ナタリー PowerPush - New Acoustic Camp 2012

TOSHI-LOW×Candle JUNEが語り合う イベントの魅力と目指すもの

何かがきっと楽しいんだよね

──JUNEさん、NACとはどんなものだと感じていますか。

JUNE いちバンドのアーティストが発起人で「フェスします」というと“その人祭り”みたいな感じがすごく出るけど、NACについては全然そうじゃないんだよと。かと言って「アコースティックな感じで、野外フェスっていいよね」というゆったりした感じでもないというか。やっぱりOAUのTOSHI-LOW、BRAHMANのTOSHI-LOWがオーガナイザーだという面が出てるというか、なんかちょっと違うんですよね、ほかのいろんなフェスとは。日高さんが主催しているフジロックが楽しいなと思うのと近いというか……。「なんとなくTOSHI-LOWはこういうことを思ってるんだろうな」という思想みたいなものが透けてみえて、楽しいんですね、きっと。

インタビュー写真

TOSHI-LOW ビジョンを描くこっちのほうが、実は最終型が見えてないというのはあって(笑)。そこに行くまでの過程に関しては、何があっても当然だと思ってるし。そう考えると、一番初めのときのフジはすごかったね。すげえ思いしたなって。

JUNE 自分はずっとレイブパーティとかさんざん野外をやったあとにフジの1年目を体験して。「何やってんだろうな」って思ったんだけど、2年目に豊洲に移った潔さがカッコいいと思えて。さらに苗場に移ったときに、パーティシーンの人たちがFIELD OF HEAVENとかで昔のヒッピーカルチャーの人たちも一緒に楽しんでたあの雰囲気……「命かけてやってる、遊んでる」みたいな感じがフジロックにはあって。同じような雰囲気がNACにもはっきりあるなと思ってて。全部企画書に落とし込んで、企業を口説いて、「ここから何年後にはこんなビジョンですから、何万人収容しますよ」みたいなイベントを目指してはないというか。

TOSHI-LOW 全くない。

JUNE 「何かがきっと楽しいんだよね」という気持ちがあるのが、NACかなと思うので。それはまぎれもなく、TOSHI-LOWが今までやってきてることだとか、生き方とか、友達とか、そういうのとイコールだから、言葉にしなくてもなんとなくわかってるつもりで。そういうイベントを一緒に作っていけるのはとてもやりがいのあることだし、友達とかいろんなジャンルの人に来てほしいなと思えるから。

ルールがないのがいい

──ここまで2回イベントをやってきて、最初の理想と、実際にやってみてからの現実の差を、どんなふうにとらえていますか。

TOSHI-LOW オレはちまちま横で言ってるだけなんで、本当に中でやってる人たちの大変さは感じてない部分もあるけど。でもJUNEと同じように、言葉にしなくても通じることはあって。描いてる理想はみんな似てて、それは当たり前だけど商業ベースのものじゃなくて……大人が集まって何かやるというのは実はすごく大変というか。例えばさ、草野球で集まるのにも労力がいるでしょ? 休みの日を合わせて、練習して。だから壮大な趣味に近いのかな、みたいな気持ちはある。それに、一緒にいて安心する人たちが多いというか。みんな同じことを考えてるのが、最終的に居心地の良さに通じてるのかなと。

インタビュー写真

JUNE 自分はいろんなフェスに関わらせてもらってるんですけど、フェスは真剣な大人の遊びで。お金もかかるし、もっと言うならお金を稼げないかもしれないし。でも、そういういろんなことを差し置いて「もっとこうじゃないですか?」みたいな感じで意見を言っていかないと面白くなくなっちゃう。「ギャランティがこうだからこんなもんじゃないですか」みたいな妥協は、間違いなく存在しない世界だから。それで、NACはここまで2年やって、確実に理想型に向けて修正をかけてる感じがいいなあと。これは去年やって駄目だったから今年はこうしようとか、こんなメンバーが必要だなとか、そうやって検討していったときに「全員必要なんだよ」という気持ちがある感じ。ほかのフェスって、興行屋さんがいたりとか、制作会社ですみたいな人がいたりして、もうちょっと会社っぽいんだけど。

TOSHI-LOW ルールがないのがいいとオレは思っていて。フェスにお決まりのラインがない。

JUNE でも自分たちの中にはちょっとある。「TOSHI-LOWが嫌がるんじゃないかな?」という考えは。

TOSHI-LOW (笑)。

JUNE なんとなくだけど。自分たちの価値観をどこかで合わせていくときに、「これはクールでいいよね」「これは意外とほかでやってないし」とか、「これやっちゃうと、ちょっとどうかね? ほかと一緒じゃない?」とか。それが別に豪華じゃなくても「こっちのほうがTOSHI-LOWはいいって言うよ」みたいな空気がなんとなくある。かといって本人が全部こと細かに、ああだこうだと言うと、多分それは本人がつまんなくなってくるんじゃないかなと思うし。その絶妙な感じがあるのがいいのかなと思う。普通、アーティストがフェスやるんだったら、友達のバンドをどんどん呼んで、しっかりステージを作って……そこにはなんらかのテーマやメッセージや思いがあるのかもしれないけど、NACはフォークダンスが夕方のメインイベントだったり「え?」と思うようなコンテンツを結構本気でやってたり。音楽が主体ってわけでもないんですよね。

New Acoustic Camp 2012 公演情報

2012年9月22日(土・祝)
群馬県 水上高原リゾート200
OPEN 8:00 / START 11:00

2012年9月23日(日)
群馬県 水上高原リゾート200
END 15:00

料金

2日通し入場券早割11500円 / 前売13500円 / 当日15000円

早割チケット

2012年6月16日(土)~7月10日(火)
イープラスにて販売
駐車場券4000円 / ファミリーサイト券3500円

TOSHI-LOW(としろう)

BRAHMANのボーカル、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのボーカル&ギターとして活躍する男性アーティスト。1995年にBRAHMANを結成し、1996年に初作品「grope our way」をリリース。1990年代後半にひとつの社会現象になったパンクムーブメントにて絶大なる人気を集め、その後もヨーロッパやアジアでツアーを行うなどワールドワイドな活動を展開している。さらに2005年にはOAUを結成。2006年にセルフタイトルの1stアルバムでデビューする。2010年からは野外イベント「New Acoustic Camp」をオーガナイズ。

Candle JUNE(きゃんどるじゅん)

空間演出を手がけるアーティスト。1994年からキャンドルの制作を始め、ギャラリーやサロンなどでエキシビションを開催。ルイ・ヴィトン、プラダなどのレセプションパーティや多数のファッションショー、「Fuji Rock Festival」を始めとする野外フェスティバルのフィールドデザインで注目を集める。2001年に広島で「平和の火」を灯してから「Candle Odyssey」と題した世界中で“悲しみの生まれた場所”を巡る旅をスタート。アメリカ、アフガニスタン、広島、長崎、沖縄、中国といった場所のほか、新潟中越地震震央地や東北大震災被災地でも活動を行っている。