ネクライトーキー|“思い出”を未来につなぐ石風呂楽曲のセルフカバー作が完成

ネクライトーキーが7月24日にミニアルバム「MEMORIES」をリリースする。このミニアルバムはメンバーの朝日(G)の石風呂名義による楽曲をセルフカバーした作品で、ネクライトーキーのライブでも披露してきた全8曲が収録される。

音楽ナタリーでは新作リリースを記念してメンバー全員にインタビュー。昨年12月発表の1stフルアルバム「ONE!」発売後のツアー「『ONE!』リリースツアー“オーキートーキー!全国編”」の振り返りや、このツアー中に正式メンバーになった中村郁香(Key)加入の経緯、「MEMORIES」に込められた思いや今後の展望について語ってもらった。

取材・文 / 田中和宏 撮影 / Kana Tarumi

ツアーを振り返る

──「ONE!」のリリース後、初のツアーや最近のライブでの手応えは感じていますか?

朝日(G) 実際ライブハウスに行くまでは、数字で何か言われてもなかなか実感が湧きづらくて。ツアーで初めて全国のライブハウスを回って、フロアの歓声にこっちもテンションが上がりました。「ONE!」の反響をSNSで目にしてましたけど、実際にお客さんの顔を見るまでは受け入れられているのか実感がなかったので、いい機会になったと思います。

ネクライトーキー

カズマ・タケイ(Dr) 気持ちよかったね。

藤田(B, Cho) ツアーのあとにサーキットイベントやフェスでけっこう大きめの会場のステージに立つ機会も増えて、パンパンにお客さんが入ってるのを見たら気分が高まりました。それ以外でも例えば大阪のLIVE HOUSE Pangeaのオープン8周年イベントとか、ほかのバンドのライブにもお誘いいただく機会があったんですけど、「お客さんめっちゃ来てくれてるやん」と感じることが増えてきました。

──ツアーで各地を回って、何か印象的な出来事はありましたか?

朝日 岡山で……。

藤田 絶対それ言うと思った(笑)。

タケイ お客さんの反応が会場によってけっこう違ったんですよ。で、特に、岡山公演(2019年2月8日のPEPPERLAND公演)ではお客さんがすごく歓迎してくれて。

中村郁香(Key) 地元バンドの凱旋ライブみたいな勢いでした。

もっさ(Vo, G) 岡山でそれまでやったことあったっけ?

藤田 ないない。

朝日(G)

朝日 あの熱はすさまじかったねえ。岡山のPEPPERLANDはキャパ180人くらいのライブハウスで、すぐ隣が大学だから学生が多かったのかな。大学の隣にライブハウスがあるっていい環境だと思います。ライブハウスが“得体の知れない怖い場所”ではなくて、きっと身近なものなんでしょうね。きっとその会場でライブをした大学生もいっぱいいるんだろうなと思って、音楽が近い環境はすごくいいなと思ったのはとても印象に残ってます。

──岡山以外では?

藤田 雪の降る北海道かな。あんまり雪を見る機会がないので、はしゃぎました(笑)。雪ではしゃいで、ライブではしゃいで、打ち上げでジンギスカン食べてさらにはしゃいで。帰り道に朝日が雪道で思いっきり滑って転んでましたけど、ケガがなくてよかった(笑)。

中村が正式加入するに至った理由

──ツアーのセミファイナル、3月15日の大阪・Shangri-La公演で中村さんの加入が正式に発表されました(参照:ネクライトーキー、“むーさん”ことキーボード中村郁香が正式加入)。中村さんは結成時からサポートメンバーでしたが、改めて正式加入に至った理由を聞かせてください。

中村郁香(Key)

中村 もともとネクライトーキーのサポートでスタジオに入っていて、2017年の暮れくらいに私が朝日さんに「このバンドが好きだから入りたい」という旨を伝えたんです。で、長いこと4人で話し合ってもらって。

藤田 長いこと待たせたなあ。

中村 忘れてるんじゃないかってぐらいの期間、保留になっていて。1回台風で延期したライブ(2018年9月の愛知・RAD SEVEN公演。11月に振替公演を実施)があったんですけど、その日の打ち上げだったよね?

朝日 11月に名古屋で振替ワンマンが無事にできた日の打ち上げだね。

中村 「メンバーなる?」と言われて。今までの保留期間はなんだったのかと思うほど突然。打ち上げ中に「醤油いる?」みたいな感じでスルッと言われた(笑)。

藤田 むーさんもスルッと「うん。入る入る」みたいに答えてたね。

──朝日さんの中で、中村さんの正式加入を見送っていた理由は?

