでのライブでも披露するとは思うんですけど、この曲の力が最大限に発揮されるのはきっとその日なので、今から楽しみです。

堂々とステージに立つ4人

──今日の話を踏まえると、Bay Hallでは興奮しすぎて泣いちゃうんじゃないですか?

百城 ワンマンのときって、オープニングで鳴り出すSEとか、ステージに出たときに見えるお客さんの顔とか熱量にいつも泣かされそうになるんですよ。

雨夜 ワンマンライブは味方がたくさん集まってくれる日じゃないですか。私たちだけを観るためにフロアにいるみんなが予定を空けてくれたんだって思うと、ステージに出ていくときから感極まりそうになります(笑)。

折原 フロアの圧で倒れそうになるもんな。

百城 ステージの裏までみんなの声が聞こえてくるやん。その時点で泣きそうになるよな。

雨夜 準備してきた以上のものを届けたいから、本当は泣きたくはないんですけどね(笑)。

──先日、新宿BLAZEで観たライブもすごかったです。以前僕が観たときとはけっこう印象が違っていて、それは今日話していただいたような流れがあったからなんだなと思いました。

折原 堂々とし始めたよね。今が一番自信を持ってやれてるんじゃないですかね。

百城 確かに、堂々としてるね。

雨夜 変な力も入らず。