2020年8月に名古屋で結成された4人組バンド・ねぐせ。が、待望の1stフルアルバム「ファンタジーな祝日を!!!」を2月14日にリリースした。
2022年に配信リリースした楽曲「グッドな音楽を」がTikTokで総再生回数9億回を超えるなど注目を浴びている彼ら。1stアルバムには「グッドな音楽を」やロングヒット中の楽曲「日常革命」、映画「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」の主題歌「サンデイモーニング」といった既発曲に新曲2曲を加えた全10曲が収録されている。既発曲のうち「花束が似合う君へ」「スーパー愛したい」「猫背と癖」の3曲は再レコーディングされており、結成からこれまでのバンドの道のりも、現在の彼らの挑戦も刻まれた1枚となっている。
音楽ナタリーではアルバムの新曲の話を通して、次世代のロックシーンを担う、ねぐせ。の思考やキャラクターを紐解いていく。6月13日には初の東京・日本武道館公演が決まっている彼らの勢いを感じてほしい。
取材・文 / 小松香里撮影 / 梁瀬玉実
チャレンジが詰め込まれたアルバム
──1stフルアルバム「ファンタジーな祝日を!!!」はどのような作品になりましたか?
しょうと(B) 今までのねぐせ。をギュッとしたアルバムになりましたね。
なおや(G) 名刺代わりの1枚です。
りょたち(Vo, G) 10曲とも違う色があって、それがまさにタイトル通りファンタジーな感じになったんじゃないかなと思います。
なおと(Dr) 本当に名曲しか入っていないので、何年か経ったあとも、ずっと聴かれ続ける “名盤”と呼ばれるアルバムになると思います。これからも育て上げていきたい作品です。これまで以上にいろいろなことにこだわりましたね。まず、すごくカラフルなジャケットになっているんですが、今までのアルバムやシングルのモチーフがデザインされていたり、メンバーのオフショットを使っていたりするのがこだわりポイント1です。ポイント2は曲順。10曲の曲順をメンバーとスタッフ全員で考えて、いっせーのでアイデアを出してからみんなで話し合って決めました。被っている部分もあったんですが、全員ほとんど違うパターンで、それぞれのアイデアのよさがあった中、結果的にベストな曲順になりました。ポイント3は、4人それぞれがこれまでやってこなかったことにチャレンジしたところです。しょうとが挑戦したことは? ほら、「タイムマシンにのって」のあれ!
しょうと ああ、ライブでは「タイムマシンにのって」でりょたちと掛け合いをするところがあります。
りょたち いちゃいちゃタイムね。
しょうと いちゃいちゃ掛け合い。
なおと そう。チャレンジがめちゃくちゃ詰め込まれたアルバムです。
しょうと テンポが速い曲もあるしな。
なおと 新曲の「あの娘の胸に飛びこんで!」はねぐせ。史上一番速いんだよね。
──かなり速いし、これまでにないパンキッシュな曲ですよね。
なおと そうなんです。もう1つの新曲の「恋と怪獣」は逆にテンポが遅くて、ここまでポップスの要素を入れたのはねぐせ。としては初めてですね。「恋と怪獣」では、なおやが初めて挑戦したことがあるよね?
なおや 「恋と怪獣」は初めてピックを使わずに指弾きしたんです。柔らかい曲なので、指弾きのほうが柔らかい音が出て合うんじゃないかと思って。
なおと 「指で弾いたほうがいいかも」と自分で言ったあと、うまくできなくて後悔してたよね(笑)。
なおや そう(笑)。あまりやったことなかったから。でも、無事に乗り切れてよかった。
りょたち 結果、指弾きならではのノリが出てると思うよ。
なおと りょたち的な挑戦はやっぱり曲作りだよね。
りょたち これまでは実体験を曲にしてきましたけど、最近は遊び心を持ってフィクションで曲を作ることも増えていて、すごく楽しく曲作りができています。2023年は作る楽曲の幅がグッと広がった1年だったなと思います。そして、このフルアルバムでリスナーにそれが伝わってほしい。
新しい風が吹いたな!
──新曲の「あの娘の胸に飛びこんで!」と「恋と怪獣」は、それぞれどういう発想から生まれたんですか?
りょたち 何曲か新曲の候補があった中、ライブで盛り上がりやすい、短くて速い曲が欲しいという話になり、「あの娘の胸に飛びこんで!」をアルバムに入れることにしました。既発曲とは違う目線の曲を作ろうという思いもありましたね。
なおと 「あの娘の胸に飛びこんで!」は、最初アルバムに入れる予定はなかったんです。1曲分空いていたところに急いでアレンジを詰めて入れました。
りょたち 「作ろう」という話になってから、曲が完成するまでめっちゃ一瞬だったよね。
なおや 2枚目のミニアルバム「スペースシャトルで君の家まで」(2021年発表)から、「死なない為の音楽よ」とか「ベイベイベイビー!」とか、短めで速い曲を毎回入れるようになってるよね。
──「あの娘の胸に飛びこんで!」は、デモの段階でここまで速い曲をイメージしていたんですか?
