ナタリー PowerPush - 光村龍哉(NICO Touches the Walls)×庄村聡泰([Alexandros])

“ラーメン”で語る音楽論

「Adventure」は素ラーメン、「Droshky!」はトッピング乗せまくり

──ではこの機会に“ラーメン”をキーワードにお互いの新作について解説してもらいましょうか。

光村 真っ当な解説は期待しないでくださいね(笑)。えっとね、[Alexandros]って今、武道館公演も開催して、[Champagne]から改名してノリに乗ってる“背脂チャッチャ”な感じじゃない。

庄村 確かに今、俺たちは過剰に“マシマシ”していかなきゃいけない状況だからね。

光村龍哉(NICO Touches the Walls)

光村 初めて入るラーメン屋では、券売機の右上ボタンのベーシックなのを頼むのがセオリーなんですよ。醤油ラーメンが売りだったら、トッピングも乗ってない醤油ラーメンを注文するのがラーメン好きの中では鉄則。でも、最近の[Alexandros]は券売機の右ボタンの下3つくらいをずっと押してるみたいな。

庄村 俺、どっちかって言うとそっち派だもん。その店の全力が見たい人だから(笑)。

光村 見てればわかる。サトヤスのドラムの手数の多さにも通じるしね。でもね……「Adventure」は券売機の右上ボタンのデフォルト感がすごく出てた。

庄村 そこはすごい意識したんだよ。「Adventure」って[Alexandros]の曲が生まれる最初の形が出てて、普段はここからいろいろトッピングを加えていくの。でも今回は純粋にいい麺が打てて、いいスープが作れた。だったら、チャーシュー1枚で十分だろう。それ以上は具材を増やさなくていいだろうと判断したわけです。

光村 はははははは(笑)。でもすごいわかる。昨今の音楽って、イントロで全部出しだったりするからね。イントロでチャーシューもあり、メンマもあり、なんならネギも増してっていう。

庄村 それで「へいお待ち!」ってドーンと出す感じね。

光村 でもいきなりそんなに食えないじゃない。だから最終的にお客さんがその店を判断するのは、麺とスープとあとは量感だろうと。[Alexandros]の「Adventure」はそのバランスがすごくいい。イントロをあえて抜いてる感じとか。ラーメン屋で例えるなら「不如帰」を感じました。「不如帰」の塩ラーメンって白トリュフが入ってたりして高級感があるんだけど、味はシンプルですっきりしてるんだよ。

庄村聡泰([Alexandros])

庄村 いい例えをありがとうございます。確かに「Adventure」はラーメン屋で言うなら素ラーメンを目指したから。俺たちの真髄が知りたければこの曲を召し上がれっていう。それ以外の曲はけっこうトッピングが入ってて、著しくバランスが崩れてるから(笑)。

光村 さんざんトッピングも混ぜこぜのを出したあとに、このタイミングで素ラーメンで勝負かけてくるところに自信を伺わせるなと。

庄村 まあね。「Adventure」に関しては、盛りつけも美しく、1枚絵になるようにとは意識したかもしれない。ボーカルのメロディにそんなにアップダウンがないんで、それでひとつの世界観を描き出せてるし、UKの曇り空を思い起こさせる雰囲気というか。

光村 でも「Droshky!」は逆だよね。[Champagne]時代からの系譜を受け継いでる。ブラスが入ってて、(川上)洋平くんのテンションも若干上がってて、さらに過剰になってる感じ。で、最近行った「ラーメン富士丸 神谷本店」の味を思い出したんだよ。1つひとつの味がめちゃくちゃ強いのよ、あそこ。

庄村 でもスープがすごいまろやかなんでしょ?

