深夜の渋谷まで歩いてフィールドレコーディング

──「渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進」は、終電が終わった深夜の渋谷の景色が浮かびました。

朝日　そんな時間の百鬼夜行という感じ。この曲は「平成狸合戦ぽんぽこ」のタヌキたちによるパレードシーンがモチーフになっていて。タヌキたちからしたら決死の覚悟でのパレードが、人間からはエンタメとして消費されると思うとけっこうエグいことだなと印象に残っていて。作っていた時期が9月末のハロウィンシーズン前だったことも大きかったし、いろんなイメージが混ざってできた曲です。

──冒頭に街の環境音が入ってますけど、曲の舞台である渋谷で録音したんですか？

朝日　深夜というか早朝の4時5時くらいに歩いて渋谷まで録りに行きました。連日レコーディングをしている中、俺が朝5時くらいに渋谷まで録音しに行ったら笑えるなって話をみんなでしながらゲラゲラ笑ってたんです。そしたらですね、ある日の夜中にふと「これマジで録りに行きてえ」となりまして。新宿のホテルから歩いて渋谷まで行って公園の中を通り抜けて街の音を録音して、タクシーで帰りました（笑）。

──「渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進」のシンセはチップチューンというか、ゲームっぽいクリック音が入っています。

朝日　あの音色は俺が作ったやつです。きっとライブではタケちゃんが叩くと思います。

──音色の部分でこだわったポイントは？

朝日　やっぱりドラムは気にしました。

カズマ　ドラムの音作りは今回けっこう気にしていて、中でも「渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進」のドラムの音はそうだし、「夢みるドブネズミ」もセオリー通りじゃない音作りをしました。

朝日　「渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進」は序盤がチップチューンっぽいリズムトラックで、途中から一気に生音でガツンとした音にしていて。あのパンチはどうすれば出るのか、みたいなところにこだわってます。

カズマ　ドラムにガムテープをベタベタ貼ってミュートしてみたり、逆にミュートを外してみたり、いろんなことを試してできた音ですね。

朝日　ミックスに関してもエンジニアの方がけっこう遊んでくれて。この曲は細かな音にも耳を傾けてみてほしいです。

藤田　ベースは後半からゴリゴリに歪ませてます。エンジニアの方が持ってたBig Muffを使って。ブレンダーはかましているんですけど、バーンと弾いてガーンとエフェクトかけて思いっきり歪ませて。思いっきり歪ませて弾くと楽しいですね（笑）。テンションが上がりました。

朝日　曲にパンチを効かせるにはリズム隊の音が相当重要だからよかったよね。

もっさが大人っぽくなった

──キーボードやもっささんの歌についても何か今回特にこだわった部分はありますか？

中村　「渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進」はキーボード以外けっこうゴリゴリなんですけど、あえてキーボードはフワッとした感じに弾いてます。

カズマ　あとむーさんで一番いいなと思ったのは生ピアノだな。「深夜とコンビニ」あたり。

朝日　本当にめちゃくちゃいい。もう名ピアノですよ。

中村　スタジオにグランドピアノがあったので、「涙を拭いて」「深夜とコンビニ」あたりのピアノメインの曲で使いました。

朝日　あと「ぽんぽこ節」のサビも生ピアノだ。

中村　そうそう。「深夜とコンビニ」はテンポがゆったり目なので、グランドピアノの音がキレイに入りました。

──耳を澄ますと聴こえる部屋鳴り感も含めていい雰囲気ですよね。

中村　はい。そのあたりもぜひ聴いてほしいです。

朝日　よく聴くと打鍵したときに鍵盤が下りる音も聴こえるよね。

──そこまで聴こえるんですね。

カズマ　ペダルを踏む音も注意深く聴いたら入ってますからね。

藤田　そういう音が入ってるのってなんかグッとくるよね。

中村　「涙を拭いて」も、デモCDまで打ち込みだったものを全部弾き直しました。人間が指で弾けるようなフレーズにちゃんと作り直してるから、コピーしてほしいなって思います。

──もっささんは？

もっさ　私は1曲1曲違うように歌ったつもりです。「放課後の記憶」「深夜とコンビニ」「渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進」あたりはけっこう私の中では大人っぽく歌ってるんですけど……（笑）。

