ナタリー PowerPush - NESS
ジャンルを超えた4人が奏でる“和食”ノイズミュージック
三浦俊一(G / ケラ&ザ・シンセサイザーズ)、戸田宏武(Syn / FLOPPY)、内田雄一郎(B / 筋肉少女帯)、河塚篤史(Dr)という世代も音楽遍歴も異なる4人が、今年の春に新たなバンド「NESS」を結成した。1stアルバム「NESS」では、エレクトロ、ノイズミュージック、プログレ、ポストロック、さらにはフォークミュージックまで、さまざまなジャンルを消化した独自の音像が描かれている。
今回のインタビューではメンバー4人に集まってもらい、バンドの成り立ちから1stアルバム「NESS」完成に至るまでの経緯を詳しく訊いた。
取材・文 / 臼杵成晃 インタビュー撮影 / 中西求
やれんのか!
──まず、NESS結成のいきさつを教えてもらえますか?
三浦俊一(G) アイデア自体は2010年くらいから、僕と戸田(宏武)で温めていたんです。FLOPPYのツアーにいくときは「車組」と「電車組」に分かれるんですよ。車組は電車が苦手で、新幹線より車で行きたい人。戸田と僕は車が苦手な電車組だったので、2人で移動することが多くて。そこで話していた「電子ノイズの洪水をやってみよう!」というのが発端だったんですが、さて、いざやるとなると「ノイズで1時間やれるの? そこまで根性あるの俺たち?」って(笑)。
内田雄一郎(B) 根性だよね。やれんのか! 猪木だ。
三浦 「やれんのか! 自分」って考えたときに「無理かもしれない」って日和っちゃって(笑)。でもずっと“電子ノイズ”というキーワードが頭の片隅にあったんです。じゃあどういうカタチなら電子ノイズがやれるのかって考えて、ある程度のトラックがあったほうがいいだろうと。そういうところで今年の4月に最初のセッションをやりました。
──それは戸田さんと2人だけで?
三浦 そうです。でもライブをやるならバンド編成がいいんじゃないかと思うようになりまして。で、戸田の提案でベースに内田を誘ったら速攻オッケーをもらい、今度は内田の提案で、10年来の友達である河塚(篤史)くんがドラムにいいんじゃない? となり、今の4人が揃いました。
──ベースを内田さんにしたい、というのは?
戸田宏武(Syn) 内田さんが良いなあと。一択で。
──そうすると、最初のセッションの段階でNESSの方向性はある程度固まっていたのでしょうか。
三浦 いや、そこまで具体的には見えてなかったですね。もっとエレクトロ感が強いものを想定してたかなー。バンドにエレクトロ感を加えた演奏というと、例えばCorneliusなんかうまく融合してますよね。多分、Corneliusは先にある程度の完成予想図があるんじゃないかと想像しますけど、僕らには漠然としたものしかない(笑)。で、ちょうどこのバンドの準備をしてた頃、ポストロックをよく聴いてたりして、バンドでやるならそんな感じもいいんじゃないかと思ってました。
こんなん出ましたけど
──内田さんと河塚さんはこのバンドに、まずどのようなアイデアを持ち込んだのでしょうか?
河塚篤史(Dr) 僕は2人編成だった最初のセッションを拝見していて。
内田 僕はその後それをDVDで観て、さあどうしようかと。「この2人のリズムセクションでこのバンドに参加するなら、やはりヘビーなロックイディオムを投入すべきではないか」と思いつつ適当に参加したら……(笑)。
河塚 こんなん出ましたけど、みたいな。
三浦 4人編成のお披露目は6月かな?
河塚 1stステージがいきなりツアー初日っていう(笑)。
──その段階では今の方向性は固まっていたんですか?
三浦 いや、そこからまた変化がありましたね。たった半年ですけど。1回目のときはまだエレクトロ感の方が勝ってました。
──ツアーでの感触を経て、よりバンド的な音に近付いたと。
三浦 リズム隊に感化されましたね。最初はエレクトロのほうにバンドを寄せるようなイメージだったんですけど、もういっそのことバンドのほうに寄せちゃおうと。打ち込みのように聴こえる戸田のパートも手弾きで演奏する比重がだんだん増えてきて。
戸田 シーケンスは少ないです。いわゆるテクノ的な音色も無いのではないでしょうか。
──アルバムに入っている曲で、2人編成のアレンジ要素が残っている曲はありますか?
河塚 アルバム3曲目の「Desert」と6曲目の「Summer Folklore」はリズム隊が参加したときには既に形としてあったけど、東名阪3本のツアーで演ったら、初日と最終日では結構違ってて(笑)。「このくらいまでいけるんだ」「こうしてみても面白いんじゃない?」ってどんどん足していけるのがツアーの強みでもあるし、そういう変化は面白かったですね。
NESS(ねす)
三浦俊一(G / ケラ&ザ・シンセサイザーズ)と戸田宏武(Syn / FLOPPY)が2011年4月に行ったセッションを母体に、内田雄一郎(B / 筋肉少女帯)と河塚篤史(Dr)を加えた4人編成で結成。6月よりライブ活動をスタートさせ、11月30日に1stアルバム「NESS」をリリース。2012年2月5日には、元PUBLIC IMAGE LTDのジャー・ウォブル(B)、キース・レヴィン(G)らによるバンド「METAL BOX IN DUB」の来日公演にスペシャルゲストとして出演する。