ねぐせ。インタビュー|笑顔がモットー!TikTokで注目を集める次世代バンドが日本武道館へ (2/2)

本当に“笑顔がモットーのバンド”になった

──アルバムの新曲は2曲ともすごくキャッチーで、歌詞の設定もわかりやすいです。「あの娘の胸に飛びこんで!」では学生時代のクラスのマドンナへの憧れが歌われていますが、実体験なのかフィクションなのか、どうなんでしょう?

りょたち これはめっちゃフィクションです。俺はほぼ男子校みたいな工業高校に通っていたし、中学校のときはサッカーしかしていなかったので、学校内で恋愛でドキドキするみたいな経験をしたことがないんですよ。でも、アニメやドラマを観てそういう青春には憧れているので、それを曲にしようと思いました。

──インタビューの冒頭でも少し話していましたが、例えば「日常革命」にはりょたちさんの生々しい実体験が描かれています。実体験をもとに曲を作ってきた一方で、今はフィクションも書けるようになってきたということですよね。

りょたち まさにそうですね。最近はフィクションを楽しんで書いてます。

なおと うん。昔はフィクションは作れなかったよね。

りょたち 本当に作れなかった。

なおと しかも「フィクションは作りたくない」って言ってたしね。

──なぜ作れるようになったんでしょう?

りょたち なんでだろう? 活動をしていく中で考え方が変わったんだと思います。悲しい実体験を書いた曲ばかり歌っていくのも違うのかなと最近思い始めて。ライブをたくさんやるようになって、「お客さんにもっとライブを楽しんでもらいたい」と考えたときに、一緒に歌ったり踊ったりしたくなる曲を作るようになった。コロナ禍ではそういうことはまったく考えなかったんですけど。

なおと あの頃は声出しができなかったし、キャパ制限があって、できることは手拍子だけみたいな状況で。そこでりょたちから出てきたアイデアがダンスでした。制限がなくなった今でもダンスは続けていて、そのうえで制限がなくなったからこそできることを全部やってる。ねぐせ。のライブに来た人に一番言ってもらえるのが「楽しい」という言葉なんですよね。楽しくて情緒がずっとぐわんぐわんするようなライブをやっているのがねぐせ。の一番の強みだと思います。

なおや ねぐせ。は「笑顔がモットーのバンド」と打ち出してるだけあって、自分たち自身もすごく楽しくライブをやってるんです。その楽しさがお客さんにも伝播している気がする。お客さんの笑顔を見て僕らも笑顔になるし、僕らの笑顔をお客さんが見て笑顔になるという連鎖が起きるのがすごくいいなと思います。

なおや(G)

なおや(G)

なおと ライブでは自分たちが一番楽しんでる自信があるよね。お客さんに負けないぐらい俺らが楽しんでる。でも、お客さんは逆に俺らより楽しんでる自信があると思う。それがいい化学反応を起こしています。最初に「笑顔がモットーのバンド」と言い始めたのは僕なんです。サブスクの自己紹介欄のところに何か書かなきゃいけなかったんですけど、結成してすぐだったから思いつかなくて、「俺らが笑顔だったらみんなに伝染するんじゃね?」と思って「笑顔がモットーのバンド」と勝手に書きました(笑)。そうしたら本当に笑顔がモットーのバンドになったんです。

──失恋ソングが多いのに「笑顔がモットー」であることに対して、疑問は浮かばなかったんですか?