朝日　なんで笑うの？（笑）

もっさ　ちゃんと伝わってるかなと思って。

──これまでの楽曲に比べたら、確かに大人っぽさは出ていると思います。

もっさ　「ONE！」と「MEMORIES」を最近聴き直して、「めっちゃ子供やん！」って思ったんです。だけど今回はちょっとなんか大人になったなって思いました。もちろん「ボケナスのうた」「虫がいる」とかはあっけらかんと歌ってるんですけど、今回いろんな歌い方したなって思う。あと「ぽんぽこ節」が歌も気に入ってます。めっちゃ難しかったんですけど。激しいのか愉快なのか寂しいのかよくわかんない絶妙なところをちゃんと歌えたんじゃないかなって思います。

──ボーカリストとしての成長を感じる出来栄えということですね。

朝日　本当にすごく感じます。

カズマ　うん。めちゃめちゃ感じます。

朝日　特に「渋谷ハチ公口前もふもふ動物大行進」はデモを作った段階で、「もっさが歌ったらこの曲どうなるの？」みたいな話になったやん？

もっさ　うん。

朝日　こういう歌も歌えちゃうんだってなって驚いた部分でもありました。

もっさ　でもうまくなったらうまくなったで、またなんか文句つけてきますよ！

朝日　それ、言うねー（笑）。ごめんって！

もっさ　普通に褒めてくれたらいいのに、「なんかうまくなってちょっとなんか……」みたいな言い方される（笑）。

朝日　うまくなったら少し寂しいなって。「エベレーター」としか言えなかった子供が「エレベーター」としっかり言えるようになってきたら、なんかちょっと寂しいなって。

もっさ　そのレベル？（笑） まじヤバい……がんばろう。

朝日　まあ「エベレーター」と言ってるのも面白くて好きだったなあくらいの感覚です。

攻めの全国ツアーを前に

──アルバムリリース後には全18公演でバンド史上最大規模となるツアー「ゴーゴートーキーズ！2020春」が始まります。神奈川・CLUB CITTA'で初日を迎えますが、かなり大きな会場ですね。

藤田　そう、でかいんですよ！ BLITZと同じくらいのキャパシティ、震えますね（笑）。

朝日　前回のBLITZが最大規模のワンマンでしたけど、次はそれがスタートラインになりますね。

──どんどん塗り替えていく感じがしますね。バンドとして一気にジャンプアップしている感じがします。

朝日　ハコに関しては早め早めに決めていかないとどんどん押さえられなくなるので、スタッフの人がやってくれてるんですけど、「攻めたねー」と思いました。俺らより攻めてるんじゃないかな（笑）。

一同　（笑）。

中村　せっかく大きいところでいっぱいできるから、面白くていいライブにしていきたいね。

カズマ　今回のアルバムに入ってる曲のほとんどをまだライブでやっていないんですけど、曲は演奏していくうちに育つと言いますか、変化していくんです。これだけの本数をやっていく中でどう変わっていくのか、僕たち自身楽しみです。

藤田　5月4日のZepp Tokyoがツアーファイナルということに関してもすごく震えるんですけど、ちょっと怖くもあり。あとはなんばHatchでできるのがうれしいですね。大阪に住んでる人間として、やっぱりメジャーアーティストが出るハコっていう印象なので。

朝日　出るハコというより観に行くハコやったもんな。

藤田　難波でメジャーアーティストを観に行くハコ。

──「ONE！」を出したときからライブの規模は大きくしていきたいという構想がありました。それを着実に叶えていますね。

朝日　まだ会場を押さえただけなんで、埋まるかどうか全然わからないです（笑）。どうなるかは、これからのがんばり次第だし、絶対埋めたいですね。あと個人的には北海道の札幌PENNY LANE24がけっこう楽しみです。ここはNUMBER GIRLが2002年にラストライブをした場所なので。「OMOIDE IN MY HEAD」のライブ映像を死ぬほど観たから憧れがあって。ペニーレーンはけっこう大きい場所ですけど、会場を押さえられるって話になり、「ペニーレーンでやるのか……」と沸々とこみ上げてくるものがあります。

もっさ　私は神戸のART HOUSEが以前やっていたバンドでずっと出てたところなんですけど、今回のツアーで押さえてもらえました。ただのワガママです（笑）。

朝日　もっさのホームみたいなライブハウスだもんな。

藤田　もっさがART HOUSEでやりたいとはずっと言ってたから。

カズマ　もっさ凱旋ですよ！

朝日　ART HOUSEの人も喜んでくれてたよね。

もっさ　うん。まだネクライトーキーを組んでから1回も出れてないんですよ。だからめっちゃうれしかったです。

朝日　2020年も楽しみがいろいろあるから、いろんな人に来てもらえたらうれしいな。