光村 そう、飲めちゃうんだよ。しかもあの店、カウンターにニンニクが並んでて、それを器に入れてくんだけどね……。

庄村 うわー、食いてー! っていうかアップトゥユーなんだ、ニンニク。

光村 うん(笑)。

庄村 こちらとしましては、一番守りたい味は「不如帰」なんですけど、一方で今までの味(音)に慣れてる人も「これは食いきれんわ」っていう爆発感のある一杯を作る必要があったんですよね。「Droshky!」をクレイジーかつメロディアスに仕上げたからこそ、「Adventure」はこれだけ抜いてもいいでしょ?っていうのもあるし。ウチは洋平が店主みたいなもんで、「Droshky!」はあいつがこれまでの集大成的な曲にしようと思ってたのをほかのメンバーが感じ取ったのか、悪ノリしまくってますね。トッピング乗せまくった結果です(笑)。

NICO Touches the Wallsなりの“リベンジ”

──では続いて「天地ガエシ」の解説をお願いします。先ほどサトヤスさんからテンポが面白いという話は出ましたが。

庄村 なんかね曲ができたときに、みっちゃんから「The Poguesみたいなアイリッシュな曲ができたんだよ」って言われて。この前「VIVA LA ROCK」で新曲を聴いたときに「これか!」って合点がいった。こういう曲を作るにあたって、ボーカルやメロディがいいことはさることながら、どれだけみんなが踊れるかってところが重要だと思うんですよね。リフのメロディを合唱できるかっていうのが、ケルトやアイリッシュの音楽においては大切だから。

光村 うんうん。

庄村 で、このギターリフはすごくいい位置に収まってるなと思ったんです。サビよりもイントロから鳴ってるギターのリフのほうが印象に残るんですよ。で、タイトルは聴かずに曲を先に聴いたんですよね。The Pogues的だったりDropkick Murphysを意識した曲ってので、「これかー!」って思ったんですけど、タイトル聞いたら……。

左から光村龍哉(NICO Touches the Walls)、庄村聡泰([Alexandros])。

──麺と具材をひっくり返す、いわゆる二郎系ラーメンでおなじみの言葉だったと。

庄村 タイトル考えたとき、少なくとも2パーセントくらいはラーメンつながりで俺のことが頭に浮かんだろうと思いましたからね(笑)。

光村 古今東西、俺がラーメントークをしてきた面々の顔が浮かびましたよ。でもラーメン文化は非常にニッチなムーブメントだし、知らない人にはものすごくロマンチックに響くだろうと。

庄村 負けた者が勝者になり、勝者が負けるっていう意味ですからね。でもね、ラーメン好きにとっては違う意味になる。

光村 だってラーメン屋でタイトルを思い付いちゃったんだもん。例えば「NICO Touches the Walls『リベンジ』」って文字面、カッコよすぎるじゃん。「リベンジ」を英語にしてみたり、カタカナにしてみたり、ひらがなにしてみたりしたんだけど、しっくりこなくて。

庄村 俺、「リベンジ」って聞くとPanteraの「Mouth For War」の出だしの「Revenge!」っていうのを思い出しちゃうから、タイトル「リベンジ」じゃなくてホントよかったよ。

光村 知らないよ、そんなの!(笑) まあ俺ららしい「リベンジ」っていう言葉を考えてたときに、渋谷の「凛」でふと思いついたんだよ。

庄村 あそこか! あのさ、俺、気になってることがあって。歌詞の中に「天地ガエシ」って出てくるけど、タイトル決めてから入れたの?

光村 タイトルが先だったね。テンポが上がってからの展開に悩んでて、特にDメロのあたり。あそこは曲の中で大事な部分だから、そこで何を歌うか悩んでたんだけど、そこは最後の最後に悩んで「秘密の大勝利」で腑に落ちて。でも、「天地ガエシ」っていうタイトルがいいってラーメン屋で思い付いた自分に対するアンサーが必要だと。

左から光村龍哉(NICO Touches the Walls)、庄村聡泰([Alexandros])。

庄村 はははは(笑)。俺としてはサビの歌詞で「僕らのリベンジ」っていうのが象徴的に出てくるのが印象的で。このバンドのリベンジって誰かに対する復讐とかじゃなくて、世の中の天と地がひっくり返るくらいのことをするってことなんだなって思った。最後に「天地ガエシ」って言葉が出てくることで、曲のスケールがすごく広がった気がしたんだよね。

光村 それはよかった。俺らってアルバム5枚出して、ベストも出してさ、世の中的には至って普通に存在してるバンドみたいな位置にはなってると思うんだよ。

庄村 うん。

光村 毎年いろんなバンドが出てくるし、俺らはもはや新人ではないと。だけど当たり前のように音楽をやってるわけじゃないし、1作1作勝負してるんだと。毎回「これでいろんな人の価値観をひっくり返してやるんだ」って思って音楽を作ってるってのを表現したくて。それで歌詞の中に入れたんですよ。

庄村 なるほど。でさ、「天地ガエシ」ってうまくアイリッシュを取り入れつつ、サビはみっちゃん節を保ててる曲じゃない? こういう曲を作れるんだったら、もっといろんなタイプの曲を聴きたいなって思ったんだよね。もうスペイン風とか、エジプト風とか、中華風とか……。

光村 スペインだと、ガスパチョ的なスープにカッペリーニ的な麺を入れてみたいな?