りょたち なかったですね。もともと楽しくやるというスタンスではあったので、「笑顔がモットーなんだ?」と思ったぐらいでした(笑)。

なおと 俺が最初から「バンドをやるんだったら楽しくないといけないから」と口癖のように言ってたしね。今はバンド1本で生活していて、バンドが仕事でもあり趣味でもありという感じになりましたけど、楽しいことしかほぼしてないですし、それがさらに笑顔を生んでるんだと思います。たぶん「笑顔がモットー」じゃなかったら生まれなかった曲もあるよね。

りょたち 確かに。

なおと これで「きれいな声で聴かせるバラードが売りのバンドです」と謳ってたら、歌モノの方向に行ってたかもしれないし。正直「彩り」や「恋夜」をバンド初期に作って、ああいうきれいで落ち着いた感じの曲だけを聴いたら、そっちに振ったほうが自然だったはずなんだけど、なんで俺は「笑顔がモットー」って言い始めちゃったんだろう……(笑)。バンドを始めた当初は笑顔が少なかったんですよね。全員と同じ時期に出会ってバンドを組んだわけでもなくて、バラバラに出会ってるし。全員が全員のことをよく知っているわけでもないから、お互い気を遣っていて。だから、「笑顔がモットー」と打ち出すことで、笑顔が増えて仲よくなるかなと思ったんですよね。

りょたち なおとが「笑顔がモットー」って言い出して、ちょっと意識し始めたもんね。ライブのときに意識して笑ってみたり。

なおと そうだね。しょうとは高校のときからの付き合いですけど、昔と比べたらめっちゃ笑顔が増えたなと思います。なおやも増えたか。

ねぐせ。

ねぐせ。

恋が実る前の歌詞を初めて書けました

──「恋と怪獣」は柔らかな雰囲気のある曲ですが、どんな思いで作ったんでしょう?

りょたち 「恋と怪獣」はけっこう前からあった曲ですね。名古屋の新栄町という地名を歌詞に入れていたり、「黒髪ウルフカット丸顔 ブルベ赤リップが似合う君」という“君”の特徴をはっきりと書いている歌詞があったり。「マイハニー!加工なんかしなくたって 君の顔は世界で1番さ!」みたいな面白い描写もあります。今までは恋人のことが大好きという状態か、失恋を書いた純愛の曲が多かったけど、恋が実る前の歌詞を初めて書きました。

なおや 今までと毛色が大きく違う曲なんで、どういう仕上がりになるんだろうと思いました。結果、やっぱりこれまでにない曲になったのでお客さんの反応が楽しみです。

──歌詞だけじゃなく、アレンジも遊び心があって新しいですよね。歌詞の「怪獣が襲撃」のところで怪獣が街を襲撃するような音が入ったり。

なおと あれは入れるか入れないかちょっと悩んだんだよね。

しょうと なおやはけっこう反対してたよね。

なおや うん。「ちょっとインパクトが強いんじゃないかな?」と思って。

りょたち でも、そこは俺が「歌詞に合わせてやってみましょう!」と言いました。

なおと ボリュームを上げて聴くとびっくりするよね。母親に聞かせたら「今の何?」って言ってた(笑)。でも、遊び心があって面白いと思う。

りょたち デスボイスも入ってるし。

──新しいアプローチの曲だから、アレンジでもどんどん遊んでしまおうという雰囲気がバンド内にあったんですか?

なおと ありましたね。最近のデモは普通のシティポップ調の曲だったんですが、近年シティポップがめっちゃ流行ったこともあり、似たような曲がけっこうあるかもなあと思って。いろいろと変えたくなっちゃって、音がどんどん増えていったんです。

りょたち 最終的におしゃれな感じになったよね。

なおと ドラムはスネアをミュートしまくりました。打ち込みでもいいような曲調だと思うんですが、生音にしたくて、シンバルを1枚だけにして。これまでで一番音数を少なくした結果、逆にできることが広がりました。

なおと(Dr)

なおと(Dr)

初めての武道館が自分たちのライブ

──「恋と怪獣」と「あの娘の胸に飛びこんで!」ができたことで、りょたちさんのソングライティングの可能性がかなり広がりましたよね。いろいろな題材で曲が書けるようになったというか。

りょたち そうですね。女の子を怪獣に見立てたのも遊び心があっていいなと思いましたし、もっといろいろな比喩ができると思う。いろんな曲に挑戦したいという気持ちがあります。でも、キャッチーであり続けるという、軸の部分は大事にしていきたい。