りょたち そうですね。僕が大好きな銀杏BOYZのアップテンポの曲をイメージして。最初にサビのメロディと歌詞が浮かんで、そこから1時間ぐらいでできました。
しょうと デモを聴いて「新しい風が吹いたな!」と思いました。あと、ライブでやるの楽しそうやなって。
なおと こういうショートチューンで速くて、しかもメロディックな曲って作るのはけっこう難しいと思うんですよ。速くするとメロディックな感じにしづらかったりする。だから、類似する曲があまりないなと思いました。
──そういう曲が書けたのは、作詞作曲を担っているりょたちさんのソングライティング力が上がってきたからなんでしょうか?
りょたち 確かに1年前の自分だったら書けていないと思います。
なおと そうだね。ねぐせ。らしいメロディと歌詞がありながら、すごくアップテンポな曲になったからめっちゃびっくりした。天才だね!
りょたち あざす!
「世代交代させないと」という気持ちがある
──「あの娘の胸に飛びこんで!」はアレンジもすんなりできたんですか?
なおと けっこうすんなりいったよね。
りょたち みんなにお任せする感じだったけど、わりと一瞬でできた。
なおと ライブを重ねて成長できていますし、フェスとかにいっぱい出させてもらって、いろいろなアーティストさんのライブを観て学んだ経験も大きいと思います。僕たち4人ともめっちゃライブ観てるんで。
──特に学びのあったライブというと?
なおと ドラムフレーズを学べたのは、RADWIMPSのサポートのお二人(エノマサフミと森瑞希)。プレイを見ているとすごく得るものがあります。BLUE ENCOUNTのライブも勉強になりました。あと、「あの娘の胸に飛びこんで!」がすんなりアレンジできたのは、04 Limited Sazabysのライブをめっちゃ観てるのが大きいと思います。シティポップな方向性の「恋と怪獣」には、Vaundyのライブを観た経験が反映されてると思う。
しょうと 僕はどんなふうに影響を受けているかはわかりませんが、ハルカミライのラフなんだけど緻密に考えられている感じのプレイには惹かれます。僕はバンドを司るベーシスト、ハルカミライの須藤(俊)さんみたいな存在に憧れているんですよね。
なおや 本当に2023年はインプットとアウトプットの繰り返しだったよね。一番「こういうライブがしたいな」と思ったのは、Zepp Nagoyaで観たハンブレッダーズかもしれない。
しょうと 一緒に観たよね。
なおや ね。すごく自由で楽しそうで、ロックで、めちゃくちゃカッコよかった。
なおと ハンブレッダーズもハルカミライもそれぞれに違うライブのグルーヴ感があるよね。あと、バニラズ(go!go!vanillas)も自由で楽しくていい。いろいろなライブを観たことで得るものが本当にたくさんあった。
りょたち 俺はハルカミライとか、目標としている上の世代のバンドはもちろん、同世代のバンドに刺激を受けた部分がすごく大きかったなと思う。
──去年の「COUNTDOWN JAPAN」のようなフェスでは、ねぐせ。をはじめ、ヤングスキニーやマルシィといったバンドが多くのお客さんを集めていました。同世代バンドの存在によってモチベーションが上がることはありますか?
なおと そうですね。「COUNTDOWN JAPAN」の僕たちの出演日(12月31日)は、特に同世代のバンドが多くて。あそこまで若手バンドが多い日もなかなかないと思いました。それもあって、「世代交代」という言葉がよくSNSとかで出ていて。上の世代からしたら「世代交代」と言われたら絶対にムカつくだろうけど、こっちはこっちで「世代交代させないと」という気持ちもあります。双方のそういう気持ちがあるからこそ、今バンドシーンが盛り上がってるのかなと思っています。
──同世代の中で抜きん出た存在になろうという意識もあるんでしょうか?
りょたち ありますね。ライブでお客さんと一緒にダンスをしようと提案したのは、コロナ禍の制限でお客さんが歌えなかったのもあって、何かほかに一緒に楽しめる方法はないかなと思ってのことだったんですけど、ほかのバンドと差別化できるかなという気持ちもあって。そもそも、近年はTikTokでダンス動画が流行っていますし。
──実際「グッドな音楽を」など、ねぐせ。の曲はTikTokでバズっているわけですが、曲を書くときはTikTokのことは意識しますか?
りょたち そうですね。TikTokの動画にはサビが使われることが多いから、常にキャッチーで耳に残りやすいサビを作ることを意識しています。
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本当に“笑顔がモットーのバンド”になった