全部リード曲にできるくらい濃いアルバム
──では、3rdミニアルバム「ICE GLEAM」について聞かせてください。“愛すグリーム≒煌めきを愛そう”というテーマを掲げた作品ですが、新曲が中心なんですか?
おか はい。ミニアルバムのリリースが決まってから作ったのが「Highway Life」「我爱你」「MONOTARINAI」の3曲で、愛についての曲をそろえた作品になっています。バンド活動を続けるうえで一番必要なものってなんやろう?と考えたときに、やっぱり愛やなと。それを1つの作品としてまとめられたらいいなと思って作ったのが「ICE GLEAM」ですね。
井上 全部リード曲にできるくらい、濃いアルバムになったと思います。歌い方においても、いろいろとチャレンジした曲が多いです。「MONOTARINAI」はちょっと演歌みたいなコブシを入れてるんですよ。そういう歌い方は初挑戦だったので、けっこう大変でした。
──「MONOTARINAI」は、岸和田のだんじり祭をテーマにした映画「バッコン!」の主題歌ですね。
おか 映画を観てから書き下ろさせてもらいました。和の感じを入れたかったんですけど、ボーカルのレコーディングにだいぶ時間がかかったよな?
井上 1節で25テイクとか(笑)。
おか そうやってこだわったおかげで“日本っぽさ”を出せたと思います。映画のために曲を書くのが初めてやったんで、すごく楽しかったですね。神戸の東灘にもだんじり祭りがあって、5月5日のこどもの日に毎年やってるんですよ。岸和田のだんじりとはだいぶ違うんですけど、わかるところもあるので曲のイメージが湧きやすかったです。
井上 岸和田のだんじりは狭い路地をすごい勢いで走って行きますからね。参加してる皆さんの気合いもめちゃくちゃすごいんですよ。その熱さが「MONOTARINAI」にも出てると思います。
──アルバムの1曲目に収められた「ウェイティン!!」はライブで盛り上がりそうなアッパーチューンですね。
おか まさにライブで盛り上がりたくて作りました。みんなで一緒にノレて、歌える曲を目指して、仮タイトルは“掛け声”だったんですよ。
井上 歌詞は、報われない恋愛をしている女の子が主人公です。最初に読んだときから「エグい」と思ったし、歌っていてつらいんですよ。女の子のセリフや気持ちの描写も入ってて、どうしても感情移入してしまって。でも曲調はめっちゃポップだから、「どっちに重きを置けばいいんだろう?」っていう。
おか そうやな(笑)。
井上 すごいポップだけど、もの悲しさもある。この曲に限らず、それが“おかともきらしさ”だと思いますね。
おか 僕の歌詞は主人公が失恋することが多いんですよ(笑)。恋愛ソングで恋が実ったことがないかも。
──切ない曲のほうが書きやすい?
おか そうですね。自信のなさというか、僕の性格が出てるのかもしれません。「ウェイティン!!」に関しては、つらくても明るく振る舞う子をイメージしています。それが「音はポップで、歌詞が暗い」という感じになったんだと思います。一方で、3曲目の「DOLE PLAYING」は悲しいメロディとサウンドに切ない歌詞を合わせていて。
井上 「DOLE PLAYING」の歌詞もすごく好きですね。この曲はだいぶ暗いんですけど、「こんなことされたら、そりゃキレるよな」と思いながら、自分の感情を乗せて歌いました。
おか 主人公を立ててストーリーを作るのが好きなんでしょうね。
ノンフィクションな「Highway Life」、リフレインで魅せる「カッコつかないよ」
──2曲目の「Highway Life」はスピード感にあふれたサウンドが印象的です。この曲はほぼノンフィクションですよね?