なおと りょたちは比喩もストレートも好きだよね。「あの娘の胸に飛びこんで!」はストレートな歌詞だから、結果的に2曲の新曲は曲調も作り方も全部真逆になった。「恋と怪獣」も「あの娘の胸に飛びこんで!」もこれまでだったら絶対に作ろうとは思わなかった曲だし、アルバムを作ったことでりょたちの曲の幅がめっちゃ広がった。これからは本当にいろいろな曲が作れると思う。今は時代的にいろいろなもののサイクルがすごく早くて、飽きられやすい。同じ曲調ばっかりだと自分たちも飽きちゃうから、幅広いアプローチに挑戦して、いろいろなところに刺していきたいですね。1回深く好きになってくれたらすぐには飽きないだろうし。ライブも音源も何もかも、枠にはとらわれたくないですね。

──6月には初の日本武道館公演が決まってますが、どんな思いがありますか?

なおと 結成当初、「Zeppでやりたいね」とは言ってたんですけど、まさか結成4年目で武道館に立てると思っていなかったので、まずびっくりです。

りょたち 俺も武道館に立てるとは1mmも思ってなかった。

なおと でも、やるからには埋めなきゃ意味がないと思ってます。プレッシャーはありますが、2023年に僕たちがやってきたことはかなり身になっていると思うので、自分たちが楽しみながら積み上げてきたものをみんなに見せられればいいかなと思ってます。ねぐせ。らしさを壊さず臨みたいです。

りょたち バンドをやってる人からしたら憧れのステージだと思うんですけど、僕ら全員、この前撮影で初めて武道館に行ったんですよね(笑)。初めての武道館が自分たちのライブってめっちゃいいなと思ってます。

しょうと 僕はよく「今まで通り今まで以上」という言葉を使うんですが、今のライブのよさを残しつつ、どんどんレベルアップしていきたいです。武道館だけじゃなく、そのあともずっとそれを意識してやっていきたい。

なおや 楽しんでずっとやっていけたらいいなと思います。

りょたち そうだね。あれこれといろいろ考えずに、これまで通り4人で楽しくやれるのが一番だなって思いますね。

ねぐせ。

ねぐせ。

ライブ情報

ねぐせ。“FANと!FUNする!FANTASYツアー!”2024

  • 2024年2月18日(日)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
  • 2024年2月24日(土)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2024年3月2日(土)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2024年3月3日(日)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2024年3月17日(日)北海道 Zepp Sapporo
  • 2024年4月6日(土)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
  • 2024年4月7日(日)香川県 高松festhalle
  • 2024年4月14日(日)宮城県 SENDAI GIGS
  • 2024年4月20日(土)新潟県 NIIGATA LOTS

ねぐせ。ワンマンライブ「ファンタジークライマックス」

  • 2024年6月13日(木)東京都 日本武道館

プロフィール

ねぐせ。

2020年8月に愛知・名古屋で結成された4人組バンド。2021年に名古屋のライブイベント「FREEDOM NAGOYA 2021 -EXPO-」の出演を懸けたオーディションで優勝した。2022年7月に配信リリースした楽曲「グッドな音楽を」がTikTokで流行し、一躍注目を浴びる。「グッドな音楽を」は「TikTok流行語大賞2022」30選にノミネートされた。年末には「COUNTDOWN JAPAN」「FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY」「MERRY ROCK PARADE」に出演し、会場に入場規制がかかった。2023年6月より東名阪ワンマンツアー「ねぐせ。ワンマンツアー2023『お金は減っても愛増やします!』」を行い、10月に映画「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」の主題歌「サンデイモーニング」を配信リリース。10月から12月にかけて対バンツアー「NEGUSE.TOUR 2023 “BAND TO THE FUTURE”」を開催した。2024年2月に1stアルバム「ファンタジーな祝日を!!!」をリリース。6月に初の東京・日本武道館公演を行う。

※記事初出時、本文に一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

2024年2月14日更新