ナタリー PowerPush - New Acoustic Camp 2012

TOSHI-LOW×Candle JUNEが語り合う イベントの魅力と目指すもの

何やってもいいけど、全ては自分の責任

TOSHI-LOW 結局(NACは)キャンプ主体な気がするんだけどな。

JUNE そういえば面白かったことがあって。フェスの空間を頑張って作ったけど、Candle JUNEの本領は夜でしょうと。昼はずっと旗をつけたり看板をつけたりしてたのが、夜に「さあCandle JUNEになるぞ」と意気込んでキャンドルをつけたと。でも20時ぐらいにはみんなそれぞれのテントに戻ってた、みたいな(笑)。

TOSHI-LOW 去年は、頑張って山の上のほうへ行った人は、JUNEが造ったすごい空間を見れたじゃない。

インタビュー写真

JUNE あれもそんなに宣伝しなかったし、やるなんて言わなかったし。どうなるかわからないというか、NACは「こういうイベントが何時にどこそこでありますよ」みたいに全部が説明されてるわけじゃないから。

TOSHI-LOW 誰もクレームのこととか考えてないもんね、基本的に。そういうところにクレームする奴なんか、初めから来ないだろうという前提でやっちゃってるのがいいのかな。全ての人に喜んでもらうことなんて、もはや無理じゃない? 特にこのちっちゃいフェスなんかでそれは必要ないというか。遠いところの人が車で乗りつけて、「なんだよ、これもできねえ、あれもねえ、これもねえの?」みたいに文句を言うようなフェスではないよ、というさ。そこで“こっち側(の感性)の人”が多いのかな、というのはうれしいよね。

JUNE 例えば、「ゴミを捨てないでください」「こういうことは駄目です」みたいな決まり事をたくさん掲示するようなイベントでもなくて。みんながいい子ちゃんばっかりというのもイヤだけど。

TOSHI-LOW 自分で考えていけるといいよね。これはどうなんだろう?って。何やってもいいけど、悪いことも、自分で選んでやってねっていう。その代わり責任は、しっぺ返しは来るんだよ、という(笑)。

JUNE 全部自分に返ってくるからね(笑)。でも自分も、そういう空間を作るのが好きで。「ここからは入ってはいけません」って注意するとかじゃなくて、会場マップには書いてないんだけど「何か向こうに光が見える」とかね。主催者側としては100%の警備要領か何かを作らなきゃいけないんだけど、でもそういう“隙間”をどれだけ腹くくって作っていけるかみたいな、そういうことがちょっとずつ来てくれる人にも伝わっていって、楽しんでもらえてるのかなって思う。

TOSHI-LOW 1年目の川のところ、すげえ良かった! オレ、車椅子の友達をみんなで森の中に運んであそこまで行ったんだけど、あれは自分たちでもぐっとくる瞬間というか、みんなであの光景が見れたのがすごくうれしかったんだよな。ああいうのは確かにディズニーランドのショーみたいに、何時から何時までやるよ、というものじゃないじゃない? だから気付いた人が、自分の意志でそこまで行くか行かないか決めるという。そういうのはすごくいいなと思う。

不安が全部ワクワクにつながっていく

──NACでは夜はキャンプタイム、朝は体操。いろんなレクリエーションがあって、音楽を楽しむだけじゃないですよね。そういう独特な時間と空間の作り方は、初めから意図していたんですか。