おか はい。「Highway Life」は猫背のネイビーセゾンのストーリーです。僕ら、ホントにずっと高速道路の上にいるんですよ。
井上 ハハハ。
おか 遠征ライブで30分の出演時間に対して、移動時間が車で7時間とか。往復だと14時間ですからね。
井上 腰がバキバキになります。
おか もちろんイベントやフェスに呼んでもらえるのはありがたいんですけどね。
──バンドマンが必ず通る道ですね。
おか 「“高速道路生活”からメンバーみんなで抜け出したいなあ」という思いを込めたのが「Highway Life」です。こういう、メンバーを軸にした曲は初めて書いたので、メンバーが「いいね」と言ってくれてうれしかったです。
──車はメンバー皆さんが交代で運転しているんですか?
おか そうですね。ただ、僕だけ免許がなくて……いつも助かってます(笑)。
井上 「Highway Life」は車で移動しているときに歌詞を書いてたよね。
おか うん。運転できない分、がんばって曲を作ってます。
──「カッコつかないよ」は「これじゃ、カッコつかないよ」から始まり、1曲を通して「カッコつかないよ」をリフレインする楽曲。めちゃくちゃ中毒性がありますね。
おか ありがとうございます。
井上 サビも「カッコつかないよ」で押し切ってますからね。1つのフレーズをリフレインする曲は何曲かあるんですけど、これも猫背のネイビーセゾンを表している曲だと思います。
──フレーズを繰り返すことでグルーヴを作る手法は、やっぱりフレデリックの影響ですか?
おか それはすごくあると思います。「カッコつかないよ」って、発音の響きが打楽器みたいじゃないですか。もともと好きなワードだし、それを繰り返すことでクセになってくれたらいいなと。歌詞のテーマもハッキリしていて、バンドを5年以上続けてると、周りのバンドがどんどんやめていくんですよ。尊敬していた先輩のバンドとか、同期のバンドが解散したり、メンバーが就職したり。その人たちに向けた気持ちを書きたいという気持ちがありました。
井上 コロナ禍のときも多かったですからね、やめてしまったバンドは。ホンマに仲がよかった人が抜けたり、バンド自体が解散したりすることがけっこうあったし、僕自身すごくつらい気持ちになることもあって。正直、ポジティブな感情になれない時期もありましたね。
おか だからこそ「今、バンドをやれてるのは当たり前じゃないな」と思うんです。メンバーもそうやし、支えてくれてる事務所の方にも感謝しなくちゃいけないなと。そういう気持ちも「カッコつかないよ」に込めてます。
自己肯定感が低めの人へ
──そして「我爱你」はネオソウル、オルタナR&Bのテイストを感じさせるミディアムチューンです。ドラムとベースの絡みがカッコいいですね。
おか 個人的にこういうベースを弾いてみたかったんです。プライベートで聴いてるアーティスト、例えばSuchmosさんやTENDREさん、Penthouseさんのような、ソウル、R&Bの要素を入れたくて。
井上 おかくんはホンマに幅広く聴いてるよな。
おか ここまでBPMを抑えた曲を作ったことがなかったし、「我爱你」が入ることで、ミニアルバム全体のいいアクセントになるんじゃないかなと。
井上 この曲のボーカルレコーディングもめちゃくちゃ大変でした。オートチューンを使ったのも初めてだったし、どうしても歌が平坦になってしまって。どうやって感情を乗せるか、かなり苦戦しましたね。
おか だいぶディレクションさせてもらいました。そのあたりはほかのバンドよりもビシバシやってるかも。
井上 作詞作曲をしてるのはおかくんだから、もちろん彼の意見を尊重はしてるんですよ。でも、僕のほうにも「こうしたほうがいいんじゃないか?」と思うところもあって。そこはお互いに言い合いながらやってます(笑)。
おか 井上は僕にできないことができるので。僕が歌うわけじゃないのに、「まだまだあきらめんへん。お前やったらできる!」と言ったりしてますね(笑)。
井上 最初は「無理やって」と思ってても、何度もやってるうちに歌えたりするんですよね。