朝日 正直、一番悩んでいたのは俺ではなくてもっさでしたね。ずーっと悩んでいました。

──何を悩んでいたんでしょうか。

もっさ む……。

中村 え? もう記憶にない?

もっさ ……あとで話す。

藤田 最初にむーさんをメンバーに迎えるかという話が上がったときに、そもそも彼女を呼んでいるのは私なので、個人的には一緒にもっと長く活動したかったんです。タケちゃんもどっちかというとそういう感じだった?

タケイ いや、僕も若干悩んでた。結成当初から手伝ってはもらっていたけど、むーさんがどんなプレイヤーでどんな人なのかを知らなかったから。

もっさ 私とタケちゃんとむーさんの3人はネクライトーキーの練習のスタジオが初対面の場所だったから。

中村 今回リリースする石風呂楽曲を聴いたのも、「サポートする?」と藤田ちゃんに誘われてからなんです。藤田ちゃんとはもともとボルダリング友達だったけど、そのスタジオが初めての音合わせでしたし。なので、演奏を一緒にし始めてまだ3、4カ月しか経ってなかったタイミングで「入りたい」と伝えたんです。今思うと博打のような状況ですね。

──それはどうして?

中村 「正式メンバーになりたい」と伝えて「それは無理だよ」と返されたら、正直サポートとして呼びづらいだろうなという懸念があったんです。なのでたぶん4人は答えをすごく出しづらかっただろうなと。

もっさ(Vo, G))

タケイ (もっさを見て)おっ、何か思い出した?

もっさ メンバーを誘うということを、私はめっちゃ大事にしたかったんです。軽い気持ちでは誘いたくないから、悩みたいと思った。誘うのってめっちゃ勇気がいりますよね。それに、たまたま一緒にやってたから誘ったってことにしたくなくて、むーさんだから誘うんだということを考えてました。誘うのは慎重に、大事にしたいと思ってた。

朝日 そもそもサポートをお願いしていた時期は、俺が作ったフレーズをただコピーしてもらっていたんです。文字通りサポートだったので、むーさんが一体どんなプレイヤーなのかを知らないままで。あるときに「この曲のアレンジをゼロからむーさんに作ってほしい」「この曲にむーさん色を出してやってみてほしい」といろいろ投げてみて。そのあたりから演奏やアレンジにむーさん色を出してもらって、どんなプレイヤーかを知っていき、レコーディング中に「俺らはこういうことをしたい」という方針も伝えました。で、最終的に「むーさんに入ってもらおうよ」みたいな流れになり。俺もけっこう悩んでたんですけど、一緒に活動を重ねていくうちにこの人なら大丈夫と確信しました。

──加入の決め手になった理由は?

朝日 唯一決め手として挙げるなら、「明日にだって」(1stフルアルバム「ONE!」収録曲)は、完全にむーさんにアレンジを投げた曲なんです。デモの段階ではキーボードが入っていない状態だったんですけど、そのアレンジをしっかりやってもらえたから、迎え入れて大丈夫だろうと。

──大阪で正式加入を発表したときには大きな反響がありました。中村さんの加入を待っていたファンが多かったんだなと思いました。

もっさ ていうか、音源にもツアーにも参加してるし、今思えばメンバーにならざるを得ない状況(笑)。

藤田 祝福の声もありましたし、「むーさんって正式メンバーじゃなかったんだ」というファンの反応もありました。「やっぱそう思うわな」と思いました(笑)。

もっさ 慎重には考えていたけど、もはやむーさん以外じゃ考えられなくなっていた気もします。

中村 休むことなくライブに出てたからかな。

ネクライトーキー

タケイ サポート時代からライブは皆勤だもんね。

藤田 むーさんが出られないんだったらライブやらなくていいくらいだったし。

中村 あるとき「この日はサポートするの難しいかも」と軽く言ったときに、誰か忘れたんですけど「じゃあその日のライブやめとこうか」と言われて。「え? 本当にそれでいいの? サポートだよ?」と思いました。

タケイ 活動し始めたばかりの頃はサポートできない日があったら別の人を誘おうと思っていたんですけど、「むーさんが出られなかったら、ライブはお断りしよう」みたいな判断をするのが自然な流れになっていったように思います。