庄村 で、中華は酸辣湯麺的なテイストの曲にしていただいて。インドはカレーラーメンで……。

光村 ジャケット作りやすそうだよね(笑)。ブックレットで歌詞の隣に曲を象徴する1杯が載ってるんでしょ?

庄村 そうそう。なんらかの形でのゲスト参加も辞しませんよ。ブックレットの中で食べる人として登場するとか。ほかのバンドのドラムが、NICOのプロモーションのためにラーメンを超食うと。

光村 ははははは(笑)。それいつかやってみますか。

NICO Touches the Walls ニューシングル「天地ガエシ」 / 2014年6月11日発売 / Ki/oon Music
初回限定盤 [CD+DVD] 1728円 / KSCL-2443~4
通常盤 [CD] 1188円 / KSCL-2445
CD収録曲
  1. 天地ガエシ
  2. ハナノユメ
初回限定盤DVD収録内容

「天地ガエシ」music clip+ドキュメンタリー

[Alexandros] ライブDVD / Blu-ray「[Alexandros] Live at Budokan 2014」 / 2014年6月18日発売 / RX-RECORDS / UK.PROJECT
[DVD2枚組] 5076円 / RX-090~1
[Blu-ray Disc 2枚組] 6156円 / RX-092
[Blu-ray Disc 2枚組] 6156円 / RX-092~3
NICO Touches the Walls
(ニコタッチズザウォールズ)
NICO Touches the Walls

2004年4月に光村龍哉(Vo, G)、古村大介(G)、坂倉心悟(B)の3人で結成。同年7月に対馬祥太郎(Dr)が加入し、2005年から渋谷と千葉・柏を中心にライブ活動をスタートさせる。2007年11月にミニアルバム「How are you?」でメジャーデビューを果たす。2008年9月に1stフルアルバム「Who are you?」、2009年11月に2ndフルアルバム「オーロラ」をリリース。2010年3月には初の日本武道館ワンマンライブを開催した。2011年4月には3rdアルバム「PASSENGER」、7月にシングル「手をたたけ」、12月に4thアルバム「HUMANIA」を発表し、それぞれの作品でバンドの新たな音楽性を提示する。2012年には幕張メッセイベントホールでワンマンライブを実施して成功を収める。2013年3月にシングル「Mr. ECHO」、4月に5thアルバム「Shout to the Walls!」、7月にシングル「ニワカ雨ニモ負ケズ」を発表。2013年2月にキャリア初のベストアルバム「ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ ベスト」をリリースし、さらに3月にシングル「ローハイド」、6月にシングル「天地ガエシ」をリリースした。なお8月には2度目となる日本武道館単独公演を控えている。

[Alexandros](アレキサンドロス)
[Alexandros]

川上洋平(Vo, G)、磯部寛之(B, Cho)、白井眞輝(G)、庄村聡泰(Dr)の4人からなるロックバンド。2007年より[Champagne]名義で本格的に活動を始める。2010年1月にRX-RECORDSから1stアルバム「Where's My Potato?」を発表。美メロとパワフルなバンドサウンドを武器に、さまざまなイベントやフェスに出演しファンを獲得する。2013年6月に4thアルバム「Me No Do Karate.」をリリース。2014年3月の東京・日本武道館公演でバンド名を[Champagne]から[Alexandros]に改名した。同年4月から東名阪2DAYSを含む全国Zeppツアー8公演を実施。同年6月に改名後初めての作品となるシングル「Adventure / Droshky!」と、武道館公演の様子を収めたライブDVD / Blu-ray「[Alexandros] Live at Budokan 2014」をリリースする。