ナタリー PowerPush - NESS
ジャンルを超えた4人が奏でる“和食”ノイズミュージック
全国の「パンクブレイカーズ」が怒りますよ
──バンド名の「NESS」はどのようにして決定したんですか? 元々ある言葉ではないですよね。
三浦 ローマ字4文字、カタカナ2文字っていう制約を僕と戸田の中で作って。んで、なんとなくNESS。
──その制約には何か理由が?
三浦 音楽もだけど、バンド名も具体的にしたくなかったんですよね。「パンクブレイカーズ」とか、名前から音楽が推測できる感じじゃなくて(笑)。
内田 全国の「パンクブレイカーズ」が怒りますよ(笑)。
──抽象的で響きがあって、かつデザイン的にも良いですよね。
三浦 そっちを重視して考えました。
──そもそもジャンルが特定されたバンドでもないですし。
三浦 まさかプログレが入るとは思ってなかったから(笑)。
──そこはやっぱりリズム隊のお2人の感覚なんでしょうか。
内田 意識せずとも出たんでしょうね。特にジャンル指定でプログレ要素を加えるつもりはなかったですけど。
──三浦さんと戸田さんの持ってくる音にリズムを乗せたら、自然とプログレ的な要素が出てきたと。
河塚 そうですね、特に意識したわけではなく。プログレ=変拍子っていう印象ならちょっと違う気もしますが、有機的に転がって変化するっていう漸進性をプログレとするなら納得できるところはありますね。
ポップスの引き出しにはユーミンとか拓郎とか想い出波止場ぐらいしか
──先程Corneliusという例が出ましたけど、まず最初にアルバムを一聴したとき、具体的にどのあたりのシーンを同ジャンルや仲間、あるいは仮想敵に設定しているのかな、というのが気になったんですね。顔ぶれからとんでもなくアバンギャルドな音を想像していたら、予想外にポップだったので。
三浦 そうですね。もしくはメタル版「空手バカボン」だと思われる可能性もある(笑)。
──「サカナクション辺りのファンも喜びそうだな」というのが僕の第一印象なんですよ。
三浦 喜んでくれたらバンバンザイですけどね(笑)。アウトプットがポップになるのは多分、僕らの中に戸田の存在が念頭にあるからじゃないかな。戸田のバランス感覚を信じるとそうなるんです。例えば5曲目の「Ukee」は内田と河塚の曲だけど、最終的に戸田のジャッジで進めていったんですね。他の曲も僕は「戸田だったらどうするだろう」と考えて作ってる。でも戸田はそんなこと考えてない。だって、戸田は戸田のことをやればいいから(笑)。
──司令塔というよりは……。
三浦 NESSの象徴ですね(笑)。
──その戸田さんが考えるNESS像は?
戸田 最初はジャンルとしていくつか、ノイズ、ポストロック、インプロビゼーションあたりかなと漠然と話していまして。元々そういったジャンルも好いているのですが、「好きにやっていい」という言葉を勝手に解釈してしまった結果……なぜかフォーキーなものが出てきてしまった部分もありまして。NESS像……自由にやらせていただける素晴らしい空間だと思います(笑)。
──昨年11月にリリースされた電子音楽部のレーベルコンピでもそうでしたけど、実際のサウンドや「電子音楽部」という言葉が持つムードとは裏腹に、どこかフォーク感みたいなものが自然と漂ってますよね。
戸田 僕、最初に観たバンドがチューリップなんですよ。財津和夫が来なかったコンサート。
一同 アハハハハ(笑)。
──でもそれってルーツと言えるものではないですよね。
戸田 いえ、自分のルーツとしてはニューミュージックやフォークは相当強いです。歌モノを作ろうと思うと、そこに寄っていかざるを得ないというか。その後のJ-POPを聴いて来なかったので。
──ポップスの引き出しを開けると、フォークしか入ってない(笑)。
戸田 思春期に真っ当な流行歌も聴かずに育ってしまいまして。ポップスの引き出しにはユーミンとか吉田拓郎とか想い出波止場くらいしか入ってないです。
内田 アハハハ。一部ポップスじゃねえよ(笑)。
NESS(ねす)
三浦俊一(G / ケラ&ザ・シンセサイザーズ)と戸田宏武(Syn / FLOPPY)が2011年4月に行ったセッションを母体に、内田雄一郎(B / 筋肉少女帯)と河塚篤史(Dr)を加えた4人編成で結成。6月よりライブ活動をスタートさせ、11月30日に1stアルバム「NESS」をリリース。2012年2月5日には、元PUBLIC IMAGE LTDのジャー・ウォブル(B)、キース・レヴィン(G)らによるバンド「METAL BOX IN DUB」の来日公演にスペシャルゲストとして出演する。