──メンバー同士で切磋琢磨している、と。「我爱你」ももちろん、愛の歌ですよね。
おか 恋愛というより、人間としての愛の歌ですね。「自分を愛そう」という。さっき「自信のなさ」みたいな話をしましたけど、僕は自己肯定感がけっこう低くて。「我爱你」は自分のために作ったところもあります。
井上 僕も自己肯定感があまり高くないんです。バンドを始めた頃はもっと自信がなかったんですけど、活動を続けてる中で少しずつ上達してきて、周りの人たちが認めてくれるようになって。このバンドで過ごした時間、出会った人たちのおかげでちょっとずつ自分のことを愛せるようになった。そんな今だから「我爱你」を歌えたんだと思いますね。以前だったら歌えてなかったというか、もっと薄っぺらくなってた気がします。
おか 自分たちのように自己肯定感が低めの人に聴いてほしいです。
──自分を愛そうというテーマは、猫背のネイビーセゾンが掲げている“ネオンロック”、「誰もが持つ胸の奥にあるキラキラしたものを音に紡いで届ける」というコンセプトにもつながっていそうですね。そして、11月には全国8カ所を巡る全国ツアー「猫背のネイビーセゾン pre.【GLEMLiNS TOUR】」がスタートします。
井上 8カ所も回る全国ツアーは初めてなんですよ。めちゃくちゃ楽しみです。
おか ファイナル以外の7カ所は対バンライブなんですけど、同世代のバンドが多くて。これから一緒にシーンを盛り上げていきたいバンドを呼べたのもうれしいです。
井上 しかもファイナルはBIG CATでワンマン。関西のバンドにとっては登竜門みたいな会場だし、自分たちにとってもチャレンジですね。絶対成功させたいし、めちゃくちゃ気合い入ってます。
おか なんか面白いことがしたいんですよね。アーティスト写真やライブのフライヤーもそうなんですけど、猫背のネイビーセゾンだからこそ観られるライブをやりたいと思っています。がんばります!
公演情報
猫背のネイビーセゾン pre. 【GLEMLiNS TOUR】
- 2025年11月7日(金)東京都 WWW
<出演者>
猫背のネイビーセゾン / bokula. - 2025年11月8日(土)宮城県 enn 3rd
<出演者>
猫背のネイビーセゾン / Broken my toybox / Gum-9 - 2025年11月14日(金)愛知県 ell.FITS ALL
<出演者>
猫背のネイビーセゾン / トップシークレットマン - 2025年11月16日(日)石川県 vanvanV4
<出演者>
猫背のネイビーセゾン / ザ・シスターズハイ / セカンドバッカー - 2025年11月23日(日・祝)福岡県 Queblick
<出演者>
猫背のネイビーセゾン / '97,Kids / YUTORI-SEDAI - 2025年11月29日(土)広島県 CAVE-BE
<出演者>
猫背のネイビーセゾン / osage / ペルシカリア - 2025年11月30日(日)香川県 高松TOONICE
<出演者>
猫背のネイビーセゾン / osage / ペルシカリア - 2025年12月5日(金)大阪府 BIGCAT(※ワンマン公演)
<出演者>
猫背のネイビーセゾン
プロフィール
猫背のネイビーセゾン(ネコゼノネイビーセゾン)
2019年に兵庫・神戸で結成された、井上直也(Vo, G)、おかともき(B, Cho)、横山大成(G)、石坂圭介(Dr)からなるバンド。「誰もが持つ胸の奥にあるキラキラしたもの」を届けるべく“ネオンロック”というコンセプトを掲げている。多様なジャンルを昇華しながら懐かしさを感じるサウンドと、秀逸なワードセンスが魅力。2024年12月にMUSIC ZOO KOBE 太陽と虎で行ったワンマンにてmurffin discs所属を発表した。2025年、精力的な作品リリースとライブ活動を展開し、ライブチケットのソールドアウトが続出。秋には自身最大規模の全国8カ所を巡るツアーを開催する。