ネクライトーキー「MEMORIES2」インタビュー|ボカロP・石風呂楽曲のセルフカバー第2弾が完成して

ネクライトーキーが6月15日にセルフカバーアルバム「MEMORIES2」をリリースした。

「MEMORIES2」は2019年にリリースされた「MEMORIES」の続編となるミニアルバム。朝日(G)がボカロP・石風呂名義で発表した楽曲のリアレンジバージョンが収録されている。音楽ナタリーでは、今作の発売を記念してメンバー全員にインタビュー。レコーディング時のエピソードや、音質についての変化を聞いたほか、1曲目「君はいなせなガール(feat.日本松ひとみ)」で日本松ひとみ(せんせい / ex. 東京カランコロン)をゲストボーカルに迎えた背景、アルバムのお気に入りポイントなどを聞いた。

取材・文 / 田中和宏撮影 / 宇佐美亮

いい音鳴らすネクライトーキー

──「MEMORIES2」をさっそく聴かせてもらいましたが、まず音がとてもよくて、気持ちいいですね。

朝日(G) そうなんです!

カズマ・タケイ(Dr) ありがとうございます!

ネクライトーキー

ネクライトーキー

──爽快感はネクライトーキーらしさとも言える要素だと思いますが、今回特に梅雨のジメジメ感を吹き飛ばすような抜け感があるというか。これまでの制作から何か変化はありましたか?

藤田(B) スタジオがいつもと違って、今回は伊豆のほうにあるスタジオで合宿しました。初めてのところだったので、機材が変わってる面も多いんです。

朝日 弦楽器隊はそこのアンプを借りたりね。

もっさ(Vo, G) 朝日さんは今までと全然違うアンプ使ったよね。

朝日 マーシャルのギターアンプから、今回はJC-120(Roland)に変わった。

──それはまたずいぶんと変わりましたね。

中村郁香(Key) 私は「サカナぐらし」のレコーディングで象牙を鍵盤に使ったグランドピアノを弾かせてもらいました。象牙のピアノってもう作れないものだと思うんですけど、タッチがこれまで触ってきたピアノとは違う硬さでよかったです。

藤田 あっ!あとチューニングを441Hzにしました! なんでだっけ?

中村 象牙のピアノが441Hzで合わせてたからだ。

朝日 どうせなら441Hzにしてみるかって。

もっさ でも朝日さんのアンプが変わったのが、サウンドの変化という面では大きい気がするね。

朝日 マーシャルは音のレンジがけっこう広いけど、ジャズコ(JC-120)はローからミドルがギュッとしていたから、みんなの音の立ち上がり方が変わった感じ。

タケイ アンサンブルが整理された感じあるよね。それが聴きやすさに影響しているのかもしれないです。

──今作ではドラムとベースの低音が以前の作品より自然と前に出てる感じがあったんですよね。

タケイ マーシャルからジャズコになった影響な気がします。

朝日 それまでは俺の“ギターの音壁”がみんなの前にあったのか(笑)。

──あとはもっささんのボーカリストとしての表現力も素晴らしくて。

もっさ ああ……ああ……。

朝日 言葉を忘れた化け物みたいな反応をするな(笑)。「FREAK」(2019年5月発表の3rdアルバム)くらいからボーカルの強さは出てきてる感じがあって、頼れるボーカルになりはったんやなっていう。

もっさ 今作だと「だれかとぼくら」のボーカルレコーディングのときにドヤれるというと変かな……なんだか自分を褒めてあげられるものが録れたなと感じたんです。

朝日 以前はレコーディング中に妙に硬くなる瞬間があったけど、今は伸び伸びと歌ってると思いますよ。

もっさ 前までは緊張してたというか、ピッチをすごく気にしちゃってて、甘くなるとモヤモヤしてたんです。音程が合ってることが正しいんだ!みたいな。そうやって、きっちりさせたい性格だからこそ、気になりだしたら止まらなかったんです。でも最近はピッチに対しては少し考えがゆるくて、もっと別の部分を大切にして伸ばしたいなって。

もっさ(Vo, G)

もっさ(Vo, G)

ボカロP・石風呂、ここにいます

──2019年7月にセルフカバーアルバムの第1弾「MEMORIES」を発表したときも、今回もそうでしたが、SNSを覗くと「ネクライトーキーに石風呂がいたんだ!」という反応がいまだにありますよね。繰り返し発信していくのは大切だなあと。

中村 「ボーカルが石風呂だったんだ!」って、勘違いされてることもあるし(笑)。

朝日 そうそう。「ベースが石風呂だったんだ!」には笑っちゃったな。

藤田 なぜそうなるんだって思うけど……まあ仕方ない(笑)。

──ネクライトーキーは2017年結成ですが、石風呂、コンテンポラリーな生活を含めて過去を掘り下げるとけっこうな歴史がありますよね。

朝日 バンド活動に至っては、高校卒業と同時くらいだから2008年からかな。今作の中では「午前3時のヘッドフォン」が一番古い曲かな。

もっさ 「ロック屋さんのぐだぐだ毎日」のほうが古そうやけどな。

朝日 でも公開タイミングはほとんど同じだよ(笑)。

──マネージャーさんによると、2011年11月8日に「午前3時のヘッドフォン」、同年12月8日に「ロック屋さんのぐだぐだ毎日」が公開されたそうです。

朝日 この頃は1カ月に1曲作って発表してたね。暇やったんかな(笑)。

──当時と今で曲作りのプロセスは変わりましたか?

朝日 一時期はパソコンを立ち上げて、リズムトラックを打ち込んで作り込む方向になりかけてたんですけど、「MEMORIES」を作ってた頃、ギターを触りながら曲を作るのが結局一番いいなと感じて。だから昔も今もギターをジャカジャカ弾きながら作ってますよ。

朝日(G)

朝日(G)

──ちなみにバンドに新曲を持ち寄るときはどんな形ですか?

朝日 はっきりしたイメージがあるときはイメージが伝わるくらいの最低限のトラックを用意してます。本当に鼻歌でいけるときは、コード進行とメロディだけのときもある。

もっさ あと朝日さんはエアドラムで伝えようとするよね(笑)。

朝日 俺はドラムのことばっかり考えてますから!

タケイ 朝日が本当にドラム好きなんで、なんだかんだリズムについては強固なイメージがすでに彼の中にあることが多いですね。リズムはこっちで考えるんですけど、朝日の提案をもとにしてることが多いです。

10年前の日記を読み返すような気恥ずかしさ

──「MEMORIES2」には10年くらい前に作った曲から、昨年作った曲まで幅広く収録されていますが、歌詞などを読み返して何か思うことはありましたか?

朝日 「怒ってるなー」って思いましたし、気恥ずかしさはありますね(笑)。

──例えが伝わればでいいんですが、mixiの日記を見返しちゃったみたいな感覚も?

朝日 そうそう(笑)。10年前の日記を読んでいるようだし、過去のメロディ付きのmixi日記を今になって発表するようなものです。

タケイ そんなに照れるものなの?

朝日 うん。ライブだって、自作のポエムにメロディを付けて人前で発表するみたいな行為だから。でも自分の作詞作曲した作品はそんな感じです。

──もっささんは10年前の自分の日記があったら公開できますか?

もっさ そんなことできるわけないですよ!(笑) 10年前って言ったら、それはもうネットにどハマりしていた高校生でしたから。そしてまさに10年前、石風呂さんの曲を聴いてしまったがゆえにネットの音楽に目覚めて、勉強がはかどらなくなりました(笑)。真面目じゃなくなった瞬間とも言える。