インタビュー写真

TOSHI-LOW 一番初めに、やるんだったらそうしたいなと思ってたから。「キャンプにライブがついてる」ぐらいの感覚でいいということ。さっきからずっと言ってるけど、フェスと言われるものに疑問を結構感じていて。野外フェスでは自然と触れ合えるとか言われても「いや、違うんじゃねえかな?」と。逆にそういうふうにやってるのが矛盾してるというか。フェスは騒音も出すしゴミも出すし。だから、野外でやらせてもらってるという感覚、自分たちが生きてるんじゃなくて生かさせてもらっているという感覚の根底にはやっぱり毎日の生活があると思っていて。だから、野外で食べたり寝たりというものを体験する中で、あと何が自分たちに必要なのか?と考え直す、すごいいい機会になるんじゃないかなと。「豊かさってなんだろう?」と思ったときに「ちょっとしたメシと、コーヒーと、音楽と、子どもの声が響いていたらなんて幸せなんだ」という気付きは、なんでもあるところじゃ逆に得られないだろうし。そういうことを感じる歳になってきちゃったし、特に。「自分で生きてんだ」って意気がってたけど、違うなって本当に思うようになった。

──今年は場所が変わりますよね。それも含めて、NAC第3回はどんなフェスになりそうですか。

TOSHI-LOW どうなるんだろうね。全然わかんない(笑)。

JUNE 「この場所にまた来たいな」という要素で言うと、温泉が最高です。

TOSHI-LOW 温泉あるの?

JUNE 温泉が近所にあって、すごい最高。それと、今はまだ「これからどうする?」ということを、制作の人間が現地に行って話してるところなんだけど、やっぱりそこでやらせてもらってるという意味では、地元の人たちとのつながりと、やる意味と、パッとやって終わりじゃないんだぞみたいなことをちゃんと示していかないと。NACもようやく3年目を迎えて、「ちゃんとこれを続けていくぞ」って言える始まりの年になると思ってるから。……どうなるかまだわかんないけどね。

TOSHI-LOW とりあえず、Candle JUNEが温泉に入れるってことは刺青があっても入れるっていうことで。

JUNE クマがいる。

TOSHI-LOW クマが入れるんだったら余計に大丈夫だな(笑)。

JUNE 完全露天で混浴で。素っ裸のまま川の桟橋を渡ると向こう岸にも温泉があって。そこをどう歩いていくか、みたいなことも考えて。

TOSHI-LOW (笑)。

JUNE 堂々と歩くのもいいんだけど……ま、いっか(笑)。

TOSHI-LOW 全然想像がつかなくて。まだ話に聞いてるだけだから。

JUNE 多分まだどのスタッフも、そんなに想像はできてないんじゃないかな。でもその「不安だな」と思う気持ちが全部、ワクワクにつながっていく気がするから。

New Acoustic Camp 2012 公演情報

2012年9月22日(土・祝)
群馬県 水上高原リゾート200
OPEN 8:00 / START 11:00

2012年9月23日(日)
群馬県 水上高原リゾート200
END 15:00

料金

2日通し入場券早割11500円 / 前売13500円 / 当日15000円

早割チケット

2012年6月16日(土)~7月10日(火)
イープラスにて販売
駐車場券4000円 / ファミリーサイト券3500円

TOSHI-LOW(としろう)

BRAHMANのボーカル、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのボーカル&ギターとして活躍する男性アーティスト。1995年にBRAHMANを結成し、1996年に初作品「grope our way」をリリース。1990年代後半にひとつの社会現象になったパンクムーブメントにて絶大なる人気を集め、その後もヨーロッパやアジアでツアーを行うなどワールドワイドな活動を展開している。さらに2005年にはOAUを結成。2006年にセルフタイトルの1stアルバムでデビューする。2010年からは野外イベント「New Acoustic Camp」をオーガナイズ。

Candle JUNE(きゃんどるじゅん)

空間演出を手がけるアーティスト。1994年からキャンドルの制作を始め、ギャラリーやサロンなどでエキシビションを開催。ルイ・ヴィトン、プラダなどのレセプションパーティや多数のファッションショー、「Fuji Rock Festival」を始めとする野外フェスティバルのフィールドデザインで注目を集める。2001年に広島で「平和の火」を灯してから「Candle Odyssey」と題した世界中で“悲しみの生まれた場所”を巡る旅をスタート。アメリカ、アフガニスタン、広島、長崎、沖縄、中国といった場所のほか、新潟中越地震震央地や東北大震災被災地でも活動を行っている。